■ J1の第10節J1の第10節。6勝3敗で勝ち点「18」のサガン鳥栖(3位)と、5勝2敗2分けで勝ち点「17」のサンフレッチェ広島(4位)がベストアメニティスタジアムで対戦した。J1は9節を終えた時点で、1位の鹿島、2位の神戸、3位の鳥栖の3チームが勝ち点「18」を稼いでおり、4位の広島は勝ち点「1」差で3チームを追っている。したがって、3位の鳥栖と4位の広島という注目の上位対決となった。
ホームの鳥栖は「4-2-3-1」。GK林彰。DF丹羽、キム・ミンヒョク、坂井、安田。MF高橋義、藤田直、水沼、池田圭、金民友。FW豊田。ブラジルW杯のメンバー入りを狙うFW豊田は9試合で7ゴールを挙げており、J1の得点ランキングで首位に立っている。4月上旬に行われた日本代表候補合宿には、鳥栖からはGK林彰、DF安田、FW豊田の3人が選出されている。
対するアウェーの広島は「3-4-2-1」。GK林卓。DFファン・ソッコ、塩谷、水本。MF青山敏、柴崎晃、柏、山岸、森崎浩、野津田。FW石原直。ACLではスタメンから外れることが多かったが、リーグ戦は開幕からずっとスタメン出場を続けていたFW佐藤寿がベンチスタートになって、日本代表候補のFW石原直が1トップに入って、MF森崎浩がシャドーの一角で起用された。
■ 2対1で広島が逆転勝利試合は鳥栖ペースで進んでいく。すると、前半13分にMF金民友のヘディングでのパスをFW豊田が上手くスルーして、最後はMF水沼が豪快に決めて鳥栖が先制する。MF水沼は今シーズン初ゴールとなった。しかし、前半17分に広島の左WBのMF山岸が右足でゴール前にクロスを上げると、鳥栖のGK林彰が目測を誤って、クロスがそのまま決まって広島がすぐに1対1の同点に追い付く。
1対1で迎えた後半15分に広島はFW佐藤寿を投入。鳥栖も途中出場のMF早坂がビッグチャンスを迎えるなど、基本的には鳥栖ペースが続いたが、後半37分にFW佐藤寿のシュートから鳥栖のCBのDFキム・ミンヒョクがクリアに失敗してこぼれたところをFW石原直が押し込んで2対1と広島が逆転に成功する。初めて日本代表に選出されたFW石原直は今シーズン3ゴール目となった。
結局、試合は2対1でアウェーの広島が競り勝って勝ち点「3」を獲得した。広島は過密日程の影響もあって、ここ2試合は無得点で終わっていたが、7節のFC東京戦(H)以来の勝利となった。一方の鳥栖は勝てば首位に浮上するチャンスもあったが、何度かあった決定機に決められなかったことが響いた。どちらかというと鳥栖ペースの試合だったので、残念な結果となった。
■ 気合が入り過ぎたFW豊田陽平鳥栖はシュートこそは6本にとどまったが、決定機はたくさんあった。頼みのFW豊田にも力みが感じられて、大チャンスに決められないシーンが2度ほどあった。GWに突入して、チームが好調ということも相まって、ベアスタは17,339人で埋まったので、鳥栖にとっては、勝てるといろいろな意味で大きな試合だった。勝てるチャンスがあっただけに、悔やまれる試合になったのは間違いない。
注目のFW豊田は前節の名古屋戦(A)は1ゴールを記録したが、決定機に決められないシーンがたくさんあった。名古屋戦はゴールを決めたことよりも、逸機が目立つ試合だったが、広島戦(H)もチャンスシーンに決められなかった。プレッシャーを感じているわけではないと思うが、「やってやろう。」という気持ちが強くなりすぎて、空回りしている感じもする。
ただ、大事な時期なので、気合が入るのは仕方がない。むしろ、自然なことである。そして、1点目のMF水沼のゴールにつながったスルーの場面が象徴的であるが、決して自己中になっているわけではない。味方を使うところはきちんと使っており、ゴールだけを追い求めているわけではないので、プレーの質自体は全く問題は無い。絶好調とまではいかないが、好調と言える部類である。
FW豊田の場合、数年に渡ってJリーグで十分な結果を出しており、代表でもそれなりに力を示している。今シーズンも開幕からコンディション的に問題ないことを証明しているので、やるだけのことはやってきた。枠を争う最大のライバルはFW大迫となるが、後はザッケローニ監督がどういう判断を下すか?である。十分すぎるほどアピールはしてきたので、結果は他者に委ねるしかない。
■ 攻撃の軸となった石原直樹一方の広島は中2日や中3日の試合が続く試練の時期の真っ只中であるが、その中で難敵の鳥栖からアウェーで勝ち点「3」を獲得できたことは大きい。コンディション的に難しい試合が続くので、「引き分けでもOK」という割り切った考え方も必要になってくるが、勝てていないと割り切ることはできない。ここで勝ち点「3」を獲れたことで、この後の試合の運び方も楽になるだろう。
この試合はFW石原直がヒーローとなった。今シーズンの広島は選手層が厚くなったので、ターンオーバーを採用しており、できるだけ選手に負担がかからないように森保監督がリーグ戦とACLで選手を使い分けている。その中で結果も出ているので、理想的な戦いができているが、何人かの主要選手は例外である。MF石原直もその1人で、ここまでの頑張り具合は凄まじいものがある。
長い間、広島はFW佐藤寿が攻撃の中心として君臨してきたが、今シーズンの起用法を見ると、完全に攻撃の軸はFW石原直になった。FW佐藤寿のパフォーマンスが極端に悪いわけではなくて、リーグ戦では10試合で4ゴールと結果も出しているが、年齢的な問題なのか、出続けるのは難しくなっており、特にACLの舞台では、FW石原直が1トップで起用された試合の方がスムーズである。
もちろん、FW佐藤寿の得点感覚は鋭いものがあって、事実、この試合でも途中出場で何度もチャンスシーンに顔を出しているが、1トップで孤立して、完全に消えてしまう試合も少なくない。FW石原直は173センチなので、センターフォワードをするには十分なサイズではないが、体が強くて、ジャンプ力があって、スピードもあって、運動量もあって、外せない選手になっている。
ということで、攻撃陣の中ではもっとも重要な存在になった。FW石原直が怪我等で離脱したら、チームは回らなくなるほど必要不可欠な選手になったが、湘南で活躍していた頃(2003年-2008年)と比べると、多彩な選手になった。湘南のときもJ2でかなり点を獲っており、勝負強くて、湘南の顔だったが、当時はスピードを生かしたプレーが多くて、ここまでのハードワーカーではなかった。
大宮(2009年-2011年)を経て、広島に加入してからは、90分に渡って泥臭い仕事もこなすようになったが、その上で、たくさんのゴールに絡んでいる。広島のシャドーというと、MF高萩に代表されるようにテクニシャンが起用されることが多くて、当初は、彼がシャドーの位置に入るとリズムがおかしくなることもあったが、今では、シャドーの位置でも違和感は全く感じられない。
広島での活躍が認められて、ついにフル代表に初選出されたが、本人には相当な自信になったと思われる。W杯メンバーに選ばれる可能性は非常に低いが、何度も召集経験のある選手を選出するよりも、召集経験の無い選手を選出した方が短い合宿期間で多くのものを得られるし、得られる感動や自信は大きくなる。このあたりのことはザッケローニ監督もよく心得ている。
関連エントリー 2014/02/23
【ゼロックス:広島×横浜FM】 大物感が漂うMF野津田岳人 2014/02/25
ゼロックスでの広島批判に感じた強烈な違和感 2014/03/01
【C大阪×広島】 日本代表クラスの実力を持つDF塩谷司 2014/03/02
【鳥栖×徳島】 J1とJ2のレベルの差はどのくらいか? 2014/03/09
【浦和×鳥栖】 豊田陽平をW杯メンバーに推したい。 2014/04/08
【名古屋×広島】 もっとも旬な選手と言えるDF塩谷司 2014/04/30
Jリーグに西村雄一レフェリーがいる幸運 2014/05/03
個人別エントリー (豊田陽平) 2014/05/03
個人別エントリー (佐藤寿人) 2014/05/03
全記事一覧(2005年-2014年)
- 関連記事
-