■ J1の第23節J1の第23節。4勝10敗8分けで勝ち点「20」のセレッソ大阪(16位)と、9勝5敗8分けで勝ち点「35」の柏レイソル(6位)がヤンマースタジアム長居で対戦した。J1の残留争いに巻き込まれているC大阪は16位に位置するが、残留圏で15位の甲府との差は「1」。勝ち点「3」を獲得して、一日でも早く降格圏を抜け出したいところである。
ホームのC大阪は「4-2-2-2」。GKキム・ジンヒョン。DF酒本、染谷、山下、丸橋。MFキム・ソンジュン、扇原、南野、楠神。FW杉本健、永井龍。イタリア人のペッツァイオリ監督が解任されて、大熊監督がチームを指揮することになったが、大熊監督のデビュー戦となった天皇杯の4回戦の磐田戦(H)は2対0で勝利して好スタートを切った。
対するアウェーの柏は「3-4-2-1」。GK菅野。DF鈴木大、近藤直、エドゥアルド。MF茨田、大谷、太田徹、橋本和、工藤壮、高山薫。FWレアンドロ。得点源のFWレアンドロは17試合で6ゴールを挙げており、日本代表復帰を狙うMF工藤壮は22試合で5ゴールを挙げている。12試合で5ゴールのMF田中順は今夏にスポルティング・リスボンに移籍した。
■ 5月3日(土)以来となるリーグ戦での勝利試合は序盤からハイペースで攻守の切り替えの早い展開となる。両チームとも前線からの守備が機能して、ゆっくりとしたビルドアップを許さない。互いに高い位置からのプレスがハマった時にチャンスシーンを迎えたが、前半44分にC大阪が右サイドでFKを獲得すると、ゴール前でFW杉本健が頭で合わせてホームのC大阪が先制に成功する。
柏は後半開始からFWレアンドロとDF近藤直を下げて、MFドゥドゥとDF増嶋を投入。FW工藤壮が前半よりも高い位置でプレーするようになるが、後半はC大阪ペースとなる。待望の追加点が入ったのは後半18分で、ボックス内でMF楠神のパスを受けたFW永井龍が振り向きざまでシュートを決めて2対0と突き放す。FW永井龍はJリーグ初ゴールとなった。
結局、最後まで全体の運動量が大きく落ちなかったC大阪が2対0で勝利して、リーグ戦では5月3日(土)に行われた第11節の名古屋戦(A)以来なので約4か月半ぶりに勝ち点「3」を獲得した。そしてホームに限定すると3月15日(土)に行われた第3節の清水戦(H)以来なので、ほぼ半年ぶりの勝利となった。一方の柏は6試合ぶりの敗戦となった。
■ 公式戦は3連勝となったC大阪23節は下位チームの頑張りが目立った。22節を終えた段階で14位の名古屋、15位の甲府、16位のC大阪、17位の大宮が揃って勝ち点「3」を獲得したので、C大阪は降格圏を抜け出すことはできなかったが、ナビスコカップ(=準々決勝の第2戦の川崎F戦(A))と天皇杯(=4回戦の磐田戦(H))を含めると公式戦は3連勝と調子が上がって来た。
9月10日(水)に行われた天皇杯の磐田戦(H)から大熊監督が指揮を執っているが、明らかに変わったのは前線からの守備である。「4-2-2-2」を採用しているが、FW永井龍とFW杉本健の2人が立ち上がりから積極的に相手の最終ラインにプレッシャーをかけ続けるので、相手のミスを誘発することができるし、最終ラインにかかる負担が少なくなった。
攻撃においては公式戦では4試合連続ゴール中だったMF南野がようやく得点感覚を取り戻したことが何よりも大きいが、それに加えて、2列目の左サイドで起用されているMF楠神がアクセントになっている。この日も2点目のFW永井龍のゴールをアシストしたが、持ち前のテクニックと運動量を駆使して、相手の守備をかき回している。
今更言うまでもないが、C大阪のサッカーで肝となるのは2列目である。MF香川、MF乾、MF家長、MF清武、MFキム・ボギョン、MF倉田などなど、近年は有能な2列目のアタッカーが顔となってチームを引っ張ってきたが、FW柿谷がチームの顔になった2012年の終盤以降はフォワードが中心になって、C大阪らしさというのはあまり感じられなくなった。
もちろん、FW柿谷がコンスタントに点を取ることができた2012年の夏以降と2013年シーズンはそれでも全く問題がなかったが、MF楠神が2列目で起用されて、頻繁にボールに触ることができると、当時のC大阪のサッカーが蘇ってくる。C大阪に加入してからはなかなかゴールができずに苦しんでいるが、攻撃においては彼がキーマンになるだろう。
■ ようやく生まれたJ1での初ゴールFW杉本健とFW永井龍というユース出身で、期待の生え抜き2トップが結果を出したのも大きい。ともにサイズがあって、運動能力も高くて、高校年代の頃から将来を嘱望されていたストライカーだったが、この日は2トップを組んで、ともに「献身的な守備でチームに貢献しつつ、自らもゴールを決める。」という見事な活躍を見せた。
FW杉本健については集中を欠いたプレーもいくつか見られるので、もう一歩、上のレベルのプレーができると思うし、また、しなければならないと思うが、FW永井龍は本当によく頑張っている。今、自分が持っている力をフルに発揮できていると言える。トップチーム昇格後は期待に応えられずに苦労したが、ようやくJ1でゴールを決めることができた。
この日はFWフォルランはベンチスタートで、怪我のFWカカウはベンチ外だった。大熊監督になって前線からの守備が機能するようになったが、これが結果が出始めている最大の理由と言えるので、守備力と運動量に難があるFWフォルランはベンチスタートにして、点が欲しいところで切り札的に投入するのがもっとも効果的な策と言えるだろう。
新加入で元ドイツ代表のFWカカウに関してはちょっとした怪我で戦列を離れているが、コンディションは悪くない。むしろ、想像以上にコンディションは良い。初ゴールは生まれていないが、しっかりとボールもおさまっており、スタメンで起用してもきちんと守備のタスクをこなすことはできるのではないか。これからの活躍に期待したいところである。
■ なかなかゴールペースが上がってこない工藤壮人一方の柏は前半の出来は決して悪くなかった。C大阪のプレスの前になかなかボールを繋げなかったが、柏の前からのプレスも機能しており、C大阪のビルドアップのミスを誘発して何度かチャンスを作った。先制ゴールが決まるまでは互角の攻防が繰り広げられたが、失点シーンでは187センチのFW杉本健の高さに対抗できなかった。
柏はこれで8位に転落したが、3位の鳥栖とは「6」差なので、十分にACLの出場権を狙える位置につけている。シーズン途中にMFレアンドロ・ドミンゲスが抜けて、さらにはMF田中順も抜けているので、予期せぬ形で攻撃の中心となる選手が退団することになったが、それでもチーム力ならびに攻撃力が大きく落ちないところはさすがである。
さらに上の順位に行くためには、MF工藤壮の頑張りは不可欠と言える。昨シーズンは33試合で19ゴールを記録してザックジャパンにも召集されたが、今シーズンは23試合で5ゴールと思うようにゴールペースが上がってこない。FWレアンドロが加入して下がり目の位置でプレーする機会が多くなったことも関係しているが、数字としては物足りない。
関連エントリー 2013/04/12
柏レイソルのストライカー工藤壮人 2013/09/25
ベン・メイブリーさんの大阪ダービーに関するコラムを読んで・・・ 2013/10/01
【C大阪×磐田】 セレッソは大きなクラブになれるか? (生観戦記・上) 2013/10/02
【C大阪×磐田】 セレッソは大きなクラブになれるか? (生観戦記・下) 2014/02/25
生・フォルランを観に行って来た。 2014/04/27
ACLで頑張ったチームと選手はもっと評価されるべきだと思う。 2014/05/14
同情せざる得ないセレッソ大阪の殺人的なハードスケジュール 2014/06/01
【J論】 「数字が語るACL。Jリーグ勢最大の敵は広州恒大にあらず。」を寄稿しました。 2014/09/05
セルジオ越後さんの「Jリーグのレベルは下がった。」発言は何年連続なのか?について調べてみた。
- 関連記事
-