■ J1の第7節J1の第7節。3勝1敗2分けで勝ち点「11」のヴィッセル神戸(3位)と、開幕6連敗スタートの徳島ヴォルティス(18位)がノエビアスタジアム神戸で対戦した。神戸市と鳴門市は淡路島を経由するとそれほど移動に時間がかからない。距離的には遠くないこともあってこのカードは「海峡ダービー」と呼ばれているが、過去は全てJ2での対戦となる。ここまでの6試合で5勝1敗と神戸が大きく勝ち越している。
ホームの神戸は「4-2-1-3」。GK山本海。DF奥井、岩波、増川、高橋峻。MFシンプリシオ、チョン・ウヨン、森岡。FWペドロ・ジュニオール、マルキーニョス、松村。2013年はJ2で16ゴールを挙げたFW小川はベンチスタートで、ユース出身で2年目のFW松村がスタメンで起用された。3節のFC東京戦(H)以来のスタメンで、1節の川崎F戦(A)の終了間際に値千金の同点弾を決めている。
対するアウェーの徳島は「4-2-2-2」。GK松井。DF福元、橋内、青山隼、那須川。MF小島、濱田、クレイトン・ドミンゲス、大崎。FW津田、高崎。ここ最近は「3-4-2-1」を採用することが多かったが、相手の神戸が1トップ気味になる時間帯が多いこともあって4バックに戻してきた。6試合で1ゴールと得点力不足に苦しんでいるが、5節の広島戦(A)でFW高崎が決めたゴールが唯一のゴールとなる。
■ 3対0で神戸が快勝開幕6連敗の徳島は試合の入り方に課題を抱えており、早い時間帯に失点することがほとんどだったが、この日はまずまずだった。相手の神戸の入り方もまずまずだったが、徳島の入り方もまずまずで、早い時間帯に失点することは避けられたが、前半26分にペナルティエリア内でボールを受けたMFシンプリシオがキーパーの位置をよく見た鮮やかなループシュートを決めてホームの神戸が先制に成功する。
さらに前半42分には相手CBのDF青山隼がボールをコントロールでもたついたところにプレスをかけてボールを奪ったFWマルキーニョスがキーパーもかわしてゴールに流し込んで2点目を挙げる。横浜FMから加入で38歳になったFWマルキーニョスは今シーズン4ゴール目で、J1での通算ゴール数は横浜FCのFW三浦知に並ぶ139ゴール目。歴代2位タイとなった。前半は神戸が2対0とリードして折り返す。
後半になると徳島もチャンスを作るようになる。積極的なミドルシュートで試合の流れをつかみかけるが、後半23分に神戸のボランチのMFチョン・ウヨンが放ったミドルシュートが相手キーパーのGK松井の目の前でイレギュラーしてゴールイン。MFチョン・ウヨンのJ1初ゴールで神戸が3点目を挙げる。結局、3対0でホームの神戸が快勝して今シーズン4勝目を挙げた。一方の徳島は開幕7連敗となった。
■ 開幕7連敗となった徳島徳島はJ1に昇格して7試合目だったが、試合の入り方はこれまでで一番良かった。また、後半は不運な形から失点したが、チャンスの数や決定機の数では相手を上回っていた。2点をリードした神戸が自分たちでペースを乱したところもあるが、徳島ペースの時間帯は長かった。「いい時間帯」というのはこれまでの7試合の中でもっとも長かったと思うが、ゴールを奪うことはできなくて、またしても大敗となった。
J1は14節が終了した後、W杯のため約2ヶ月間の中断期間に突入する。そのため、この日の7節というのは前半戦の折り返し地点と言えるが、7試合を終えて勝ち点「0」。1得点で22失点と予想されたよりも厳しい戦いになっている。3バックにしたり、4バックにしたり、小林監督はいろいろな手を打っているが、この試合の2失点目や3失点目のように自分たちのミスから失点するようだと苦しくなる。
大きく出遅れてしまったので、開き直って戦うこともアリかと思うが、当然、現場の人たちはそう簡単に気持ちを切り替えることはできなくて、精神的に吹っ切れることは難しい。他の17チームと比較すると、攻守両面で大きな差があるのは否めないので、1つ勝ったからと言って流れが大きく変わって、楽観視できる状況になるとも思えないが、とにかく、1勝しないとチーム内は落ち着かない。
先日、仙台のアーノルド監督の退任が発表されたが、開幕から連敗が続くと小林監督の解任論が出てくるのは間違いない。もちろん、監督交代で流れが変わった例が無いわけではないが、今の徳島を率いて結果を出すことができる監督がいるかというとNOと言わざる得ないし、小林監督以上の適任者がいるとは考えにくい。監督交代は最終手段であり、徳島に関しては、「今の体制で頑張るのがベスト」と言える。
■ 強力な外国人カルテット一方の神戸はこの試合は軽率なミスも多かった。前半26分にMFシンプリシオのファインゴールで先制して精神的に余裕が出てきたことがマイナスに作用した感もあるが、相手のミスに付け込んで2点目と3点目を奪って、危なげないスコアで勝ち点「3」を獲得した。これで4勝1敗2分けで勝ち点「14」となったが、7試合で勝ち点「14」というのは、昇格組としてはこれ以上は望めないほどの好成績である。
この日は、1点目がMFシンプリシオで、2点目がFWマルキーニョスで、3点目がMFチョン・ウヨンだったので、3点とも外国籍選手のゴールだったが、7試合で5ゴールを挙げているFWペドロ・ジュニオールを含めた助っ人4人の活躍が目立ちに目立っている。チームとしては合計で15ゴールを奪っているが、外国人カルテットだけで12ゴールを奪っている。いずれも新加入選手であることを考慮すると驚異的である。
J1通算ゴール数がFW三浦知に並んだFWマルキーニョスは7試合で4ゴールと新天地の神戸でも結果を出している。3月23日に38歳になったが、衰えは全く感じられない。得点を奪うだけでなく、チャンスメークでも貢献しており、守備でも貢献している。ここまでエネルギッシュな38歳はなかなかいない。日本では7チーム目となるが、どのチームでもすぐに馴染んで活躍できる点は凄いとしか言いようがない。
34歳のMFシンプリシオの活躍も凄まじいものがある。この試合も先制ゴールを記録したが、中盤の底でパスを散らすだけでなく、ルーズボールをたくさん拾って、決定的なスルーパスを出して、ゴール前に入っていくことができる。高次元の万能ボランチである。ゴールシーンはキーパーの位置をよく見たループシュートだったが、C大阪のときからこういう感じのちょっと浮かしたシュートが極めて上手である。
■ チームカラーの堅守速攻神戸は外国人4人以外にも、CBのDF増川とSBのDF高橋峻も移籍組でレギュラーに定着している。「オフの補強が非常に良かった。」と言えるが、レギュラーの半数以上が新加入選手で、しかも、核となるポジションが変わるという難しい状況でJ1に挑むことになったので、安達監督はかなり苦労したと思うが、ここまでは本当にうまくチームをまとめている。昇格1年目で4勝1敗2分けという成績は見事というしかない。
安達監督は2012年の終盤に解任された西野監督の後を受けて神戸の監督に就任したが、J1の中では屈指の地味な監督である。市立船橋高校出身で、現役時代は横浜フリューゲルスでプレーしたというが、正直なところ、現役時代の印象というのは全く無い。どういう人物なのかについては、サッカーファンの間でもほとんど知られていないが、非常にいいチームを作って来たと言える。
もちろん、結果も見事であるが、内容も見事である。最終ラインにDF岩波がいて、ボランチにMFシンプリシオが入ったので、たくさんパスをつないでいくスタイルのサッカーも可能だと思うが、前線のFWマルキーニョスを中心とした前からのアグレッシブな守備とカウンターがハマっている。3対1で勝利した5節の浦和戦(H)は今シーズンの神戸のいいところがフルに出た試合であり、攻守とも躍動感がある。
神戸も西野監督が就任したときはパスサッカーのようなものを取り入れたが、基本は堅守速攻のチームである。松田浩監督がチームを率いており、FW大久保やFWレアンドロがいたときのサッカーはコレクティブでいいサッカーだったが、何だかんだで、このチームは「堅守速攻」が合っている。伝統のスタイルを熟成させて、なおかつ、復帰1年目のJ1で結果を残しているところはポイントが高い。
今後、上位争いに踏みとどまるためには日本人選手のさらなる頑張りが必要になってくる。特に、MF森岡、FW小川、FW松村という生え抜きの若手アタッカーの頑張りは不可欠である。今は外国人カルテットの活躍が目立っているが、彼らがカルテットに負けないほど活躍できるようになると、日本人選手と外国人選手、若手選手とベテラン選手のバランスが良くなって、本当に魅力的なチームになるだろう。
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