■ アトランタ最終予選
アトランタ五輪最終予選を翌月に控えた1996年2月のマレーシア合宿で、日本代表はエースFW小倉隆史を右十字靭帯断裂という大怪我で失うことになる。(その小倉と入れ替わるように五輪代表のスタメンに定着したのは平塚の19歳のMF中田英寿。最終予選の初戦イラク戦で、出場停止だったMF前園の代わりにスタメンで起用されると、鮮やかなラストパスを連発し、レギュラーポジションをつかんだ。 当時から中田の実力は高く評価されていたが、仮に小倉が万全だったならば、守備的なスタイルといわれた当時の西野監督が、小倉・前園・城のトライアングルに中田を加えた攻撃のカルテットを同時にスタメンで起用したかといわれると、疑問である。)
そして、その小倉の代役という形で代表メンバー入りしたのが、当時、富山第一高校の3年生だった柳沢敦だった。飛び級での選出である。(言うまでもなく、卒業後は、鹿島アントラーズに入団することが決定していた。高校生が五輪予選のメンバーに選ばれたのは、バルセロナ大会以降では、高田昌明(市船)と平山相太(国見)と柳沢敦(富山第一)の3人だけである。)
■ 大会№1ストライカーの称号
初めて柳沢敦を見たのは、彼が高校3年生の時の冬の全国高校サッカー選手権である。超高校級といわれた柳沢は、スピードがあって、強さもあって、正確な技術も備えていた逸材だった。その大会でゴール量産とはならなかったが、その才能の片鱗は十二分に感じさせた。
結局、アトランタ五輪代表チームでは出番は回ってこなかったが、ルーキーイヤーの96年は、8試合に出場して5得点。8月28日の市原戦でJリーグデビューを飾ると、8月31日のガンバ大阪戦から4試合連続ゴール。鮮烈な印象を残した。
翌97年は、25試合で8ゴールを記録し、Jリーグの新人王を獲得。マレーシアワールドユースでは、5試合で4ゴールとエースとしての大役を果たし、チームをベスト8に導いた。
98年のフランスワールドカップメンバーからは落選したが、このシーズンは32試合で22ゴール。現役のJリーガーで、シーズン20ゴール以上を記録したことがあるのは、三浦知良、中山雅史、柳沢敦、高原直泰の4人のみである。
※ リーグ戦で20ゴール以上をマークした日本人
選手名 | チーム | 年 | 試合数 | ゴール数 |
三浦知良 | ヴェルディ川崎 | 1993 | 36 | 20 |
武田修宏 | ヴェルディ川崎 | 1994 | 40 | 23 |
長谷川祥之 | 鹿島アントラーズ | 1994 | 43 | 21 |
三浦知良 | ヴェルディ川崎 | 1995 | 26 | 23 |
武田修宏 | ヴェルディ川崎 | 1995 | 40 | 21 |
福田正博 | 浦和レッズ | 1995 | 50 | 32 |
野口幸司 | ベルマーレ平塚 | 1995 | 49 | 23 |
三浦知良 | ヴェルディ川崎 | 1996 | 27 | 23 |
福田正博 | 浦和レッズ | 1997 | 39 | 32 |
永島昭浩 | ヴィッセル神戸 | 1997 | 32 | 22 |
中山雅史 | ジュビロ磐田 | 1998 | 27 | 36 |
柳沢敦 | 鹿島アントラーズ | 1998 | 32 | 22 |
城彰二 | 横浜マリノス | 1998 | 31 | 25 |
中山雅史 | ジュビロ磐田 | 2000 | 29 | 20 |
高原直泰 | ジュビロ磐田 | 2002 | 27 | 26 |
大黒将志 | ガンバ大阪 | 2004 | 30 | 20 |
■ 順風満帆でないキャリア
ただ、その後のキャリアは、周囲を満足させるものではない。
※ 柳沢敦のリーグ戦での成績
年 | 試合数 | ゴール数 |
1996 | 8 | 5 |
1997 | 25 | 8 |
1998 | 32 | 22 |
1999 | 26 | 9 |
2000 | 26 | 6 |
2001 | 26 | 12 |
2002 | 27 | 7 |
2003 | 8 | 2 |
2006 | 23 | 4 |
2007 | 19 | 5 |
「フォワードの仕事はゴール以外にもある。」というのは事実ではある。だが、柳沢が貪欲にゴールだけを目指してキャリアを積んでいれば、いったいどんなストライカーになっていたのだろうか、と想像することがある。彼には、確かにストライカーとしての天賦の才があった。
2008年、新天地に選んだのは、4たび、J1の舞台に戻ってきた京都サンガFC。超大型補強を行って、J1残留以上を目指すチームにあって、柳沢の活躍は不可欠である。ノルマは13ゴール以上。エレベータークラブからの脱却を果たすには、彼の「ゴール前のスルー」ではなく、「ゴールゲット」が必要である。
かつて、ペルージャでプレーした初年度の中田英寿のように、攻撃的なポジションを担う選手にとって、新しいチームメートに認められるには、ゴールを重ねることが一番、てっとり早い。はたして、柳沢敦は、新天地でストライカーとしての秘めた才能を開花させるのだろうか?
チャンネルはそのままで・・・。
Q 京都サンガFCの柳沢敦はリーグ戦で何ゴールを挙げると思いますか?
・20ゴール以上
・15~19ゴール
・10~24ゴール
・7~9ゴール
・3~6ゴール
・2ゴール以下投票する 途中経過を見る