■ 最終節J1の最終節。17勝9敗7分けで勝ち点「58」の浦和レッズ(4位)と、15勝7敗11分けで勝ち点「56」のセレッソ大阪(6位)が埼玉スタジアムで対戦した。ともに優勝の可能性はなくなったが、ACLの出場権獲得を目指している。2位の広島と3位の鹿島が最終節で対戦するので、ホームの浦和は勝つと無条件でACLの出場権を確保することができる。一方のC大阪は自分たちが勝利することが最低条件となる。
ホームの浦和は「3-4-2-1」。GK山岸。DF森脇、那須、槙野。MF鈴木啓、阿部、平川、宇賀神、柏木、原口。FW興梠。ベテランのGK山岸は9試合連続スタメンとなった。FW興梠が12ゴール、MF原口が10ゴール、DF那須が9ゴール、MF柏木が8ゴール、MF阿部とDF槙野が6ゴール、MFマルシオ・リシャルデスが5ゴールと満遍なくいろいろな選手がゴールを決めているのが、今シーズンの浦和の特徴と言える。
対するアウェーのC大阪は「4-2-3-1」。GKキム・ジンヒョン。DF酒本、茂庭、山下、丸橋。MF山口螢、扇原、南野、杉本、エジノ。FW柿谷。怪我のためMFシンプリシオはベンチ外で、187センチのFW杉本がスタメンとなった。MFシンプリシオとMFエジノとMFブランコの3人が今シーズン限りでチームを離れることが発表されている。また、クルピ監督にとっても最後の試合となる。
■ 5対2でC大阪が勝利試合は前半24分にMF柏木のスルーパスを受けたMF原口が豪快にネットを揺らしてホームの浦和が先制に成功する。MF原口は今シーズン11ゴール目となった。しかし、前半40分にDF酒本のクロスからFW杉本が左足でねじ込んでC大阪が同点に追い付くと、さたに前半46分にもDF酒本の攻撃参加からこぼれ球をMF南野が押し込んで2対1と逆転に成功する。前半はアウェーのC大阪がリードして折り返す。
後半も立ち上がりはC大阪ペースとなる。後半8分に左サイドでボールを受けたFW柿谷がカットインしてから右足で巻いた鮮やかなシュートを決めて3点目を挙げる。FW柿谷は20ゴール目となった。しかし、後半27分にCKからFW興梠が決めて浦和が1点差に迫る。FW興梠は今シーズン13ゴール目となった。1点差に迫られたC大阪だったが、後半31分にまたしてもDF酒本の攻撃参加からFW柿谷が決めて4点目を挙げる。
勢いの止まらないC大阪は後半41分にもMF南野が決めてダメ押しの5点目。18歳のMF南野は今シーズン5ゴール目となった。結局、試合は5対2でアウェーのC大阪が大勝した。川崎Fが勝利したため、3位になることは出来なかったが、最終節で浦和と鹿島を抜いて4位に浮上。天皇杯でリーグ戦の上位チーム(広島・横浜FM・川崎F)が優勝した場合、2011年以来となるACLに出場することができる。
■ DF山田暢のラストマッチを飾れず・・・この日の埼玉スタジアムは54,905人という大観衆で埋まった。ここ最近は、C大阪の人気が高くなっていて、ホームだけでなく、アウェーでもC大阪のサポーターが目立つようになってきたが、この日は、大半が浦和のサポーターだった。改めて浦和人気の凄さを感じさせる「真っ赤なスタンド」となったが、浦和は3連敗となって、6位に転落。優勝を逃しただけでなく、ACLの出場権を獲得することもできなかった。
最後の3試合で12失点を喫したが、守備力の向上というのは、タイトルを狙うためには、必要不可欠である。結局、66得点はリーグ最多だったが、56失点だったので得失点差は「+10」だけ。失点数「56」はリーグワースト6位タイだった。広島のときから、散々言われ続けてきたが、来シーズンも同じようなサッカーになるようだと、ペトロヴィッチ監督に対する批判の声は増えてくるだろう。
シーズン終盤にキーパーをGK加藤からGK山岸に変更したが、これはどうだったのか。スタメン落ちする前のGK加藤の状態はそれほど良くなかったが、2人を比較すると足元の技術ではGK加藤の方がかなり上である。ビルドアップのとき、最後尾にいるGK山岸のところを積極的に使えないので、シーズンの終盤はボール回しが危なっかしくて、これが全体の落ち着きの無さにつながったように感じる。
ホーム最終戦ということで、試合後には、今シーズン限りで退団する選手たちのセレモニーが行われたが、1994年から20年間、浦和でプレーして来たDF山田暢に対して大きな声援が送られた。リーグ優勝した2006年はシャドーの位置でプレーして優勝の立役者の1人となったが、もっとも多かった右サイドだけでなく、CBでも、ボランチでも、2列目でも、どこでもいいパフォーマンスが期待できる選手だった。
個人的には、クラブ生え抜きの選手には、1つのクラブで現役を終えてほしいと思うが、本人が現役続行を希望するのであれば、クラブとしてはどうすることもできない。そして、指導者や解説者になったとき、「他クラブのことを知っている。」というのは大きな武器になる。38歳なのでそれほど長い間、プレーすることはできないと思うが、いい移籍先が見つかることを願いたい。
■ セレッソの最高傑作が輝く一方のC大阪もクルピ監督の最終戦だったが、アウェーで「今シーズンのベストゲーム」と言える試合を見せた。川崎Fが勝利したので4位2終わったが、天皇杯で広島か、横浜FMか、川崎Fが優勝すると、2014年のACLに出場できる。残りの5つはFC東京・仙台・甲府・大分・鳥栖で、3/8の確率でACLに出場できるが、鹿島や浦和などの有力チームがすでに敗退しており、ACLの可能性は高いように感じる。
この日は、MF南野とFW柿谷が2ゴール、FW杉本が1ゴールとユース出身者が躍動したが、何と言っても、MF南野の活躍が際立った。この日は、左ストッパーのDF槙野をケアするためなのか、右サイドハーフに回った。MFエジノが左サイドに回って、MF杉本がトップ下ということで、ほとんどなかった3人の並び方になったが、5万人を超える観客の前で才能の豊かさを示したと言える。
結局、前半だけでMFエジノは交代となって、MF枝村が投入されたので、後半からMF南野は中央にポジションを移したが、やはり、中央でプレーした方がいいプレーができる。プロ1年目となる今シーズンは、サイドハーフのポジションでレギュラーを獲得して標準以上のプレーを見せたが、ボックス付近で力を発揮する選手なので、継続的に1トップあるいはトップ下でプレーしてほしい選手である。
最終的には、29試合で5ゴールという結果を残した。プロ1年目の18歳で、しかも、本職とは言えないサイドハーフでプレーすることがほとんどだったことを考えると悪くない成績であるが、正直なところ、「もう少しできるかな?」と思っていたので、「ちょっと物足りないな・・・。」と感じる部分もある。それくらい能力が高い選手であり、普通の物差しで測ってはいけない選手だと思う。
「セレッソが生んだ最高傑作」と評されるが、欠点らしい欠点が見当たらない。スピードがあって、テクニックがあって、点が獲れるのはもちろんのこと、運動量も多くて、守備もガツガツできて、精神的にも安定していて、向上心もある。現段階では「決定力」が課題と言えるが、J1のレベルに慣れて、結果を残せるようになったら、もっとゴール前で余裕が出てきて、確実にチャンスを仕留める選手になるだろう。
当然、今の段階では、FW柿谷との差はあるが、一番近くで18歳の選手にこれだけのプレーを見せられると、FW柿谷にも大きな刺激となるだろう。同じようにFW柿谷も2ゴールを挙げたが、この日は、MF南野の方が質の高いプレーができていた。MF南野にとっては、FW柿谷は最高のお手本になっているが、FW柿谷も後輩の存在によって自分を高めることができる。2人はいい関係になりつつある。
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