■ ユニバーシアードの3位決定戦「学生のためのオリンピック」と言われるユニバーシアードは2年に1回開催される。今年は7月上旬から中旬にかけて韓国の光州(クァンジュ)で開催された。今回が第28回大会となるが、Jリーグ入りが決まっている大学生がたくさん参加した男子サッカーのユニバー代表チームは準決勝でイタリアにPK負け。3位決定戦でブラジルと対戦することになった。3位決定戦のブラジルとの試合は7月13日(月)に行われた。
日本は「4-2-3-1」。GK福島。DF湯澤、荻間、田上、室屋。MF木本、松下佳、八久保、和泉、小林成。FW呉屋。大会後に正式発表されたケースもいくつかあるが、今の時点ではキーパーのGK福島が浦和、右SBのDF湯澤が柏、ボランチのMF木本がC大阪、ボランチのMF松下佳と左SHのMF小林成が神戸、右SHのMF八久保が熊本、トップ下のMF和泉が名古屋、1トップのFW呉屋がG大阪への入団が決まっている。
ベンチスタートの選手では左SBのDF高橋諒は名古屋、アタッカーのMF長谷川竜也は川崎F、中盤のMF端山は新潟、フォワードのFW澤上はC大阪への加入が決まっている。この中ではMF端山はすでに特別指定選手として新潟でJリーグの試合を経験しており、先日行われた11節の神戸戦(A)ではスタメン出場を経験している。メンバーの大半は4年生となるが、五輪代表候補の左SBのMF室屋(明治大学)は大学3年生となる。
■ PK戦の末、日本が勝利して銅メダル試合の前半はどちらかというと日本ペースで進んでいく。テンポよくパスをつないでいくのが今回のチームの特徴のようで、ボランチのMF木本とMF松下佳のところから縦パスが入って複数人が連動した攻撃からブラジルのゴールを脅かす。ただ、シュート精度を欠いてしまう。前半30分の左SBのDF室屋のミドルシュートがバーに当たったのは不運だったが、ゴール前の絶好機で枠に飛ばないケースが目立った。
0対0で迎えた後半15分に熊本入りが決まった右SHのMF八久保に代えてストライカーのFW澤上を投入。争奪戦の末、C大阪入りが発表されたFW澤上が最前線。やや下がり目の位置にG大阪入りが決まっているFW呉屋が入るという攻撃的な布陣となったが、後半半ば以降はブラジルが優勢となる。立て続けのセットプレーからいくつか危ないシーンを迎えるなど日本はリズムが悪くなってチャンスを作れなくなる。
終盤はブラジルが優勢だったが、浦和入りが決まっているGK福島を中心に守って0対0のスコアでPK戦に突入。先行だったブラジルの7人目の選手のシュートを専修大学のGK福島がセーブ。逆に日本の7人目のキッカーに抜擢されたキーパーのGK福島が自ら左足で豪快に蹴り込んで試合終了。7対6でPK戦を制した日本が3位に入って銅メダルを獲得した。ブラジルは4位に終わった。日本は2大会連続で3位となった。
■ 即戦力になりそうな神戸入りが決まったMF松下佳貴大学生がサッカー(のみならずスポーツ全般)を続ける環境が整備されていることもあって、日本はユニバーシアードでは、毎度、好成績を残している。2001年・2003年・2005年は大会3連覇を達成。2007年は5位に終わったが、2009年は3位で、2011年は優勝で、2013年は3位。今回も3位という結果だったが、これまでのユニバー代表のメンバーを見ると卒業後にJリーグのチームに加入した選手がほとんどである。
優勝した2011年大会は鹿島のMF山村和、山形のMF宮阪、清水のMF河井、愛媛FCのFW瀬沼などが選ばれており、3位に入った2013年は大宮のMF泉澤、川崎FのDF谷口彰とMF車屋、ケルンのMF長澤、湘南のMF菊地俊、鹿島のFW赤崎などが選ばれている。プロで活躍している選手が非常に多いので「好成績を残すのも納得」であるが、今回のメンバーも「なかなかいいメンバーが揃った。」と評価されていた。
今シーズンも群馬のMF江坂や川崎FのDF車屋や甲府のMF伊東純など1年目からインパクトを残している大卒ルーキーが何人もいるので、ユニバーシアード2015の日本代表の中で1年目からJリーグの舞台で活躍する選手が何人も出てくるのは確実と言えるが、ブラジル戦を見て「面白い。」と思ったのはJ1の神戸入りが決まっている阪南大学のMF松下佳。プロ1年目から結構な出場機会を得ることができるではないか。
C大阪入りが決まったMF木本とWボランチを組んだが、どちらかというとMF木本は守備的ボランチで、MF松下佳が攻撃的なボランチ。入団が決まったとき『左足から繰り出される正確なパス、シュート。中盤でゲームをコントロールできるボランチ』と神戸の公式サイトで紹介されているが、攻撃を組み立てることもできるし、好パスを前線に供給することもできる。神戸はボランチが弱点なので即戦力の期待がかかる。
相方のMF木本(福岡大)も能力は高い。183センチの大型ボランチで浦和や福岡なども関心を示していたがC大阪が争奪戦を制した。C大阪が有望な大学生の争奪戦に参加して争奪戦を制するのは非常に珍しい。同じく争奪戦となった大阪体育大学のストライカーのFW澤上の獲得にも成功しているので大学生の有望株をダブルゲット。ここ数年で「クラブとしてのブランド力」が上がってきていることを感じさせる。
やはり、ボランチでこれだけのサイズがあるのは大きな魅力。ダイレクトで精度の高いパスを出す場面が多くて「ボールを奪った後」のプレーの質も高い。ボランチの選手がダイレクトで正確なパスを出せるかどうかは現代サッカーでは重要となるが、MF木本は問題なし。身体的な能力とサイズはやや劣るが、ボランチでプレーするときの鹿島のMF山村和に似た雰囲気はある。MF木本もCBとして大成する可能性がある。
■ フル代表に絡んでくる可能性が高いDF湯澤聖人他に目立ったのは右SBのDF湯澤(流通経済大)。こちらは柏入りが決まっているが、柏入りが決まったのは今年の1月中旬だった。「大学3年生の段階でプロ入りが決まる。」というのは極めて珍しいが、それだけのポテンシャルを持っている。179センチで70キロ。SBとしてはがっちりした体格である。縦へのスピードを持っておりキックの質も高い。近い将来、フル代表の右SBの争いに絡んでくるのは間違いないと思う。
MF室屋(明治大)は先のとおりまだ大学3年生。「94ジャパン」で活躍して、最近では手倉森ジャパンでも何度かプレーしているのでよく知られた存在と言えるが、豊富な運動量は大きな武器となる。DF湯澤がいるので左SBに回っているが、右SBでも問題なくプレーできる選手である。同じ明治大学ということもあって「長友2世」と言われることが多いが、彼が進路先にどのチームを選ぶのか?は注目したいところ。
名古屋入りが決まったトップ下のMF和泉(明治大)は正直なところ、あまり良くなかった。市立船橋高時代に全国制覇を達成。冬の選手権の決勝戦で華々しい活躍を見せているので彼も名前の知れた選手と言えるが、ほとんど良さを出せなかった。「テクニック」と「スピード」と「シュート技術」が評価されているが、名古屋の攻撃陣は分厚い。1年目から出場機会を得るのはなかなか難しいのではないかと思う。
■ G大阪入りが決まっているストライカーのFW呉屋大翔同様にG大阪入りが内定している1トップのFW呉屋(関西学院大)もあまり持ち味を出せなかった。176センチ/66キロなのでCFとしてはそれほど大きくない。G大阪でどういう起用法になるのかは定かではないが、ストライカーに必要とされるエゴイスティックな面を持った選手で、瞬間的なスピードもあって、いい意味での強引さを持っている。メンタリティはプロ向きだと思う。途中出場で結果を出して道を切り開きたい。
右SHのMF八久保(阪南大)は地元のクラブであるJ2の熊本入りが決まった。168センチで57キロ。右サイドが基本ポジションだったが、いいタイミングで中央の選手に絡んでくるシーンがいくつかあった。守備面での貢献度もまずまずだった。熊本は2列目の充実度が今一つ。19歳のMF嶋田慎を除くと固定できていない状態なので1年目からかなりの出場機会を得られるのではないか。熊本入りは賢明な判断だと思う。
GK福島(専修大)も将来が楽しみな選手である。彼も1月29日という早い段階で浦和入りが発表されたが、182センチ/78キロなのでキーパーとしてかなり小柄。「コーチングと判断力に優れ、鋭い反応でシュートストップに長けているゴールキーパー。また、左足の正確なキックで攻撃においても決定的なチャンスを作り出す。」と浦和の公式サイトで紹介されているが、日本代表のGK西川によく似たタイプの選手である。
関連エントリー 2011/02/08
Jリーガーとその出身地 (2011年版) 2011/02/11
47都道府県別の比較 (野球選手とサッカー選手) 2011/10/19
Jリーガーとその年齢に関して 2011/10/21
Jリーガーがサッカーを始めた年齢は? 2011/11/01
Jリーガーとその年齢に関して (欧州4大リーグとの比較) 2015/04/03
U-22日本代表入りを期待したい若手選手(49名)のリスト (その1) 2015/04/03
U-22日本代表入りを期待したい若手選手(49名)のリスト (その2) 2015/04/04
U-22日本代表入りを期待したい若手選手(49名)のリスト (その3) 2015/06/18
「なでしこの選手が好きな選手・目標とする選手 (日本人編)」 ~ 6位は内田篤人、5位は本田圭佑、4位は香川真司、3位は柿谷曜一朗、1位と2位は・・・。~ 2015/06/19
「なでしこの選手が好きな選手・目標とする選手 (外国人編)」 ~ 5位はカシージャス、4位はシャビ、3位はネイマール、2位はメッシ、果たして1位は・・・。~ 2015/10/02
全記事一覧(2005年-2015年)
- 関連記事
-