■ 一気に順位を上げて来たベガルタ仙台J1は第15節が終了。11勝4分けと無敗を続ける浦和が1stステージ制覇に王手をかけている。2位の広島との差は「7」。残りは2試合なので、浦和が2連敗して、広島が2連勝したとしても届かず。逆転逆転の可能性を残しているのはACLの関係で1試合消化が少ない4位のG大阪のみ。現時点で「9」の差があるので、浦和が2連敗して、G大阪が3連勝した場合のみ、G大阪に逆転優勝の可能性が出てくる。
「浦和の1stステージ制覇はほぼ確実」と言える状況になったが、残留争いは熾烈を極める。開幕前は仙台・甲府・清水・松本山雅・山形の5チームが残留争いの中心になるのでは?と言われていたが、仙台は15節はホームで鳥栖に5対0で大勝するなど7位。得点力不足に苦しんだ時期もあるが、15節を終えた段階でリーグ3位となる24得点を挙げている。33得点の浦和、27得点の川崎Fに次ぐ得点数を記録している。
今シーズンの仙台は「いい時期」と「悪い時期」の差が激しい。開幕5試合は2勝3分けと好スタートを切ったが、6節から5連敗。一気に残留争いに巻き込まれたが、11節からの5試合は3勝1敗1分け。今シーズンのJ1は浦和・広島・FC東京・G大阪・横浜FM・川崎Fの6チームとそれ以外の12チームの間に差があるので、3勝した仙台は再浮上した。(※ ただし、16位の山形との差は「5」のみ。油断できるような差ではない。)
■ 開幕前は降格候補と言われていたが・・・。仙台は伝統的に手堅いサッカーで結果を出してきたチームである。五輪代表チームを率いる手倉森監督が長く監督を務めてきたが、「堅守速攻」がウリのチームで、MF梁勇基を中心としたセットプレーも大きな武器。J1に再昇格した2010年からJ2に落ちることなくJ1で戦い続けている。2011年の震災で受けたダメージは大きかったが、2011年は4位、2012年は2位と好成績。被災地に明るい話題を提供し続けた。
今シーズンの仙台の前評判があまり高くなかった理由は2014年シーズンに残留争いに巻き込まれたことと、オフに攻守の軸となる選手を数名失ったことである。FW柳沢が現役を引退して、DF角田が川崎Fに移籍して、MF太田吉が磐田に復帰して、FW赤嶺はG大阪に移籍した。代わりに獲得した選手の中で「確実に戦力になる。」と思えるほどのビッグネームはいなかったので、この点が開幕前の低評価につながった。
しかしながら、ここまでは7位。同じように降格候補に名前が挙がっていた甲府は13位で、松本山雅は14位で、山形は16位で、清水は17位。どのチームも決してチーム状態が悪いわけではないが、今の時点では大方の予想に近い順位におさまっているので、「降格候補」と言われたチームの中では仙台だけが大方の予想を裏切る好成績を残している。6位の川崎Fとの差は「5」。上位争いに加わる可能性もある。
■ 確固たる自分たちのスタイル仙台はここ数年ではもっとも不安視された状態でシーズンに入ったが、やはり、「確固たる自分たちのスタイルがある。」というのは大きな強みで、「欠かせない主力」が抜けたとしても何とかなっている一番の理由と言える。新加入のGK六反(※ 5月には日本代表候補にも選出された。)やDF渡部やFW金園などが違和感なくチームに溶け込んでいるのもチームとしてしっかりとした指針があることが最大の理由と言える。
Jリーグも20年以上が経過したが、J1の中でも確固たるクラブのスタイルを持っているチームは少ない。J1の中では鹿島はそういうクラブの代表例に挙げられるクラブで、G大阪も(長谷川監督になってからはかなり守備の意識が高くなったが、)MF遠藤を中心としたパスサッカーで相手を圧倒しようとするスタイルは変わらない。他には広島や川崎Fや横浜FMなどもカラーと呼べるようなものを持っているチームと言える。
ただ、やはり、監督が交代したり、主力が変わるとスタイルも大きく変わるチームが多い。J2に降格したC大阪はそういうチームの1つで、クルピ監督のときは2列目のアタッカーを生かした攻撃型のサッカーをしていたが、クルピ監督が去った後は迷走している。もちろん、今いる選手の能力を最大限に引き出すことが監督に求められる大きな仕事になるが、根っこの部分がコロコロ変わるようだと強いチームは作れない。
そういう意味では仙台はぶれないチームである。手倉森監督の後を受けて2014年にアーノルド監督が就任したときは少し道から外れそうになったが、渡邉監督になってからは「堅守速攻」という長年築いてきたものが復活している。上を目指すことは大事なので、より良いものを求めて新しい道を模索することは大事になってくるが、仙台の場合、道に迷ったとしても、立ち返るところがあることが強みになっている。
■ 基本的なスタイルは変わらないが・・・。確固たるスタイルを持っていることがオフに主力を引き抜かれながらも下位に低迷していない理由の1つと言えるが、新しい選手が出てきている点が好成績ならびに得点力アップにつながっている。FW金園の加入も大きかったが、J2の長崎から戻って来たMF奥埜、ユース出身のMF茂木駿、韓国の大学から加入したMFキム・ミンテらの存在がプラスαをもたらしており、クラブとしてバージョンアップした印象もある。
MF奥埜は非常に運動量の多い選手である。13節の甲府戦(H)では「13.45キロ」というとんでもない走行距離を記録したが、単にガムシャラに走り回るだけでなくて知的に走り回れる選手である。走りの量のみならず、走りの質も高いので、MF奥埜がピッチ上にいるときは攻撃のバリエーションが増える。サイドアタッカーのMF茂木駿はキックに特徴のある選手で、開幕からスタメンで使われて新鮮な風を送り込んだ。
187センチの大型ボランチのMFキム・ミンテはどちらかと言うと守備型の選手かと思われたが、すでに3ゴール。定評のあった守備力だけでなく、攻撃力も発揮している。ここに来て仙台の得点力が大幅アップしている最大の功労者と言える。さらにここ最近は左SBに大卒2年目のDF二見が起用されているが、彼もスケールの大きな選手である。距離とスピードの出るロングスローは仙台の大きな武器になっている。
また、少し上の中堅世代となるが新加入のFW金園もダイナミックさがウリとなる選手である。昨シーズンまでの仙台は堅守速攻が武器で、計算できる中堅世代の選手が中心となって安定した試合運びを見せて地道に勝ち点を積み上げてきたが、彼らの加入や台頭によって雰囲気が変わってきている。基本スタイルは変わらないが、いい意味で「枠から外れるプレー」が出来る選手が多くなって、魅力度や面白さが増している。
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