<横浜FCでの失敗>2009年シーズン終了後、先の「乱」が起こり、2010年には第2の鳥栖とも言えるような横浜FCが誕生した。シーズン当初は出遅れたが、第14節のホーム鳥栖戦で4-0で勝利すると、一気に浮上を開始した。2010年は6位という結果となったが、個人的にはこれは監督の手腕というよりも選手の能力であったように思う。
鳥栖で主力としていた選手に加え、FW大黒、FWカイオ、MFホベルトの加入が大きかった。FW大黒は16試合で12点と大暴れし、移籍後にはFWカイオが加入。点が取れるFWの中心と呼べる選手が途切れなかったことは大きく、何よりMFホベルトという中盤の底で安定感をもたらすボランチの存在がチームを安定させた。
しかし一方で、この2010年に横浜FCから大成したと言えるルーキーはおらず、2011年はMFホベルトが移籍したことに加え、鳥栖から移籍した選手が年齢や怪我の関係でパフォーマンスを落とすと、そのツケが一気に回ってくる。
この年、横浜FCは18位と低迷。2010年9月に岸野監督はGM兼任となっていたが、2011年のオフにGMを辞任。選手ではMF荒堀とDF藤田優人が攻守に頑張っていた印象だが、それ以外にポジティブな話題は少なかったように感じる。結局翌年の2012年に開幕から3試合で解任となり、その後を引き継いだ山口監督により横浜FCはプレーオフに進出。岸野監督の評価は地に落ちる結果となった。
あくまで個人的な見解ではあるが、先の監督としての特徴から、横浜FCでの失敗の原因をまとめると以下のようになる。
(1) GM兼任による自身の特徴の薄れGM兼任となり、補強に関する権限を持つようになったことで大卒選手の育成がおろそか(必要性が薄く)になった。また、結果にこだわるあまり、鳥栖時代に行っていた「熱心な指導で選手を伸ばす」という指導者としての特徴が出なくなった。鳥栖を去る際に昇格できなかった原因に(考えた末に)「お金」を挙げており、個人的にそれは間違いではないと思うが、その「お金」が自身の特徴を消す結果となってしまったことは皮肉である。
(2) 横浜FCという特殊な環境とのミスマッチ誤解を恐れず言うと、横浜FCは「設立の経緯」「カズという存在」「謎の資金力(特に岸野監督時代)」という特殊な環境だと言える。そこにさらに元鳥栖の選手を大量に引き連れてくる、という特殊性を持ち込んだ。監督経験豊富というわけでもなく、松本育夫さんのような後ろ盾もなく、岸野さんには手に負える環境ではなかったと正直感じる。
<富山での再出発>横浜FCでの失敗後、松本山雅U-18監督を務めた後、富山で再びプロの監督としての再出発を図ることとなった。個人的にはこの人選は「最適」だと思うし、以前より安間監督の後任には岸野さんしかいないと考えていた。
ヴェルディ出身ということもあって安間監督ほどではないかもしれないがコネクションは持っている。GMを任せるとまずい部分が出るが、安間監督の解任ができない理由の一つに「コネクションがある」と言われていたことを考えると適任であるし、横浜FCほどお金をポンポン出せるクラブではないため、この点はあまり心配する必要はないかもしない。
しかし、今の富山にとってコネクション以上に必要なものは「戦う姿勢」だと感じている。今シーズン何度か富山の試合を見たが、あまり「戦う姿勢」は感じられなかった。安間監督は富山でいろいろなフォーメーションを試し、工夫を重ねていたように思うが、低迷していたり伸び悩んでいるチームに必要なのは前を向いて戦う姿勢と、それを支える指揮官であるように思う。
「J3への降格」は今回が初めてのため何とも言えない部分はあるが、「J2降格」関しては降格後に地固めをして躍進した例も少なくない。今回の富山がどちらに転ぶのかは分からないが、0から這い上がるクラブに熱血指導が持ち味の岸野さんという組み合わせは相性は悪くない。
当時、松本監督の下で昇格を目指して4位となった鳥栖は、2006年シーズンの終わりにエースストライカーであったFW新居が移籍し、J1昇格を目指すにはあまりにも戦力が足りなかった。それでも、2007年から3年間、楽しみながら鳥栖を応援できたことは先に出たような大卒選手の成長に加え、岸野監督を筆頭にした「鳥栖ファミリー」があったからこそだ。
鳥栖での最後は綺麗なものではなかったが、それらの経験を踏まえた岸野監督の富山での戦いぶりは、鳥栖サポーターとしてではなく、一人のサッカーが好きな人間として、純粋に見てみたい。富山サポーターにとって2014シーズンは面白くない、辛いシーズンだったと思うが、2015シーズンはちょっとだけ期待してみてもいいかもしれない。
(ライター紹介)【 ハンドル名 】:ジョン
【 年 代 】:30〜39歳
【 性 別 】:男性
【 地 域 】:関東
【 自己紹介文を150文字程度で記述してください。(省略可) 】:
関東在住で鳥栖サポーターのジョンです。良くも悪くも思い出のある人がJの舞台に戻ってくるということで綴ってみました。ここまでに綴ったような経験を踏まえ、人間としてどう成長したのかを見たいと思っています。なお、今回の就任に際していろいろな意見を見ましたが、監督の能力的な部分では「富山での成否は作戦参謀の有無にかかっている」というのが的を得た意見だなと思っています。
【 管理人にメッセージがあればお書きください。 (省略可) 】:
公私ともに最近忙しくなり、久々の投稿となりました。シーズン終了後のデータに基づいた分析等はしているところが少ないため、選手の特徴の確認にもなり助かっています。逆にシーズン中の個々の試合のコラムはあまり読めていませんでしたが・・・。Jリーグはシーズンオフですが、年明けに開催されるアジアカップのコラムも期待しています。
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