■ 審判とうまく付き合う必要 サッカーに限らず、スポーツ観戦を楽しむためには、審判とうまく付き合う必要がある。ただ、これはなかなか難しいことである。観戦歴の浅い初期段階の頃というのは、どうしても、「今日の試合は審判のせいで負けた。」、「なんで、ウチのチームは不利な判定ばかり受けるのか!!!」、「Jリーグは下手くそな審判ばっかり。」となりがちである。(これは誰しもが最初に通る道である。 )
ある程度慣れてくると、審判との付き合い方も分かってくるが、サッカーの場合、
・ファールか?ノーファールか?の境界線
・PKかどうか?の境界線
・イエローカードが出るかどうか?の境界線
の3つを把握できると、過剰なストレスを感じずに済む。ただ、境界線というのは、審判によってマチマチである。そして、都合良く、90分という短い時間の中で、その境目となる「似たような複数の場面」が起こるかというと、その可能性は低い。よほどのことが無い限り、そういう都合のいいシーンは発生しないので、特に、サッカーの試合では、審判が境界線を示すのは難しい。
■ 境界線を知ることが大事 バスケットは試合中に5つファールを犯すと退場になる。漫画のスラムダンクの湘北と綾南の試合で、すでに4ファールを犯していた綾南のセンターの魚住がコートに戻ってきた直後、4ファールであるにもかかわらず、果敢に攻撃を仕掛けた。危ないシーンだったが、果敢にアタックしてもファールは取らなかったので、以後、これくらいのチャージであれば、審判はファールを取れなくなった。
「魚住はココまでなら大丈夫(=オフェンスファールにはならない。)というチャージングの境界線を引いたんだ!!! 」という描写があったが、どこまでがノーファールで、どこからがファールになるのかという境界線を知ることは非常に大事になってくるが、先のとおりで、サッカーの場合、1試合の中で似たようなシーンというのはほぼ無い。よって、境界線を知るのは難しい。
「さっきはファールを取ったのに、何故、今のはノーファールなのか?」と審判に文句を言う人(選手ならびにサポーター)は多いが、当然、審判なりの基準がある。(繰り返しになるが、)90分という限られた時間の中で、境界線を知るのはほぼ無理である。が、その審判の癖なり、傾向を知っておくと、全く情報を持っていない人よりは、ストレスを感じずに試合を観ることができると思う。
■ ファールを積極的に取る人・取らない人 境界線のあいまいさが不信感を生んで、トラブルの引き金になることは珍しくないが、ファールに関して、イエローカードに関して、PKに関して、審判ごとに癖はある。「ファールを積極的に取る人・取らない人」、「イエローカードを出しやすい人・あまり出さない人」、「PKを取る人・ほとんど取らない人」と、調べるとはっきりとした傾向が出ているので、これを(
上)と(
下)でまとめてみた。
まずは、ファール数に注目したい。もちろん、首位攻防戦やダービーマッチなど、荒れやすい試合を担当するとファールの数は多くなる。当然、難しい試合を任されることの多い(評価の高い)レフェリーの平均値はちょっと高めになるが、Jリーグの主要なレフェリー20人の2013年シーズンの担当試合数とファール数とその平均値をまとめて、平均値の低い人から並べると、表1のようになる。
このとおりで、1試合平均のファール数がもっとも少なかったのは高山啓義さんで23.1/試合。逆に、もっとも多かったのは、佐藤隆治さんで28.2/試合となった。西村雄一さんや家本政明さんなどは、「プレーを流す傾向が強い。」と多くの人が認識していると思うが、そのとおりで、この2人もあまりファールを取っていない。多くの人の認識通りの数字が出ていると言える。
もちろん、「ファールをあまり取らないから優秀な審判である。」とは言えないし、「ファールをたくさん取るので、駄目な審判である。」とは言えない。基準がブレなければ、どちらでも構わないと思うが、流す傾向のある審判のときは、選手も簡単に倒れることなく、頑張ってプレーを続ける必要があるし、サポーターが「ファールではないか?」と執拗にクレームを付けても、あまり意味がない。
おそらく、1試合の中で、「ファールとも言えるし、ノーファールとも言える微妙なプレー」というのは10シーン前後だと思うが、そういうとき、律儀にファールを取る人もいるし、ほとんど取らない人もいるし、その中間の人もいる。多い人と少ない人で平均で5ほどの差があるので、審判によって大きな違いがあることを頭に入れて対応できる選手やサポーターの方が賢明と言えるだろう。
表1. J1の主要レフェリーのファール数 (2013年)
| J1 | J2 | 合計 |
| 試合数 | ファール数 | 平均 | 試合数 | ファール数 | 平均 | 試合数 | ファール数 | 平均 |
高山啓義 | 13 | 299 | 23.0 | 6 | 140 | 23.3 | 19 | 439 | 23.1 |
西村雄一 | 16 | 392 | 24.5 | 6 | 126 | 21.0 | 22 | 518 | 23.5 |
廣瀬格 | 15 | 374 | 24.9 | 10 | 232 | 23.2 | 25 | 606 | 24.2 |
野田祐樹 | 0 | 0 | 0.0 | 21 | 510 | 24.3 | 21 | 510 | 24.3 |
福島孝一郎 | 12 | 296 | 24.7 | 8 | 205 | 25.6 | 20 | 501 | 25.1 |
今村義朗 | 14 | 347 | 24.8 | 12 | 305 | 25.4 | 26 | 652 | 25.1 |
家本政明 | 21 | 542 | 25.8 | 12 | 290 | 24.2 | 33 | 832 | 25.2 |
村上伸次 | 22 | 573 | 26.0 | 10 | 246 | 24.6 | 32 | 819 | 25.6 |
吉田寿光 | 20 | 510 | 25.5 | 9 | 235 | 26.1 | 29 | 745 | 25.7 |
飯田淳平 | 20 | 496 | 24.8 | 11 | 306 | 27.8 | 31 | 802 | 25.9 |
前田拓哉 | 8 | 219 | 27.4 | 16 | 403 | 25.2 | 24 | 622 | 25.9 |
井上知大 | 8 | 205 | 25.6 | 12 | 322 | 26.8 | 20 | 527 | 26.4 |
岡部拓人 | 11 | 276 | 25.1 | 9 | 251 | 27.9 | 20 | 527 | 26.4 |
扇谷健司 | 21 | 533 | 25.4 | 9 | 260 | 28.9 | 30 | 793 | 26.4 |
山本雄大 | 12 | 316 | 26.3 | 7 | 187 | 26.7 | 19 | 503 | 26.5 |
木村博之 | 19 | 529 | 27.8 | 12 | 308 | 25.7 | 31 | 837 | 27.0 |
松尾一 | 19 | 515 | 27.1 | 11 | 305 | 27.7 | 30 | 820 | 27.3 |
中村太 | 14 | 392 | 28.0 | 4 | 104 | 26.0 | 18 | 496 | 27.6 |
東城穣 | 18 | 488 | 27.1 | 10 | 298 | 29.8 | 28 | 786 | 28.1 |
佐藤隆治 | 21 | 565 | 26.9 | 12 | 366 | 30.5 | 33 | 931 | 28.2 |
| 304 | 7867 | 25.88 | 207 | 5399 | 26.08 | 511 | 13266 | 25.96 |
■ J2を担当することが多い17名の数字今度は、J2を担当することが多い17名の数字である。これが表2となるが、33歳と若手の小屋幸栄さんが22.2/試合でもっとも少なくて、31歳の日比野真さんが31.0/試合でもっとも多くなっている。J1の場合も同様であるが、個人的な印象を述べると、1試合平均のファール数の少ないレフェリーの方が、安心して試合を任すことのできる優秀なレフェリーが多いように感じる。
小屋幸栄さんの22.2/試合というのは、J1の主要レフェリー20名の中でもっとも低かった高山啓義さんの23.1/試合よりもさらに低い数字である。結局、試合の流れが読めていて、アドバンテージをうまく使えるレフェリーはファール数が少なくなる。ファール数の少ない人と優秀な人(=主審としての能力が高いと思う人)が重なる印象があるのは、これが1つの理由だと思う。
表2. J2の審判団のファール数と平均値 (2013年)
| 試合数 | ファール数 | 平均 |
小屋幸栄 | 13 | 288 | 22.2 |
吉田哲朗 | 21 | 513 | 24.4 |
榎本一慶 | 20 | 492 | 24.6 |
上村篤史 | 9 | 222 | 24.7 |
河合英治 | 16 | 398 | 24.9 |
日高晴樹 | 16 | 410 | 25.6 |
森川浩次 | 18 | 466 | 25.9 |
池内明彦 | 18 | 472 | 26.2 |
長谷拓 | 12 | 321 | 26.8 |
塚田健太 | 18 | 492 | 27.3 |
篠藤巧 | 8 | 222 | 27.8 |
窪田陽輔 | 16 | 447 | 27.9 |
岡宏道 | 18 | 513 | 28.5 |
三上正一郎 | 18 | 516 | 28.7 |
上田益也 | 18 | 519 | 28.8 |
荒木友輔 | 8 | 243 | 30.4 |
日比野真 | 2 | 62 | 31.0 |
→ 2014/05/22
【Jリーグ】 覚えておくべき主審のジャッジの傾向 (下)に続く。
関連エントリー 2013/10/08
なぜ、Jリーグの審判のレベルは下がっていると錯覚するのか? 2013/10/10
審判員にブーイングするメリットは? 2014/01/14
数字で楽しむJリーグ (インターセプト編) (前編) 2014/01/15
数字で楽しむJリーグ (インターセプト編) (後編) 2014/01/17
「ドリブル力」を取り戻した中村俊輔 2014/05/20
Jリーグの主審20名を評価する。 (前編) 2014/05/21
Jリーグの主審20名を評価する。 (後編) 2014/05/22
全記事一覧(2005年-2014年)
- 関連記事
-