■ 好チームだったザンビア日本代表の最終テストマッチとなるザンビア戦は打ち合いとなったが、4対3で日本代表が競り勝った。3対2と逆転した後の戦い方には課題を残したが、高い身体能力を有しているだけでなく、組織的に戦うことができるザンビアのモチベーションが高くて、フランス出身のビュメール監督がしっかりと日本代表のことを研究していたこともあって、非常に有意義なテストマッチになった。
恥ずかしながら、ザンビア代表の試合をフルで観たのは初めてだったが、想像していた以上にいいチームだった。(そもそもとして、ザンビア代表の試合が日本で中継されることも非常に珍しいのではないか。)W杯には出場したことがないので、なかなか試合を観る機会がないが、日本のサッカーファンにポジティブな印象を与えることができたのは間違いないところである。
2年前に行われた2012年のアフリカネイションズカップ(ガボンと赤道ギニアの共同開催)で初優勝を果たしたことがザンビア代表を語る上で欠かせないキーワードになっているが、アフリカネイションズカップでは優勝が1回で、準優勝が2回で、3位が3回。ということで、かなりの成績を残しており、本大会に出場したのは16回。アフリカネイションズカップの常連国である。
64試合で26勝20敗18分けという成績を残しているが、26勝というのは、1位のエジプト、2位のナイジェリア、3位のガーナ、4位のカメルーン、5位のコートジボワールに次ぐ勝利数である。アフリカは摩訶不思議なところがあって、「アフリカネイションズカップでは強いのにW杯予選になると駄目」となるチームがいくつかあるが、ザンビアもそういうチームの1つと言えるのかもしれない。
■ ジーコジャパンの問題点は何だったのか?いずれにしてもW杯の本大会の初戦となるコートジボワール戦を前に実りの多いテストマッチとなった。これで今年に入って4連勝となって、W杯の初戦を迎えることになる。テストマッチなので勝ち負けというのはあまりこだわる必要がないポイントではあるが、負け続けた状態で大会に入るよりは、勝っている状態で本大会に入る方がいいのは間違いないところである。
昨年11月の欧州遠征のベルギー戦から連勝が続いており、調子はまずまずである。失点は相変わらず多いが、点は取れている。となると、「この流れはW杯の本大会の直前にアウェーでドイツ代表と好試合(2対2の引き分け)を演じたジーコジャパンと同じではないか。」、「ジーコジャパンの二の舞になるのではないか。」という意見も出てくると思うが、的外れな意見と言わざる得ない。
もちろん、日本代表の実力や対戦相手との力関係を考えると、日本代表が普段通りの実力を発揮できたとしても、GL突破が約束されるわけではない。そこまでの実力はないので、W杯での好成績が保証されるわけではないが、ドイツW杯のときのジーコジャパンの問題点は何だったのか?また、ジーコジャパンの大会直前の調子をきちんと覚えていれば、そういう意見にならない。
■ ピーキングの失敗と内紛ドイツW杯のときは、直前のドイツ戦のインパクトが大きかったので、「調整がうまくいった。」、「W杯前は好調だった。」と思われがちであるが、全然、そんなことはなかった。2月のアメリカ遠征ではアメリカ代表に完敗して、3月のエクアドル戦は辛勝で、壮行試合となったスコットランド戦は0対0の引き分けで、ドイツ戦の次に行われた最終テストマッチのマルタ戦は1対0だった。
もちろん、勝ち負けあるいはスコアというのはあまり重要ではないが、2006年に入ってからのジーコジャパンは内容も悪くて、停滞感を感じさせる試合が続いた。クラブで低調なパフォーマンスだったり、出場機会を失っている選手もいて、本大会を含めて内容の良かった試合はドイツ戦くらいである。「ジーコジャパンもW杯前は好調だった。」という認識は大きな誤りである。
また、当たり前の話であるが、「大会前に結果が出ているから本大会ではダメ」、「大会前に結果が出ているチームはW杯で結果を出すことができない。」というわけでもない。結局、ジーコジャパンの主の敗因はピーキングの失敗とチームが一枚岩になることができなかった点の2つである。そして、ザックジャパンが同じ症状に陥る可能性があるかというと、その可能性はほぼゼロである。
念のために触れておくと、ドイツW杯は豪州・クロアチア・ブラジルと厳しいグループに入った。なので、ピーキングの失敗と内紛の影響だけが敗因とは言えないが、五輪も含めると2年に1度、世界大会を経験しているので、コンディション調整に関するノウハウは蓄積されており、この分野でミスを犯すことは考えられないし、チームが分裂することも今のメンバーを考えると想像できない。
■ ターニングポイントとなったドイツW杯結局、ドイツW杯は0勝2敗1分けで、2得点7失点という非常に厳しい結果に終わった。MF中田英、MF小野、MF中村俊、MF稲本、FW高原らを中心としたシドニー世代はユース年代から常に結果を出してきた。「ドイツW杯でも大丈夫だろう。」と期待されていたので、その分、惨敗のショックは大きかったが、ドイツW杯から学んだことは多かった。この失敗を無駄にはしていない。
もちろん、初出場を果たした1998年のフランスW杯、自国開催でベスト16と成功をおさめた2002年の日韓W杯、予想外の活躍を見せた2010年の南アフリカW杯で得たものも多かったが、もっとも多くのものを得ることができたのは2006年のドイツW杯だったと思う。苦い経験となって、代表バブルがはじけるなど厳しい時代を迎えたが、日本サッカー界にとってターニングポイントになった。
何をしなければならないのか、何をしてはいけないのか、どういう選手が求められるのか、2006年のドイツW杯をきっかけにしてクリアになった。その後の2010年の南アフリカW杯で好成績をおさめることができた要因の1つはドイツW杯での失敗から学ぶことができたところであり、特に「団結力」というのは岡田ジャパンだけでなく、ザックジャパンにおいても強みになっている。
その言葉の由来を考えるとちょっとおかしな表現になるが、「二の舞にはならない。」と思う最大の理由はドイツW杯(での失敗)を経験しているからである。ドイツW杯での苦い経験がなかったら、同じようなミスをおかす可能性があったのかもしれないが、選手やスタッフだけでなく、サポーターもジーコジャパンからたくさんのことを学んでいる。同じ失敗を繰り返すことは考えにくい。
関連エントリー 2008/05/30
中田英寿のいない日本代表チーム 2009/02/24
フランスW杯 直前でカズを外した岡田監督の選択は正しかったと思いますか? 2009/08/31
トルシエがゴン中山を召集した理由 2009/12/23
小笠原満男が岡田ジャパンに召集されない理由 2011/06/26
中田英寿のいた18年前のU-17世界選手権 2011/07/01
1996年 アトランタの思い出 2011/07/15
1999年 黄金世代が世界一に近づいたとき 2012/01/23
松田直樹はもういない・・・。 2014/06/08
全記事一覧(2005年-2014年)
- 関連記事
-