■ 全国中学校体育大会の決勝戦平成30年度の全国中学校体育大会(第49回全国中学校サッカー大会)の決勝戦は8月23日(木)に鳥取県鳥取市にあるとりぎんバードスタジアムで決勝が行われた。決勝のカードは5連覇を目指す青森山田中(青森県)と11年ぶり3度目の日本一を目指す日章学園中(宮崎県)の対戦となった。3年前の2015年大会の決勝も同じカードだったが、このときは4対1で青森山田中が勝利して大会2連覇を達成している。
5連覇を目指す王者の青森山田中は「4-1-2-3」。GK内田将弘。DF齋藤隆仁、DF福田南波、DF三輪椋平、DF菅原次元。MF宇野禅斗、MF田澤夢積、MF松木玖生。FW馬場翔太、FW藤森颯太、FW小野暉。青森山田高でも採用している伝統の「4-1-2-3」を使用しており、攻守の要となるアンカーの位置にはMF宇野が起用された。10番でキャプテンマークを巻くMF松木はU-15日本代表に選出されている。
対する日章学園中は「4-2-2-2」。GK後藤大輝。DF片井野皐史、DF寺田瑛祐、DF金川羅彌、DF馬籠康星。MF前田聖七、MF葭岡遥来、MF橋天飛磨、MF池部虎汰朗。FW藤本優希、FW木脇蓮苑。こちらはオーソドックスな「4-2-2-2」を採用しているが、11番のMF葭岡は戦術的なキーマン。最前線でもプレーするし、ボランチでもプレーする。監督からの指示でMF葭岡のポジションは試合中に頻繁に変化する。
■ 2対1で競り勝った日章学園中5連覇を目指す青森山田中と11年ぶりの優勝を目指す日章学園中の試合は30分ハーフで行われた。前半は静かな展開になった。どちらもなかなかシュートチャンスに持ち込めない。スタジアムが沸くシーンを作れなかったが、前半26分に日章学園中は左SHのMF池部のクロスからファーサイドのFW藤本が難易度の高いシュートを決めて先制に成功する。日章学園中が1対0とリードしてハーフタイムに突入する。
1点を追う青森山田中は10番のMF松木を中心に攻撃を仕掛けると、後半22分に途中出場したMF長阪がエリア内で倒されてPKを獲得。これをU-15日本代表のMF松木が決めて1対1の同点に追いついた。直後の後半26分に今度は日章学園中のMF松下が倒されてPKを獲得。これを10番のFW木脇が決めて日章学園中が2対1と勝ち越しに成功する。両エースは確実にPKのチャンスをゴールに結びつけた。
その後は青森山田中が猛攻を仕掛ける。2度ほど、絶好の位置でFKを獲得。10番のMF松木が得意の左足で狙ったが、日章学園中の守護神のGK後藤がしっかりと対応して同点ゴールとはならなかった。2対1で勝利した日章学園中が青森山田中を下して悲願の日本一に輝いた。2007年以来で3度目の日本一となる。敗れた青森山田中は前人未到となる5連覇達成はならず。同じく2007年以来の準優勝となった。
■ U-15日本代表の片鱗を見せた10番のMF松木玖生近年の男子の中学サッカー界は青森山田中の独壇場になっている。2012年以降の7年間で実に6度も全中の決勝に進出している。優勝回数も史上最多の東海大静岡翔洋中(東海大学第一中)の7回に次いで歴代2位タイとなる5回。絶対王者と言えるほどの存在になっているが、日章学園中が3年前の雪辱を果たした。もちろん、当時のメンバーは全員が卒業をしているが、後輩たちが青森山田中にリベンジを果たした。
中学年代の場合、主力の多くは中学3年生になる。体格的なハンディもあるので高校年代と比べると1年生や2年生の段階から主力として活躍するのはなかなか難しい。高校年代以上に、毎年、主力は大きく入れ替わることを踏まえると4連覇という青森山田中の成績は驚異と言うしかないが、日章学園中が絶対王者の5連覇を阻止した。日章学園中の花房監督の日本一に賭ける強い思いは画面からも伝わってきた。
青森山田中は同点に追いついた直後にPKを献上してしまった。このときの対応はやや軽率だった。激しくチャージする必要はなかったので勿体ないファールと言えるが、勝ち越しゴールを許した後は迫力ある攻撃を見せてあわやのシーンを何度も作った。4連覇中なので選手たちは「(全国大会とは言っても)負けることはあり得ない。」という感覚になっていたはず。青森山田中にとっては悔しすぎる結果になった。
U-15日本代表で10番のMF松木は試合終了のホイッスルが鳴った後、号泣していた。後半22分に自らPKを決めて同点ゴールを奪ったが、その後に訪れた2度のFKのチャンスは生かせず。「自分たちの代で全中の連覇を止めてしまった。」というのは相当にショックなことだと思うが、このくらいの年代の選手になると勝って得られるものよりも、負けたことで得られるものの方がはるかに多いはずである。
「負けたことがあるというのがいつか大きな財産になる。」というのはスラムダンクの名言の1つであるが、あと少しで日本一に届かなかったことをバネにしてほしいところである。MF松木はインサイドハーフでプレーしたが、175センチなので中学生としてはサイズにも恵まれている。左足のキックは正確で、判断も的確。青森山田高に進むことになると思うが、高校サッカー界でも大暴れしてほしいと切に願う。
★ 現在の投票数 → 440票
→ 最大で10都道府県まで選択して投票することができます。
→ 「コメント」のところは何も書かなくてもOKです。(投票可能です。)
関連エントリー
2014/01/11 『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識」』を読んで (前編)
2014/01/12 『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識」』を読んで (後編)
2014/11/12 【高校サッカー:野洲×水口】 セクシーフットボールで旋風を巻き起こしてから9年
2016/08/23 【高校サッカー】 大阪府予選の開会式を欠席した大阪学院大高の棄権扱いは妥当か?
2016/08/24 【考察】 47都道府県の中で「サッカーが盛ん」と言えるのはどこだろうか?
2016/08/24 【考察】 47都道府県の中で「サッカー不毛の地」と言えるのはどこだろうか?
2016/09/26 【高校サッカー】 興味深い東福岡高校のサッカー部員の中学時代の所属クラブ
2016/12/28 【高校サッカー選手権】 注目したいJリーグ入りが内定している高校3年生・8名 (2016年度)
- 関連記事
-