■ 開幕まであと1週間J1の開幕日のちょうど1週間前に行われる恒例のゼロックス・スーパーカップはリーグ王者のサンフレッチェ広島が2対0で天皇杯王者の横浜Fマリノスに勝利して今年最初のタイトルを獲得した。広島がゼロックスに出場するのは3回目(2008年・2013年・2014年)で、横浜FMは4回目(1996年・2004年・2005年・2014年)だったが、広島は3戦全勝で、横浜FMは4戦全敗。対照的な戦績になっている。
ともにミッドウイークにACLの開幕戦を控えており、広島はホームでCリーグの北京国安と対戦して、横浜FMはアウェーでKリーグの全北現代と対戦するが、広島にとってはACLに向けて弾みの付く試合となったが、横浜FMにとっては不安の募る試合となった。広島が中2日で、横浜FMが中3日での試合となるが、「完敗」と言える横浜FMの方は気持ちを切り替えて大事なACLの初戦を戦う必要がある。
ゼロックスを消化するといよいよJリーグの開幕ムードが高まってくるが、話題を集めているのは、某評論家の
「「出来栄え点」が低かったサンフレッチェのサッカー」というコラムである。「責められるべきはサンフレッチェになる。試合を盛り上げよう、楽しいモノにしようとの意識は、Fマリノスの方があった。」と2対0でゼロックスを制した森保監督率いる広島のサッカーを酷評している。
■ 見違えたゼロックスのサッカー確かに2013年の広島は慎重な試合運びを見せることもあった。それでも攻撃に関するスタッツはほとんどがリーグトップクラスなので、守備的なチームとは言えないが、0対0で試合が進んでいる時や、先制点を奪った後は、無理をすることなく、きっちりと「5-4-1」でブロックを組んで、リスクを冒さないケースも少なくなかった。そして、この点に関して対戦相手の監督から嫌味を言われたこともあった。
なので、昨年までの広島のサッカーに対して一言言いたくなる気持ちは分からなくもないが、ゼロックスで見せたサッカーはどうだったかというと、2013年とは全く違っていた。ブロックを作って引いて守るのではなくて、MF石原を中心に積極的に前からプレスをかけるサッカーで試合の主導権を握った。「今年の広島はいいサッカーをしているなあ・・・。」と思った人が大半ではないか。
なので、前述のコラムを読むと「本当に試合を観ていたのか?」と突っ込みたくなる。(この人に突っ込んだら負けな部分もあるが・・・。)もしかしたら、横浜FMのユニフォームが見慣れたものとは違っていたので、「サンフレッチェとマリノスの区別が付いていないのでは?」と思ってしまうほど、腑に落ちない内容である。「いくら何でもこれは酷過ぎる。」と言わざる得ない。
■ 批判ありきの文章おそらく、昨シーズンの広島の試合をいくつか観ていて、そういう印象(=つまらないという印象)を持っていたので、そういう内容で批判すること前提で試合を観に行って、そのとおりの批判的な内容の文章をアップしたのだと思うが、結論ありきの文章であり、この試合の広島のダイナミックなサッカーを観て「つまらない。」と言う人は、その人自身の見方に問題があると言うしかない。
ネットが発達するまでは、読者から反応が返ってくるまでに時間があった。本として完成して、店先に並んで、読者が本を購入して、そこから感想等を書いた手紙が出版元などに送られて、ようやくリアクションを確認できるという流れだったので、結構なタイムラグがあった。したがって、出版社に文章を提出したら、「とりあえずは終わり」だったと思うが、ネット時代はすぐにアクションが返ってくる。
以前はこういう文章を読んでモヤモヤした気持ちになっても読者は受け入れるしかなかったが、時代は変わった。文中では「第3者、テレビカメラの向こうにいる視聴者の目を忘れたサッカーをした。タイトル獲得を喜ぶ、自軍ファンのためだけにサッカーをした、という感じだった。」と苦言を呈しているが、氏の文章は「第3者、向こう側にいる読者の目を忘れた文章である。」と言いたくなる。
■ 求められるフェアな精神もちろん、考え方というのは人それぞれで、サッカーの見方も人それぞれで、好みも人によって違ってくる。ただ、一般的な流れに大きく逆らって対象を強く批判するときはフェアでないとマズイと思う。好ましく思っていない選手やクラブであったとしても、いいプレーをしたとき、いいサッカーをしたときは称賛すべきで、その度量がない人というのは、そもそもとして批評する資格が無いと思う。
この方に限った話ではないが、「Jリーグの試合をほとんど観ていないのではないか?」と感じずにはいられない解説者や評論家が食っていけるのが今の日本サッカー界の現状である。そして、選手やクラブや競技やリーグの魅力を伝えることを仕事の1つにしている(はずの)人たちが必要以上に対象を腐すことで仕事を得て、「ご意見番」などと一部で持て囃されていることは非常に嘆かわしい話である。
個人的に強く主張したいのは、選手・クラブ・競技・リーグの魅力を伝えられない人が批判だけはいっちょ前にするのは無しだと思う。批判するだけならば、日刊ゲンダイなど夕刊紙でもできる。「批判をする人」≒「現状に満足してない人」≒「意識の高い人」とポジティブに捉えられることもあるが、今の日本サッカー界においては、見当違いな批判が多くて、そういう風に考えることは全くできない。
文章の途中で「本当に試合を観ていたのか?と突っ込みたくなる」と記述したが、もしかしたら、「試合をしっかりと観ることなくこの文章を作り上げていた方がまだマシ。」と言えるのかもしれない。90分間、記者席で試合を観て、こういう感想に至ったのであれば、救いようはない。CLの取材を精力的にこなしていた頃はもっと読ませる文章を書いていたと思うので、当時と比較するとちょっと悲しくなる。
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