■ マリノスは本当に“やばい”のか?名古屋が陥落したことでJリーグが発足した1993年からずっと1部リーグで戦ってきたチームは鹿島と横浜FM(横浜M)の2チームだけとなった。「オリジナル10」の東京V(V川崎)と千葉(市原)はJ2が指定席になってきており、浦和やG大阪や清水も1度だけ降格を経験。広島は2度のJ2降格を経験しているが、浦和やG大阪や広島は近年はタイトル争いの常連。降格経験は決して無駄ではなかったと言える。
「名門の鹿島と横浜FMがずっとJ1に居続けることが出来るのか?」はこれからのJリーグの注目ポイントとなるが、横浜FMは雲行きが怪しくなっている。カナロコを運営する神奈川新聞は『大本営』と言われるほど横浜FMとは極めて近しいメディアであるが、先日、アップされた「マリノスは本当に“やばい”のかー サポーターの憂鬱と、希望」という記事の(上)と(下)はサッカーファンの間で大きな話題になった。
マリノスは本当に“やばい”のかー サポーターの憂鬱と、希望(上) マリノスは本当に“やばい”のかー サポーターの憂鬱と、希望(下) ■ 2014年7月にCFGとパートナーシップを締結 日本のメディア、特にスポーツを扱うメディアはセンセーショナルな記事を書きたがる傾向にあるので、カナロコの記事を全面的に信じることは出来ない。誇張された箇所もいくつかあるのでは?と思われるが、大雑把に「やばいのか?やばくないのか?」で言うと明らかに前者だろう。この状況をやばくないと感じる人は誰もいないだろうし、この状況でやばくないと感じられるとしたらむしろその状況がやばいと言える。
野球でもサッカーでもフロントは批判されがちであるが、個人的にはフロントというのはそのクラブのレベルや状況を正確に映し出す鏡のようなものだと思う。どこかのクラブのサポーターが「ウチのクラブのフロントがダメダメだ。」と語っているのを聞くと「そのクラブは(フロントだけではなくて)選手やサポーターもダメダメなのだな。」と感じる。何事もそれ相応。フロントだけが落第生であることはほぼ無い。
基本的にはそういう考え方で間違いはないと思うが、横浜FMの場合はシティフットボールグループ(CFG)が絡んでいるのでJリーグの中ではかなり特殊である。『ダメなのはフロントだけではない。』とばっさり切り捨てるのは気が引ける。ちなみに横浜FMとCFGがグローバルパートナーシップを締結したのは2014年7月のこと。5年契約と伝えられているのでちょうど契約期間の半分が過ぎようとしている段階である。
■ 鹿島を退団したときのDF岩政のケースCFGを含めた上層部に対して選手やサポーターがどのように感じているのか?についてはリンク先の記事に詳しく書かれているが、「ベテランの斬り方」というのがキーワードになる。監督のスタイルがどうのこうのという話や監督続投の判断がどうのこうのという話については思うような結果を出せなかったシーズンのオフ期間であれば大半のクラブで噴出する問題であり、賛否両論あるのは当然の話である。
記事中には『ベテランを引退させるのはフロントではなく若手の台頭』、『どうせ出されるのなら(若手に)俺を追い出してほしかった』、『ベテランは誰でも若手に追い出されるのが本望だと思う。』という言葉が出てくる。これに関しては半分は同意できるが、もう半分は同意できない。両者をフェアに勝負させて「明らかに実力で若手が追い抜いた。」となるのが理想ではあるが現実的にはかなり難しい。
『功労者との別れ方が上手だ。』と言われる鹿島を例に出すと2013年の途中にDF岩政がレギュラーの座を台頭してきたDF山村和に奪われたことがあった。その年のオフにDF岩政はタイリーグのテロ・サーサナに移籍することになったが、「誰がどう考えてもDF山村和の上だ。」と言えるほどでは全くなかった。DF岩政自身もまだまだ全然負けていないと感じていたと思うが、双方が合意した上で円満退団となった。
■ フェアな競争をした上での世代交代はほぼ不可能このときにクラブ側からリリースされたDF岩政のコメントが印象的なので改めて書き出すと
『
新しい時代へ進もうとするチームでの自分の最後の仕事として鹿島を去ることを決断しました。僕は、サッカーという世界はリレーだと考えています。自分は大先輩から受け取ったバトンを次の世代に渡す任務をしっかり果たせたと感じていますし、共に過ごした後輩たちには新しい常勝鹿島の黄金時代を築いてくれることを期待しています。』となる。鹿島や横浜FMのみならず、ほとんど全てのJリーグのクラブは経営的な余裕がほとんどないので高年俸の功労者(=ベテラン)とその選手を蹴落とすことが出来るほどの実力を持った有望な若手の両方を一定以上の期間、抱え続けるのは難しい。ベテランと若手にフェアな競争をさせてその上でスムーズな世代交代が行われるのがベストなやり方であることは間違いないが、どちらかというと夢物語に近い。
どのクラブも人件費には上限がある。「○○にはこのクラブで引退して欲しい。」と多くのサポーターが望むのであればフロントはそういう方向で話を進めるべきだと思うがスムーズに世代交代を行うのは難しくなって「新戦力の補強」という部分にしわ寄せが来る可能性が高いことをサポーターも理解しなければならないだろう。ユースからから超・逸材と言われる選手が昇格するタイミングと重ならない限りは難しい。
今、横浜FMのフロントは大きな批判を浴びているが、結局、DF岩政が鹿島を円満退団できたのは選手とフロントの間に確固たる信頼関係が築かれていたからである。クラブの未来のことを考えるとある部分では選手側も譲歩しなければいけないが、関係がこじれてしまっている現状の横浜FMでは難しい。今の横浜FMのフロントは「何をしても批判をされてしまう。」という状態。明るい未来を想像するのは難しい。
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