■ J1の第7節J1の第7節。3勝2敗1分けで勝ち点「10」の川崎フロンターレ(4位)と、2勝1敗3分けで勝ち点「9」の柏レイソル(9位)が等々力競技場で対戦した。J1は今年も混戦になっているが、4位の川崎Fが勝ち点「10」で、14位の清水が勝ち点「7」なので、11チームが1勝差の中に入っている。川崎Fは開幕3試合勝利が無かったが、リーグ戦は3試合連続完封勝利と一気に調子を上げてきた。
ホームの川崎Fは「4-2-2-2」。GK西部。DF田中裕、ジェシ、井川、谷口。MFパウリーニョ、中村憲、森谷、山本真。FW大久保、安柄俊。攻撃陣に怪我人が続出しており、FW小林悠とFW森島康とMFレナトとMF大島はベンチ外で、大卒2年目で大型フォワードのFW安柄俊が初スタメンを飾った。6試合で5ゴールを挙げているFW大久保はJ1の得点ランキングで1位タイに付けている。
対するアウェーの柏は「3-4-2-1」。GK菅野。DF鈴木大、近藤直、渡部。MFハン・グギョン、大谷、キム・チャンス、大谷、高山、工藤壮、田中順。FWレアンドロ。諸事情があってMFレアンドロ・ドミンゲスはメンバーから外れており、6節のC大阪戦(A)で1ゴール1アシストのMF田中順が今シーズン4回目のスタメンとなった。日本代表候補のMF工藤壮は6試合で2ゴールを挙げている。
■ 1対1の引き分け試合の前半はアウェーの柏ペースとなる。前半5分にボランチのMF大谷の積極的なドリブルからチャンスを作ると、いいところにこぼれてきたボールをFWレアンドロが右足で冷静に決めて柏が先制する。FWレアンドロは2試合連続ゴールで今シーズン3ゴール目となった。対する川崎Fはなかなかいい形を作れない。前半はアウェーの柏が1対0とリードしてハーフタイムに突入する。
後半開始から川崎FはFW安柄俊を下げてMF稲本を投入。MF中村憲のポジションをトップ下に上げる。リズムが出てきたのは後半17分にMF金久保を投入してからで、新加入のMF金久保の的確なプレーから流れを作ると、後半28分にMF森谷のドリブルを起点にMF中村憲がいいところでボールを受けてMF山本真に絶妙のスルーパスを送ると、上がってきたMF山本真が確実に決めて1対1の同点に追い付く。
その後、両チームともいくつか決定機を作る。柏はMF田中順が得意の左足で決定的なシュートを放つが、川崎FのキーパーのGK西部がビッグセーブを見せて勝ち越しを許さない。結局、試合は1対1の引き分けでともに勝ち点「1」を獲得した。川崎Fは4月15日(火)にACLの5節が待っていて、アウェーで中国の貴州人和と対戦する。2勝2敗で勝ち点「6」の川崎Fにとっては勝ち点「3」の必要な試合と言える。
■ ネルシーニョ監督の思い切った決断柏は開幕当初は結果も内容も今一つだった。3節はホームで名古屋に0対1で敗れたが、4節以降は2勝2分け。6節はC大阪(H)に2対1で勝利するなど上り調子である。ポイントは6節のC大阪戦(H)からMFレアンドロ・ドミンゲスがメンバーから外れている点で、その理由は怪我というわけではないようだ。ネルシーニョ監督との関係が上手くいっていないと報じられているが、彼がいないなってバランスは良くなった。
C大阪戦(H)も「3-4-2-1」という形で、川崎F戦(A)も「3-4-2-1」という形だったが、かなり守備の意識を高めたサッカーになっている。C大阪・川崎Fと攻撃陣にタレントのいるチームとの対戦が続いたので、相手に合わせたところもあったと思うが、MF工藤壮やMF田中順も守備にエネルギーを使っており、手堅いサッカーをしている。そして、C大阪に勝利して、川崎Fとはアウェーで引き分けなので結果は出ている。
MFレアンドロ・ドミンゲスはそれほど守備をする選手ではないので、周りの選手の負担が増えてしまう。攻撃のとき、負担分を補うだけの活躍ができれば全く問題は無いが、今シーズンのMFレアンドロ・ドミンゲスはそこまでではない。MF田中順も好調なので、MFレアンドロ・ドミンゲスを特別扱いすることなく、メンバーから外したネルシーニョ監督の決断が今のところは正しかったと言える。
不穏な空気もあるので、しばらくの間、MFレアンドロ・ドミンゲスの動向は注目せざる得ないが、これだけの選手を怪我等の理由なくメンバーから外すことは大きなリスクが生じる。ある意味では、刺し違える覚悟も必要になってくるが、このあたりはネルシーニョ監督は厳格で、選手やサポーターからの信頼も厚いので、大丈夫なのだろう。こういう決断ができる監督というのはなかなかいない。
チームとしては結果が出ているが、FWレアンドロあるいはMF工藤壮などもそこまで不在の影響は受けていない。むしろ、MFレアンドロ・ドミンゲスにボールが集中することがなくなって、早いタイミングで自分のところに味方からパスが出てくるようになるので、やりやすくなったのでは?という感じもする。特に、MF工藤壮はなかなか開幕当初はチャンスに絡めなかったが、ここ2試合はまずまずである。
ただ、タイトルを狙うにはMFレアンドロ・ドミンゲスは必要な選手である。メンバーから外されたことを根に持ったり、不貞腐れることなく、自身のコンディションを上げることに力を注いで、再度、ネルシーニョ監督の信頼を勝ち取って、スタメンに戻ってくることがチームにとっては一番いい話である。Jリーグの中でスペシャルな能力を持っている選手の1人なので、彼の巻き返しに期待したいところである。
■ 怪我人続出のフロンターレ一方の川崎Fはリーグ戦は3連勝で順位も4位に上がってきた。結果が出るようになってきたが、この日は、6節の徳島戦(A)を欠場したFW小林悠だけでなく、FW森島康とMFレナトとMF大島も怪我でメンバーから外れた。FW安柄俊、MF山本真、MFパウリーニョをスタメンで起用したがあまり機能しなかった。選手層の厚いチームであるが、ここまで怪我人が多くなるとクオリティーを維持するのは難しくなる。
特に、MF大島の不在の影響が大きかった。昨シーズンまでは組み立てのところから崩しのところまでMF中村憲が大きな役割を担っていたが、今シーズンはMF大島がワンランク上の存在になって、組み立てのところは、むしろ、MF大島が中心となって行われている。MFパウリーニョやMF山本真も技術のある選手であるが、今シーズンのMF大島のプレーの質は非常に高いので、簡単に穴は埋まらない。
後半途中までは劣勢だったことを考えると、引き分けというのは悪くない結果と言えるが、気になるのは怪我人の多さである。川崎Fは昨シーズンは3位でACLの出場権を確保したが、上位6強(広島・横浜FM・川崎F・C大阪・鹿島・浦和)の中では、唯一、怪我人が続出したチームだった。今シーズンも同じように怪我人が多発しているが、ここまで怪我人が多くなると風間監督と言えども苦しくなる。
大黒柱のMF中村憲さえいれば極端に攻撃の質が落ちない点はこのチームの強みであるが、これだけ怪我人が多いと、なぜなのか?と考える必要も出てくる。もちろん、怪我の理由は様々であり、試合中に怪我をした選手もいるし、練習中に怪我をした選手もいると思うが、古今東西、レギュラー争いの激しいチームは普段の練習からプレーが激しくなることが多くて、結果として、怪我人が増えるケースが多い。
ただ、風間監督はそこまで練習中から「激しさ」を求めるタイプには見えない。なので、「練習中から必要以上に激しい攻防が行われている。」という推測は当たっていないと思うが、ポジション争いが激しいと「練習や試合を休みたくない。」という心理が働くので、無理をしてしまって、怪我が悪化するときもある。競争が激しいことはプラスに作用することもあるが、マイナスに作用することもある。
また、川崎Fは昨シーズンは接触数がリーグ3位の多さだったが、ショートパス主体で細かい崩しでチャンスを作っていくタイプのチームは相手から激しいタックルを受ける機会も多くなって、怪我人が増えてしまう部分もある。もちろん、気を付けていても怪我人は出てしまうものであるが、同時期に重なると苦しくなる。ACLもあって過密日程の時期に怪我人が増えてきた点はアンラッキーというしかない。
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