■ 第38節J2の第36節。12勝13敗10分けで勝ち点「46」の水戸ホーリーホック(13位)と、18勝12敗5分けで勝ち点「59」の徳島ヴォルティス(4位)がケーズデンキスタジアムで対戦した。水戸はスタジアム等の問題で「2014年のJ1ライセンス」を取得できなかったので、今シーズン、6位以内に入ってもプレーオフに出場することはできない。一方の徳島はプレーオフ出場争いの真っただ中で、7位の岡山との差が「8」なので、プレーオフ出場に向けて着実に前進している。
ホームの水戸は「4-2-2-2」。GK本間。DF細川、新里、冨田、輪湖。MF西岡、内田航、船谷、橋本。FW山村、鈴木隆。正智深谷高出身で高卒2年目のMF内田航がボランチで3試合連続スタメンとなった。また、今夏、鳥栖から加入のMF船谷は5試合連続スタメンとなった。元日本代表のFW鈴木隆は30試合で10ゴールを挙げているが、37歳にしてJリーグでの自身最多のゴール数を記録している。攻撃の要のMF橋本は33試合で9ゴールを挙げている。
対するアウェーの徳島は「4-2-2-2」。GK松井。DF藤原、青山隼、福元、アレックス。MF柴崎、濱田、宮崎、大崎。FW津田、キム・ジョンミン。エースのFW津田はJ2の得点ランキングで2位タイとなる14ゴールを記録している。35節の鳥取戦で2ゴールを挙げたFWドウグラスはベンチスタートとなった。FWドウグラスは23試合で10ゴールを挙げている。21試合で2ゴールを挙げている元水戸のFW高崎はベンチスタートとなった。
■ 0対0で引き分け試合の前半は静かな展開となる。両チームともほとんどシュートチャンスを作れず、時間だけが過ぎていく。結局、前半はホームの水戸のシュートが4本で、アウェーの徳島のシュートはゼロ。見せ場の乏しい45分間となったが、前半終了間際に徳島のエースのFW津田が負傷して、治療を行った後、何とかピッチに戻ってきたが、プレー続行は不可能で、前半だけで交代。後半開始から184センチのFWドウグラスが投入される。
すると、いきなりFWドウグラスに決定機が訪れるが、キーパーをかわして右足で放ったシュートはバーに当たって先制ならず。一方の水戸は、後半27分にストライカーのFW難波を投入すると流れが良くなって、いくつかチャンスを作る。アウェーの徳島も途中出場のDF那須川のクロスからゴール前のシーンを作るが、GK本間の壁を打ち破ることはできない。結局、試合は0対0で終了して、両チームとも、勝ち点「1」を獲得するにとどまった。
■ モチベーションを保つのは難しい前半はほとんど見せ場は無かったが、後半はともに攻撃的な姿勢を見せたので、何度か決定機があった。水戸も、徳島も、途中出場の選手がアクセントになったので、交代カードの切り方も良かったが、水戸のGK本間と徳島のGK松井の両キーパーが奮闘して、最後までゴールは生まれなかった。前半に点が入らなかったのは、両チームの攻撃に問題があったからと言えるが、後半に点が入らなかったのは、2人のキーパーが良かったと言えるだろう。
J2も終盤戦に入っているが、先のとおり、水戸はJ1ライセンスを取得できなかったので、6位以内に入っても、プレーオフに出場することはできない。7月末に「J1ライセンスが取得できないこと」をクラブが公式に発表して、その後、しばらくの間は、プレーオフ争いに加わっていたが、ここ7試合では0勝3敗4分けという成績で、8月18日(日)にアウェーでFC岐阜に4対1で勝利した後、勝ち点「3」から遠ざかっている。
残りは6試合なので「6位以内は絶望的」と言えるが、頑張ればJ1に昇格できるチャンスがあるチームと、どう頑張ってもJ1には昇格できないチームを比べると、モチベーションに差が出てくるのは仕方がない。水戸の選手たちは奇跡が起きることを信じて「6位以内」を目指して最後まで戦い続けると思うが、プレーオフ出場が見えてくると選手の気持ちが高ぶってくるのが普通なので、最大でも維持することしかできない水戸と差が付くのは、当たり前である。
■ J1ライセンスの問題J1ライセンスを取得するためには、たくさんの項目をクリアしなければならないが、水戸の場合、ケーズデンキスタジアムの入場可能人数が10,000人程度にとどまっており、J1基準となる15,000人を満たすことが出来ないという点が最大のネックになっている。スタジアムの改修工事が行われることは決まっているが、時期については「5年以内」ということが目安として設定されているだけで、詳細に関しては、全く決まっていないという。
水戸市に対しては、工事の優先順位を早めることができないか、働きかけているというが、震災の影響もあって、他の部分を優先せざる得ない状況なので、クラブの意見が通る可能性は低いと言われている。よって、今シーズン、6位以内に入ったとしてもプレーオフに出場することはできないが、「6位以内に入った。」という実績を作ることできたならば、今後、水戸市に働きかけをするときのアピールポイントになると言われているが、難しくなってきた。
クラブライセンスの制度については、否定的な意見もあるが、これはJリーグが独自に行っているものではなくて、世界的な流れである。ドイツサッカー連盟が導入したことが始まりと言われているが、2009年にはAFC(アジアサッカー連盟)が「クラブライセンス制度を導入すること」をACLの参加資格の1つに選定したので、それに従わざる得ないというのが、JリーグやJリーグの各クラブの立場である。
中でも、大きな障害となるのはスタジアムである。前述のとおり、水戸もスタジアムの問題をクリアできなくて、「J1ライセンス」を取得できずにいるが、結局のところ、J1やJ2に上がったとき、ふさわしい箱が無いと苦労するのは、当事者のクラブである。収容人数に関して「15,000人」という条件が妥当なのかどうかは、何とも言えないが、小さいキャパのままで上がっても、定着するのは難しい。よって、各クラブはクリアできるように頑張るしかない。
水戸の今シーズンの平均観客動員数は4,500人程度なので、今のケーズデンキスタジアムのキャパでも大きな問題は生じていないが、平均4,500人といっても、満遍なくどの試合も4,500人を集めることができるわけではない。G大阪など人気チームと試合を行うときに稼いでいるというのが、本当のところなので、平均が4,500人のクラブは、今後も収容人数が5,000人や10,000人で十分かというと、それでは宜しくないことは、ちょっと考えるとすぐに分かる。
■ プレーオフを目指す徳島ヴォルティス一方の徳島は、後半から登場したFWドウグラスが2度ほど決定機を迎えたが、決めることはできなかった。前半はシュートゼロに終わったが、FWドウグラスが入ってからは攻撃がシンプルになって、DF那須川が投入された後は、左サイドから形を作るようになったのでゴールには近づいたが、ネットを揺らすことはできなかった。もちろん、勝ち点「3」を得ることができれば最高だったが、アウェーということを考えると、勝ち点「1」という結果も悪くは無い。
徳島は2012年は15位と低迷したが、今年は、プレーオフ圏内に位置する。オフにGK松井、DF千代反田、MF柴崎、FW高崎とセンターラインの軸になれる選手を獲得して、結局、DF千代反田とFW高崎の2人はポジションを獲得することが出来ずにいるが、GK松井は前任者のGKオ・スンフンの穴を埋めて、MF柴崎は攻守の要となった。軸になれる選手がFW津田以外に見当たらなかったが、オフの補強で良い選手を獲得できたのが大きかった。
ビルドアップの部分が改善されたことも15位から順位を大きく上げている要因の1つになっている。CB陣に怪我人が続出しているので、苦肉の策という面もあったと思うが、前半戦は京都などで活躍したDF斉藤をCBで起用して、シーズン途中からDF青山隼をセンターバックで起用している。ともに本職がボランチの選手なので、守備のところでのリスクはあるが、後ろからパスをつないでいくには、好都合である。
メンバーを見ると、ボランチも、CBも、SBも、ビルドアップのできる選手ばかりで、相手のプレスの餌食になりそうな選手は見当たらない。また、困ったときは、前線に高さのあるFWキム・ジョンミンやFW高崎やFWドウグラスがいるので、無理をしてボールをつなぐ必要もない。結局、変な形でボールを失うことが少なくなったので、カウンターを食らうことも少なくなって、無駄に体力を使うこともなくなって、安定した試合ができるようになった。
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