■ J2の第15節J2の第15節。8勝3敗3分けで勝ち点「27」の松本山雅(3位)と、9勝2敗3分けで勝ち点「30」のジュビロ磐田(2位)がアルウィンで激突した。J2は開幕14連勝の湘南が首位を独走しているが、2位以下は混戦になっている。この試合は2位の磐田と3位の松本山雅の直接対決となったが、2点差以上で松本山雅が勝利すると自動昇格圏内となる2位に浮上することができる。
ホームの松本山雅は「3-4-2-1」。GK村山。DF飯田、多々良、犬飼。MF岩間、喜山、田中隼、岩沼、岩上、船山。FW塩沢。4試合連続でFWサビアが1トップで起用されていたが、5試合ぶりにFW塩沢がスタメンで起用された。栃木SCから加入のFWサビアは9試合で2ゴール、ベテランのFW塩沢は14試合で2ゴールを挙げている。エースのMF船山は14試合で9ゴールを挙げている。
対するアウェーの磐田は「4-2-3-1」。GK八田。DF櫻内、木下、藤田義、宮崎。MFフェルジナンド、小林祐、ペク・ソンドン、山田大、ポポ。FW前田。日本代表経験のあるDF駒野とMF松井は欠場で、W杯日本代表メンバーに選出されたDF伊野波はしばらくチームを離れることになったので、特に守備的なポジションは経験の少ない選手を起用せざる得ない状況になっている。
■ 松本山雅が上位対決を制する注目の上位対決は前半3分にホームの松本山雅が先制する。左サイドからMF岩沼がクロスを入れて、FW塩沢が頭で落としたボールに反応したMF船山がGKとの1対1を確実に決めて先制ゴールを奪う。FW船山は早くも今シーズン10ゴール目となった。さらに前半30分にもスローインの流れからDF飯田が決めて2対0とリードを広げる。前半は2対0と松本山雅がリードして折り返す。
後半は磐田がボールを保持する時間が長くて、松本山雅は我慢の時間帯が長くなる。攻撃的なポジションの層が厚い磐田は、MF山崎とFW金園を投入。終了間際にMF山崎の突破をきっかけにエースのFW前田が決めて1点差に迫る。FW前田は今シーズン9ゴール目となった。さらに終了間際にDF木下に決定機が訪れるが、フリーで放ったヘディングシュートを枠に飛ばすことができない。
2点差以上で松本山雅が勝利した場合は、得失点差で磐田を上回って2位に浮上することができたが、結局、最終スコアは2対1。2位浮上はならなかったが、松本山雅が直接対決を制して価値ある勝ち点「3」を獲得した。これで両チームが勝ち点「30」で並んだ。磐田は首位の湘南が敗れたので少しでも差を縮めたかったが、湘南にお付き合いする形となった。
■ いい雰囲気の中での試合松本山雅はJ2に昇格して3年目となるが、上位争いをするのは初めてである。この日は1つの上の順位に位置するタレント軍団の磐田が相手ということもあって15,597人の大観衆で埋まった。昨シーズンのG大阪戦で記録した17,148人には及ばなかったが、チケットはソールドアウトだったという。どこに空席があったのか不思議に思うほどで、いい雰囲気の中で試合が行われた。
最後の最後で1点差に迫られて、さらには同点になってもおかしくないピンチがあったので、締めくくり方には課題を残した。90分以上ほぼ思い通りに試合を進めてきたので、あと少しのところで勝ち点「3」が勝ち点「1」になっていたら、悔やんでも悔やみきれないところだった。関係者は肝を冷やしたと思うが、何とか相手のシュートミスに助けられて、勝利を手にすることができた。
15,597人という数字はJ1の平均よりも少ないので、磐田の選手が過剰にプレッシャーを感じることは無かったとは思うが、単純に人数で評価することはできないほどアルウィンというところは独特である。球技専用のスタジアムで、収容人数的にもちょうどいいくらいであるが、満員で埋まると異常な雰囲気になる。クラブにとっては大きな財産であり、大きな助けになっている。
■ 勝ち点「3」の代償松本山雅は勝ち点「3」を得ることができたのは良かったが、その代償も大きかった。後半の終盤にプレー続行が不可能となってピッチを去ったFW塩沢はアキレス腱断裂の大怪我で全治5カ月と診断された。J2リーグは11月23日(日)が最終節となるが、最終節に間に合うかどうか微妙なところである。そして、大きな怪我なので、年齢を考えても無理をさせることはできない。
松本山雅にとっては大きな戦力ダウンである。今シーズンはFWサビアとFW塩沢の2人が1トップのレギュラーの座を争っており、スタメン回数はFW塩沢が8回で、FWサビアが7回。したがって、半々と言えるが、チームとして機能しているのは、やはりFW塩沢が1トップに入っているときである。守備面を含めた個人の数字に表れない部分での貢献度ではかなりの差がある。
日本代表もそうであるが、1トップにどんなタイプを起用するかで大きく変わってくる。松本山雅はJ2の中ではロングボールを多用するチームであるが、空中戦に強くて、運動量があって、どんな場面でも競りに行く精神力を持っているFW塩沢が1トップのときと、ボックス内で力を発揮する生粋のストライカーであるFWサビアが1トップのときは全く違っている。チームに与える影響は大きい。
もちろん、CBやボランチや2列目の選手を入れ替えたときも、チームの雰囲気は変わるが、1トップを採用しているチームはフォワードが代わると大きく変わる。FW塩沢と似た系統のFW棗も怪我で戦列を離れており、1トップをどうするのか?というのが、突如として問題になってきた。FWサビアがスタメンに定着して、コンスタントに点を獲ってくれると反町監督の悩みは少なくなるが・・・。
■ W杯メンバーからは外れたが・・・一方の磐田は雰囲気に飲まれたわけではなかったと思うが、前半30分までに2点を失うと苦しくなる。2点とも警戒していたはずのクロスからやられているが、特にCBのDF飯田とDF犬飼の2人が攻撃に参加したときは、ゴール前の高さ勝負になるとかなり分が悪い。松本山雅のストロングポイントがどこなのか?は十分に承知していたと思うが、分かっていても止めるのは難しい武器である。
試合前の段階では2位の磐田が勝ち点「30」で、3位の松本山雅が勝ち点「27」だったので、磐田はこの試合に勝つと「6」差を付けることができた。こうなると、しばらくの間は余裕を持って戦うことができたが、勝ち点で並ばれてしまった。プレーオフは何があるか分からないので、J2の大本命と言われた磐田としては最低でも2位に入って自動昇格を決めたいが混戦になってきた。
試合は続いていくので気持ちを切り替えるしかないが、エースのFW前田は後半終了間際にゴールを決めて早くも9ゴール目となった。15試合で9ゴールというのは、なかなかのペースである。昨シーズンはJ1で33試合で9ゴールだったが、肩にかかるプレッシャーが軽減されたのか、今シーズンのFW前田はここ何年かでは、一番、いい感じでプレーしているように見える。
FW前田はW杯メンバーからは外れた。似た系統のフォワードであるFW大迫との比較で落選という流れになったと思うが、ザックジャパンになってから、多くの試合でFW前田が1トップで起用された。アジアカップの優勝に貢献して、ブラジルW杯の出場権獲得にも貢献したので、最終的にメンバーから落選したからといって、これまでの活躍や貢献が無になるわけでは決してない。
どうしても4年間の活動の最後となるW杯メンバーに選ばれた選手にスポットライトが当たるが、何年か後に「ザックジャパンのフォワード陣」のことを思い出そうとしたとき、ブラジルW杯でよほどのことが無い限り、ほとんどの人はFW前田遼一の名前とプレーを真っ先に思い出すだろう。この4年間、誰よりも日本代表に貢献してくれたフォワードであることは間違いない。
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