■ J2の第32節J2の第32節。7勝15敗9分けで勝ち点「30」の栃木SC(21位)がホームの栃木県グリーンスタジアムで水戸ホーリーホックと対戦した。水戸は8勝13敗10分けで勝ち点「34」。31節の試合でC大阪に1対4と大敗した栃木SCは3連勝中のFC岐阜に抜かれて入替戦圏内の21位に転落した。20位のFC岐阜との差は「2」。一方の水戸も勝ち点「34」なので21位の栃木SCとの差は「4」のみ。ともに残留争いに巻き込まれている。
ホームの栃木SCは「4-2-2-2」。GK桜井。DF荒堀、ハン・ヒフン、イ・ジュヨン、パク・ヒョンジン。MF本間、菅、西川、中美。FW阪野、金子翔。31節のC大阪戦(A)は出場停止だった左SBのDFパク・ヒョンジンがスタメンに復帰。今夏にJ1の清水から育成型期限付き移籍のMF金子翔は2試合連続スタメン。新外国人のMFジョナタンはこの日もベンチスタートとなった。右サイドハーフには長身のMF西川が抜擢された。
対するアウェイの水戸は「4-2-2-2」。GK本間。DF田向、細川、宋株熏、田中雄。MF石神幸、岩尾、鈴木雄、馬場。FW船谷、鈴木武蔵。今夏にJ1の新潟から期限付き移籍してきた五輪代表ストライカーのFW鈴木武蔵は4試合連続スタメン。30節の北九州戦(A)で移籍後初ゴールを決めている。8月末に京都で行われた手倉森ジャパンの代表候補合宿に初招集されたボランチのMF内田航は怪我のため欠場となった。
■ 終了間際に栃木SCが追いついてドロー試合の前半は圧倒的な水戸ペースで進んでいく。FW鈴木武蔵が立ち上がりから持ち前のスピードで相手の最終のラインをかく乱。すると前半21分に水戸は栃木SCのプレスをかいくぐってMF岩尾が逆サイドに展開すると待っていたMF鈴木雄が右足ダイレクトで鮮やかに決めてアウェイの水戸が先制する。リオ世代となるMF鈴木雄は今シーズン3ゴール目。天皇杯も含めると公式戦は4試合連続ゴールと波に乗っている。
前半は水戸が7本のシュートを放ったが、栃木SCは1本だけ。全く思うようなサッカーができなかった栃木SCは後半の頭からMF西川とFW金子翔を下げてFW杉本真とMF廣瀬浩を投入。交代の効果が出て後半の立ち上がりはホームの栃木SCがボールを保持して攻め込むが後半6分に相手のクリアミスからFW鈴木武蔵が右足で豪快なミドルシュートを決めて2点目を挙げる。FW鈴木武蔵は移籍後2ゴール目となった。
苦しい展開になった栃木SCは後半9分にMF菅に代えてMF小野寺を投入。早々に交代枠を使い切ったが、後半12分に左SBのDFパク・ヒョンジンの右足のクロスから右SBのDF荒堀がヘディングで合わせて1点を返す。DF荒堀は今シーズン2ゴール目となった。そして、後半42分には途中出場のMF廣瀬浩のパスを受けたボランチのMF本間が起死回生の同点ミドルシュートを決めて栃木SCが2対2の同点に追いついた。
34歳のMF本間は新潟時代の2011年以来なので約5年ぶりのゴールとなった。結局、多くのスーパーゴールが生まれた北関東ダービーは2対2のドロー。両チームの勝ち点差は「4」のまま。栃木SCは降格圏脱出とはならなかったが、0対2になったことを考えると「よく追いついた。」と言える。一方の水戸にとっては痛いドロー。栃木SCに勝っていれば残留争いから抜け出すことが出来たが、厳しい戦いは続いていく。
■ チームを救ったのはベテランのMF本間勲前半は水戸が相手を圧倒した。水戸の前半の出来は「文句なしだった。」と言える。栃木SCの出来があまり良くなかったことも関係しているが、新加入のFW鈴木武蔵が何度も快足を飛ばして相手の最終ラインにプレッシャーをかけ続けた。「内容的にこれだけ大きな差がありながらも0対1というスコアで終わったのは栃木SCにとってはラッキーだった。」と言えるほどだったが、後半はガラッと雰囲気が変わった。
きっかけの1つは栃木SCの素早い選手交代である。自身だけの責任ではないが、ほとんど機能していなかったFW金子翔とMF西川を下げてFW杉本真とMF廣瀬浩を投入。自分たちのミスから失点して0対2になった後もすぐにボランチのMF菅に代えてMF小野寺を投入。MF中美が足を攣って動けなくなった時間帯もあったので「積極的な後退が裏目に出たか・・・。」と思った時間帯もあったが3人の交代選手が頑張った。
もう1つは後半9分にFW鈴木武蔵がベンチに下がったことである。試合後に足を引きずりながら歩いている様子が映っていたので怪我による交代だったと思われるが、好き放題されていたFW鈴木武蔵がいなくなったことは栃木SCにはラッキーだった。「スピード勝負でも高さ勝負でも全く歯が立たない。」という状態だったので、FW鈴木武蔵の交代というのはこの試合における最大のターニングポイントだった。
当然、勝ち点「3」の欲しい試合であったが、ライバルの1つである水戸との差が広がらなかった意味は大きい。後半42分に生まれたMF本間のミドルシュートは劇的だったが、利き足ではない左足で蹴ったことが逆に良かったのか、これ以上ないほどいいコースに飛んで行った。MF本間はJ2時代の新潟でもプレーしているが、ちょうどJ2通算で100試合目の出場だった。節目の試合でチームを救うゴールを決めた。
■ 公式戦は4戦連発と波に乗るMF鈴木雄斗水戸は31節はホームで大宮に勝利した。ここでライバルの栃木SCを下すことができると相当に勢いに乗ることが出来たが2点リードを守り切れなかった。栃木SCは負けるとかなり厳しくなる状態だったので0対2になった栃木SCが攻めに出てくることは容易に予想できたが、1点差に迫る後半12分のDF荒堀のゴールで会場の雰囲気が大きく変わった。左SBのクロスから右SBが決めるというダイナミックなゴールだった。
2点差を守れなかった水戸にとってはダメージの残るドローと言えるが、前述のとおり、前半の出来は非常に良かった。前半21分の先制ゴールのシーンは攻守ともに出来が良かった前半を象徴するようなシーンと言えるが、左サイドでボールを受けたMF岩尾の逆サイドへのボールも完璧で、ダイレクトでボレーシュートを決めたMF鈴木雄のシュートも見事だった。これだけ鮮やかにボレーシュートが決まるのは珍しい。
MF鈴木雄は31節の大宮戦(A)でも決勝ゴールを決めているのでリーグ戦では2試合連続ゴールとなった。柱谷哲二監督の時は1トップでプレーすることもあったが、182センチと日本人の中盤の選手としてはサイズに恵まれており、フィジカルも強い。繊細なテクニックを持っているわけではなくて、荒削りなところもあるが、大きな可能性を秘めた選手である。父親は元日本代表。希少価値の高い選手と言える。
■ 栃木SCの脅威になり続けたFW鈴木武蔵ここ最近はリオ世代のMF鈴木雄の活躍も目立っているが、この日は何といってもFW鈴木武蔵の活躍が目立った。怪我の影響なのか、後半9分という早い段階でベンチに下がったが、『FW鈴木武蔵が最後まで試合に出場していたら水戸が大差で勝利していた可能性は非常に高い。』と断言できるほど。それほどFW鈴木武蔵の出来は良かった。「手が付けられない状態だった。」と言っても言い過ぎではないだろう。
FW鈴木武蔵は五輪代表の試合ではFC東京とMF中島翔と並んでしっかりとゴールという形で結果を残しているが、「所属クラブでは目立った実績はない。」と言える。新潟時代は後半の終盤に途中出場するケースが多かったので持ち味を出し切れていなかった。今回、出場機会を求めて水戸に期限付き移籍することになったが、J2の残留争いの行方を大きく左右する可能性のある移籍話である。
FW鈴木武蔵がどういう選手なのか?を改めて説明する必要はないと思うので省略するが、長い時間プレーする機会が増えるのは今のFW鈴木武蔵にとってはいい話である。もちろん、J1のクラブで高いレベルのポジション争いをすることで得られるものもたくさんがるが、試合に出場できなかったり、成功体験を得にくい環境になるとレベルアップするのは難しくなる。大きな決断だったと思うが、いい決断だったと思う。
結局、後半42分の栃木SCの同点ゴールも元新潟のMF本間のゴールで、今夏に新潟から水戸に期限付き移籍したDF宋鐘國の活躍も目立ったので、「新潟関係の選手の活躍」が印象的な試合になったが、新潟から修行に出ている選手の活躍が最近のJリーグでは目立っている。(ベテランのMF本間は完全移籍であるが、)福岡のMF酒井宣と山口のMF小塚の2人も主力として昇格争いをするチームでいい活躍を見せている。
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