■ J3リーグの首位攻防戦J3リーグの第29節。16勝3敗7分けで勝ち点「55」で2位の町田ゼルビアがホームの町田市立陸上競技場で首位のレノファ山口と対戦した。山口は20勝5敗1分けで勝ち点「61」。山口は首位を独走していたがここに来て公式戦は3連敗中。首位の山口と2位の町田との差は「6」まで接近してきた。直接対決で山口が勝つと「優勝&J2昇格」に大きく前進するが、町田が勝利すると勝ち点が「3差」となる大一番である。
ホームの町田は「4-2-2-2」。GK高原。DF土岐田、深津、増田、松本怜。MF李漢宰、森村、鈴木崇、重松。FW久木野、鈴木孝。昨シーズンのJ3リーグの得点王のFW鈴木孝は出場停止明け。今シーズンは21試合で7ゴールを挙げている。昨シーズンは33試合で19ゴールを挙げているので2014年と比べるとゴールペースは少し落ちている。元北朝鮮代表のMF李漢宰は開幕からスタメン出場が続いている。
対するアウェイの山口は「4-2-3-1」。GK一森。DF小池、代、宮城、香川勇。MF小塚、庄司、鳥養、福満、島屋。FW岸田。エースストライカーのFW岸田はここまで25試合で25ゴールと驚異の得点力を見せている。当然のことながらJ3リーグの得点ランキングの首位を独走している。今夏に愛媛FCから加入のDF代は8試合連続スタメン。ボランチのMF庄司は古巣対決となる。2012年から2014年まで町田でプレーした。
■ 3対1でアウェイの山口が勝利試合は立ち上がりから接触プレーで両チームの選手が詰め寄るシーンが起きるなどヒートアップした展開となる。どちらかというとホームの町田が優勢だったが、前半36分に左SBのDF香川勇のフィードから裏に抜け出したFW岸田が上手いコントロールでトラップと同時にキーパーもかわしてから左足で決めてアウェイの山口が先制する。エースのMF岸田は今シーズン26ゴール目となった。前半は1対0で折り返す。
1点ビハインドの町田は後半5分にバイタルエリアでボールを受けたMF鈴木崇が得意の左足で目の覚めるような豪快なミドルシュートを決めて1対1の同点に追いつく。MF鈴木崇は今シーズン8ゴール目となった。しかし、後半23分に山口はFW岸田が得たPKをトップ下で起用されているMF福満が決めて2対1と勝ち越しに成功する。MF福満は今シーズン12ゴール目。MF福満は得点ランキングで3位に位置する。
さらに後半35分にもFW岸田のパスを受けた途中出場のMF平林が決めて決定的な3点目を挙げる。「フットサルのFリーグに所属する名古屋オーシャンズでプレーした経験を持つ。」という異色の経歴のMF平林は今シーズン3ゴール目。結局、3対1でアウェイの山口が首位攻防戦を制した。これで首位の山口と2位の町田の差はまたしても「9」に広がった。山口は「優勝&J2昇格」に大きく前進したと言える。
■ 大一番で痛恨の敗戦を喫した町田ゼルビア山口は春先から攻撃陣が爆発して手の付けられない状態だったがここに来て勢いを失いつつある。9月に入ってからはリーグ戦は2連敗。プレッシャーなのか、勝ち点が伸びなくなっているので、町田や長野にも可能性が出てきたが、町田は大一番で勝ち点「0」に終わった。J1やJ2と比べるとJ3リーグは上位と下位の戦力差が大きい。取りこぼしを期待しにくいリーグなので、この時点での「9差」は致命的と言える。
後半5分に生まれたMF鈴木崇の同点ゴールは見事だった。バイタルエリアでいい形でボールを受けると相手のプレッシャーがやや緩くなった隙を突いて左足のミドルシュートを突き刺した。シュートコース自体はそこまで良かったわけではなかったが、スピードと威力は抜群。好セーブをいくつも見せていたGK一森でも止めることが出来なかった。年間のベストゴール候補に挙げられるような素晴らしいシュートだった。
この一発で同点に追いついた町田だったが、後半23分にPKで勝ち越しを許した。左サイドからドリブルで仕掛けたFW岸田に対してエリア内でDF深津がファールをおかしてしまったが、経験豊富なDF深津らしからぬ軽い対応だった。後ろにカバーの選手がいたので、「ファールをしてでも止めなければならない。」という場面ではなかった。肝心な場面でなぜこういう安易な対応をしてしまったのか?は謎である。
DF深津について触れると試合の序盤からいい精神状態ではなかったように思う。前半8分に山口のFW岸田と町田のDF松本怜のエアバトルがきっかけとなって両チームの選手が軽い小競り合いを起こしたが、ファールをおかしたFW岸田や近くにいたMF庄司に対して尋常ではないほどエキサイトしていた。大一番なので気持ちが高ぶるのは当たり前の話であるが、気持ちが高ぶりすぎるのは決してプラスにはならない。
■ J2昇格に大きく前進したレノファ山口首位攻防戦を制した山口にとっては「J2昇格」という夢に大きく前進する価値ある勝利と言える。町田に敗れると「3差」となる。もちろん、得失点差では圧倒的に山口が有利なので実質的には3ポイントよりも上の差があるが、「安全圏に入った。」と思われた状態から詰め寄られるのは気分的に良くない。天皇杯も含めると3連敗中と嫌な流れになりつつあったので、そういう意味でも大きな価値を持つ勝利と言える。
この日もゴールを決めたFW岸田はこれで26試合で26ゴールとなった。J1であれ、J2であれ、J3であれ、「3試合に1点のペースでゴールを決めることができればフォワードとしてはまずまず優秀」と言えるが、今シーズンのFW岸田は1試合に1点ペースが続いている。得点ランキングで2位に位置するチームメイトのMF島屋はここまで14ゴール。その差は「12」。得点力に関してはJ3リーグの中では群を抜いている。
この日は先制ゴールを決めただけでなく、ドリブル突破から2点目につながったPKを獲得しており、3点目のMF平林のゴールもアシストした。結局、1ゴール1アシスト。3ゴール全てに絡む大活躍だった。2014年はJFLで21試合で17ゴールを挙げて得点王に輝いているが、1つ上のカテゴリーとなるJ3リーグではそれ以上のペースでゴールを量産している。味方を使うプレーもしっかりとこなせる点は高く評価できる。
■ センスが光る21歳のMF小塚和季山口の攻撃陣はエースのFW岸田が26試合で26ゴール、左SHのMF島屋が27試合で14ゴール、トップ下のMF福満が26試合で12ゴール、右SHのMF鳥養が27試合で8ゴールを挙げている。J3リーグの得点ランキングの上位4人を山口の選手が独占していた時期も長かったが、下がり目の位置でプレーするMF庄司とMF小塚の2人の活躍も目立っている。(※ ボランチのMF小塚も26試合で5ゴールを挙げている。)
中盤から前の選手の距離感が良いのでWボランチからいい縦パスが入ってきて複数人が絡んで崩すシーンが非常に多くなっているが、攻撃的な資質に恵まれているWボランチも山口の強みになっている。MF庄司はプロ4年目。町田のときは期待されたほどの活躍はできなくてやや伸び悩んだ印象もあるが、パスサッカーを志向する山口のサッカーに合っており、経験値はそれほど高くないチームを引っ張っている。
一方のMF小塚はJ1の新潟から期限付き移籍中。昨年の7月に当時はJFLに所属していた山口に移籍したが、期限付き移籍の期間を延長。山口に残留したが、この判断は正しかったと言える。飛ぶ鳥を落とす勢いで突っ走っている山口で主力の1人としてプレーできた経験というのはこれからのサッカー人生の中で大いに役立つだろう。本人にとっても、山口にとっても、新潟にとっても、いい移籍になっている。
新潟では約2年半で2試合の出場のみ。J1ではほとんど出場機会を得られなかったが、ボールタッチを見るだけで人とは違った才能を持っていることはすぐに分かる。下がり目の位置から楔のパスや決定的なラストパスを出すプレーを得意にしているが、ボールの持ち方が良いので、どんなタイミングでも鋭いパスが出てきそうな雰囲気がある。守る側からすると非常に厄介な話で一瞬たりとも気を抜くことが出来ない。
下がり目の位置から決定的な仕事ができる点などは若い頃のMF中村憲とイメージが重なるが、当時のMF中村憲と比べると「MF小塚の方がもう少し柔らかい。」という印象で創造的なプレーもできる。おそらくは来シーズンは新潟に戻ってプレーすることになると思われるが、MF小塚のようなタイプは今の新潟には見当たらない。周りの選手の良さを引き出すことが出来るのでどういう化学変化が生まれるのかは興味深い。
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