■ 間違いではないが悪質なミスリード(
前編)の表1と表2を見るとハリルJAPANの成績はジーコJAPANやオシムJAPANや岡田JAPANやザックJAPANと比べてそん色ないレベルである。むしろ、上回っている箇所が多い。なので、「ハリルJAPANは結果を残している。」、「歴代の監督と比べても勝率は高い。」という見方もできるが、結論から述べるとこれらの主張は「間違いではないが悪質なミスリード」と言える。嘘ではないが本当とは言い切れない。
下の表1はそれぞれの代表チームが対戦した相手のFIFAランキングを示している。2002年~2017年までは日本代表と対戦した年の年間のFIFAランキングで、2018年に入ってから対戦した相手(マリ&ウクライナ)は直近のFIFAランキングを用いているが、これを見ると明らかである。ハリルJAPANはFIFAランキングの上位との対戦がほとんどない。2位のブラジルと5位のベルギーの2チームくらいである。
3番目が27位のボスニア・ヘルツェゴビナ、4番目が35位のウクライナ、5番目が38位のオーストラリア、6番目が40位のチュニジアになるが、40位以内のチームとの対戦はこの6回のみ。ブラジルとベルギーとボスニア・ヘルツェゴビナとウクライナには敗れているのでFIFAランキングが35位以内のチームとの対戦は4戦全敗。最高でも38位のオーストラリア相手の勝利になる。強豪相手に全く勝てていないことになる。
■ ウクライナ戦の後に解任される。ハリルホジッチ監督には「格上を相手にしたときにいい勝負が出来るチームを作ってくれるのでは?」と期待したが思うような流れにはならなかった。もちろん、ブラジルやベルギーに勝利するのは相当に難しいので「ブラジルやベルギーに負けること」を問題視する人はほとんどいないと思うが、やはり、戦い方や戦いぶりは十分とは言えなかった。格上相手のときに説得力のある試合をほとんど見せられなかった。
結局、3月末のウクライナ戦がハリルJAPANにとってのラストゲームになったが内容的に相当に厳しい試合になった。1戦目のマリ戦も厳しい内容の試合だったが「何かしらのプランを持っているだろう。」、「本大会のときは秘策を用いて戦えるチームを作ってくれるだろう。」という期待感は徐々に薄れていった。ウクライナ戦の後に監督交代という決断が下されたが「そうなるのも仕方がない。」という状況だった。
(
前編)で述べた通り、公式戦での勝率ではハリルJAPANが62.5%、ジーコJAPANが61.8%、岡田JAPANが56.7%、オシムJAPANが54.5%、ザックJAPANが48.3%となるが、表1を見ると明らかであるがジーコJAPANならびにザックJAPANはFIFAランキングが上位との試合をたくさんこなしている。コンフェデなどの公式戦で世界トップクラスのチームと対戦する機会が非常に多かったことが勝率の低い理由である。
■ 格下との試合が多かったことが理由同じように志半ばで解散となったオシムJAPANもFIFAランキングが上位のチームと対戦する機会は殆どなかった。その一方で岡田JAPANは意外とFIFAランキングが上位のチームとの対戦を多くこなしていることが分かる。対戦相手のFIFAランキングの平均値を計算するとジーコJAPANが51.63、ザックJAPANが64.15、岡田JAPANが66.38、オシムJAPANが80.42、ハリルJAPANが86.71。大きな差がある。
結局のところ、ハリルJAPANの勝率が歴代の代表チームと比較して高くなっているのは「強豪チームとの対戦が少なくて格下と思われるチームとの試合が多かったこと」が最大の理由である。36.8%がFIFAランキングが100位未満のチームとの試合になる。普通に戦うことが出来ると日本が勝利する可能性がチームとの試合で数字を稼いでいることが数字上の見栄えが良くなっている一番の理由である。
なので、最初に述べたとおり、『「ハリルJAPANは結果を残している。」、「歴代の監督と比べても勝率は高い。」という見方はできるが悪質なミスリードである。』と言える。数字の用い方が極めて適切ではない。日本代表の場合、対戦相手が各々の代表チームで大きく異なるので単純に勝率や平均勝ち点や得点数や失点数で各代表チームのパフォーマンスや実績を比較するのは極めてナンセンスである。
表1. 対戦相手のFIFAランキングの分布 (※ FIFAランキングは対戦した当時の順位)
監督名 | 1-10 | 11-20 | 21-30 | 31-40 | 41-50 | 51-60 | 61-70 | 71-80 | 81-90 | 91-100 | 101-110 | 111-120 | 121-130 | 131-140 | 141-150 | 151-160 | 161-170 | 171-180 | 181-190 | 191以下 |
ジーコ | 10 | 7 | 9 | 7 | 6 | 10 | 4 | 2 | 6 | 2 | 0 | 4 | 0 | 3 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
オシム | 0 | 1 | 2 | 1 | 3 | 0 | 6 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 |
岡田 | 3 | 2 | 8 | 5 | 2 | 4 | 2 | 6 | 4 | 4 | 2 | 1 | 4 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ザック | 6 | 4 | 6 | 6 | 1 | 3 | 2 | 2 | 4 | 9 | 3 | 5 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
アギーレ | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ハリル | 2 | 0 | 1 | 3 | 2 | 4 | 3 | 6 | 2 | 1 | 1 | 1 | 6 | 0 | 4 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 |
表2. 各代表チームの成績 (親善試合も含む。)
監督名 | 対戦相手の平均のFIFAランキング | 試合数 | 平均勝ち点 | 勝率 | 勝 | 敗 | 分 | 得点 | 得点 | 失点 | 失点 |
ジーコ | 51.63 | 72 | 1.76 | 51.4% | 37 | 19 | 16 | 114 | 1.58 | 70 | 0.97 |
ザック | 64.15 | 55 | 1.89 | 56.4% | 31 | 13 | 11 | 102 | 1.85 | 62 | 1.13 |
岡田 | 66.38 | 50 | 1.82 | 52.0% | 26 | 11 | 13 | 85 | 1.70 | 43 | 0.86 |
アギーレ | 72.50 | 10 | 2.00 | 60.0% | 6 | 2 | 2 | 19 | 1.90 | 10 | 1.00 |
オシム | 80.42 | 19 | 2.00 | 57.9% | 11 | 3 | 5 | 34 | 1.79 | 14 | 0.74 |
ハリル | 86.71 | 38 | 1.89 | 55.3% | 21 | 8 | 9 | 84 | 2.21 | 34 | 0.89 |
2018/04/29 【日本代表】 「ハリルJAPANの勝率が一番高かった。」というのは悪質なミスリードである。 (前編)
2018/04/30 【日本代表】 「ハリルJAPANの勝率が一番高かった。」というのは悪質なミスリードである。 (後編)
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