■ MF本山(北九州)の時代に高校3冠を達成東福岡高は高校サッカーの名門として知られている。最もインパクトを残したのは超・高校級のドリブラーだったMF本山(北九州)が中心だった時代である。このときに高校3冠を達成しており、翌年もMF宮原(元名古屋)、DF金古(元鹿島)などが中心となって冬の高校選手権を制覇している。高校時代はほぼ無名の選手だったので「主要なOB」として扱われないことが多いがDF長友(インテル)も同校出身となる。
一時期と比べるとJリーガーになる選手は少なくなってきたがそれでもMF増山(神戸)やMF中島賢(横浜FM)やDF坂井(長崎)やDF篠原(岡山)などを輩出しており、今年度のチームも左SBのDF小田はJ1の鹿島入りが内定しており、アタッカーのMF高江はJ1のG大阪入りが内定している。鹿島やG大阪といった日本屈指のビッグクラブに目を付けられて入団が内定した選手が同学年に2人いるというのはかなりの快挙である。
U-16アジア選手権を戦っている「00ジャパン」に選ばれたU-16日本代表の23名のメンバーの中で高体連のチームに所属している選手がゼロだったことからも分かるとおり、昨今は優秀な選手の大半が「Jリーグのクラブの下部組織」を選択するようになっており、格差は広がってきているが、東福岡高に関しては伝統の赤いユニフォームに憧れる中学生は多い。サッカー部の部員数は280人とも報じられている。
■ 多くの選手が自前のU-15出身となるセレッソ大阪U-18昨年度の冬の高校選手権では17年ぶりに日本一に輝いて大きな注目を浴びたので同校に対するブランドイメージの向上は確実。来年以降、入部を希望する新入生の数が激増することも十分に考えられるが、先日、スカパーでTV中継されたプレミアリーグの第14節のC大阪U-18 vs 東福岡高の試合を観ていたときに気になったのは東福岡高の選手の「前所属クラブ」である。当然のことながら様々だった。
試しに2016年度のプレミアリーグのメンバーに登録されている選手の前所属チームを調べてみたが、最初の表1はC大阪U-18である。30名のうち、18名がC大阪U-15 or C大阪 西U-15となる。C大阪 和歌山U-15は意外と少なくて1人だけ。DF森下怜やMF斧澤やGK井上といった年代別代表に召集される選手は他府県からスカウトしていると考えられるが、自前のU-15チームからU-18チームに昇格した選手が多い。
表1. セレッソ大阪U-18の選手の前所属チームについて (2016年度)
セレッソ大阪U-18のプレミアリーグの登録メンバーの前所属チームについて (2016年度) |
ポジション | 氏名 | 身長/体重 | 学年 | 前所属チーム |
GK | 三善 真司 | 189/87 | 3年 | 津ラピドFC (三重県) |
DF | 森下 怜哉 | 180/68 | 3年 | 長野FC (長野県) |
MF | 斧澤 隼輝 | 166/62 | 3年 | 長崎南山中学校 (長崎県) |
GK | 井上 聖也 | 182/74 | 3年 | 黒潮町立大方中学校 (高知県) |
FW | 湊 翔龍 | 176/74 | 3年 | 京都サンガF.C. U-15 |
FW | 山田 寛人 | 180/69 | 2年 | ホペイロ刈谷 (愛知県) |
GK | 光藤 諒也 | 182/73 | 2年 | セレッソ大阪U-15 |
GK | 林 祥太郎 | 180/68 | 1年 | セレッソ大阪U-15 |
DF | 舩木 翔 | 176/61 | 3年 | セレッソ大阪U-15 |
DF | 上田 恭平 | 170/58 | 2年 | セレッソ大阪U-15 |
DF | 齋藤 遼 | 175/68 | 2年 | セレッソ大阪U-15 |
DF | 小林 洵 | 187/73 | 2年 | セレッソ大阪U-15 |
DF | 瀬古 歩夢 | 183/72 | 1年 | セレッソ大阪U-15 |
MF | 印藤 虎太郎 | 173/62 | 3年 | セレッソ大阪U-15 |
MF | 有水 亮 | 171/68 | 2年 | セレッソ大阪U-15 |
MF | 喜田 陽 | 170/55 | 1年 | セレッソ大阪U-15 |
MF | 鈴木 冬一 | 162/58 | 1年 | セレッソ大阪U-15 |
MF | 谷本 駿介 | 170/64 | 1年 | セレッソ大阪U-15 |
FW | 根木 洸希 | 175/64 | 1年 | セレッソ大阪U-15 |
MF | 下川 大輝 | 173/66 | 2年 | セレッソ大阪 和歌山U-15 |
DF | 梅木 絢都 | 178/66 | 2年 | セレッソ大阪 西U-15 |
MF | 上畑 佑平士 | 176/62 | 3年 | セレッソ大阪 西U-15 |
MF | 坪井 一真 | 168/62 | 3年 | セレッソ大阪 西U-15 |
MF | 中島 元彦 | 169/63 | 2年 | セレッソ大阪 西U-15 |
FW | 松下 豪 | 176/64 | 3年 | セレッソ大阪 西U-15 |
DF | 手島 瑠佳 | 179/65 | 3年 | クマガヤサッカースポーツクラブ (埼玉県) |
MF | 荒木 秀太 | 170/64 | 2年 | ガンバ大阪ジュニアユース |
MF | 松岡 大智 | 171/60 | 3年 | カターレ富山U-15 |
FW | 船津 直輝 | 173/62 | 2年 | FCトッカーノU-15 (東京都) |
DF | 中土井 稔 | 177/62 | 3年 | F.C.コーマラント (香川県) |
■ 30人の中で5人がサガン鳥栖の下部組織出身一方、東福岡高の選手の「前所属チーム」をまとめると表2のようになる。当然、C大阪U-18のように中学生の年代から下部組織に所属していてそのままU-18に昇格するというわけにはいかないのでバラツキが出るのは当然と言えるが、クラブの名前を見る限りでは半数以上は県外から東福岡高に入学してきた生徒であり、佐賀県や大分県や熊本県や長崎県など九州全域から選手が集まってきているようだ。
中学年代はJリーグの下部組織でプレーした選手が多いのも興味深いところである。単純に分類してみるとサガン鳥栖のU-15出身の選手が5人で最多となる。東福岡高を選んだ理由が鳥栖のU-18に昇格できなかったからなのか、U-18への昇格の話を断って東福岡高を選択したのかは定かではないが、後者の可能性の方が高そうだ。2年生のときに冬の高校選手権で活躍したMF藤川も鳥栖U-15出身となる。
その他ではアビスパ福岡U-15も2名で、J1のG大阪入りが内定したMF高江はロアッソ熊本のジュニアユース出身となる。さらには現在はレノファ山口の下部組織として活動しているレオーネ山口も2人の選手が東福岡高を選択している。大分トリニータU-15の選手もいるので前所属クラブの名前を見るだけで近隣の県から優秀な選手が東福岡高に憧れてはるばるやってきていることは容易に想像することができる。
逆の視点で考えると「九州のJリーグのクラブは東福岡高に優秀な選手を持っていかれるケースが多い。」と言える。もちろん、選手に合ったチームを選ぶべきなので「中学年代はJリーグの下部組織でプレーして高校年代は高体連のチームでプレーする。」というのは全く問題ない話であるが、近場に「西の横綱」と言われる東福岡高のような名門校がある地域のJリーグのクラブは大変な思いをしているだろう。
表2. 東福岡高の選手の前所属チームについて (2016年度)
東福岡高のプレミアリーグの登録メンバーの前所属チームについて (2016年度) |
ポジション | 氏名 | 身長/体重 | 学年 | 前所属チーム |
GK | 中村 駿介 | 183/75 | 3年 | CAグランロッサ (福岡県) |
MF | 野寄 和哉 | 163/59 | 1年 | CAグランロッサ (福岡県) |
MF | 田尻 京太郎 | 173/60 | 3年 | FC. CONQUESTA(コンキスタ) (東京都) |
MF | 崎元 巧己 | 179/72 | 2年 | FC・LAPASION U‐15 (福岡県) |
GK | 松田 亮 | 186/77 | 1年 | FC佐伯 S-play・MINAMI (大分県) |
DF | 小野 楓雅 | 185/76 | 3年 | FC直方 (福岡県) |
DF | 小田 健聖 | 172/67 | 3年 | UKI-C.FC (熊本県) |
DF | 砂原 一生 | 175/67 | 3年 | UKI-C.FC (熊本県) |
MF | 小材 浩彰 | 163/55 | 3年 | UKI-C.FC (熊本県) |
MF | 篠田 憲政 | 178/73 | 1年 | アビスパ福岡U-15 |
MF | 知花 康士朗 | 168/63 | 1年 | アビスパ福岡U-15 |
MF | 藤川 虎太朗 | 173/60 | 3年 | サガン鳥栖U-15 |
DF | 小田 逸稀 | 173/68 | 3年 | サガン鳥栖U-15唐津 |
MF | 青木 真生都 | 165/60 | 2年 | サガン鳥栖U-15唐津 |
MF | 濱田 照平 | 178/68 | 3年 | サガン鳥栖U-15唐津 |
MF | 井本 寛次 | 167/64 | 1年 | サガン鳥栖U-15唐津 |
DF | 江村 凛太郎 | 170/63 | 2年 | サガン鳥栖U-18 |
DF | 阿部 海大 | 182/71 | 2年 | スマイス・セレソン (第3種) (大分県) |
DF | 斉藤 諒 | 176/71 | 2年 | センアーノ神戸ジュニアユース (兵庫県) |
FW | 藤井 一輝 | 178/75 | 3年 | ルーヴェン福岡 FC (福岡県) |
DF | 児玉 慎太郎 | 178/65 | 3年 | レオーネ山口U-15 |
DF | 末永 将也 | 174/67 | 3年 | レオーネ山口U-15 |
MF | 髙江 麗央 | 173/62 | 3年 | ロアッソ熊本ジュニアユース |
MF | 福田 湧矢 | 176/70 | 2年 | 小倉南FCジュニアユース (福岡県) |
FW | 大森 真吾 | 180/70 | 1年 | 小倉南FCジュニアユース (福岡県) |
MF | 堺 悠人 | 180/75 | 1年 | 太陽スポーツクラブ熊本玉名U-15 (熊本県) |
DF | 中村 駿 | 178/73 | 2年 | 大分トリニータU-15 |
GK | 前島 正弥 | 184/79 | 3年 | 長崎レインボーSC (長崎県) |
MF | 鍬先 祐弥 | 176/68 | 3年 | 長崎南山中学校 (長崎県) |
FW | 佐藤 凌我 | 179/69 | 3年 | 福岡市立次郎丸中学校 (福岡県) |
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