■ 2ndステージの開幕戦J1は2ndステージが開幕。3勝9敗5分けで17位と降格ゾーンに位置するアルビレックス新潟がホームのデンカビッグスワンスタジアムで鹿島アントラーズと対戦した。鹿島は6勝7敗4分けで8位。ACLとの掛け持ちでタイトなスケジュールになったことも大いに関係しているが、名門クラブとしては不本意な成績で1stステージを終えた。初降格の危機を迎えている新潟にとっては降格圏を脱出することが目標となる。
ホームの新潟は「4-2-2-2」。GK守田。DF川口尚、舞行龍ジェームズ、大井、コルテース。MFレオ・シルバ、小泉慶、加藤大、山本康。FW指宿、山崎亮。急性胆嚢炎でしばらくの間、チームを離れていたMFレオ・シルバがようやくピッチに戻って来た。5月10日(日)に行われた第11節の横浜FM戦(A)以来のリーグ戦出場となる。リーグ6位タイとなる7ゴールを挙げているFWラファエル・シルバは怪我で欠場となった。
対するアウェイの鹿島は「4-2-3-1」。GK佐藤昭。DF西大伍、植田直、昌子、山本脩。MF青木剛、小笠原、カイオ、土居、金崎。FW赤崎。日本代表のMF柴崎岳は怪我で欠場となったが、左SBのDF山本脩がスタメンに復帰して、DF昌子は本職であるCBの位置に戻った。FW赤崎は7試合で4ゴールと少ない出場機会で結果を残している。長期離脱していたFWダヴィが戦列に復帰してきて久々にベンチ入りを果たした。
■ 鹿島が劇的な逆転勝利を飾る。試合は前半30分にアウェイの鹿島が先制する。左サイドのCKを獲得するとMF小笠原の蹴ったボールを東アジアカップの日本代表の予備登録メンバーに選出されたDF昌子が頭で豪快に決めて先制に成功する。しかし、直後の前半31分に新潟はMF加藤大のパスを受けたFW指宿が右足を振り抜くと、これが鮮やかにネット隅に決まってあっという間に1対1の同点に追いつく。FW指宿は2試合連続ゴールとなった。
すぐさま同点に追いついたことでチーム全体にエネルギーが湧き出て来た新潟は前半42分にカウンターからMF加藤大の絶妙のスルーパスを受けたボランチのMF小泉慶が落ち着いて決めて2対1とホームの新潟が逆転に成功する。高卒2年目のMF小泉慶は嬉しいJ1初ゴールとなった。4試合連続スタメンとなったMF加藤大はこの日も2アシストの活躍だった。前半は2対1と新潟がリードして折り返す。
後半は引き続いて立ち上がりから新潟が押し込む展開になる。高い位置でボールを奪ってチャンスに結びつける場面が何度も訪れたが、MF山本康とMF加藤大は絶好のチャンスにシュートを枠に飛ばすことが出来ず。後半15分に鹿島はFWダヴィを投入。流れを大きく変えることはできなかったが、後半49分にMF金崎のシュートがポストに当たって跳ね返ったボールをMF土居が押し込んで鹿島が2対2の同点に追いつく。
さらに後半50分にはMF金崎のパスを受けた途中出場のMF遠藤康が左足でシュート。うまくヒットしなかったが、MFレオ・シルバの足に少し当たってコースが変わってゴールイン。結局、1対2で敗色濃厚だった鹿島が後半49分と後半50分に連続ゴールを奪って3対2で劇的な勝利を飾った。17位と降格圏に位置する新潟は目前まで迫っていた勝利を逃しただけでなく、連続失点で勝ち点「1」すら獲得できなかった。
■ 底力を感じたアディショナルタイムでの逆転劇前半30分に鹿島がCKからDF昌子のゴールで先制したが、1分後にFW指宿のゴールで新潟が同点に追いつくと、その後は完全なる新潟ペースとなった。MF柴崎岳を欠く鹿島は新潟が得意とするプレスの餌食になって最終ラインや中盤での不用意なミスが続出した。1対1のスコアになってからの試合内容は圧倒的に新潟の方が良かったが、こういう結果になった。何と表現すればいいのか分からない試合になった。
鹿島イレブンの最後まであきらめない姿勢と同点に追いつくだけで満足することなく逆転までもっていったメンタリティはさすがだった。内容的にはかなり悪くて、自分たちのサッカーはほとんどできなかったが、必要以上にフラストレーションを溜めて自分を見失うような選手はいなかった。敗色濃厚だった鹿島にとっては勢いのつく形での勝利となった。結果だけを見ると最高のスタートを切ったと言える。
後半49分に同点ゴールを決めたのがMF土居で、後半50分に逆転ゴールを決めたのはMF遠藤康だった。ともにMF金崎のプレーがきっかけになったが、攻撃的なポジションは大卒2年目のFW赤崎がここ最近はしっかりとゴールという結果を残しており、エースのFWダヴィも戦列に復帰してきた。突如として攻撃的なポジションは選手層が厚くなったが、MF金崎とMF遠藤康とMF土居の3人はいいアピールができた。
アディショナルタイムでの連続ゴールには「底力」を感じたが、あまりいい内容ではなかったのは事実で、反省すべき点はたくさんある。気になるのはGK佐藤昭のプレーがあまり安定していない点である。GK曽ヶ端をベンチに追いやってスタメン出場が続いているが、代わってチャンスを得たGK佐藤昭に対しても全幅の信頼を置くのは難しい状況である。今シーズンの鹿島はキーパーのポジションで苦労している。
■ ショッキングな負け方ではあるが・・・。敗れた新潟はショッキングな敗戦となった。同じ2ndステージの開幕戦で最下位の清水がホームで神戸に0対5と大敗している。同じ1敗ではあるが、新潟の負け方と清水の負け方は全く違っている。内容的にも散々だった清水の負け方もダメージの大きいものだったが、新潟の負け方も相当に堪える負け方である。2ndステージの2節は7月15日(水)に行われるので、早く気持ちを切り替えなければならない。
「いいサッカーをしても勝てなかったら意味がない。」と考える人もいると思うが、「意味がない。」と切り捨てるのはあまりにも勿体ないと感じるほどこの日の新潟のサッカーは非常に良かった。1stステージの終盤はほとんどの試合で3バックを採用したが、この日は「4-2-2-2」を採用。MFレオ・シルバとMF小泉慶をWボランチの位置で起用したが、この2人が中盤の底で献身的なプレーを見せてチームを支えた。
これまでに何度も記述しているので繰り返しになるが、前からのプレスが胆となる新潟には「3-4-2-1」はミスマッチに思える。CBやGKに軽率なミスが続いたので、「後ろの枚数を多くしたい。」という考えの下、柳下監督は3バックを採用したと思うが、3バックだと持ち味のプレスはかかりにくくなる。チームとしての最大の武器を捨てて戦っているような状態だったが、「4-2-2-2」になると全体が活き活きしてくる。
■ 走れてかつ決定的な仕事もできる選手に進化中のMF加藤大3点目を奪うチャンスが沢山ありながらも決められなかった代償は大きかったが、新潟は若い選手が躍動した。なかなか結果が出なくて苦しんでいたFW指宿は失点直後の前半31分に値千金の同点ゴールを記録した。全く結果が出ていない時期も柳下監督はFW指宿に期待して起用し続けたが、ようやく実を結んだ。ゴールは見事だったが、ポストプレーなど「それ以外のプレー」の質もかなり高かったと言える。
右サイドハーフに入ったMF加藤大も素晴らしかった。1点目のFW指宿のゴールと2点目のMF小泉慶のゴールをいずれもアシストしているが、ラストパスを出すセンスはJ1のアタッカーの中でも屈指と言える。MF加藤大は1stステージの終盤になってスタメンで起用されるようになったが、1試合の走行距離の数字は1人だけ飛び抜けた数字を示しており、「走れてかつ決定的な仕事もできる選手」に進化しつつある。
約2か月ぶりの出場となったボランチのMFレオ・シルバもなかなかいいプレーを見せて周囲を安心されたが、この試合は何と言っても高卒2年目のMF小泉慶である。2対1のままで試合が終わっていたら大ヒーローだったので、終盤の連続失点で残念ながらヒーローになり損ねたが、90分を通して他の誰よりもフィールド上で輝いていた。チームの勝ち点にはつながらなかったが、称賛に値するプレーを見せた。
■ ここ数試合は驚きのプレーを続けるMF小泉慶FW指宿と同様でMF小泉慶も春先は低調だった。1年目に見せていたアグレッシブなプレーがほとんど見せられずにピッチを去る試合が多かった。昨シーズンの輝きは失われていたが、15節の名古屋戦(H)あたりから急激にパフォーマンスが良くなって、以後、毎試合のようにハイレベルなプレーを見せている。ブラジルに一時帰国していたMFレオ・シルバが「MF小泉慶の成長に驚いた。」と語っているのも納得である。
ポジションも同じで、運動量とボール奪取力がウリとなる点などMFレオ・シルバと共通する部分は多い。MF小泉慶も「どうやったらMFレオ・シルバのようなプレーができるのか?」を日々研究していると言うが、ここ4試合ほどのMF小泉慶のプレーはMFレオ・シルバが乗り移ったかのようなで、とてつもない活動量でチームを支えている。この日は中盤の底にMFレオ・シルバが2人並んでいるかのようだった。
ここ最近の試合で多くのゴールに絡んでいるレフティのMF加藤大にも同じようなことが言えるが、若い選手というのは短期間で急激に伸びることがある。開幕から低調なプレーが続いていたMF小泉慶のパフォーマンスが急激に良くなった理由は何なのか?は分からないが、些細なこともきっかけになりうる。降格ゾーンからの脱出に失敗した新潟だったが、ここに来てポジティブ要素がポツポツと出てきている。
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