■ 注目の対決はクロアチアが制する。アルゼンチンとクロアチアの試合は「GLの中でも屈指の好カード」と言えたが3対0でクロアチアが完勝。勝ち点「3」を獲得した。2連勝となったクロアチアは早々にGL突破が決定したが3位になった1998年のフランスW杯以来。意外にもかなり久しぶりの決勝T進出となった。2位通過になるとラウンド16はC組を首位で通過するだろうフランスとの対戦になる可能性が高い。是が非でも首位通過を果たしたいところである。
初戦の両チームの戦いぶりを考えると「クロアチアの勝利」というのは極めて妥当と言える。3対0というスコアもそこまでの驚きではない。攻撃陣のタレント力ではアルゼンチンも全く負けていないが組織力は段違いだった。ボランチの差も大きかった。順当な結果だと思うが試合展開は意外と一方的ではなかった。もっとクロアチアが押し込む展開になると予想していたのでやや意外な流れで試合は進んでいった。
後半途中までのクロアチアの戦いぶりはそこまで良くなかった。特に攻撃の部分では攻めあぐねたがワンプレーが流れを大きく変えた。後半8分にDFメルカドのバックパスを受けたGKカバジェロがまさかのキックミス。MFレビッチが鮮やかなボレーシュートを決めてクロアチアが大きな先制ゴールを奪った。アルゼンチンはここまで決して悪くない戦いを見せていたが痛すぎるミスから失点。緊張の糸が切れた。
■ 鮮やかだったMFレビッチのボレーシュートMFレビッチのボレーは鮮やかだった。「ボレーを打ってください。」というようなパスが来たがボレーシュートはドフリーでもきっちりと枠に飛ばすのは難しい。しかも、この場面は「考える時間」があった。考える時間があると余計なことを考えてしまうのがサッカー選手である。考えすぎると良くない結果になりがちなのもよく知られた話であるが見事なボレーシュートになった。ファインゴールだったと言える。
クロアチアにとって20年ぶりの決勝T進出に大きく前進するゴールになったがこの場面は辛いシーンになった。どちらかというとクロアチア側に肩入れをして試合を観ていたので「やっと先制ゴールが決まった。」と一瞬、喜んだが、アルゼンチンのGKカバジェロが落胆している姿を見ると激しく喜ぶことは出来なかった。36才にしてようやく巡ってきたW杯の舞台でGKカバジェロは「戦犯」になってしまった。
この試合で敗れることはアルゼンチンにとっては致命傷である。当然、生きるか死ぬかの大一番でミスを犯した選手は大バッシングされる。しかも、「イージーなパスミスから先制ゴールを奪われる。」という分かりやすい凡ミスである。その後にアルゼンチンが奮起して同点や逆転までもっていくことが出来たらショックや批判の声は和らぐがそういう展開にはならなかった。GKカバジェロにとっては大変な試合になった。
■ 取り返すのは難しいレベルのミスW杯の舞台でも大抵の場合はどちらかのチームを応援しながら試合を観ているがこういう試合を決めるような凡ミスから重要なゴールが生まれると「ゴールが決まった嬉しさや悲しさ」よりも「戦犯になってしまった選手のこれからのこと」を考えてしまってかなり複雑な気持ちになる。明らかなミスなので責められるのは仕方がないところもあるが今回のような「取り返しのつかないミス」を見るのはシンプルに辛い。
当然、難しいキックではなかった。DFメルカドのバックパスは丁寧だったのでDFメルカドに全く非はない。バックパスから失点する場合、「味方からのパスが悪くてキーパーにとって処理しにくいボールだった。」という情状酌量の余地があるケースもあるが今回の件はそうではない。普段であれば簡単に味方につなげることが出来る場面だったがちょっとした加減のミスが相手へのプレゼントパスになった。
普段のリーグ戦であってもこういうミスから失点するとキーパーにとってはショッキングである。簡単には立ち直ることが出来ないがW杯になると重圧は桁違いに大きい。かつてのMFベッカムのように若い時期の過ちやミスになると取り返すチャンスが生まれるが、先のとおり、GKカバジェロは36才。4年後を目指すのは難しい。こういうベテランの犯したチョンボが大事なゴールにつながるとなおさら辛い気持ちになる。
■ ずっと背負って生き続けないといけない。まだ試合は残っているので挽回するチャンスが用意されているかもしれないが普通に考えるとなかなか難しい。仮にアルゼンチンが決勝T進出を逃したら真っ先に今回のGKカバジェロのプレーが取り上げられるだろう。2010年の南アフリカW杯のときのDF駒野のように「PK失敗→敗退確定」でも結構な批判を浴びるが、今回のような凡ミスになるとその比ではないはず。ずっと背負って生き続けないといけない。
そのあたりのことを考えると今回の件でGKカバジェロのことを強く責めることはできる人は逆に凄いと感じる。確かに大きなミスであり、批判されても仕方がないような凡ミスであり、受け入れがたいミスであることは間違いないが、これから彼が背負っていかなければいけないものの重たさを考えると「批判の気持ち」よりも「同情的な気持ち」の方がはるかに強くなる。一緒になって批判するのはさすがに憚れる。
W杯というのは1つのプレーや1つの試合で大きな称賛を浴びることもできる夢の舞台であるが、その反対で1つのプレーや1つのミスや1つの試合でこれまで築き上げてきたものを一気に失う可能性もある。「サッカー選手というものはそういうものだ。」と割り切って考えることが出来る人もいるとは思うが相当にシビアな環境である。改めて全てのW杯戦士は大きなリスクを抱えながらプレーしていることを痛感する。
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