■ クラブW杯を語る。元カリスマサッカーライターの金子達仁さんが、二宮清純氏のサイトでクラブW杯について語っている。なかなか、刺激的な文章になっているが、以下で考察してみたい。
http://www.ninomiyasports.com/xoops/modules/news/article.php?item_id=8223
① 試合中に歌い続けることの是非文中では、
「(クラブW杯で)僕は浦和のサポーターにがっかりしましたね」「試合の空気を読んでほしい、と強く言いたい。0対1で負けていて、残り時間はどんどん少なくなっていく。でも、0-0の時と変わらずに歌っているわけですよ。同じ応援歌がタイムアップという絶望の瞬間にもスタジアムに鳴り響いている。こんなスタジアムでは日本のクラブは勝てないな、と思いましたね。浦和のサポーターが日本で最先端を走っているのは事実ですよ。でも、欧州のスタンダードには程遠い」「誤解を恐れずにいえば、チームを応援するのではなく、応援歌を歌うのが目的になっている印象を受ける。目的と手段がすりかわるのが、この国の常ですが、それがあまりにも顕著ですよ。サッカーがポピュラーになったことで、スタンドにも日本色が良くも悪くも表れてきている。でも、サッカーは欧米で生まれたスポーツだから、それでは勝てないんですよ」「自分の愛するクラブが目の前に木っ端微塵に打ち砕かれていているのに、僕なら歌えない。言葉を失ってしまう。でも、テレビゲームのようにバーチャルに感じているから、負けても痛くもかゆくもないんですよ」レッズサポーターに限ったことではないが、「試合中に歌い続ける応援スタイル」に対する批判はこれまでも無かったわけではない。文中では、「欧州スタンダードではないから駄目。」という結論に達しているが、当然、欧州スタンダードではないから駄目とは安易には言えない。(本当にそれが「欧州スタンダード」なのかは疑問だが・・・)
この件で、
サポティスタさんは、
「日本のスタジアムの応援スタイルは南米の影響を色濃く受けているわけので、欧州のスタンダードには程遠いのは当たり前。」「浦和は、Jの初期は全く勝てないチームだったので、「自分の愛するクラブが目の前に木っ端微塵に打ち砕かれていているのに、僕なら歌えない」なんて、ナイーブなこと言っていたら応援なんかできない。」「実際、日本のサポーターの長所として、負けているときにも熱く応援してくれることをあげる外国人選手もいる。」と語っている。
これは、正しい意見だろう。劣勢の試合でも歌い続けてきたのがレッズサポーターのスタイルであるのならば、それを「欧州スタンダードではないから」と言って否定するのはいかがなものか。応援歌を歌うことでチームを後押ししてきたのは事実であって、歌声の無いスタジアムを想像すると、非常にさびしい空間になるだろう。ただ、あれだけの大人数ともなると、意思の統一を図ることも難しく、それぞれで感性がずれてしまうことは仕方ないともいえる。
結局、どの応援がベストかは、誰にも分からない。感性の問題になるだろう。ちなみに、ボクは、「名古屋グランパスのサポーター」が、試合の流れを読んだり、流れを作ることが一番うまいかなと思う。(← ボクの感性に一番、あっているかなと思う。)
② 善戦だったか?否か?僕も悲しかったですよ。だって、実際にピッチに立った選手が「0対10で負けたに等しい」と言っているわけですよ。「この1点は10点だ」と認めているわけです。善戦だと言っているのは日本の一部のメディアだけですよ。
こういう報道を見ていると、日本のクラブに対して愛情がないなと思いますよ。弱いチームが真に強くなるためには、血の涙を流すしかないわけでしょう。浦和の選手たちはミランと戦ってみて、本当に衝撃を受けたと思うんですよ。今まで味わったことのない異次元の強さを体感したはずなんです。
でも、メディアは何の衝撃も受けていない。逆に、よく戦ったと称えている。そこで、メディアも選手も本当に衝撃を受けた場合と比べて、当然、反発力の差は出てきますよね。善戦と捉えていては、何も成長しない。メディアが一生懸命に痛みをぼやかそう、ぼやかそうとしているんですよ。今回、浦和がミラン相手にやったことも同じことだと思うんです。でも、ミランは浦和をけなすことなく、逆に称えた。それが悔しくてね。相手の腹を立たせるところまで達してなかったんですよ。ミランは、浦和がもっと弱いものだと思っていたんでしょう。あの程度のパフォーマンスでほめられてしまうのかと……。また、そのリップサービスを鵜呑みにする日本のメディアが腹立たしい。ここは、一理ある。同じ「0対1」でも、あと一歩で勝てたかもしれないという試合と、限りなく勝利が遠い「0対1」もある。この試合は、どちらかというと後者の方だっただろう。
金子氏が言いたいことが分からないわけではないが、この部分の氏のコメントがどこか空虚でバーチャルな感じを受けるのも事実である。それは、おそらく、金子氏がレッズサポーター(Jリーグサポーター)ではないにもかかわらず、レッズサポーター(Jリーグサポーター)の立場を代弁しているかのように語っているからであろう。
「ミランに褒められたことが悔しい。」という下りがあるが、同じことをレッズサポーターが語ったとしたら説得力が生まれるかもしれないが、彼のバックボーンを考えると、残念ながら偽の感情のように思えてしまう。
金子氏が日本サッカー界に与えた影響は、非常に大きいものだと思う。「28年目のハーフタイム」は名作中の名作であり、彼にあこがれた人は少なくない。ただ、いつの頃からか、文面からハートが感じられなくなってしまった。
③ 「負けても痛くもかゆくもないんですよ。」金子: でも、テレビゲームのようにバーチャルに感じているから、負けても痛くもかゆくもないんですよ。二宮: 現実感がないのかな。前身のトヨタカップの頃からそうだけど、日本のファンは、ミランならミランの、ボカならボカのレプリカユニフォームを着て試合を見に行くでしょう。きっと一度限りであっても、所属意識、帰属意識のようなものを感じたいんだろうね。海外に行ってまで、わざわざ、特定のクラブのユニフォームを着ている人がいる。欧州の人間が大阪に来たからと言ってガンバ大阪のユニフォームを着たりはしないでしょう。金子: ファッションなんですよ。血じゃない。簡単で、お手軽にすませている。そういう意味では、非常に悲しいですよ。この発言を本当にしているとしたら、スポーツジャーナリストとしては失格である。サポーターを全否定するかのような発言である。
サポーターが、どういう思いでスタジアムに足を運んでいるのか、考えたことがあるのだろうか?金子氏は「仕事だから仕方なく・・・。」という感じでスタジアムに駆けつけたのかもしれないが、ほとんど全てのサポーターは、それ以外の何かを、ある程度は犠牲にしてまで、スタジアムに通って、チームをサポートしているのである。
レッズのサポーターに限らず、「チームが負けても、痛くもかゆくもない。」という人は、皆無だろう。クラブW杯というビッグ大会に限らず、通常のリーグ戦でも同じである。むしろ、「愛するチームが試合に負けたとき、痛くもかゆくも感じなかったとしたら、どれほど楽だろうか。こんなに苦しい思いをしなくても良かったのに・・・。」と思うものである。
金子氏のことは、「28年目のハーフタイム」のころは好きだっただけに悔しい。
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金子: ファッションなんですよ。血じゃない。簡単で、お手軽にすませている。そういう意味では、非常に悲しいですよ。
これはご自分に鞭打つ発言ではないのかな?
昔も今も欧州サッカーは我々の憧れでした。
インターネット環境が整い、衛星中継がごく普通になった今でもそれは変わらずに、です。
書店に立ち寄り、スポーツ氏の棚に目をやれば、欧州サッカー専門誌はあいかわらず置かれており、私は必ず目を通すのが日課となっています。
Jや日本代表人気が爆発し、サッカー関連雑誌が創刊、廃刊をくり返し、私の本棚にはそれらの変遷が今もいくつかの残骸として奥にしまいこまれています。
折にふれて読み返すと、黎明期のサッカーライターたちが署名原稿を寄稿しており懐かしい気分になりますが、彼らサッカーライターの源泉はいわずもがな古くは三菱ダイヤモンドサッカーであり、ワールドカップであり、トヨタカップであることはいうまでもありません。
金子氏にいたっては高校サッカーがイベントであった程度でしか、日本サッカーJSLについて関心を示していない。
これは驚くべきことでも何でもありません。
日本リーグ時代の日本サッカーを丹念に見て回った書き手など賀川浩さん、荒井義行さん、後藤明生さんなどを除いてほんのわずかでしょう。
ほとんどは欧州サッカーに目を向けていたのが日本の現実であった時代に、Jリーグが始まり上から下へ押し着せたサッカー文化はサポーターという言葉を定着させましたが、そこからあぶれたスネたサッカーオタクたちが欧州サッカーを金科玉条のように日本と対置させて批判するのは当然といえば当然のことです。
日本のサッカーを省みもせず、Jや代表だけを遡上にあげても欧州サッカーへの憧憬を素直に表す日本人サポーターの批判にはなりえません。
金子氏もまたそのような環境にどっぷりと浸かってきた一人なんですから。
二宮氏においては遅れてきた評論家であり、彼もまた日本リーグ時代の日本サッカーの知識は皆無といっていい。
毎日新聞の荒井さんはいまだに嘱託としてネットで記事を配信していますが大学講師だった後藤さんはプロのサッカーライターになったのはほんの数年前でした。
ライターで食えるはずがないと躊躇していたけれどどうやらなんとかやっていけそうな時代が来たと腹をくくったんでしょうね(笑)。
金子氏を始めとするJ、日本代表人気で便乗してきたライターたちは私に言わせれば皆スネ者たちです。
欧州サッカーを盾に置きつつ、日本サッカーの成り上がりを揶揄し利いた風なことをいうブランド信者ですよ(笑)。
そんな人たちが欧州にあこがれる日本人を批判できるはずがありません。
それこそ天に唾する行為ですよ。
欧州サッカー至上主義玄人(笑)の嫌~なパターンっすね
もう少し素人にも納得できるような分析と理屈を語って欲しいものですね
前日本代表監督みたいにレベルが高すぎます
はじめましてふきやといいます。
私も最近の金子氏の発言には怒りさえ覚えます。
ワールドサッカープラスの先の中国戦のコラムは、「もっと攻撃の意思見せろ安田、内田」と金子氏らしいコラムになっていました。
少なくともあの試合で中国のラフプレー、そしてそれを許した審判を批判できないことは
彼は絶対的なサッカー観を持っていないことの証明でもあると思います。
前述のコラムで彼が中国のマスコミの報道を書いていましたが、あの中国マスコミの方が彼の主張よりはるかにまともだということがわかりました。
サッカーの試合において全ていいプレーであるはずがなく、しかも結果論ならいくらでも批判できます。
批判は楽だし、一方的に悪口をいうだけですから自分が偉くなったように感じるから快感でやめられなくなります。
しかし批判はしても改善案をいうことはありません。
関係のない対象を持ち出して相対的に比較することもよくあることで、批判が返ってこないように抽象的・情緒的になりがちです。
日本は悪でなければ彼の商売は成り立たないので、対する中国や韓国を賛美・擁護することになり、日本を批判するサヨクマスコミの様を呈しています。
>>> おけんさん
どうも、こんばんは。いつの頃からか、勘違いをしてしまったようですね。彼の文章は、全ての結論が、「だから、日本(日本サッカー)は駄目なんだ。」になっているので、イラッと来る気持ちは分かります。
>>> ワッキーリグさん
どうも、こんばんは。今年もいろいろと期待しています。確かに10年前は、誰も欧州サッカーのことを正確には知らなかったので、だまされやすい環境にあったことは事実ですね。
ご無沙汰しております。本年も宜しくお願いします。金子氏が脚光を浴びた頃よりサッカーファンの知識やポリシーが向上したのに対し金子氏のそれはそこまで伸びていない、と感じました。持論ではなく視点で語ってほしい。
ちょっと天狗になってますね。
にわかファンの僕でもその文章読んだらイラッときました。自分よりも、本当に好きで、時間をおしてまで駆け付けてくれるファンにスゲー失礼な文章だと思う。何様のつもり?彼の本持ってるけど、捨てようかな(笑)二宮清純も好きやったのに…
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