■ 走力で他を圧倒する湘南ベルマーレJリーグで本格的にトラッキングシステムが導入されてから2年目となる。「試合中に誰がどのくらい走っているのか?」が数値で示されるようになったこと&誰しもが簡単に知ることができるようになったのは画期的なこと。気にしているJリーガーも多い。Jリーグの公式サイトを見ると各試合の「走行距離」と「スプリント回数」が簡単に確認できるようになっているので3節が終了した時点での数値をまとめてみた。
ますはクラブ別。1試合平均の「走行距離」と「スプリント回数」はいずれも湘南が1位になっている。走行距離で比較すると1位の湘南と18位の神戸の差は10キロ以上もある。キーパーを除くとフィールドプレーヤーは10人なので「1人あたり1キロ」の差がある。湘南も昨シーズンも「走行距離」と「スプリント回数」の両方でリーグ屈指の数値を残しており、主力が何人か抜けたとしても湘南のスタイルは変わらない。
湘南以外で両方の数値で上位に位置するのは浦和くらい。両立させるのはかなり難しいと言える。両極端な数字がでているのは名古屋。走行距離は17位とワースト2位だったが、スプリント回数はリーグ2位。運動量は少ないがスプリント回数は多いので「走力がある。」と言えるのか、「走力はない。」と言えるのかは微妙なところである。広島・磐田・甲府あたりは両部門ともリーグで下の方の順位だった。
表1. クラブ別の1試合平均の走行距離とスプリント回数
| 走行距離 | SP回数 |
順位 | (km) | 順位 | (回数) |
湘南ベルマーレ | 1 | 122.850km | 1 | 213 |
サガン鳥栖 | 2 | 120.623km | 14 | 158 |
横浜F・マリノス | 3 | 119.879km | 12 | 160 |
浦和レッズ | 4 | 119.304km | 4 | 181 |
ベガルタ仙台 | 5 | 119.301km | 12 | 160 |
柏レイソル | 6 | 119.094km | 7 | 172 |
アルビレックス新潟 | 7 | 118.398km | 10 | 168 |
FC東京 | 8 | 118.057km | 5 | 176 |
ガンバ大阪 | 9 | 117.374km | 6 | 174 |
川崎フロンターレ | 10 | 116.730km | 17 | 152 |
大宮アルディージャ | 11 | 116.387km | 11 | 165 |
鹿島アントラーズ | 12 | 116.038km | 3 | 184 |
ヴァンフォーレ甲府 | 13 | 114.468km | 15 | 155 |
ジュビロ磐田 | 14 | 114.418km | 16 | 153 |
アビスパ福岡 | 15 | 113.556km | 8 | 170 |
サンフレッチェ広島 | 16 | 113.002km | 18 | 144 |
名古屋グランパス | 17 | 112.898km | 2 | 194 |
ヴィッセル神戸 | 18 | 112.043km | 8 | 170 |
■ 異次元の走行距離を記録するMF加藤大(新潟)今度は個人別のランキングである。出場時間が150分以上の選手を対象にしているが「90分あたりの走行距離」の1位はMF加藤大(新潟)。90分あたりの数値は脅威の14.34キロ。2位のMF岩上(大宮)は12.90キロなので異次元の数字である。走行距離に関しては「12キロを超えたらかなり凄い。」、「13キロを超えたら凄すぎる。」と言えるので『14.34キロというのは普通で考えられないあり得ない数字』と言える。
彼の凄いところは単に走れるだけの選手ではないという点。2015年は20試合で9アシストを記録したがこれはリーグ4位タイ。DF太田宏(FC東京)、MF柴崎岳(鹿島)、MF藤田直(鳥栖)に次ぐアシスト数を記録した。J2の愛媛FCでプレーしていた時はテクニシャン系の選手だった。ここまで走り回ってチームに貢献できる選手には見えなかった。運動量に関しては世界でもトップクラスではないかと思われる。
2位はMF岩上(大宮)で、3位はMF城後(福岡)。MF岩上は昨シーズンも走行距離でリーグ上位の数値を残しているので驚きはない。意外なのはMF城後。献身的なプレーができる選手ではあるがここまで試合中に走っているとは想像できなかった。(※ J2の試合では走行距離やスプリント回数を知ることはできない。)4位はFW奥埜(仙台)。彼は2015年シーズンもリーグ屈指の走行距離を記録した「常連の1人」である。
5位はMF井手口(G大阪)、6位はMF鎌田(鳥栖)。五輪代表に選出された1996年生まれの高卒2年目の19歳コンビが上位に顔を出した。MF井手口はスプリント回数でもリーグ18位。ボランチの選手は「走行距離は多いがスプリント回数は少ない。」という選手がほとんど。MF遠藤(G大阪)やMF青山敏(広島)などはそういう数字になっているので「ボランチの選手でここまでスプリント回数が多いのは珍しい。」と言える。
7位はMF高山薫(湘南)、8位はMF三田(仙台)、9位はMFレオ・シルバ(新潟)、10位はMF菊地俊(湘南)となった。ベスト50に入った選手の所属クラブをカウントすると最も多かったのは湘南で6人。MF菊地俊(湘南)、MF菊池大(湘南)、MFパウリーニョ(湘南)、FW藤田祥(湘南)など。2番目に多かったのは横浜FMで5名。MF中村俊(横浜FM)、MF喜田(横浜FM)など。MF中村俊(横浜FM)は37歳にして全体で12位!!!
表2. 個人別の90分あたりの走行距離 (多い方から)
順位 | 名前 | 所属 | 出場時間(分) | 走行距離/90分(km) |
1 | 加藤 大 | 新潟 | 205 | 14.34 |
2 | 岩上 祐三 | 大宮 | 270 | 12.90 |
3 | 城後 寿 | 福岡 | 270 | 12.89 |
4 | 奥埜 博亮 | 仙台 | 254 | 12.82 |
5 | 井手口 陽介 | G大阪 | 153 | 12.66 |
6 | 鎌田 大地 | 鳥栖 | 240 | 12.63 |
7 | 高山 薫 | 湘南 | 269 | 12.54 |
8 | 三田 啓貴 | 仙台 | 180 | 12.51 |
9 | レオ シルバ | 新潟 | 270 | 12.50 |
10 | 菊地 俊介 | 湘南 | 270 | 12.48 |
11 | 稲垣 祥 | 甲府 | 270 | 12.42 |
12 | 中村 俊輔 | 横浜FM | 180 | 12.39 |
13 | 小林 裕紀 | 新潟 | 242 | 12.36 |
14 | 岡田 翔平 | 鳥栖 | 181 | 12.33 |
15 | 狩野 健太 | 川崎F | 158 | 12.32 |
16 | 菊池 大介 | 湘南 | 256 | 12.22 |
16 | エデルソン | 柏 | 180 | 12.22 |
18 | 藤田 祥史 | 湘南 | 206 | 12.21 |
18 | 大森 晃太郎 | G大阪 | 168 | 12.21 |
20 | パウリーニョ | 湘南 | 211 | 12.15 |
21 | 大津 祐樹 | 柏 | 270 | 12.12 |
22 | 大谷 秀和 | 柏 | 270 | 12.11 |
23 | コルテース | 新潟 | 270 | 12.07 |
24 | 関根 貴大 | 浦和 | 240 | 12.06 |
25 | 前田 遼一 | FC東京 | 270 | 12.05 |
26 | 石川 俊輝 | 湘南 | 172 | 12.04 |
27 | 山本 脩斗 | 鹿島 | 270 | 12.03 |
27 | 村松 大輔 | 神戸 | 180 | 12.03 |
27 | 青山 敏弘 | 広島 | 270 | 12.03 |
30 | 藤春 廣輝 | G大阪 | 180 | 12.02 |
31 | 田邉 草民 | FC東京 | 152 | 12.01 |
32 | 下平 匠 | 横浜FM | 270 | 12.00 |
33 | 岡本 知剛 | 鳥栖 | 167 | 11.97 |
34 | 阿部 拓馬 | FC東京 | 270 | 11.95 |
35 | 車屋 紳太郎 | 川崎F | 270 | 11.94 |
36 | 小林 祐希 | 磐田 | 269 | 11.92 |
37 | 長沢 駿 | G大阪 | 259 | 11.90 |
37 | 中町 公祐 | 横浜FM | 177 | 11.90 |
39 | 黒木 聖仁 | 甲府 | 180 | 11.87 |
40 | 金 民友 | 鳥栖 | 257 | 11.86 |
40 | 横山 知伸 | 大宮 | 270 | 11.86 |
42 | イ スンヒ | 名古屋 | 264 | 11.85 |
43 | 喜田 拓也 | 横浜FM | 256 | 11.84 |
44 | 秋野 央樹 | 柏 | 202 | 11.83 |
45 | 伊藤 翔 | 横浜FM | 217 | 11.82 |
46 | 上田 康太 | 磐田 | 225 | 11.81 |
47 | 太田 吉彰 | 磐田 | 253 | 11.80 |
48 | 米本 拓司 | FC東京 | 269 | 11.77 |
49 | 藤田 直之 | 神戸 | 270 | 11.76 |
50 | 阿部 浩之 | G大阪 | 174 | 11.70 |
■ ワースト1位は意外にもMFアダイウトン(磐田)今度は逆に90分あたりの走行距離が少なかった選手をまとめてみた。キーパーは除外しており、フィールドプレーヤーに限定するがワースト1位はMFアダイウトン(磐田)。リーグ屈指の爆発的なスピードを持った選手なのでここまで走行距離が少ないのはかなり意外に感じる。1位のMF加藤大と比較すると約61%。自チームのカウンターに備えて攻め残りをしていることが多いので守備に戻らない分、距離が少なくなった。
ワースト2位はDF山本英(甲府)。自チームのCKのときなどセットプレーのときに後方に待機することが多い最終ラインの選手は距離が少なくなる傾向にある。ワースト3位はFWレアンドロ(神戸)。こちらは中央に構えていることが多い。攻撃系の選手ではFWウェリントン(福岡)が13位、FW大久保(川崎F)が16位、FW佐藤寿(広島)が21位だった。ストライカーの選手はうまく休んでエネルギーを蓄えることも重要である。
CBやFWの選手になると「走行距離が少ないからダメ」とは言えないところもある。「運動量が少ないのでは?」と苦言を呈されることが多いMF宇佐美(G大阪)は49位。90分あたり走行距離は10.48キロ。決して多くはない。意外なところではMF泉澤(大宮)が32位と走行距離があまり多くない。ちなみにG大阪ユース出身で「運動量が少ない。」と言われることが多いMF家長(大宮)は10.76キロ。110位と普通程度だった。
表3. 個人別の90分あたりの走行距離 (少ない方から)
順位 | 名前 | 所属 | 出場時間(分) | 走行距離/90分(km) |
1 | アダイウトン | 磐田 | 237 | 8.75 |
2 | 山本 英臣 | 甲府 | 270 | 8.79 |
3 | レアンドロ | 神戸 | 270 | 9.43 |
3 | 森下 俊 | 磐田 | 270 | 9.43 |
3 | アンドレ バイア | 湘南 | 270 | 9.43 |
6 | 早川 史哉 | 新潟 | 270 | 9.56 |
7 | 岩波 拓也 | 神戸 | 270 | 9.57 |
8 | 大井 健太郎 | 磐田 | 270 | 9.62 |
9 | 土屋 征夫 | 甲府 | 241 | 9.78 |
10 | 千葉 和彦 | 広島 | 270 | 9.83 |
11 | 金 正也 | G大阪 | 270 | 9.88 |
12 | オーマン | 名古屋 | 270 | 9.90 |
13 | ウェリントン | 福岡 | 270 | 9.91 |
13 | 高橋 峻希 | 神戸 | 270 | 9.91 |
15 | ピーター ウタカ | 広島 | 188 | 9.92 |
16 | 大久保 嘉人 | 川崎F | 270 | 9.93 |
16 | 伊野波 雅彦 | 神戸 | 225 | 9.93 |
18 | 竹内 彬 | 名古屋 | 270 | 9.97 |
18 | 奈良 竜樹 | 川崎F | 249 | 9.97 |
20 | 今野 泰幸 | G大阪 | 270 | 10.00 |
21 | 佐藤 寿人 | 広島 | 171 | 10.02 |
22 | 増嶋 竜也 | 柏 | 270 | 10.03 |
23 | ファビオ | 横浜FM | 270 | 10.05 |
23 | 中澤 佑二 | 横浜FM | 270 | 10.05 |
25 | 菊地 光将 | 大宮 | 225 | 10.07 |
26 | 實藤 友紀 | 福岡 | 270 | 10.10 |
27 | 濱田 水輝 | 福岡 | 270 | 10.11 |
28 | 中村 北斗 | 福岡 | 251 | 10.14 |
29 | 徳永 悠平 | FC東京 | 270 | 10.17 |
29 | 平岡 康裕 | 仙台 | 270 | 10.17 |
31 | 大野 和成 | 新潟 | 270 | 10.21 |
32 | 泉澤 仁 | 大宮 | 258 | 10.22 |
33 | ラファエル シルバ | 新潟 | 242 | 10.26 |
34 | 永井 謙佑 | 名古屋 | 270 | 10.28 |
34 | 植田 直通 | 鹿島 | 270 | 10.28 |
36 | ウイルソン | 仙台 | 260 | 10.31 |
37 | 津田 琢磨 | 甲府 | 270 | 10.32 |
38 | 塩谷 司 | 広島 | 270 | 10.35 |
38 | 森重 真人 | FC東京 | 270 | 10.35 |
40 | ニウソン | 甲府 | 218 | 10.36 |
41 | 丸山 祐市 | FC東京 | 270 | 10.38 |
42 | 小林 祐三 | 横浜FM | 244 | 10.39 |
43 | 安田 理大 | 名古屋 | 270 | 10.40 |
43 | 谷口 博之 | 鳥栖 | 270 | 10.40 |
45 | 谷口 彰悟 | 川崎F | 270 | 10.41 |
45 | 渡部 博文 | 仙台 | 270 | 10.41 |
47 | 吉田 豊 | 鳥栖 | 270 | 10.45 |
47 | 指宿 洋史 | 新潟 | 260 | 10.45 |
49 | 宇佐美 貴史 | G大阪 | 203 | 10.48 |
50 | 佐々木 翔 | 広島 | 270 | 10.51 |
関連エントリー
2016/01/29 【2020年】 東京五輪での活躍が期待される男子サッカー界の期待の有望株・20人 (上)
2016/01/30 【2020年】 東京五輪での活躍が期待される男子サッカー界の期待の有望株・20人 (下)
2016/02/23 【やべっちFC】 「デジっちが行く!」で面白かったと思うのはどのクラブだ? (2016年) (前編)
2016/02/24 【やべっちFC】 「デジっちが行く!」で面白かったと思うのはどのクラブだ? (2016年) (後編)
2016/02/25 「あなたが好きなサッカー解説者」は誰ですか? (2016年版)
2016/02/25 「どちらかというと苦手なサッカー解説者」は誰ですか? (2016年版)
2016/03/05 なでしこジャパンで考える世代交代の難しさ
2016/03/07 【J1】 1stステージの優勝争いはどうなるか? ~本命は鹿島、対抗は川崎F、ダークホースは大宮か~
2016/03/08 【J1】 残留争いはどうなるか? ~悪くない福岡・湘南、まだ不透明な名古屋・新潟~
- 関連記事
-