■ J2の第8節J2の第8節。3勝1敗3分けで勝ち点「12」のセレッソ大阪(9位)がホームのヤンマースタジアム長居でザスパクサツ群馬と対戦した。群馬は1勝4敗2分けで勝ち点「5」。18位と苦しんでいる。C大阪は開幕から6試合は負けなしだったが、7節の金沢戦(H)は攻守両面でいいところなく0対2で敗れた。一方の群馬は4節の北九州戦(A)で今シーズン初勝利を挙げたが、5節以降は3連敗。エースのFWタンケの不在が響いている。
ホームのC大阪は「4-4-2」。GKキム・ジンヒョン。DF椋原、山下、染谷、丸橋。MF山口蛍、長谷川アーリアジャスール、扇原、パブロ。FWフォルラン、玉田。元ドイツ代表のFWカカウは臀部を痛めたため欠場で、FW玉田が2試合ぶりのスタメンで、新外国人のMFパブロはトップ下に入る。FWフォルランはここまでの7試合で4ゴール3アシストと好調を持続している。高卒ルーキーのDF池田がベンチ入りを果たした。
対するアウェイの群馬は「4-2-3-1」。GK富居。DF久富、乾、青木良、川島將。MFアクレイソン、松下裕、永井雄、小林竜、江坂。FW野崎桂。7節の愛媛FC戦(H)の前半に退場処分を受けたDF有薗は出場停止で、大卒4年目で長身のDF乾が今シーズン初スタメンとなった。左SBはこれまではDF小林亮がスタメン出場を続けていたが、この日は3月に加入したばかりのDF川島將が抜擢された。Jリーグ初出場となる。
■ 2対1でアウェイのザスパが逆転勝ち試合は開始2分にホームのC大阪が先制する。DF山下のロングフィードからFWフォルランが頭で落としたボールに反応したFW玉田が決定機を迎える。FW玉田はボールコントロールにやや失敗して自らのシュートに持ち込めなかったが、上手くリカバーして後ろを走ったFWフォルランにラストパス。これをFWフォルランがあまり角度のない位置から左足で決めて幸先よくC大阪が先制に成功する。
C大阪はこれまでに挙げた13ゴールはすべて後半に記録していたので、今シーズン初めて前半にゴールを挙げることができた。これで勢いに乗るかと思われたが、その後はアウェイの群馬ペースとなる。何度かチャンスを作った後の前半28分に左サイドでスローインを獲得すると、Jリーグ初出場となる左SBのDF川島將のロングスローからこぼれ球をMF小林竜が決めて群馬が1対1の同点に追いつく。
先制した後、なかなかリズムをつかめなかったC大阪は後半開始からMFパブロとDF椋原を下げてMF関口とDF酒本を投入。運動量の多いMF関口が入ったことでバイタルエリアにくさびのパスが出るようになって後半はC大阪が押し気味に試合を進めたが、後半39分に群馬は途中出場のFWオリベイラのキープからDF川島將が中央にクロスを上げると、最後はMF小林竜が頭で押し込んで2対1と逆転に成功する。
結局、29歳でベテランの域に入りつつあるMF小林竜が2ゴールを挙げる大活躍を見せた群馬が2対1でC大阪を下して今シーズン2勝目を飾った。ここまでわずか1勝だった群馬にとっては非常に価値のある勝利で、浮上のきっかけになり得る勝利と言える。一方のC大阪はホームで痛恨の連敗。3勝2敗3分けとなった。開始早々にFWフォルランが先制ゴールを挙げたが、思うような試合展開にはならなかった。
■ 伏兵のDF川島將が大活躍を見せる。この日は群馬の出来が非常に良かった。3連敗中で、相手は強豪のC大阪で、しかも、アウェイ戦。17,212人とお客さんも入っており、群馬にとって不利な条件が多かったが、逆に吹っ切れたのかもしれない。C大阪の出来は0対2で敗れた7節の金沢戦(H)と比べると幾分かは良かったが、群馬の出来は相手をはるかに上回るものだった。「C大阪の出来が悪かった。」というよりは「群馬の出来が良かった。」と言える。
トップ下で起用されたMF小林竜がヒーローになった。いずれもこぼれ球を拾ってゴールにねじ込んだが、持ち味である豊富な運動量がゴール前のシーンで生きた。群馬は当初は「4-2-2-2」を採用していたが、ここに来て、「4-2-3-1」を採用している。「長身のFWタンケが怪我で離脱した。」というのがシステム変更の一番の理由だと思うが、2列目のMF小林竜にとっては出場機会を増やす絶好のチャンスと言える。
「マン・オブ・ザ・マッチは2ゴールを挙げたMF小林竜で決まり」と言えるが、攻撃的なポジションの選手では1トップに入ったFW野崎桂、左サイドハーフのMF江坂の2人も出来が良かった。FW野崎桂は同点ゴールに絡んだが、体を張ったプレーでチームに大きく貢献した。DF山下とDF染谷の2人は「J2では屈指のCB」と言えるが、この日はFW野崎桂のパフォーマンスが大きく上回った。影のヒーローと言える。
Jリーグ初出場となった左SBのDF川島將の活躍も目立った。マン・オブ・ザ・マッチには2ゴールのMF小林竜を選んだが、DF川島將はほぼ同等の活躍を見せたと言える。経歴を見るとなかなかの苦労人である。おそらく、C大阪の選手のほとんどは名前もプレースタイルも全く知らなかったと思うが、左足のキックと距離の出るロングスローで2つのゴールに絡んだ。インパクトの大きいデビュー戦となった。
経歴を確認すると大卒2年目。昨シーズンはJFLの栃木ウ―ヴァでプレーした。183センチとSBとしてはサイズに恵まれており、大学時代はFC岐阜でプレーするDF阿部正と同期だったという。トライアウトを経て3月に群馬への加入が正式に決まったときは「アマチュア契約になります。」と発表されているので、どの選手よりもハングリー精神を持った選手と言えたが、彼のエネルギーが価値ある勝利につながったと思う。
■ 手痛いホームでの連敗・・・一方のC大阪はこれで2連敗となった。開幕6試合は3勝3分けとまずまずのスタートを切ったが、これで3勝2敗3分け。7節がホームの金沢戦で、8節もホームの群馬戦ということで、(開幕時点での)前評判のあまり高くなかったチームとのホーム2連戦だった。「最低でも1勝1分け。できれば2連勝。」と考えていたと思うが、まさかの2連敗となった。まだ始まったばかりとは言っても、手痛い連敗と言える。
これまでの試合の中で攻守両面であまり機能していないMFパブロを2試合連続でスタメンで起用したことが分かった時点で難しい試合になることは十分に予想できたが、それでも、開始早々の前半2分にFWフォルランのゴールで先制に成功した。序盤は群馬の守備があまり機能しておらず、ミドルパス一本で簡単に裏を取れそうな雰囲気があったので、畳みかけるチャンスはあったと思うが、その後は群馬ペースになった。
決定力の高い選手が多いので、開幕からそれなりに得点は取れているが、チャンスの数は決して多くない。相手を圧倒できた試合は3対1で勝利した2節の大宮戦(H)くらいで、その他の試合は「普通以下の出来」に終わっている。アウトゥオリ監督になってから距離の長いパスが多くなったが、バイタルエリアに効果的なパスが入らない試合が多くて、中央やサイドを綺麗に崩してチャンスを作るシーンは少ない。
■ 積極的に使うべき選手は誰か?「まだエンジンがかからない。」と言えるが、後半にMFパブロに代わってMF関口が投入されると前半にはほとんど見られなかった中央を細かいパスで崩すシーンが多くなった。効果的な崩しが多かった2節の大宮戦(H)もMF関口が崩しの局面でキーになったので、3節以降、MF関口の出番はほとんどなかったのは不可解と言える。MF関口は停滞感を打破できる可能性を持っているので「積極的に使うべき選手」と言える。
(もう少し攻撃的なキャラクターが強くなるが、)同様の仕事はMF楠神にもできるので、彼も「積極的に使うべき選手」だと思うが、あまり評価は高くないようで、出場のチャンスが巡ってきたのは1節の東京V(A)のみ。当然、新加入選手が多いので、選手の実力や適性を見極めている段階だと思うが、攻撃的なポジションの選手のアウトゥオリ監督の優先順位の付け方に関してはクエスチョンマークが付くところもある。
言うまでもなく、ある程度以上の実績を持った選手が多くて、かつ、ベテランも多い。攻撃的なポジションに関してはメンバーを固定する必要は全くないと思うが、中央で起点になったり、つぶれ役になってくれる選手がいない。FWカカウはサイズがあるのでそういう仕事もできる選手だと思うが、これまでのところはチャンスメーカーとして動き回るプレーを好むので、ゴール前を留守にするシーンが多い。
「ターゲットタイプが不足していることが苦戦の一因」と言えるが、そういう意味では3月に加入が決まった元日本代表のFW田代に期待したい。FWフォルランとFW玉田の2人が中央で待っている状況ではクロスを上げても簡単に跳ね返されてしまうが、FW田代がいれば相手にとって相当な脅威となる。彼がそれなりの状態でプレーできれば、今、C大阪が抱えている問題点のいくつかが一気に解消されるように思う。
関連するツイート 関連エントリー 2013/10/01
【C大阪×磐田】 セレッソは大きなクラブになれるか? (生観戦記・上) 2013/10/02
【C大阪×磐田】 セレッソは大きなクラブになれるか? (生観戦記・下) 2014/10/28
今、Jリーグで注目すべき選手を12人選んでみた。 (前編) 2014/10/29
今、Jリーグで注目すべき選手を12人選んでみた。 (後編) 2014/12/13
本当に「セレッソブーム」は起こっていたのか?を検証してみた。 (上) 2014/12/13
本当に「セレッソブーム」は起こっていたのか?を検証してみた。 (下) 2015/03/18
【熊本×群馬】 インカレ得点王の実力を証明したMF江坂任 2015/04/21
クラブ別エントリー(ザスパクサツ群馬) 2015/04/21
クラブ別エントリー (セレッソ大阪) 2015/04/21
Jリーグ (2015年シーズンまとめ)
- 関連記事
-