■ J1屈指のトライアングルネルシーニョ監督が就任して2年目となるヴィッセル神戸は2ndステージの12節が終了した時点で7勝3敗2分けで5位。首位の浦和との差は「5」なのでステージ制覇を狙える位置に付けている。神戸がJ1の優勝争いに絡んでくることは珍しいのでサポーターの期待は大きく膨らんでいると思うが原動力になっているのはFWレアンドロとFWペドロ・ジュニオールとMF渡邉千という超・強力なトライアングルである。
FWレアンドロはここまで16ゴールを挙げている。これはJ1の得点ランキングでFWピーター・ウタカ(広島)に次いで2番目となる。首位との差は「2」なので十分に得点王が狙える位置である。FWペドロ・ジュニオールとMF渡邉千の2人はともに10ゴールを挙げている。3人の選手が二桁ゴールを記録しているのは他には浦和のみ。点取り屋が3人もいるのは今シーズンの神戸の大きな強みになっている。
「4-2-2-2」が基本システムとなるがエースナンバーの「13」を背負うMF小川慶などが怪我で離脱していることもあって右SHが固定しきれていない。このあたりのもどかしさはあるが最近はMF三原雅が右SHで起用されるケースが増えており、献身的なプレーのできるMF三原雅が前述の3人の負担を軽減する働きを見せている。右SHが泣き所であることは確かであるが、最近はいいバランスが保たれている。
■ 3人だけで80%の得点を記録している神戸のトリオJ1の18クラブの「チーム内での得点数の上位3人の合計のゴール数ならびに比率」を出してみると表1のようになる。3人の得点数を合計した数値では川崎Fのトリオ(=大久保嘉人・小林悠・中村憲剛)が最多となる。3人だけで37得点を奪っているが、神戸のトリオ(=レアンドロ・PJ・渡邉千真)も36得点で2番目となる。そして、総得点に占めるトリオのゴール数に着目すると80.0%でJ1の18クラブの中で最高となる。
「様々な選手がゴールを決めることが出来る。」というのは理想の1つとして挙げられるので『率が高いから素晴らしい。』、『率が低いからダメ。』というわけではないが、全体の80.0%を3人だけで記録しているというのは脅威としか言いようがない。当然のことながら、相手チームはこの3人を徹底して潰そうとするがターゲットが3人になるとどうしても完璧に封じるのは難しくなる。驚異のトライアングルと言える。
その他では鳥栖(=豊田陽平・鎌田大地・金民友)も74.1%と高確率になっている。エースのFW豊田はチーム全体の40.1%を1人で記録している。その他では磐田や大宮や名古屋あたりも数値が高くなっている。トリオの得点数がリーグ最多となる川崎Fは61.7%で全体の7番目。MFエウシーニョやMF三好などもシュート技術の高い選手なので3人だけに得点が集中しているわけではない。集中率として理想的と言える。
表1. J1の18クラブのトリオでの合計ゴール数のランキング
【J1】 チーム内の得点数の上位3名の合計得点数の比率 |
順位 | チーム | チームの総得点 | 3人の合計得点 | (%) | 1人目 | 2人目 | 3人目 |
名前 | 得点数 | 名前 | 得点数 | 名前 | 得点数 |
1 | 神戸 | 45 | 36 | 80.0% | レアンドロ | 16 | P・J | 10 | 渡邉千真 | 10 |
2 | 鳥栖 | 27 | 20 | 74.1% | 豊田陽平 | 11 | 鎌田大地 | 5 | 金民友 | 4 |
3 | 磐田 | 34 | 23 | 67.6% | ジェイ | 12 | アダイウトン | 6 | 小林祐希 | 5 |
4 | 大宮 | 32 | 20 | 62.5% | 家長昭博 | 9 | 江坂任 | 7 | ムルジャ | 4 |
5 | 名古屋 | 29 | 18 | 62.1% | シモビッチ | 9 | 川又堅碁 | 5 | 永井謙佑 | 4 |
6 | 浦和 | 50 | 31 | 62.0% | 興梠慎三 | 11 | 武藤雄樹 | 10 | 李忠成 | 10 |
7 | 川崎F | 60 | 37 | 61.7% | 大久保嘉人 | 15 | 小林悠 | 14 | 中村憲剛 | 8 |
8 | 福岡 | 23 | 14 | 60.9% | ウェリントン | 5 | 城後寿 | 5 | 金森健志 | 4 |
9 | 広島 | 53 | 31 | 58.5% | P・ウタカ | 18 | 柴﨑晃誠 | 8 | 塩谷司 | 5 |
10 | 甲府 | 30 | 17 | 56.7% | クリス | 7 | 稲垣祥 | 5 | 田中佑昌 | 5 |
11 | 新潟 | 29 | 16 | 55.2% | R・シルバ | 9 | L・シルバ | 4 | 田中達也 | 3 |
12 | 柏 | 44 | 23 | 52.3% | D・オリヴェイラ | 11 | クリス | 7 | 伊東純也 | 5 |
13 | 鹿島 | 49 | 25 | 51.0% | 金崎夢生 | 9 | 鈴木優磨 | 8 | 土居聖真 | 8 |
14 | 仙台 | 32 | 16 | 50.0% | ウイルソン | 6 | R・ロペス | 6 | 2人 | 4 |
15 | G大阪 | 42 | 20 | 47.6% | 長沢駿 | 8 | アデミウソン | 7 | 宇佐美貴史 | 5 |
16 | FC東京 | 31 | 13 | 41.9% | 前田遼一 | 5 | 平山相太 | 4 | 2人 | 4 |
17 | 湘南 | 24 | 10 | 41.7% | 端戸仁 | 4 | 菊池大介 | 3 | 高山薫 | 3 |
18 | 横浜FM | 42 | 15 | 35.7% | 齋藤学 | 6 | 中町公祐 | 5 | 3人 | 4 |
■ 歴代でも3番目となる今シーズンのヴィッセル神戸今シーズンの神戸の80.0%という数字が相当に高いことは誰にでも分かるが、試しにJリーグの歴代のトリオでのゴール率について調べてみた。数値が高いチームから順番に並べているが1位は2001年の札幌で83.7%。FWウィルが24ゴールで、FW播戸が9ゴールで、MF山瀬功が3ゴールを挙げている。2位は2014年の徳島で81.3%。こちらはFW高崎が奮闘したが、総得点「16」というのは寂しい数字である。
今シーズンの神戸の80.0%というのは歴代で見ても3番目タイ。2002年の仙台と並ぶ数字である。3人の破壊力の凄さや依存度の高さはJリーグ史上でも屈指のレベルと考えられる。ちなみに2002年の仙台というとJ1に初昇格したシーズンでサッカー解説者としてもお馴染みの清水秀彦監督がチームを指揮していた。長身ストライカーのFWマルコスが得点を量産したが日本代表経験のあるFW山下も奮闘した。
2016年の鳥栖の74.1%という数字も歴代12番目なので高確率である。せっかくなので神戸のトリオには2001年の札幌を上回って新記録達成を期待したいが、計算したところ、ここから11連続で3人のうちの誰かがゴールを決め続ける必要がある。札幌との差は3.7%なので簡単に逆転できそうな気もするが難易度は相当に高い。(ただし、直近の10ゴールは全て3人の誰かのゴールなので可能性はゼロではなさそうだ。)
表2. 歴代のトリオでのゴール率 (1993年-2016年)
順位 | チーム名 | 年度 | チームの総得点 | 3人の合計得点 | (%) | 1人目 | 2人目 | 3人目 |
名前 | 得点数 | 名前 | 得点数 | 名前 | 得点数 |
1 | 札幌 | 2001年 | 43 | 36 | 83.7% | ウィル | 24 | 播戸竜二 | 9 | 山瀬功治 | 3 |
2 | 徳島 | 2014年 | 16 | 13 | 81.3% | 高崎寛之 | 7 | 衛藤裕 | 4 | 橋内優也 | 2 |
3 | 神戸 | 2016年 | 45 | 36 | 80.0% | レアンドロ | 16 | PJ | 10 | 渡邉千真 | 10 |
4 | 仙台 | 2002年 | 40 | 32 | 80.0% | マルコス | 18 | 山下芳輝 | 10 | 岩本輝雄 | 4 |
5 | 市原 | 1999年 | 41 | 32 | 78.0% | バロン | 17 | 中西永輔 | 9 | 武田修宏 | 6 |
6 | 磐田 | 2009年 | 50 | 39 | 78.0% | 前田遼一 | 20 | イ・グノ | 12 | ジウシーニョ | 7 |
7 | 東京V | 2005年 | 40 | 31 | 77.5% | ワシントン | 22 | 平本一樹 | 6 | 小林大悟 | 3 |
8 | 広島 | 2007年 | 44 | 34 | 77.3% | ウェズレイ | 17 | 佐藤寿人 | 12 | 柏木陽介 | 5 |
9 | 広島 | 2006年 | 50 | 38 | 76.0% | 佐藤寿人 | 18 | ウェズレイ | 16 | 森﨑浩司 | 4 |
10 | FC東京 | 2000年 | 47 | 35 | 74.5% | トゥット | 17 | アマラオ | 13 | 佐藤由紀彦 | 5 |
11 | 神戸 | 2003年 | 35 | 26 | 74.3% | オゼアス | 13 | 播戸竜二 | 7 | シジクレイ | 6 |
12 | 鳥栖 | 2016年 | 27 | 20 | 74.1% | 豊田陽平 | 11 | 鎌田大地 | 5 | 金民友 | 4 |
13 | 甲府 | 2011年 | 42 | 31 | 73.8% | ハーフナー | 17 | パウリーニョ | 10 | 阿部吉朗 | 4 |
14 | C大阪 | 1999年 | 64 | 47 | 73.4% | 黄善洪 | 24 | 森島寛晃 | 12 | 西澤明訓 | 11 |
15 | 鳥栖 | 2015年 | 37 | 27 | 73.0% | 豊田陽平 | 16 | 水沼宏太 | 7 | 谷口博之 | 4 |
16 | 新潟 | 2007年 | 48 | 35 | 72.9% | エジミウソン | 19 | M・リシャルデス | 9 | 矢野貴章 | 7 |
17 | 新潟 | 2005年 | 47 | 34 | 72.3% | エジミウソン | 18 | ファビーニョ | 8 | リマ | 8 |
18 | 磐田 | 2002年 | 72 | 52 | 72.2% | 高原直泰 | 26 | 中山雅史 | 16 | 藤田俊哉 | 10 |
19 | G大阪 | 2005年 | 82 | 59 | 72.0% | アラウージョ | 33 | 大黒将志 | 16 | 遠藤保仁 | 10 |
20 | 清水 | 2012年 | 39 | 28 | 71.8% | 大前元紀 | 13 | 高木俊幸 | 9 | アレックス | 6 |
関連エントリー
2010/06/03 日本サッカーの偏差値を下げてしまっている人
2016/02/23 【やべっちFC】 「デジっちが行く!」で面白かったと思うのはどのクラブだ? (2016年) (前編)
2016/02/24 【やべっちFC】 「デジっちが行く!」で面白かったと思うのはどのクラブだ? (2016年) (後編)
2016/04/03 「Jリーガーが好きなおやつ」に関する考察 ~アスリートはおやつを食べる?食べない?~
2016/05/29 【Jリーグ】 53クラブの中で「面白いサッカーをしているチーム」はどこだろうか? (前編)
2016/05/30 【Jリーグ】 53クラブの中で「面白いサッカーをしているチーム」はどこだろうか? (後編)
2016/06/01 【Jリーグ】 「評価の高い主審」というと誰になるだろうか?
2016/08/25 【J3リーグ】 「上のカテゴリー(J1 or J2)でも通用する。」と思う選手・10人を選んでみた。
2016/09/04 【J2】 「上のカテゴリー(J1)でも通用する。」と思う選手(16名)をピックアップしてみた。 (上)
2016/09/05 【J2】 「上のカテゴリー(J1)でも通用する。」と思う選手(16名)をピックアップしてみた。 (下)
- 関連記事
-