■ J1の第9節J1の第9節。5勝1敗2分けで勝ち点「17」のヴィッセル神戸(1位)と、3勝3敗2分けで勝ち点「11」のセレッソ大阪(9位)がノエビアスタジアム神戸で対戦した。4連勝中の神戸はついにJ1の首位に立ったが、開幕直後の時期を除いて神戸がJ1で首位に立ったのは「クラブ史上初めて」だという。一方のC大阪はリーグ戦は4試合勝ちなしと苦しんでいるが、ACLでは見事にGLを突破した。
ホームの神戸は「4-2-3-1」。GK山本海。DF奥井、岩波、増川、高橋峻。MF橋本英、チョン・ウヨン、ペドロ・ジュニオール、森岡、小川慶。FWマルキーニョス。昨シーズンまでC大阪に在籍したMFシンプリシオは怪我で欠場となったが、8節の鹿島戦(A)は欠場したMFペドロ・ジュニオールがスタメンに戻ってきた。7試合で5ゴールを挙げており、得点ランキングで2位タイに付けている。
対するアウェーのC大阪は「3-4-2-1」。GK武田博。DF山下、染谷、ゴイコ・カチャル。MF山口蛍、扇原、新井場、丸橋、柿谷、長谷川アーリアジャスール。FWフォルラン。ACLのGLの最終節の山東魯能戦(A)で採用してまずまず機能した3バックを継続して、DF染谷が3バックの中央に入る。ACLの試合で怪我をしたGKキム・ジンヒョンは欠場で、GK武田博がスタメンとなった。
■ 阪神ダービーは2対2のドロー前半は静かな展開となる。C大阪は最終ラインを5人にして守ることが多くて、カウンターのチャンスを作れない神戸は攻めあぐねたが、前半41分にスペースに走り込んでミドルパスを受けたMFペドロ・ジュニオールがDFをかわしてから豪快に決めてホームの神戸が先制に成功する。MFペドロ・ジュニオールは今シーズン6ゴール目となった。前半は1対0と神戸がリードして折り返す。
後半はC大阪が優勢となる。まず、後半9分にMF長谷川の絶妙のスルーパスからMF柿谷が裏に抜け出すと、最後は、こぼれ球をFWフォルランが決めて1対1の同点に追い付く。さらに、後半17分にはMF新井場の縦パスから裏に抜け出したFWフォルランが右足でミドルシュートを放つと、これが鮮やかに決まって2対1と逆転に成功する。FWフォルランは今シーズン5ゴール目となった。
しかし、神戸は後半33分に相手CBのDF染谷のハンドで得たPKをFWマルキーニョスが確実に決めて2対2の同点に追い付く。FWマルキーニョスは今シーズン6ゴール目で、これで5試合連続ゴールとなった。結局、試合は2対2の引き分けで終了した。神戸は連勝は「4」でストップしたが、5試合負けなしとなった。一方のC大阪はリーグ戦に限定すると、5試合勝ちなしとなった。
■ 難しいハンドのジャッジJ1では2年ぶりの阪神ダービーだったが、ノエビアスタジアムは25,382人の大観衆で埋まった。神戸にとってはクラブ史上4番目の観客の多さだったというが、チームは好調でJ1の首位を走っており、しかも、相手は近場で、かつ、人気のC大阪である。「これで満員にならなかったらどうしようもない。」というほど、完璧なシチュエーションだったが、無事にスタジアムはほぼ満員になった。
試合展開も観ている人には非常に面白い展開だった。初めてサッカーを観に来た人にも楽しめる試合になったと思うが、2対2という結果は妥当なものと言える。C大阪は中国に遠征して水曜日にACLの試合を戦ったので、中2日だった。コンディション的には大きな差があったが、後半になっても、C大阪の運動量が極端に落ちることは無かった。むしろ、後半はC大阪がペースを握った。
神戸がPKを得たシーンは、微妙なプレーだった。名古屋と鳥栖の試合のDF闘莉王のハンドから生まれたPKも微妙だったが、ペナルティエリア内で手にボールが当たったとき、ハンドを取るか、取らないかというのは、本当に難しい。「故意でなかったらハンドではない。」というのが基本であるが、DF染谷の手に当たったことでゴール前の微妙なエリアにこぼれた点は不運だった。
当然、ペナルティエリア内で守備側の選手がハンドをしたら、相手にPKが与えられるので、よほどのことが無い限り、わざと手で止めようなことはしない。故意にハンドをするような選手はほとんどいないが、意図したハンドでなくても、ハンドを取られるときもある。ペナルティエリア内でハンドがあったのか?無かったのか?というのは、主審のジャッジの中でももっとも難しい判断の1つである。
■ 5試合連続ゴールのFWマルキーニョスこの場面の松尾主審のジャッジは、C大阪の選手やサポーターには納得しがたいジャッジになったと思うが、一方で、神戸の選手やサポーターは「PKのジャッジは妥当。」だと感じただろう。結局、そんな程度であり、どちらとも言えるようなシーンだった。もし、C大阪の方が同じようなシーンでPKを得ていたら、C大阪側は「PKのジャッジは妥当。」という感想を持っただろう。
神戸はPKで同点に追いついたが、MFペドロ・ジュニオールとFWマルキーニョスがともにゴールを決めて、両者とも今シーズン6ゴール目となった。2人ともJ1で実績を残してきた選手であるが、加入1年目でここまでゴールを量産できているのは見事である。特にMFペドロ・ジュニオールはサイドハーフで起用されており、守備の負担もある中で、ゴールを決めており、貢献度は高い。
通算のゴール数がJ1で歴代2位となって横浜FCのFW三浦知を抜いたFWマルキーニョスはこれで5試合連続ゴールとなった。昨シーズンの終盤は不振で、横浜FMのV逸の原因の1つとなったので、「さすがのFWマルキーニョスも衰えてきた。」と多くの人が思ったが、今シーズンのパフォーマンスは見事である。とても3月23日に38歳になった選手とは思えないほど、エネルギッシュである。
■ 守備的な布陣を採用したセレッソ大阪一方のC大阪は中2日の過密日程であること、対戦相手の神戸が好調であること、アウェー戦だったことを考えると、勝ち点「1」という結果は悪くない。もちろん、FWフォルランのゴールで一旦は2対1とリードしたので、そのまま1点リードを守り切ることができたら、かなり勢いに乗ることができたと思うが、先のとおり、PKのジャッジに関しては、不運なところもあった。
山東魯能戦(A)に続いて、この日も3バックを採用したが、両WBの位置はかなり低かったので、5バックに近かった。しかも、MF柿谷とMF長谷川の2人も低いポジションだったので「5-4-1」に近い並びだった。さらに言うと、右WBのMF新井場は中に絞って相手の選手をマークしていたので、サイドのスペースを埋めるために、MF柿谷が下がってきて、最終ラインに吸収されることも多かった。
途中からMF柿谷とMF長谷川の位置が反対になって、MF柿谷が左サイドになってチャンスを作るようになったが、非常に守備のことを意識した布陣である。疲れがピークに達している時期なので、こういうやり方もアリだと思うが、さすがに、MF柿谷のポジションは低すぎるし、サイドに張り過ぎている。神戸の左SBのDF高橋峻の攻め上がりをケアしていることが多かったが、これは勿体無い。
なので、WBとサイドハーフの関係性には課題を残したが、1人で打開できる選手は多いので、「3-4-2-1」というのは悪くないと思う。「5-4-1」になることはできる限り避けたいところで、ましてや、MF柿谷が最終ラインに吸収されるようなことは絶対に避けたいが、MF柿谷とMF長谷川が前目の位置をキープできれば、FWフォルランを加えた3人だけでチャンスを作ることはできる。
そこにMF山口蛍であったり、MF丸橋が絡んでくれば、ゴールの可能性は上がってくると思うが、中盤で無駄にパスを回すよりも、しっかりと人数をかけて守って、奪ったボールはMF扇原を経由して手数をかけずに攻撃された方が、相手チームは嫌だと思う。過密日程で、時間が無いので、試合の中で熟成させていくしかないが、「3-4-2-1」の形を維持できるのであれば、3バックも悪くない。
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