■ 天才は生まれにくくなっているのか・・・。Jリーグが誕生してから20数年。W杯は5大会連続出場を果たしており、アジアカップはJリーグ開幕の前年に行われた1992年大会で初優勝を成し遂げると、2000年大会と2004年大会を連覇。さらにザッケローニ監督時代の2011年のアジアカップも制覇している。Jリーグ創設当時は(奥寺さんのような例外を除くと)「日本人選手が欧州の主要リーグで活躍すること」は想像できなかったが今では当たり前になっている。
競技レベルはもちろんのこと、環境面でも急速に発展してきた。スタジアム等を含めたハード面は2002年の日韓W杯の開催が大きかった。選手の育成に関するノウハウも蓄積されてきているが「昔と比べると平均的なレベルは上がってきているが天才が出にくくなっている。」とも言われる。『日本サッカー界の最高傑作と言われているMF小野伸(札幌)のような選手が出てきていない。』と言われることもある。
「天才が生まれにくくなった。」というのはある面では事実である。ただ、全体のレベルが上がると昔の基準であれば「天才サッカー少年」ともてはやされただろう選手がそれほど目立たなくなるのも事実である。例えばMF清武(セビージャ)である。大分でプレーしていた頃から評価の高い選手だったがC大阪で成功して五輪代表でも活躍して日本代表でも活躍してブンデスリーガでも活躍してセビージャ移籍を果たした。
ハノーファーでは「絶対的な攻撃の中心」として活躍したが同年代にMF香川(ドルトムント)がいるのでどうしても活躍が霞んでしまう。人気や注目度もMF香川の方に集中してしまうが、日本サッカー史上、欧州リーグで明らかにMF清武以上の活躍をした選手というのは奥寺さんやMF中田英やMF香川など数名程度。もっと高い評価を受けても良いほどの活躍を見せているが正当な評価を受けているとは言い難い。
■ 10年に1人くらいの割合で出現する天才全体のレベルが上がってくると「天才」が出現したとしても気が付きにくくなるが、そうは言ってもMF宇佐美(G大阪→アウグスブルク )がいて、FW久保建(FC東京U-18)が出てきているので10年くらいの周期で「天才サッカー少年」は現れてくる。MF宇佐美の前の天才がMF小野伸になるのか、MF家長になるのか、FW森本になるのかは意見が分かれるところだと思うが定期的に天才が出現しているのは確かである。
FC東京U-18でプレーするMF久保建は2001年生まれの中学3年生。本来であればもう1つ下のU-15に所属して中学生に混じってプレーする年齢であるが飛び級で高校生に混じってプレーしている。FC東京はU-23チームを編成してJ3リーグに参戦しているので今シーズン中にFC東京U-23で出場機会が得られるようだと2004年のFW森本以来となる中学生Jリーガーの誕生となるが期待度や注目度はすでにプロ級である。
こうなると「誰がどう考えても逸材」と言えるMF宇佐美とMF久保建を比較したくなる。15歳のときのMF宇佐美と15歳になったばかりのMF久保建を比較したいと思うが15歳のときのMF宇佐美は本当に凄かった。初めて見たときは衝撃を受けたが、ボールを持ったら一人で局面を打開してチャンスを作ることが出来た。当時のMF宇佐美は今よりもドリブルを多用する選手だったが2人・3人をかわすのは朝飯前だった。
一方のMF久保建はドリブルもできてパスも出せて得点力もある。バルセロナの下部組織でプレーしていたのでFWメッシのプレーは死ぬほど観ていると思うが「和製・メッシ」と呼ばれるのも納得できるほどボールの持ち方やボールを持ったときのアイディアの豊富さは同世代の中に混じると突出している。同じ左利きで170センチ弱とサイズに恵まれていない点など共通項は多いのでFWメッシはいいお手本になる。
■ オン・ザ・ボールのクオリティはややMF宇佐美が上か?左利きの選手特有の何と表現していいのか分からない感性もMF久保建の大きな武器となる。右サイドでボールを持って仕掛けたときのワクワク感は尋常ではないが同時期のMF宇佐美もボールを持ったときのワクワク感は相当なものだった。右利きと左利きという違いもあって、体格的にも170センチ台後半のMF宇佐美とは差があるが、オン・ザ・ボールでのクオリティに関しては甲乙つけがたいものがある。
「どちらかというと当時のMF宇佐美の方がオン・ザ・ボールのときのクオリティは高かったのではないか?」と思えるほど当時のMF宇佐美はずば抜けていたがその一方でオフ・ザ・ボールのときのクオリティは段違いでMF久保建の方が優れている。さすがに世界トップクラスのバルセロナで指導を受けてきた選手である。「自分のところにボールが来たときだけ仕事をしますよ。」というタイプの選手ではない。
15歳のときのMF宇佐美は守備での貢献度はほとんど無くてフリーランニングで味方を生かすプレーもほぼ無かった。ここ1・2年ほどでそのあたりの部分が改善されて「最近のMF宇佐美は守備でも頑張れるようになった。」と褒められる機会が増えているが最低限のタスクをこなせるようになったのは最近の話である。当時のMF宇佐美は「自分のところにボールが来たときだけ仕事をしますよ。」というタイプだった。
なので『オン・ザ・ボールのときのクオリティは甲乙つけがたいものがあるが、敢えて言うとMF宇佐美の方が上で、オフ・ザ・ボールのときの動きはMF久保建の圧勝』というのが15歳のときの2人を比較したときの評価となるがいずれにしても両名とも万人のファンを魅了できるだけの才能を持っている。次の天才が日本サッカー界に現れるのはまた10年後の話なのか、それとももっと短い間隔なのだろうか・・・。
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