■ 後半戦は11勝4敗2分け2013年の後半戦の17試合の成績は11勝4敗2分けで勝ち点「35」を稼いだアルビレックス新潟。ホームゲームの観客動員数は2005年の40,114人をピークに7年連続で前年を下回っていたが、2012年の数字を約1,100人上回って久々に前年を上回る観客を集めた。後半戦はホームで9戦全勝と文句なしの成績だったので、ビッグスワンから遠ざかっていたお客さんが戻ってくるのも必然である。
快進撃の原動力の1人は何と言ってもシーズントータルで23ゴールを挙げてJ1の得点ランキングで2位になったエースのFW川又である。後半戦の17試合では14ゴールを挙げているが、FWブルーノ・ロペスに代わって絶対的なエースとなったFW川又の存在なしに2013年の新潟の躍進は無かった。これ以上ないほどの結果を残したので、いつ日本代表に呼ばれてもおかしくない存在となった。
また、MF成岡、MF三門、MF田中亜という日本人の中盤の3人の貢献度も高かった。特にMF成岡は移籍初年度だったが、全34試合に出場して4ゴールを記録。磐田のときは「得点力のある選手」という評価で、2007年には30試合で8ゴールを記録した。その一方で、試合から消える時間帯も長くて、監督としては計算しにくいタイプだったが、新潟に移籍して「ハードワーク出来るテクニシャン」に生まれ変わった。
その他にも、韓国代表の左SBのDF金珍洙、DF大井とDF舞行龍ジェームズのCBコンビの活躍も目立ったが、やはり、MFレオ・シルバである。32試合で1ゴールと数字は平凡だが、貢献度は随一だった。中盤でのハイプレスからのカウンターが新潟の新しい武器となったが、攻守の要となって活躍した。Jリーグの優秀選手に選ばれたが、ベストイレブンに選ばれなかったことが不思議に感じるほどの活躍を見せた。
■ クリーンな刈り取り役最大の魅力は「1人でボールを奪い切る能力」を持っているところで、中盤で相手選手から華麗にボールを奪い取るシーンは頻繁に見られる。そして、運動量が多くて、パス出しも正確である。昨シーズンは32試合で1ゴールにとどまったが、中盤の底で守りの仕事に徹しているだけでなく、ゴール前に入っていくシーンもたくさん見られる。こういった「何でもできる選手」がいると、チームメイトは非常に楽になる。
しかも、温和な性格で、いつも楽しそうにプレーしている。これだけでピッチ上で笑顔を見せる選手はなかなかいないだろう。中盤の底で相手選手を潰すことを主な仕事の1つにしている選手というのはダーティーな選手が多いが、MFレオ・シルバにはダーティーなイメージは全く無い。身体の使い方が上手で、クリーンな接触でボールを奪い取るところなどは、日本人選手も参考にしなければならない。
今オフもたくさんの外国人選手がJリーグに加入したが、「ボール奪取力に長けたブラジル人ボランチ」を獲得したチームが多かった。鹿島のMFルイス・アルベルト、名古屋のMFへジス、湘南のMFエデル、磐田のMFフェルジナンド、京都のMFジャイロ、FC岐阜のMFヘニキなどなど。外国人助っ人というと攻撃的なポジションの選手や長身のCBを獲得するチームが多かったので、あまり無かった動きである。
もちろん、それぞれのチーム事情も絡んでくるが、「ボール奪取力に長けた守備に持ち味のあるブラジル人ボランチ」が増えたことは、2013年の新潟ならびにMFレオ・シルバの活躍と無関係ではないと思う。2012年の新潟は10勝14敗10分けという成績で、最終節で札幌に4対1で勝利して「奇跡の残留」を果たしたが、1人の優秀なボランチでチームはこれだけ変わるのか?と驚いた人は多かった。
■ 明暗が分かれる新外国人ボランチシーズンが始まって4試合が過ぎたが、期待どおりに活躍できている選手は意外と少ない。名前が挙がった新外国人ボランチの中でポジションを獲得しているのは磐田のMFフェルジナンドと京都のMFジャイロの2人だけ。他の選手は怪我等の影響もあってなかなか出場機会を得られずにいる。ブラジルリーグで活躍していたキャリア豊富な選手でも評判通りの力を発揮できていないというのは興味深い。
まだ4試合の段階ではあるが、磐田のMFフェルジナンドは、攻撃においても、守備においても、沢山プレーに絡んでくる優秀なボランチである。前評判通りの守備力の高い選手であるが、攻撃力もあって、ドリブルでボールを前に運ぶシーンがたくさんある。磐田は2勝1敗1分けとまずまずのスタートを切ったが、1年でのJ1復帰が至上命題と言える磐田で早くも欠かすことの出来ない選手になっている。
一方、京都のMFジャイロの評価は難しい。今のところ、攻撃においても、守備においても、スペシャルなところは見せていない。4試合連続でフル出場を果たしており、バドゥ監督には評価されているが、「これくらいの仕事ならば日本人選手でもできるのでは?」という見方もできる。ただ、まだ始まったばかりなので、もっと多くのプレーを観てみないときちんとした評価を下すことはできない。
ボランチというポジションはほとんどの味方選手と頻繁に関わるポジションで、攻守の要である。バランスを取るプレーに長けた中堅からベテランの日本人選手はたくさんいるので、外国人枠を費やしているのであれば、スペシャルなところが無いと物足りなく感じる。MFレオ・シルバがきっかけとなった「ブラジル人の守備的なボランチを獲得する。」という流れは今後も続いていくのか、どうなのか。
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