■ ファイナルステージJ2のプレーオフの決勝戦。1回戦はホームで長崎と対戦して0対0で決勝進出を決めた京都サンガ(3位)と、ホームで千葉と対戦して1対1で勝ち上がった徳島ヴォルティス(4位)が国立競技場で対戦した。POはリーグ戦で上位だったチームにアドバンテージが与えられるので、引き分けの場合、リーグ戦で3位だった京都がJ1に昇格する。よって、徳島は勝たなければJ1に昇格することはできない。
京都は「4-1-2-3」。GKオ・スンフン。DF安藤、酒井、バヤリッツァ、福村。MF秋本、工藤、倉貫。FW駒井、横谷、山瀬功。怪我のため37節の群馬戦(A)から欠場が続いていた右SBのDF安藤が戻ってきて、さっそくスタメンで起用された。一方、DF染谷が怪我で欠場となったので、先の長崎戦は右SBでプレーしたDF酒井がCBに回って、DFバヤリッツァとコンビを組む。FW横谷は37試合で11ゴールを挙げている。
対する徳島は「4-2-2-2」。GK松井。DF藤原、橋内、千代反田、アレックス。MF柴崎、濱田、宮崎、大崎。FW津田、高崎。1回戦の千葉戦の前半終了間際で負傷して途中交代となったFWドウグラスはベンチスタートで、189センチのFW高崎がスタメンとなった。FW高崎はシーズン序盤はレギュラーで起用されていたが、その後、ポジションを失っており、スタメン出場は15節の岡山戦(A)以来となる。
■ 徳島が2対0で勝利試合の序盤は京都がボールを支配して徳島が守る展開となる。京都はPOの1回戦の長崎戦はなかなか自分たちのサッカーができなかったが、この日は、試合の入り方は良くてペースを握っていく。しかし、決定機を作るには至らず。徳島が盛り返しつつあった前半39分に徳島が右CKを獲得すると、ベテランのDF千代反田が頭で合わせて勝たなければならない徳島が先制に成功する。
1対1に追い付くことができると「京都のJ1昇格」となるので、京都は焦る必要は無かったが、前半43分に徳島の右SBのDF藤原のフィードをFW高崎がフリックして、フリーになったFW津田が裏に抜け出すと、FW津田が落ち着いて決めて徳島が貴重な2点目を挙げる。FW津田はリーグ戦の最後のゴールが33節の山形戦(H)だったので、しばらくゴールから遠ざかっていたが、ここ一番で大仕事をした。
2対0で迎えた後半は「2点リード」で余裕が出てきた徳島のペースとなる。「2ゴール以上」が必要な京都だったが、徳島ゴールに迫るシーンを作れず。逆にカウンターから徳島にチャンスを作られる展開となる。結局、徳島も試合を決める3点目を挙げることはできなかったが、2対0とリードを守り切って、この結果、四国勢としては初となるJ1昇格を決めた。一方の京都は2年連続でPOで敗退となった。
■ 初のJ1昇格J2のPOの1回戦は、3位チームあるいは4位チームのホームスタジアムで開催されるが、決勝戦は中立地での開催となる。当然、アウェーの地で戦うよりは、中立地で戦う方が上位チームが持っているアドバンテージは小さくなるので、下位チームにはありがたい。2012年と同様に今年も国立競技場でファイナルが行われたが、今年も「リーグ戦では下の順位だったチームがJ1昇格を決める。」という結果となった。
この日の国立競技場は23,266人という観衆が集まったが、驚いたのは、徳島のサポーターの多さである。もちろん、京都のサポーターも多かったが、さらにホームタウンまでの距離が遠い徳島のサポーターも多かった。どちらのチームのサポーターでもない「中立のサポーター」も多かったと思うが、青く染まったスタンドが選手たちのパワーになったのは、間違いないところである。
試合後のインタビューで小林監督がコメントしていたとおり、徳島の試合の入り方はあまり良くなかったが、セットプレーとカウンターから2点を奪うことができた。徳島は最前線に高さのある選手を起用することがほとんどで、ロングボールを使う頻度も高いが、ボランチにはMF柴崎とMF濱田がいるので、つなぐ能力も非常に高いチームである。後半は余裕を持った試合運びを見せて、京都を寄せ付けなかった。
1点目のDF千代反田のゴールも大きかったが、2点目のFW津田もゴールも大きかった。後方からのロングボールをFW高崎で頭でつないでFW津田がGKと1対1になったが、FW津田という選手はあのような形になることをずっと狙っている選手で、こういう形になると確実に決める力を持っている。「2試合連続PK失敗」もあって、終盤戦はゴールという結果を出せていなかったが、最後にエースの働きを見せた。
■ 歴史的な一日これで徳島は四国勢としては初となる「J1昇格」を決めたが、同じ日に香川県にあるカマタマーレ讃岐もJ2の鳥取との入替戦を制して「J2昇格」を決めたので、2013年12月8日(日)というのは、四国のサッカー界にとっては、歴史的な一日となった。蚊帳の外に置かれる形となった愛媛FCにも大きな刺激となったのは間違いないので、徳島・讃岐・愛媛FCの3チームを中心にして「いい循環」が生まれつつある。
今シーズンの徳島はスタートは今一つだった。2012年と同様で、勝ったり、負けたり、引き分けたり、ちょっと出遅れてしまったが、22節から「12試合負けなし」と快進撃を見せた。その後、37節から3連敗を喫して、後方から猛烈に追い上げてきた松本山雅や栃木SCに追い抜かれそうな時期もあったが、最後の3試合は2勝1分け。4位となってPOの1回戦をホームの鳴門で開催できたのは大きかった。
横浜FC(37節)にホームで敗れて、さらにはG大阪(38節)にもホームで1対5と大敗して、さらにはアウェーの福岡戦(39節)も0対1で敗れて3連敗となった。「PO出場の当確ランプ」が点灯しつつあった中での3連敗だったので、監督や選手には大きなプレッシャーがかかったと思うが、40節の岡山戦(H)で流れを食い止めることができた。ホームで岡山を圧倒した40節がターニングポイントだったと言える。
これで2014年は初のJ1での戦いが待っているが、難しいシーズンになるのは間違いないだろう。もちろん、2009年の山形、2012年の鳥栖など、昇格初年度で予想を覆す好成績を残した例はいくつかあるが、やはり、大方の予想通りに下位に低迷して「1年でJ2降格」となったチームの方が多い。「J1残留」が最大の目標となるが、同じタイミングで昇格するG大阪や神戸と比べるとかなり苦しい。
あまりにもJ1のステージで勝てないようだと、せっかく盛り上がった地元のサッカー熱が萎んでしまう可能性があるので、オフの補強が重要になってくるが、「完成度の高さ」がウリの1つなので、うまくいっているバランスを大きく壊すことにつながる補強は避けなければならない。ただ、「J1ブランド」で選手補強がJ2時代よりもやりやすくなるのは確実なので、効果的な補強が期待される。
■ 3年連続でJ1昇格に失敗一方の京都は2年連続でPOで敗れてJ1昇格を逃した。2009年から2011年までの3年間は「J2の1位と2位と3位のチームがJ1に自動昇格する。」というレギュレーションだったので、それを考えると「PO制度の導入」でもっとも割を食ったチームと言えるが、この点については、シーズンの最初から決まっているルールなので、このタイミングでとやかく言っても仕方がない。
1回戦の長崎戦も思うようなサッカーができなかったが、この日も、いいサッカーを見せることはできなかった。試合の序盤はボールを保持して京都ペースになりかけたが、前半39分に先制された後は、経験豊富な選手の多い徳島の試合運びの巧さにしてやられて、追撃弾となる1点目を奪うこともできなかった。3位となってPOのアドバンテージを得たが、2試合連続無得点ではこういう結果になっても仕方がない。
京都は3年連続でJ1昇格に失敗したので、「大木監督がチームを去る可能性は高い。」と報じられている。2011年が7位、2012年と2013年が3位という順位だったが、3シーズンとも開幕前の評価は高かった。2012年は昇格候補の大本命で、2011年と2013年も昇格の有力候補の1つだったので、「3年連続でJ1昇格に失敗」となった以上、大木監督を積極的に引きとめるのは難しいと言えるだろう。
注目されるのは、後任監督をどうするかである。「勝負弱さ」と「波の激しさ」の2点は最後まで改善されなかったが、(育成システムの改革を行って、いい選手が次々にトップチームに昇格してくる時期と重なるという幸運もあったが、)この3年間は、活きのいい若手が次々に出てきて、ハマったときのサッカーは魅力的だった。「京都サンガ」というクラブのイメージが大きく変わった3年間だったと言える。
結局、結果にはつながらなくて、J1に復帰することもできなかったが、育成面を含めて「いいチーム」になりつつある。この流れを推し進めることができて、かつ、結果も残せるような監督を連れてくる必要があるが、一方で、勝負にこだわる姿勢が強すぎる監督を連れてきてしまうと、せっかく、種を蒔いて、ここまでに育って来たものが無になる可能性もある。今オフの監督選びは非常に重要である。
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