■ 昇格1年目で首位を走るレノファ山口創設2年目となる2015年シーズンのJ3リーグは13チームで構成されている。13チームの3回戦総当たり方式でリーグ戦が行われるので各チームは年間で36試合を戦うが、チーム数が奇数なので「お休み」となる節がいくつか出てくる。全日程の半分程度を消化した段階で首位に立っているのは昇格組のレノファ山口。昨シーズンはJFLで16勝7敗3分けで4位という成績だった山口の快進撃を予想できた人はいないだろう。
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【J1】 2015年開幕直前 順位予想まとめ (参加者数:304名) →
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【J3】 2015年開幕直前 順位予想まとめ (参加者数:62名)7月5日(日)に行われた第19節を終了した時点で山口は15勝3敗で勝ち点「45」。2位のSC相模原が12勝4敗2分けで勝ち点「38」なので、勝ち点「7」差が付いている。3位の長野は12勝4敗1分けで勝ち点「37」で、4位の町田ゼルビアは10勝2敗6分けで勝ち点「36」。山口が頭1つ抜け出している状態で首位の山口と3位の長野の直接対決が行われた。自動昇格を目指す長野にとっては勝たなければならない試合と言える。
ホームの山口は「4-2-3-1」。GK一森。DF小池龍、廣木、宮城、黒木恭。MF庄司、小塚、鳥養、福満、島屋。FW岸田。エースのFW岸田は6試合連続ゴール中。17試合で16ゴールと2014年のJFL得点王の実力をいかんなく発揮している。FW岸田は大分U-18出身。日本代表のMF清武弘の1学年下となる。MF島屋は12ゴール、MF福満は10ゴール、MF鳥養は7ゴールを挙げており、得点ランキングの上位を独占している。
対するアウェイの長野は「3-4-2-1」。GK田中謙。DF内野、大島嵩、松原優。MFパク・ゴン、有永、小山内、山田晃、佐藤悠、近藤祐。FW宇野沢。ここに来て積極的な補強を行っているが、福岡のMFパク・ゴン、北九州のMF近藤祐、札幌のMF小山内の3人が揃って長野での初出場となった。解説者の都並敏史さんの息子で3節からずっとスタメンが続いていた大卒ルーキーのMF都並はこの日はベンチスタートとなった。
■ 0対2からの大逆転劇試合の前半は堅い展開となる。上位チーム同士の直接対決にありがちな睨み合いが続いたが、前半20分にホームの山口が右サイドのCKを獲得。左SBのDF黒木恭が左足で蹴ったボールを「7試合連続ゴールなるか?」に注目が集まった山口のエースストライカーのFW岸田がゴール前でうまく頭で合わせてネットを揺らしたかに思えたが、ハンド&イエローカードの判定でゴールは認められず。前半は0対0で終了する。
この試合で勝たないと自動昇格が厳しくなる長野は後半17分に左サイドを細かいパスワークで崩すと、最後はMF佐藤悠のグラウンダーのクロスを中央に入って来た右WBのMF小山内が右足でうまく合わせてアウェイの長野が先制に成功する。札幌から期限付き移籍のMF小山内が大仕事をした。さらに後半20分にも相手の不用意なクリアを奪った左WBのMF山田晃がキーパーとの1対1を確実に決めて長野が追加点を奪う。
0対2となった山口だったが、後半26分にMF福満が自ら得たPKを確実に決めて1点差に迫ると、後半45分には途中出場のDF香川のCKからCBのDF宮城がヘディングシュート。これが相手のオウンゴールを誘って2対2の同点に追いつく。さらに後半49分には右SBのDF小池龍が得たPKをエースのFW岸田が右足で落ち着いて決めて逆転に成功する。結局、0対2から3ゴールを奪った山口が劇的な形で勝ち点「3」を獲得した。
■ ダメージの大きい逆転負けで4位転落・・・長野にとっては表現の難しいダメージの大きい試合になった。首位の山口とはこれだけ勝ち点差があるので引き分けではダメである。勝つしかない試合で2対0とリードを奪うことができた。長野にとっては理想的な展開になったが、まさかの連続失点。「ドローでも厳しい。」という試合で負けるという最悪の結果になった。4位の町田が勝利したため、長野は首位の山口との差を縮めるどころか、4位転落となってしまった。
1点目のMF小山内のゴールは長野らしかった。今シーズンの長野はエースのFW宇野沢が怪我で出遅れたこともあって、フォワードの選手のゴール数が伸びてこない。この点が悩みの種になっているが、左右のWBの選手がゴールに絡むケースが多い。この日も1点目が右WBのMF小山内で、2点目が左WBのMF山田晃だったが、サイドをアップダウンするだけにとどまらず、積極的に中央に入ってくるのが特徴である。
解説の人は「守りに入ったことが長野の敗因」という話をしていたが、勝たないといけない試合でリードを奪ったチームが守備を重視した選手交代を行うのは珍しくない。サッカーの場合、予期せぬ失点や防ぎようのない失点があるので守備固めを行ったとしても必ず逃げ切れるわけではないが、逃げ切りに成功する確率は高くなる。なので「守りに入ったことが長野の敗因」という意見には賛同はできない。
■ ジャッジに泣かされたAC長野パルセイロ長野にとって気の毒だったのはジャッジに泣かされた点である。最後の3失点目につながったハンドでのPKは極めて妥当なジャッジだったが、山口の1点目のPKは「これくらいの接触でPKを取るのはどうなのか?」と思うようなシーンだった。もちろん、後手を踏んだMF小山内が手を出して止めようとしているのは確かだが、当事者のMF福満の倒れた直後のリアクションを見るとプレーを流すのが妥当だったと思う。
ただ、1失点目のPKに関しては「PKを取る人もいるだろう。」と思えるレベルなので誤審とは言えないが、前半26分にカウンターからMF山田晃の突破をサイドで阻止した山口のFW岸田のプレーは完全にイエローカードに相当するプレーだった。FW岸田は前半20分にゴール前での故意のハンドで1枚目のイエローカードを受けているので、この時点でFW岸田は2枚目のイエローカードで退場となるべきだったと思う。
日本では前半のうちに退場者が出ると、(退場に値する行為を行った選手ではなくて)主審の方が責められることになる。当然、誰しもが「できる限り11人対11人のままで試合が進んで欲しい。」と思うが、退場に値する行為があったときは別である。長野の美濃部監督や当事者のMF山田晃は「イエローカードが出ないのはおかしいのではないか?」という風な抗議を行っていたが、このシーンは完全な誤審だったと言える。
前半の半ば過ぎで相手のエースが退場になるのか否かは大きな違いがある。ある程度以上、サッカーを知っている人であればほぼ全員が疑問に感じるようなジャッジがあったので、「長野はアンラッキーだった。」と言えるが、気持ちを切り替えるしかない。今シーズンはJ2の残留争いも熾烈で、入れ替え戦に回る21位に戦力の豊富なチームが来る可能性もある。長野は諦めることなく自動昇格を狙う必要がある。
■ 異次元と言えるレノファ山口の得点力切羽詰った状態の長野とは対照的に山口は2位以下のチームとの差が広がっている。「引き分けでも悪くない。」という試合だったが、0対2の状況から3点を奪った。「J2ライセンス」が取得できるかどうかはまだ不透明な部分もあるので、J3リーグで優勝できたとしてもライセンスの問題でJ2昇格が見送りになる可能性は無きにしも非ずであるが、J3リーグの優勝に大きく前進する劇的すぎる勝利をつかんだ。
昇格1年目での首位というポジション、そして、16勝3敗という成績も驚きに値するが、最大の驚きは圧倒的な得点力である。19試合で57得点というのは「誤植なのか!?」と思うほど。リーグ2位の得点数を記録しているSC相模原は19試合で33得点で、リーグ3位の町田は19試合で26得点で、リーグ4位の長野と福島は18試合で23得点。「バイエルン・ミュンヘンかよ。」と思うほどの痛快なまでの突き抜け具合である。
スカパー初登場となった山口を興味深く観察したが、「これだけの得点力を誇るのも納得」と感じた。もちろん、相手チームは「リーグ屈指の堅守」として知られる長野で、首位攻防戦というプレッシャーも幾分かはあったと思う。思うようにプレーできなかった部分もあったと思うが、前の4人は絶えず動き回ってボールを呼び込んでおり、WボランチのMF小塚とMF庄司のところからは精度の高いパスが頻繁に出てくる。
MF庄司はJ2に昇格してきたときの町田で中心だった選手なのでサッカーファンには知られているが、FW岸田、MF鳥養、MF福満、MF島屋の4人はJリーグを中心に観ているサポーターにはほとんど馴染みのない選手である。「詳しくは分からない。」という選手たちがJ3リーグの得点ランキングの上位を独占していることに関してはちょっとした違和感も感じていたが、異次元の得点数を記録するのも分かる気はする。
■ 攻撃型のサッカーで旋風を巻き起こすレノファ山口2012年に昇格初年度でJ1の5位に入った鳥栖であったり、今シーズンのJ2で旋風を巻き起こしている金沢であったり、2013年の長崎であったり、堅い守備をベースにした堅守速攻型のチームが昇格1年目のシーズンで存在感を発揮することはJリーグでも稀にあるが、山口のような攻撃型のチームが昇格1年目でここまでの成績を残すケースというのは珍しい。長いJリーグの歴史を振り返ってみてもほとんどなかった。
雰囲気が似ているのは1994年にJリーグに昇格してきたベルマーレ平塚か。ただ、「攻撃が9、守備は1」くらいの振り切れようだった当時の平塚と比べると攻守のバランスも取れている。当然、堅守速攻というのも1つのやり方ではあるが、独自のカラーを持ったチームがもっと増えてこないとJリーグは面白くなくなる。そういう意味でも今シーズンのJ3リーグで旋風を巻き起こしている山口は注目に値するチームである。
個々の選手で目立ったのはボランチのMF小塚。J1の新潟から期限付き移籍しているが、下がり目の位置で攻撃的なセンスをいかんなく発揮している。新潟時代から攻撃的な資質を高く評価されて来たが、カテゴリーが2つ下がった環境でのびのびとプレーできている。柔らかいパスを出せるのがMF小塚の大きな武器で、同じようにパスに特徴のあるMF庄司と組むWボランチは本当に魅力的なコンビと言える。
町田で期待されたほどは活躍できなかったMF庄司、新潟で期待を集めながら出場機会を増やせなかったMF小塚のみならず、「期待されていたのに・・・。」という選手が頑張っているのも山口の1つの魅力ではないかと思う。G大阪ユースでFW宇佐美と同級生で、FW宇佐美に次ぐ(=MF大森以上の)評価を得ていたFW原口、プラチナ世代の1人でFC東京U-18時代にU-17W杯に出場しているDF廣木もその1人である。
個人的にはC大阪U-18出身でFW永井龍やMF扇原と同期でタレント軍団だったC大阪U-18の主戦キーパーだったGK一森がレギュラーとして快進撃を支えている点も感慨深いものがある。(※ 横浜FMユースで強烈な存在感を発揮していたMF松本翔も負けずに頑張ってほしいところ。)必ずしも順調なサッカー人生にはならなかった逆襲を誓う選手たちが放つエネルギーの大きさを昇格組の山口からは感じ取ることが出来る。
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