1st Halfでは、オシムジャパンの戦略について。
2nd Halfでは、各ポジション別に、特記すべき事項を羅列する。
■ フォワードの組み合わせオシムジャパンになってから7試合を行ったが、スタメンフォワードは次のとおり。ガーナ戦とインド戦の山岸のポジションをFWだったのかMFだったのか区別するのは難しいので、ここでは便宜上、ミッドフィールダーと定義する。
① 田中+我那覇 (T&T戦)
② 田中+巻 (イエメン戦)
③ 田中+巻 (サウジアラビア戦)
④ 田中+巻 (イエメン戦)
⑤ 巻+佐藤 (ガーナ戦)
⑥ 巻+播戸 (インド戦)
⑦ 巻+我那覇 (サウジアラビア戦)
ここから見てとれるのは、はじめの6試合が、ポストプレーヤータイプ(巻 or 我那覇)とセカンドストライカータイプ(田中 or 佐藤 or 播戸 or 山岸)の組み合わせだったが、最後のサウジアラビア戦だけ、ポストプレーヤータイプ(巻と我那覇)を並べたことである。ファーストトップにマークが集中し、うまく起点を作ることが出来なかった過去の反省から、大胆に巻と我那覇を並べる布陣を採用したがが、これが成功し、たくさんのチャンスを生み出したことは記憶に新しい。
→ 2人の位置関係は、巻が前目で我那覇がやや下がり目。キープ力のある我那覇が、マークの薄い相手のCBとボランチの中間のポジションに入ってボールを受けて、タメを作るシーンが目立った。フォワードの選考基準は、非常に明確で、J1でゴールランキング上位の日本人選手は、すべて代表に呼ばれている。ちなみに、昨シーズン、J1で二桁のゴールを挙げた日本人選手は、我那覇(川崎)、佐藤寿(広島)、播戸(G大阪)、前田(磐田)、谷口(川崎)、巻(千葉)、高松(大分)、阿部(千葉→浦和)、中村(川崎)、松橋(大分)の10人だけ。俊足FW松橋も、近いうちに代表に呼ばれるかもしれない。
確かに、現状の日本には、ファンニステルローイやトレゼゲ、トーニのような国際レベルのセンターフォワードはひとりもいない。だから、センターフォワードタイプの選手を2人並べて起用するのは、打開策としては、ひとつの非常に有効な手段である。とはいっても、巻のようなタイプを二人前線並べると、攻撃に柔らかさがなくなって、硬直する可能性もある。よって、セカンドトップには、ポストプレーもできて、柔軟なプレーもできる万能型の選手を置きたい。その候補として名前が挙がるのは、高原直泰(フランクフルト)と前田遼一(ジュビロ磐田)。
注目の選手① 高原直泰<
ジーコ時代を思い出してみると、このチームの命運を握っていたのは、中村でも中田でもなく、高原だったように思う。豪華なメンバーを揃える中盤から出るパスを、高原が決められるかどうかに勝敗の行方はかかっていた。
ドイツW杯でノーゴールに終わり、高原に対しては非難の声が強かったが、同情できる余地もあった。高原がゴールを決めなければならない立場であり、役割だったにもかかわらず、高原に点を取らせようとする特別な策はなく、彼が独力でなんとかするしか術がなかった。フィールド上で、一番負担がかかっていたのが高原だった。
万能型のストライカーである高原だが、国際舞台でファーストトップを務めるには不足している部分も多々ある。ジーコジャパンでは、常にフォワードのファーストチョイスだった高原は、鈴木隆行と2トップを組んだこともあったが、基本的には柳沢や玉田、大久保らと2トップを組み、相手のターゲットとなってつぶされることが多かった。
ボクは、高原とオシムは、かなり合うのではないかと思う。高原のベストポジションは、下がり目のフォワードで、屈強型のフォワードと2トップ組むことで、最大限の能力が発揮できるのではないかと考える。高原は、運動量が豊富でクレバーな動きのできる選手なので、現時点では、オシム監督がセカンドトップという難しいポジションを高原に任せる可能性はかなり高いのではないかと思う。
注目の選手② 前田遼一もうひとり、ジュビロの前田もオシム監督が求めるセカンドトップをこなす万能性をもつ。相手を背負ったときのうまさは高原以上で、味方を使ううまさは群を抜いている。以前とは比べられないくらい体の強さを見に付けており、国際舞台でのプレーにも、何の不安もない。
高原はフォワードでの器用しか考えられないが、前田については、変則的に攻撃的MFで起用しても面白いのではないかと思われる。これは、オシム監督が高さと運動能力のある山岸をサイドに置いて、相手のサイドバックとのミスマッチを作って、ここを打開策の一つとして考えているのと同じ類である。前田のような選手が中盤にいれば、ボールはこれまで以上に落ち着くだろう。
[参考]
今シーズン、オシムジャパンに選出されそうなフォワードを13人挙げてみる。この13人を、ファーストトップとセカンドトップの2つに分類してみると、次のようになる。
ファーストトップ
巻誠一郎(ジェフ千葉)
我那覇和樹(川崎フロンターレ)
高松大樹(大分トリニータ)
田代有三(鹿島アントラーズ)
平山相太(FC東京)
矢野貴章(アルビレックス)
セカンドトップ
佐藤寿人(サンフレッチェ広島)
田中達也(浦和レッズ)
播戸竜二(ガンバ大阪)
坂田大輔(横浜Fマリノス)
大久保嘉人(ヴィッセル神戸)
ファーストトップ/セカンドトップ
高原直泰(フランクフルト)
前田遼一(ジュビロ磐田)
■ 召集予想
◎ 巻誠一郎(千葉)
→ オシム監督のフォワードのファーストチョイスで、6試合連続スタメン出場を果たしているが、まだノーゴール。ゴール以外の部分での貢献度の高さは疑いようがないが、”巻誠一郎”の魅力は献身的なプレーができることだけではなく、それにプラスしてゴール前での得点感覚にも優れていること。オシム監督は、「ゴールはないが、巻はチームに貢献している」というが、今シーズンは、代表でもゴールを重ねて得点感覚も示して欲しい。
◎ 我那覇和樹(川崎)
→ オシム監督によって初めて代表に選ばれてからの活躍ぶりは目覚しい。柔軟なプレーで前線で起点を作るプレーは非常に効果的。巻のようなタイプとも、播戸のようなタイプとも2トップを組める。シュート精度も高く、いっそうの飛躍が期待される。
○ 高原直泰(フランクフルト)
フランクフルトでゴール感覚を取り戻した高原も、当然、代表の有力候補。運動量が豊富で守備でも貢献できるプレースタイルは、オシム監督の目指すスタイルと合致するだろう。
○ 播戸竜二(ガンバ大阪)
アウェーのインド戦での2得点の活躍が印象深い。裏に抜ける速さだけではなく、中盤まで引いてきて味方の攻撃参加を促すポストプレーも正確で、前線でボールを落ち着かせることができる。決定力の高さや勝負強さにも定評があり、ムードメーカーとしての存在感も抜群で、代表に定着する可能性も十分。
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