■ 2次予選は残り2試合ロシアW杯のアジア2次予選の7戦目。ここまで5勝1分けでE組の首位を走る日本がホームの埼玉スタジアムでアフガニスタンと対戦した。E組は首位の日本が5勝1分けで勝ち点「16」、2位のシリアは5勝1敗で勝ち点「15」、3位のシンガポールは3勝3敗1分けで勝ち点「10」。シンガポールは残り1試合なので日本とシリアは「2位以内」が確定している。日本はアフガニスタンに勝利すると最終予選進出に大きく前進する。
日本は「4-4-2」。GK東口(G大阪)。DF酒井宏(ハノーファー)、吉田(サウサンプトン)、森重(FC東京)、長友(インテル)。MF長谷部(フランクフルト)、原口(ヘルタ)、柏木(浦和)、清武弘(ハノーファー)。FW金崎(鹿島)、岡崎慎(レスター)。メンバー発表の会見の席で語っていた通り、所属クラブの日程の関係で代表への合流が他の選手よりも1日だけ遅くなったFW本田圭とMF香川はともにベンチスタートになった。
他にはGK西川(浦和)、GK林彰洋(鳥栖)、DF槙野(浦和)、DF藤春(G大阪)、DF昌子(鹿島)、DF酒井高(ハンブルガー)、MF山口蛍(ハノーファー)、MF宇佐美(G大阪)、FWハーフナー・マイク(デンハーグ)、FW小林悠(川崎F)がベンチスタート。キーパーは4人が選出されたので代表に戻ってきたGK川島(ダンディーU)はベンチ外。FW小林悠は1年2か月ぶり、FWハーフナー・マイクは1年5か月ぶりの代表戦となる。
■ 5ゴールを奪った日本が大勝試合は大方の予想通りに日本が圧倒的にボール保持して攻め込む展開になる。この日の中盤はダイヤモンド型。日本代表の試合でこの布陣が採用されるのは極めて珍しい。ハリルホジッチ監督は先のことを見据えて新たなことにチャレンジしてきたがなかなか先制ゴールを奪えない。0対0で折り返しそうな雰囲気になっていた中、前半43分にMF清武弘のパスを受けたFW岡崎慎が決めてようやく先制に成功する。
さらに後半13分にはFW金崎のダイレクトパスからゴール前に飛び出していったMF清武弘が決めて2点目を挙げる。MF清武弘は2012年11月14日に行われたブラジルW杯のアジア最終予選のオマーン戦以来なので久々となる代表戦でのゴールとなった。さらに後半18分には右サイドを突破したDF酒井宏のクロスが相手選手に当たってゴール方向に飛んで行ってオウンゴール。3対0として試合を決めてしまう。
3点目を奪った直後の後半19分にMF香川を投入。さらに後半28分には194センチのFWハーフナー・マイクを投入。後半29分にMF清武弘のCKからDF吉田が合わせて4点目を挙げると、後半33分にはFWハーフナー・マイクの落としからFW金崎が決めて5点目を挙げる。FW金崎は代表通算2ゴール目となった。結局、5対0で日本が大勝。アジア2次予選は6試合連続完封勝利。6勝1分けでE組の首位をキープした。
■ 新たなチャレンジと言えるダイヤモンド型の中盤同じ日に行われたシリア vs カンボジアの試合もシリアが6対0で圧勝したので日本の首位通過は決まらず。6勝1分けの日本と6勝1敗のシリアが1位通過を賭けて3月29日(火)に対戦することになった。各組で2位になった8チームの中の成績上位4チームも最終予選に進出することができるが、仮にシリアに敗れて2位に転落したとしても得失点差等を考慮すると日本が最終予選に進めるのはほぼ間違いないと言える。
この日は「4-4-2」を採用したが日本代表がダイヤモンド型の「4-4-2」を採用するのも珍しい。もちろん、ビハインドの状況で攻撃に枚数をかけるために1ボランチにシステムを変更したケースは何回かあったと思うが、最初からダイヤモンド型を採用するのは近年の代表チームでは記憶にない。余裕のある状況なのでハリルホジッチ監督はオプションを増やすためにチャレンジしてきたがまずまずだったと言える。
FW岡崎慎とFW金崎の2トップで、トップ下がMF清武弘で、右サイドがMF原口で、左サイドがMF柏木で、アンカーがMF長谷部という並びになったが、前線の2人がいずれも勢力的に動き回って貪欲にゴールを狙うタイプなので攻撃のときのパワーは相当なものがあった。トップ下で起用されたMF清武弘もうまくボールに絡んで多くのチャンスシーンに絡んでおり、ワンタッチのパスがテンポよくつながる場面は多かった。
もちろん、パスが合わないシーンもあったが、ほとんど試したことが無い布陣の割には選手たちの距離感が良かった。パスコースがたくさんあったので相手は的を絞るのが難しかった。1ボランチなので守備に回されると危険度が増すので「もう少し力の差が小さい相手と対戦したときにもダイヤモンド型の中盤が機能するのか?」は何とも言えないところであるが、最初のチャレンジということを考えると上出来と言える。
■ 最高のアピールができたMF清武弘嗣FW本田圭とMF香川がベンチスタートで、ハリルJAPANになってから全試合で出場機会を得ていたMF宇佐美も出番はなかった。試合前は不安視する声もあったが大きな問題にはならなかった。良かったのはプレミアリーグで首位を走るレスターでも存在感を増しているFW岡崎慎。どちらも積極的に動いてボールを欲しがるタイプなのでキャラが重なるかと思われたが、相方のFW金崎との関係性も良かった。
トップ下で起用されて1ゴール2アシストのMF清武弘の活躍も目立った。怪我で中期離脱してピッチに戻ってきたばかり。コンディションは万全ではないと思うが時間が経つにつれて存在感を増していった。直接的にゴールに絡んだ1点目・2点目・4点目も見事だったが、評価したいのはFW金崎のゴールにつながった5点目。投入されたばかりのFWハーフナー・マイクの高さが存分に生きるクロスをゴール前に供給した。
ハリルホジッチ監督は「トップ下はMF香川とMF清武弘の争いである。」と公言している。本来はサイドアタッカータイプであるがMF原口もトップ下で起用される可能性があるので現状ではこの3人が『トップ下候補』と言えるが、MF清武弘は最高のアピールができた。今年に入ってからMF香川が調子を崩しているので現時点ではMF清武弘の方が優勢。過去5年ほどはほぼ不動だったMF香川の立場が危うくなってきた。
当然のことながらポジション争いが激しくなるのは日本代表にとっては好ましい。代表チームは使える時間が限られるので突出した選手がいてその選手中心のチームを作るのも悪くはないが、高いレベルでポジション争いが行われると活性化する。MF清武弘は所属クラブでは絶対的な地位を確保しておりドイツ国内での評価は高い。代表ではなかなか中心になることができなかったが大きなチャンスを迎えている。
■ 欧州でストライカーに変貌したFW金崎夢生最終的には1人で9本のシュートを放ったFW金崎のプレーも目立った。前半からたくさんチャンスがあったので「1点だけに終わったこと」は反省材料の1つと言えるが自身にとっての「ほぼラストプレー」で5点目のゴールを奪うことができた。ゴール自体は泥臭いゴールだったが次につながるゴールだったと言える。2点目のMF清武弘のゴールもアシストしており、1ゴール1アシストとスタメン抜擢のチャンスを生かした。
近年の日本代表にはここまで「いい意味でセルフィッシュにプレーできる選手」はいなかったので彼の強引なプレーは日本代表にいい影響をもたらしている。大分や名古屋でプレーしていた頃は「身体が強くて技術が高くてたくさんのチャンスを作ることができるがシュートは上手くない。得点力は低い。」というタイプだったが、ドイツやポルトガルでプレーしたことがきっかけになってストライカーに変身を遂げた。
ドイツ1部で活躍することはできなかったが欧州で「自分のスタイル」を身に着けることができたのは大きい。(ポルトガルの2部で結構な活躍を見せたので欧州で全く活躍できなかったわけではないが、)欧州で成功したか?否か?を判断するときはどうしてもわかりやすい数字(チーム成績ならびに個人成績)で評価されてしまうがFW金崎のように「新しい自分」を見つけることができた場合も十分に成功例と言える。
FW岡崎慎、MF清武弘、FW金崎あたりは存分に良さを発揮してゴールやアシストといった部分で分かりやすい結果も残した。さらには途中出場したFWハーフナー・マイクも持ち味である高さで相手の脅威になった。同じく途中出場のMF香川やFW小林悠もチャンスシーンに絡んだので「出来としてはまあまあだった。」と言えるが、サイドでの起用となったMF柏木とMF原口は攻撃の部分では効果的に絡めなかった。
これについては2人のコンディションやパフォーマンスに問題があったというよりは不慣れなポジションだったことが唯一の理由である。Jリーグでダイヤモンド型を採用しているチームはフィッカデンティ監督が就任した鳥栖くらい。「4-4-2」に慣れた選手は日本には少ないが最終ラインや2トップやトップ下やアンカーの選手は普段と比べても大差は無い。問題なくプレーできるが中盤のサイドのみ全く異なる。
ダイヤモンド型の中盤のときは「トリプルボランチ」と表現されることもあるが攻守にわたって活動量が求められる。ポジショニングも難しいので開幕前からしっかりとトレーニングを行って準備してきたチームでも機能させるのはなかなか難しいので、このあたりは十分に考慮する必要がある。右サイドと左サイドに関しては誰がやっても上手くこなすのは相当に難しいので、MF原口やMF柏木はちょっと気の毒に感じた。
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