■ J1の開幕戦J1の開幕戦。広島市にあるエディオンスタジアムではサンフレッチェ広島とヴァンフォーレ甲府が対戦した。広島は森保監督になって4年目のシーズンで、甲府はオフに城福監督が退任して横浜FMを率いていた経験豊富な樋口監督が就任した。このカードは2013年のオフにMF柏が甲府から広島に移籍して、2014年のオフにはDF佐々木翔が同じく甲府から広島に移籍したという因縁がある。
ホームの広島は「3-4-2-1」。GK林卓。DF塩谷、千葉、水本。MF青山敏、森崎和、ミキッチ、柏、森崎浩、浅野拓。FW佐藤寿。2列目の軸だったMF石原直が浦和に移籍して、MF高萩がオーストラリアのウェスタン・シドニーに移籍したため、2シャドーのレギュラーが誰になるのか?が注目されているが、ベテランのMF森崎浩と20歳のMF浅野拓のコンビとなった。MF浅野拓はU-22日本代表にも選ばれている。
対するアウェイの甲府は「3-4-2-1」。GK荻。DF畑尾、山本英、野田紘。MFブルーノ・ジバウ、保坂、松橋優、阿部翔、石原克、阿部拓。FWアドリアーノ。主力の1人と目されていた北九州から加入のDF渡邉将は欠場で、J2の長崎から加入したDF野田紘が3バックの左で起用された。新外国人のMFブルーノ・ジバウはスタメン出場で、同じく新外国人のMFウィリアム・エンリケはベンチスタートとなった。
■ 2対0でサンフレッチェ広島が完勝試合は前半10分に広島が先制する。ハーフウェイラインよりも少し低い位置でボールを受けたボランチのMF青山敏がルックアップしてから裏に飛び出したFW佐藤寿に絶妙のミドルパスを送ると、FW佐藤寿が見事な胸でのコントロールから左足で豪快に決めて先制に成功する。このFW佐藤寿のゴールが今シーズンのJ1リーグ全体の初ゴールとなった。前半は広島がほぼ試合を支配して1対0とリードして折り返す。
後半も同様に広島ペースとなる。2シャドーの一角でスタメンに抜擢されて五輪代表のMF浅野拓にもビッグチャンスが訪れるが、これはキーパーのGK荻の好セーブに合って2点目とはならず。後半20分あたりを過ぎると甲府もいくつかゴール前のチャンスを作るようになるが、後半42分にコーナーキックから途中出場でJ2の京都から加入したMFドウグラスが豪快なヘディングシュートを決めて2対0とリードを広げる。
結局、試合は2対0でホームの広島が勝利して白星発進となった。甲府の放ったシュートは4本だけ。後半に左WBのMF阿部翔のクロスからベテランのMF石原克が惜しいヘディングシュートを放ったシーンがあったが、広島にとって危なかったのはこのシーンくらい。なかなか2点目のゴールを奪うことは出来なかったが、広島の完勝だったと言える。一方の甲府は心配されている攻撃面がかなり物足りなかった。
■ シャドーの一角で輝いた森崎浩司広島は今オフにMF石原直とMF高萩の2人が抜けている。京都のMFドウグラスやMF工藤浩などが加入しているが、2連覇を果たした時の2列目のレギュラー2人が揃って抜けてしまった。特にMF石原直は1トップの位置でプレーする機会も増えており、FW佐藤寿に代わって攻撃の軸になりつつあった。その影響もあって今シーズンの広島の前評判はあまり高くないが、開幕戦は危なげない試合を見せた。
考えてみると2シャドーのポジション以外はほとんど変わらない。GK林卓、DF塩谷、DF千葉、DF水本の4枚は不動で、ここに甲府のDF佐々木翔が加わったので+αの要素もある。ボランチのメンバー構成もほとんど変わっていないので、入れ替わりがあるのは2シャドーのところだけ。広島は完成度の高いチームであるが、後ろのメンツがほとんど変わっていないのであれば大崩れすることは考えにくい。
優勝争いに絡むことが出来るか否かは「2シャドーの位置に入る選手がどこまで活躍できるか?」にかかって来るが、この日はMF森崎浩の出来が良かった。CKから2点目のMFドウグラスのゴールをアシストしたが、それ以外にもたくさんのチャンスに絡んだ。五輪代表にも選出されている若いMF野津田も控えているが、「森崎浩司はまだまだやれる。」ということを知らしめるパフォーマンスだったと言える。
MF森崎浩は精度の高い左足のキックが持ち味の選手で、2004年のアテネ五輪にも出場している。このときは左WBでプレーすることが多かったが、若手時代から怪我と病気に泣かされることが多かった。特にここ最近はなかなか思うようなプレーをピッチ上で見せられずにいたが、この日は本当にいいプレーを見せた。クラブ生え抜きで16年目のベテラン選手が活躍するとチームは盛り上がる。
■ 飛躍が期待される3年目のMF浅野拓磨MF森崎浩と並んで2シャドーの一角でプレーしたMF浅野拓の出来はまずまずだった。持ち味であるスピードを生かしたドリブルで推進力を見せるシーンは何度かあって、後半には鋭い反転から強烈なシュートを放った。2シャドーの位置でプレーするので、「余りスペースが無い中でどれだけボールを受けることが出来るか?」が大事になって来るが、ボールの受け方などはなかなか良かったと言える。
これだけのスピードを持っていて、なおかつ、泥臭さもある。ちょうど1年前のゼロックスの横浜FM戦や五輪代表の試合ではゴールを決めているので意外な気もするがJ1ではまだノーゴール。早く初ゴールが欲しいが、この日のようなプレーができれば初ゴールはそれほど遠くは無いだろう。日本人で似たキャラクターの選手が他には見当たらない特異なスタイルの選手なので、順調に成長していくことが期待される。
ただ、ポジション争いは激しい。前述のようにMF森崎浩がいいプレーを見せて、ベンチスタートになったMF野津田は悔しさや歯がゆさでエネルギーを溜めていると思われる。そして、なによりもMF浅野拓に代わって途中出場したMFドウグラスが試合を決める2点目のゴールをマークした。五輪代表のことを考えるとMF浅野拓やMF野津田の出場機会が増えることを期待したいが、そう簡単にはいかないだろう。
MFドウグラスのゴールは圧巻だった。非常にヘディングの強い選手で、Jリーグの中では屈指のストロングヘッダーと言えるが、豪快なヘディングシュートだった。広島の攻撃は前線のトライアングルが肝となるので、「技術的にはあまり高くないMFドウグラスがフィットできるのかは疑問」と思っていたが、この日はゴールシーン以外でも味方との関係性は良かった。この選手が戦力になると広島にとっては大きい。
■ 継続路線を選択したヴァンフォーレ甲府一方の甲府はなかなかチャンスを作れなかった。昨シーズンもJ1の中ではブービーとなる得点数だったが、独力で局面を打開することができたMFクリスティアーノが柏に移籍したこともあって、迫力を欠いている。C大阪やG大阪で活躍したFWアドリアーノ、東京V時代にJ2でゴールを量産したMF阿部拓、ベテランでチームの顔であるMF石原克の3人が攻撃的なポジションを担ったが、いいシーンは少なかった。
甲府はオフに城福監督から樋口監督に変わったが、基本的なやり方は変わらない。相手ボールになったときは「5-4-1」の形になることがほとんどなので、かなり守備を重視したサッカーである。継続路線を選択して、前線の選手にも守備力や運動量が求められるサッカーであるが、打開力のある新外国人のMFウィリアム・エンリケやJ2の愛媛FCから戻って来たMF堀米などを積極的に起用して欲しいと個人的には思う。
甲府のサッカーは先制されると苦しくなる。前半10分の失点は痛かったが、後半42分の2失点目は宜しくない失点の仕方だった。まず言えるのは相手にCKを与えたプレーがまずくて、途中出場で投入されたばかりのMF松本大がヘディングで外にクリアしたが、比較的余裕のある体勢でフリーに近かった。わずかとなった残り時間を考えると無理にでもボールを繋ぐべき場面であり、MF松本大の判断が誤りだった。
■ 心配されていた高さ不足が露呈・・・その点はプレーが途切れた直後にキャプテンのDF山本英がジャスチャーを交えて本人に指摘していたが、そのプレーで与えたCKからMFドウグラスに決定的な2点目のゴールを奪われた。ここでMFドウグラスに対応していたのはMF松本大だった。大卒2年目のMF松本大は後半37分に右WBのMF松橋優に代わってピッチに送り出されたが、CKを与えたプレーと相手をマークしきれなかった2つのプレーで失点に絡んだ。
CKを与えたプレーを指摘されて気持ちの切り替えができないままでCKの守備をすることになったのが良くなかったのではないかと思う。ただでさえ開幕戦というのは緊張するが、ピッチに入ったばかりとなると平常心でプレーするのは難しくなる。昨シーズンはJ1で3試合の出場のみ。まだJリーグに慣れていない選手なので仕方がないところもあるが、しっかりとした気持ちの準備ができていなかったのではないか。
このシーンでもう1つ気になったのはマッチアップに関してである。甲府はマンマークで対応しており、MF松本大は184センチとサイズのある選手ではあるが、フィジカルの強い選手ではない。Jリーグでも屈指のストロングヘッダーである184センチのMFドウグラスに対応するのがMF松本大ではかなり苦しい。「マッチアップのミスではないか?」と思ったので、その点ではMF松本大に対しては気の毒に感じた。
ただ、その他も分が悪いものばかりだった。DF千葉 vs DF山本英、DF塩谷 vs DF野田紘、DF水本 vs DF畑尾、DF佐々木翔 vs MF稲垣、MF柴崎晃 vs MF保坂というマッチアップで、FWアドリアーノとMF阿部翔の2人がフリーマンだったが、こうしてみるとほとんど全てがミスマッチである。DF青山直とDF佐々木翔の抜けて「高さ不足」が懸念されていたが、開幕戦から空中戦における苦しさを露呈することになった。
関連するツイート 関連エントリー 2013/07/14
サンフレの佐藤寿人の本を読んで彼が愛される理由を知る。 2013/08/03
【広島×大宮】 平和都市のHIROSHIMAで感じたこと (生観戦記) 2013/08/05
広島におけるカープとサンフレの良好な関係 2014/01/19
数字で感じるMFミキッチ(広島)の凄さ (前編) 2014/01/19
数字で感じるMFミキッチ(広島)の凄さ (後編) 2014/02/23
【ゼロックス:広島×横浜FM】 大物感が漂うMF野津田岳人 2014/02/25
ゼロックスでの広島批判に感じた強烈な違和感 2015/02/24
【清水×甲府】 J1でもっとも過小評価されている選手の1人・DF山本英臣 2015/03/10
管理人が選んだ面白かった試合・いいゴール・気になった選手・ベストイレブンなど (J1の第1節) 2015/03/10
【J1】 全30ゴールの中から第1節のベストゴールをみんなで決めよう。 (動画付き)
- 関連記事
-