■ J2の第31節J2の第31節。12勝8敗10分けで勝ち点「46」のジェフ千葉(7位)がホームのフクダ電子アリーナで京都サンガ(18位)と対戦した。京都は9勝15敗6分けで勝ち点「33」。千葉はプレーオフ圏内となるの6位の愛媛FCとの差はわずか「1」。自動昇格圏内となる2位の磐田との差は「8」。一方の京都は残留争いに巻き込まれており21位のFC岐阜との差は「4」のみ。ここまで苦しいシーズンになるとは誰も予想できなかった。
ホームの千葉は「4-2-2-2」。GK高木駿。DF大岩、キム・ヒョヌン、栗山、中村太。MF富澤、パウリーニョ、ネイツ・ペチュニク、井出。FW森本、松田力。ボランチのMF佐藤健は出場停止。MFパウリーニョが25節の水戸戦(A)以来6試合ぶりにスタメン出場。CBでプレーすることが多かったMF富澤はボランチでスタメン。新加入のFW松田力は30節の横浜FC戦(A)の後半50分に劇的な決勝ゴールを挙げている。
対するアウェイの京都は「4-2-2-2」。GK清水圭。DF石櫃、菅沼、バヤリッツァ、下畠。MF田森、原川、伊藤優、駒井。FW宮吉、有田。J2の得点ランキングで2位に付ける元日本代表のFW大黒はこの日もベンチスタート。8試合連続でスタメンから外れているが28節の磐田戦(A)で2ゴールを挙げるなど途中出場だけで計3ゴールを挙げている。2トップを組むFW宮吉とFW有田はともに4ゴールを挙げている。
■ 京都が終了間際に追いついてドロー序盤はアウェイの京都ペースとなる。ボランチのMF原川を中心に軽快にパスが回って押し込んでいく。劣勢の千葉だったが前半20分あたりを過ぎるとやや流れが良くなる。すると前半26分に千葉は右SBのDF大岩の楔のパスからFW森本が中央で後方から削られてこぼれたボールをMF井出が拾って右足でネットを揺らすが、FW森本に対するファールを取ったためゴールは認められず。千葉にとっては不運だった。
ただ、このプレーをきっかけにして千葉が押し込むようになる。すると前半36分に京都の左SBのDF下畠から高い位置でボールを奪ってカウンター。最後はFW森本が無人のゴールに流し込んでホームの千葉が先制する。体調不良等もあって今シーズンは欠場する試合が多くなっているFW森本は18節の福岡戦(H)以来のゴールでようやく今シーズン3ゴール目となった。前半は1対0とホームの千葉がリードして折り返す。
後半8分に京都は切り札のFW大黒を投入。なかなかFW大黒にチャンスが訪れなかったが、後半42分に左サイドからMF伊藤優がグラウンダーのクロス。簡単にクリアできるボールに思えたが、千葉のDFキム・ヒョヌンがクリアミス。その裏にいたFW大黒が押し込んで京都が1対1の同点に追いつく。FW大黒は今シーズン14ゴール目。その後、両チームとも2点目を奪う絶好のチャンスを作ったが決めることはできず。
最後まで目の離せない熱戦は1対1の引き分けに終わった。残留争いに巻き込まれている京都にとっては貴重な勝ち点「1」と言えるが、自動昇格を狙う千葉にとっては痛恨のドロー。2位の磐田との差が「10」、3位のC大阪との差が「7」に広がってしまった。J2は残り11試合なので自動昇格というのはちょっと厳しくなってきた。一方の京都は21位に転落した栃木SCとの差は「4」のみ。ギリギリの戦いが続いていく。
■ 正念場を迎えているジェフ千葉千葉は5試合負けなしとなった。ただこの5試合の成績は2勝3分けなので順調に勝ち点を伸ばせているわけではない。当然、京都は力のあるチームなので簡単に勝ち点「3」を獲得することではできないが、ホーム戦であること、そして、順位的には下のチームとの対戦であることを考えると勝ち点「3」が必要な試合だった。ミスから同点に追いつかれてしまったが、1つのミスが原因で勝ち点「2」を失う結果になった。
前半26分のMF井出のゴールが認められなかったのは千葉にとっては不運だった。どう考えてもアドバンテージを適用すべきシーンだった。ボールの流れをきちんと把握できていたら笛を吹くことは無かったと思うが、「J2では初の主審担当」ということで柿沼レフェリーは平常心ではなかったと推測できる。「アドバンテージを上手く活用できるか否か」というのは優秀な主審か否かの分かりやすい判断材料になる。
途中出場のFW安柄俊が3度あった決定機をいずれも逃したのも響いた。特に2つのヘディングシュートは完全にゴール前でフリーになっていた。京都の守備にも問題があったが高さを武器に戦うストライカーにとってはこれ以上ないほど最高のクロスが飛んできたので絶対に決めなければいけないシーンだった。チャンスシーンに絡めている点は評価できるが、結果を出さないと高くは評価されない世界である。
夏にMF富澤が加入しただけでなく、ここに来て大卒3年目のDF栗山が急成長中。キーパーも実力者のGK岡本が控えていることもあって守備的なポジションに関しては左SBのDF中村太を除くとメンバーは固定されていないが、それでも守備の堅さはリーグ屈指。個の能力も高くて、組織力も高い。前線からのプレッシングも機能しているので大崩れすることは考えにくい。守備に関する不安は少ない。問題は攻撃陣である。
FW森本の体調が整わなかったのも大きかったが、MFネイツ・ペチュニクを除くと攻撃的なポジションの選手はいずれも安定感を欠いた。「ネイツ以外」の頑張りが不可欠な状況だったが、FW森本が久々にゴールを決めたのは大きい。FW松田力は間違いなく大きな戦力になっており、FWオナイウ阿道も急成長している。ポジティブなニュースも少なくないが磐田やC大阪との差が広がってきた。千葉は正念場と言える。
■ なかなか残留争いから抜け出せない京都サンガ一方の京都も5試合負けなしとなった。石丸監督になってからは9試合で3勝3敗3分け。イーブンの成績ではあるが、チーム内の雰囲気は確実に良くなっている。主力メンバーも固まってきて目指す方向性もはっきりしてきた。サッカーの質はかなり高まっているので、「いいサッカーをしている割にはなかなか残留争いから抜け出すことが出来ない・・・。」というのが正直なところであるが、チーム状態はいい部類と言える。
言うまでもなく京都は地力のあるチームで総合力は高い。そもそもとしてこのあたりの順位で低迷しているのがおかしな話である。降格ゾーンの栃木SCや大分が四苦八苦していることを考えると、ここから一気に京都が勝ち点を積み上げて残留争いから抜け出す未来を想像することはそれほど難しくない。ただ、思うように勝ち点を伸ばせていないのは間違いないところなので、しばらくはシビアな戦いが続いていく。
右SHにMF伊藤優、左SHにMF駒井というドリブラーを起用して、前線には攻守両面で貢献できるFW有田とFW宮吉を起用。ボランチの軸にはMF原川を抜擢するなど中盤から前の構成は若くなっており躍動感も出てきた。特に左右両サイドのMF伊藤優とMF駒井の積極的な仕掛けは非常に面白いが、何だかんだでチームを救っているのは途中出場のFW大黒である。全て途中出場ながらここ3試合で4ゴールを挙げている。
■ さすらいの点取り屋「何故、FW大黒をなぜスタメンで起用しないのか?」という声も出てくると思うが、FW有田とFW宮吉の貢献度も相当なレベルである。若い2人をスタメンで起用して、勝負どころでFW大黒を起用するやり方がひとまず成功しているので、今、FW大黒をスタメンに戻すのはある意味ではギャンブルと言える。石丸監督の目指すサッカーを実現させるためには「動きの量」で貢献できるフォワードが必要になってくる。
先発起用されているFW有田とFW宮吉よりも分かりやすい結果を出しているにも関わらず、先発のチャンスが巡ってこないことに関しては、プロである以上、FW大黒にも思うところはあると考えられるが、そういう状況になっても腐ることなく最善の準備ができるのがFW大黒のいいところであり、そういう難しい状況であるにも関わらずピッチに立った時はしっかりと結果を出すことが出来るのがFW大黒の凄さである。
この日のゴールシーンもらしさ全開だった。左サイドからMF伊藤優がグラウンダーのクロスを入れたが精度は低かった。ニアでDFキム・ヒョヌンが簡単にクリアできそうなボールだったので普通であれば動きを止めてしまうような状況だったが、FW大黒だけはいろいろなことを想定してプレーを続けていた。「これぞストライカー」と言えるゴールで、「これこそFW大黒だ。」と言えるような見事なゴールだった。
J1通算では204試合で69得点。J2通算では126試合で73得点。合計すると330試合で142得点を挙げている。海外では思うような働きはできなかったが、日本国内ではどのクラブでも期待通りに結果を出してきた。「さすらい」という日本語は単独ではあまりいいニュアンスの言葉ではないのかもしれないが、「さすらいの点取り屋」という称号がよく似合う選手で、職人気質の魅力溢れる日本人屈指の点取り屋である。
★ 現在の投票数 → 137票
→ 投票したいチームを必ず6チーム選択してから「投票」のボタンをクリックしてください。
→ 「コメント」のところは何も書かなくてもOKです。(投票可能です。)
→ 記事内容に関係のないコメント(政治的な内容も含む。)はご遠慮ください。
関連エントリー 2008/11/20
もう一度行きたくなる日本のサッカースタジアム 10選 2008/11/21
もう一度行きたくなる日本のサッカースタジアム 番外編 2009/02/08
フクアリが生み出す新しいサッカースタジアム像 2011/02/19
両利きのサッカー選手などなど 2013/08/26
日本人でもっともポストプレーが上手な選手は誰か?について考える。 2013/08/27
日本人でゴール前のポジショニングセンスがあるのは誰か?について考える。 2013/08/28
現役の日本人選手で最高のファンタジスタは誰か? 2014/04/23
奇想天外な京都サンガのセットプレー 2014/05/20
Jリーグの主審20名を評価する。 (前編) 2014/05/21
Jリーグの主審20名を評価する。 (後編) 2015/09/17
クラブ別エントリー (ジェフ千葉) 2015/09/17
クラブ別エントリー (京都サンガ)
- 関連記事
-