■ J2の第32節J2の第32節。12勝11敗8分けで7位の横浜FCはホームのニッパツ三ツ沢球技場で京都サンガと対戦した。京都は13勝6敗12分けで6位に位置する。6位の京都と7位の横浜FCの差は「7」。横浜FCが勝利するとその差が「4」に縮まって射程圏内となる。負けると「残り10試合で10差」となるので逆転するのは相当に難しい差に広がるので2012年以来で2度目となるプレーオフ出場を目指す横浜FCにとっては大一番となる。
ホームの横浜FCは「4-2-2-2」。GK南。DF市村、藤井悠、西河、永田拓。MF佐藤謙、中里、野崎陽、野村。FW津田、イバ。攻撃の中心となるFWイバはここまで10ゴールを挙げている。CBは187センチのDF大崎玲が出場停止で昨オフにJ1の大宮から加入したDF藤井悠がCBでスタメン起用された。今シーズンは右SBや右SHでの起用がほとんどだったが本職はCBとなる。49歳のFW三浦知はベンチ外となった。
対するアウェイの京都は「4-2-2-2」。GK菅野。DF内田恭、菅沼、染谷、本多。MFアンドレイ、佐藤健、堀米勇、山瀬功。FW沼、エスクデロ。最近はフォワードの人選で苦労しているがユース出身で1年目のFW沼をスタメンに抜擢した。1997年生まれなので東京世代となる。FWダニエル・ロビーニョとFW有田はベンチスタート。今夏に加入した195センチの長身ストライカーのFWキロスもベンチスタートになった。
■ 2対0で勝利した横浜FC俗にいう「シックス・ポイント・マッチ」となった6位の京都と7位の横浜FCの直接対決はホームの横浜FCペースで進んでいく。京都はつなぎのミスが続出してリズムをつかめない。すると前半13分に横浜FCが先制に成功する。ゴール右寄りの絶好の位置でFKを獲得するとFWイバが得意の左足で鮮やかに決めて先制に成功する。古巣対決となるGK菅野は反応できなかった。前半は1対0と横浜FCがリードして折り返す。
迎えた後半13分にエリア内でボールを受けたFWイバが上手く足先でボールをコントロールして相手選手をかわしてから左足のアウトサイドで決めて貴重な追加点を奪った。京都は長身のFWキロスを投入。すると後半27分に「キロス対策」で投入されたばかりの横浜FCのDF楠元がエリア内でFWキロスのユニフォームを引っ張ってPKを献上。FWキロスが自らキッカーを務めたがベテランのGK南が好セーブで防いだ。
さらに後半41分には途中出場のFW有田がエリア内で倒されてPKを獲得。リプレーを見る限りでは自分でバランスを崩しただけなので「完全な誤審」と言えたが、いずれにしても京都はこの試合の中で2本目のPKを獲得する。今度はFWエスクデロがキッカーを務めたがまたしてもGK南がセーブしてゴールを許さない。結局、GK南がPKを2本ストップする大活躍を見せた横浜FCが2対0で勝利をおさめた。
■ 高さと強さと上手さを併せ持ったFWイバ横浜FCにとっては「今シーズンの中で最も大事な試合」と言えたが最高の試合になった。プレーオフ圏内の6位に位置する京都に勝利したことでその差は「4」に縮まった。残りは10試合なので十分に逆転可能なところまで迫った。京都はこれで3試合勝ちなしとなったが、京都が足踏みをしたことで横浜FCだけでなく町田や千葉や山口などもプレーオフ出場の希望が持てるところまで差を詰めてきた。
攻撃陣のヒーローはやはり2ゴールを挙げたFWイバとなる。1点目は直接FKで、2点目はエリア内で強さと上手さを見せつけた難易度の高いシュートだった。190センチと高さがあって体つきもばっちりしているので「パワー系のストライカー」と思われがちであるが、フットサルの経験があるそうで足元の技術の高さにも定評がある。当然、高さと強さも大きな武器になっているが、同じくらい上手さも武器になっている。
身体的なパワーはJ2の中では屈指なので並のCBでは止めるのは無理である。横浜FCは夏場に札幌やC大阪や岡山や千葉などを撃破する快進撃を見せたがFWイバがスタメンに定着するようになってからチームとして結果が出るようになってきた。2列目でプレーするMF野崎陽やMF野村などもいい状態をキープしており、FWイバを中心とした攻撃陣は破壊力があって面白いユニットになりつつある。
■ かつてのチームメイトの前で驚異的なプレーを見せたGK南雄太守備陣のヒーローはGK南である。2対0とリードを奪っていたので幾分かは精神的な余裕があったと思うが、2つのPKをセーブした。「サッカーの試合で1人のキーパーが1試合の中で2つもPKをセーブする。」というのは相当に珍しい。特に1本目のPKは投入されたばかりのDF楠元の不用意なプレーからPKを献上しているので決まっていると流れや雰囲気が悪くなった。24歳のDF楠元を救うPKセーブとなった。
この日のGK南の活躍は驚異的だったが、採点すると「8.5」あるいは「9.0」くらいになるのではないか。PKのシーン以外ではそこまでGK南の仕事の量が多くなかったことを考えると「8.5」あたりが妥当かもしれない。採点で「9.0」となることは稀で、「8.5」でも相当に珍しいが、『2つのPKをストップした上での完封勝利で、しかも、対戦相手はプレーオフ争いのライバル』となると「8.5」くらいにはなるだろう。
印象的な試合になったが改めて言うまでもなく対戦相手の京都のGK菅野とは様々な因縁がある。読売(東京V)の下部組織出身という点も共通点となるが、2008年と2009年は柏でチームメイトだった。絶対的な守護神として君臨しているGK南がいる中、横浜FCで大きな存在感を発揮して評価を高めたGK菅野は柏に移籍してきたが大方の予想を裏切って柏でレギュラーポジションを確保したのはGK菅野だった。
結局、GK南は2010年にJ2のロアッソ熊本に移籍。J2に昇格して3年目となる若いチームを最後尾から支えた。熊本では4シーズンプレーして熊本の躍進に大きく貢献。クラブの礎を築いた。2014年に横浜FCに移籍して3年目となるが柏でポジション争いをして敗れた相手である後輩のGK菅野がゴールを守る京都を相手に2つのPKストップ。今年の9月30日で37歳となる黄金世代のキーパーが光り輝いた。
試合終了後に両チームの選手は整列をしてお互いの健闘をたたえて全員と握手をかわしたが、GK南とGK菅野がすれ違ったときの様子はスカパーの中継の中で映された。J1昇格を目指す京都にとっては痛い敗戦なので悔しい気持ちはあったと思うがGK菅野の表情は負けたチームの選手とは思えないほど晴れやかだった。2人のキーパーを巡るストーリーは濃密で何とも言えないドラマチックな試合になった。
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