■ 夏休みになると動員が増えるのか? (上)で述べた通り、平日開催のときは観客動員数が激減しているが、これは今年に限った話ではない。2011年も、2012年も、同じである。過去3年は、いずれの試合も水曜日に行われているが、2011年の6月15日に行われた15節の試合は、9会場の平均が9,292人で、この節の最高が節電などの影響で昼間に行われたベガルタ仙台とガンバ大阪の試合(ユアスタ)の14,519人で、1万人を超えているのが3会場だけというのは、酷い話である。
表6. 平日開催のときの節平均
年度 | 節 | 日 | 平均 |
2011年 | 15節 | 6月15日 | 9,292 |
2011年 | 17節 | 6月22日 | 10,364 |
2011年 | 4節 | 7月13日 | 11,634 |
2011年 | 23節 | 8月24日 (夏休み) | 13,634 |
2012年 | 31節 | 11月7日 | 11,617 |
2013年 | 15節 | 7月10日 | 10,296 |
2013年 | 17節 | 7月17日 | 10,199 |
2013年 | 18節 | 7月31日 ( 夏休み) | 15,254 |
2013年 | 23節 | 8月28日 (夏休み) | 14,929 |
話は変わって、「夏休みになると動員が増えるのか?」という疑問もあるので、2013年の夏休みのときの平均とそれ以外の時の平均を出してまとめると、表7のようになる。Jリーグの場合、土・日・祝日に試合が行われるのが基本になっているので、「大きな差が無い。」というのが、数字からは見てとれる。夏休みの場合は63試合で17,142人で、夏休み以外の場合は171試合で16,278人なので、「夏休みになると劇的にお客さんが増えるか?」というと、そうでもない。
表7. 夏休みとそれ以外の比較 (2013年)
| 試合数 | 平均 |
夏休み | 63 | 17,142 |
夏休み以外 | 171 | 16,278 |
全体 | 234 | 16,510 |
ただ、夏休み効果が大きいケースがある。それは、平日開催のときである。今シーズン、平日で夏休み以外のときは、22試合で10,694人であるのに対して、平日であっても夏休み期間中は、18試合で15,091人となる。結局、今シーズンは、7月10日・7月17日・7月31日・7月28日と4回も平日開催を行って、「夏場の過密日程はきつい。」という声が選手たちから聞こえてきたが、平日開催によるダウン分をできるだけ減らすためには、夏休みに平日開催を挟むしかない。
表8. 夏休みのときとそれ以外のときの比較 (平日開催のとき:2013年)
| 試合数 | 平均 |
平日 (夏休み以外) | 22 | 10,694 |
平日 (夏休み) | 18 | 15,091 |
平日 | 40 | 12,673 |
■ 節別の平均動員数平均の観客動員数に大きくかかわってくる話ではないが、節別の平均動員数も興味深い。表9が2013年の1節から26節までの数字であるが、目立つのは、3月・4月の少なさである。1節と2節はホーム開幕戦となるので、それなりにお客さんを集めることができるが、3節からガクッと落ちてしまって、GWに入るまでは、観客動員が伸びて来ない。3月というと、プロ野球は開幕していないので、Jリーグにお客さんが集まってもおかしくないが、そういうことは無い。
ただ、ゴールデンウイークに入るとお客さんが増えてきて、以後、平日開催のときは累計平均が下がってしまうが、そうでないときは、基本的には、右肩上がりで上がっていく。その下の表10は2012年の推移を示しているが、これもほとんど同じ傾向で、1節と2節は多いが、3節以降は少なくなって、3節・4節・5節・6節・7節は15,000人にも達していない。しかしながら、暖かくなってくる8節あたりからどんどんと増えていく。
秋以降はどうかというと、3月・4月のように落ち込むことはない。シーズンも佳境に入って、優勝争いや残留争いが本格化することも多分に影響していると思うが、 夏が過ぎて気温が下がってきても、観客動員が減ることはない。そして、33節と34節はホーム最終戦となるが、ここは稼ぎ時である。2012年の場合、最終節(=34節)が最多の入りとなっていて、25,166人を集めて累計平均を大きく引き上げた。
これから分かることは2つある。1つは「寒い時期はお客さんを集めるのは難しい。」ということで、ホーム開幕戦やホーム最終戦など特別な場合は別であるが、普通の試合になると、一般のサポーターの足は遠くなる。3月や4月でもこういう状態なので、秋-春制が導入されて、(どうなるかは分からないが、)仮に、12月・1月・2月に試合を行うことになったならば、観客動員数が激減して、平均が1万人前後になっても不思議はない。
もう1つは、リーグ平均というのは、ほぼ右肩上がりで上がっていくので、シーズンの途中で昨シーズンの平均の観客動員数(最終の数字)と今シーズンの平均の観客動員数(途中の数字)を比較してもあまり意味が無いということである。先のとおり、3月・4月はお客さんを集めるのは難しくて、最後のホーム最終戦(33節と34節)で数字を伸ばすことが多いので、ほとんどの場合、シーズン途中で比較すると前年よりも数字は落ちるはずである。
表9. 節ごとの平均観客動員数 (2013年)
節 | | 曜日 | 合計 | 平均(節) | 累計平均 |
1節 | 3月2日・3日 | 土・日 | 160,259 | 17,807 | 17,807 |
2節 | 3月9日 | 土 | 199,120 | 22,124 | 19,966 |
3節 | 3月16日・17日 | 土・日 | 118,552 | 13,172 | 17,701 |
4節 | 3月30日 | 土 | 133,842 | 14,871 | 16,994 |
5節 | 4月6日 | 土 | 101,575 | 11,286 | 15,852 |
6節 | 4月13日・14日 | 土・日 | 153,296 | 17,033 | 16,049 |
7節 | 4月20日 | 土 | 108,089 | 12,010 | 15,472 |
8節 | 4月26日・27日・28日 | 金・土・日 | 170,985 | 18,998 | 15,913 |
9節 | 5月3日・5月29日 | 金・水 | 157,302 | 17,478 | 16,087 |
10節 | 5月6日 | 月 | 177,724 | 19,747 | 16,453 |
11節 | 5月11日 | 土 | 135,363 | 15,040 | 16,324 |
12節 | 5月18日 | 土 | 163,622 | 18,180 | 16,479 |
13節 | 5月25日・26日 | 土・日 | 143,079 | 15,898 | 16,434 |
14節 | 7月6日 | 土 | 170,364 | 18,929 | 16,612 |
15節 | 7月10日 (平日開催) | 水 | 92,661 | 10,296 | 16,191 |
16節 | 7月13日 | 土 | 169,348 | 18,816 | 16,355 |
17節 | 7月17日 (平日開催) | 水 | 91,794 | 10,199 | 15,993 |
18節 | 7月31日 (平日開催) | 水 | 137,286 | 15,254 | 15,952 |
19節 | 8月3日 | 土 | 167,181 | 18,576 | 16,090 |
20節 | 8月10日 | 土 | 163,417 | 18,157 | 16,194 |
21節 | 8月17日 | 土 | 175,659 | 19,518 | 16,352 |
22節 | 8月24日 | 土 | 142,855 | 15,873 | 16,330 |
23節 | 8月28日 (平日開催) | 水 | 134,358 | 14,929 | 16,269 |
24節 | 8月31日 | 土 | 159,163 | 17,685 | 16,328 |
25節 | 9月13日・14日 | 金・土 | 180,679 | 20,075 | 16,478 |
26節 | 9月21日・22日 | 土・日 | 155,808 | 17,312 | 16,510 |
表10. 節ごとの平均観客動員数 (2012年)
節 | 合計 | 平均(節) | 累計平均 |
1 | 169,310 | 18,812 | 18,812 |
2 | 196,302 | 21,811 | 20,312 |
3 | 121,483 | 13,498 | 18,040 |
4 | 129,445 | 14,383 | 17,126 |
5 | 134,558 | 14,951 | 16,691 |
6 | 129,845 | 14,427 | 16,314 |
7 | 101,057 | 11,229 | 15,587 |
8 | 154,681 | 17,187 | 15,787 |
9 | 172,346 | 19,150 | 16,161 |
10 | 158,741 | 17,638 | 16,309 |
11 | 138,118 | 15,346 | 16,221 |
12 | 180,633 | 20,070 | 16,542 |
13 | 144,644 | 16,072 | 16,506 |
14 | 131,389 | 14,599 | 16,370 |
15 | 178,155 | 19,795 | 16,598 |
16 | 185,561 | 20,618 | 16,849 |
17 | 152,314 | 16,924 | 16,854 |
18 | 160,465 | 17,829 | 16,908 |
19 | 158,257 | 17,584 | 16,943 |
20 | 150,740 | 16,749 | 16,934 |
21 | 125,246 | 13,916 | 16,790 |
22 | 207,129 | 23,014 | 17,073 |
23 | 146,592 | 16,288 | 17,039 |
24 | 178,142 | 19,794 | 17,154 |
25 | 167,581 | 18,620 | 17,212 |
26 | 175,637 | 19,515 | 17,301 |
27 | 157,200 | 17,467 | 17,307 |
28 | 182,394 | 20,266 | 17,413 |
29 | 142,682 | 15,854 | 17,359 |
30 | 169,351 | 18,817 | 17,407 |
31 (平日開催) | 104,556 | 11,617 | 17,221 |
32 | 163,570 | 18,174 | 17,250 |
33 | 180,686 | 20,076 | 17,336 |
34 | 226,490 | 25,166 | 17,566 |
ということでまとめると、次のように言える。
・G大阪など人気クラブや動員力があるクラブが落ちるとダメージは大きい。
・平日開催では観客動員は激減する。
・夏休み効果はあまりないが、夏休み期間中であれば、平日開催でも落ち込みが少なくなる。
・3月や4月はホーム開幕戦(1節と2節)を除くと、もっとも集客で苦労する。
・寒さが一番の敵であり、夏の暑さはそこまで影響しない。
・秋-春制に変更したら、動員の大幅減は確実。
・平日開催をどこまで減らすことができるかが大事。
・そのためには、天皇杯やナビスコカップのレギュラーションの見直しは必要。
・場合によっては、J1のクラブ数を減らす(18→16)ことも必要なのか?
・3月と4月は苦戦するが、基本的には、右肩上がりで増えていく。
・なので、シーズン途中で、昨シーズンの数字と比較するのは、あまり意味は無い。
2012年と2013年を比較すると平均で1,000人程度減少しているが、結局のところ、アウェー動員力の極めて高いG大阪の降格と平日開催の増加(1試合→4試合)の影響が大きいので、Jリーグの全体の人気が下がっていると結論付けることはできない。また、例年通りであれば、ここから、平均の観客動員数は上がっていくので、最終的な数字では、「2012年と比べる微減」に落ち着くと思う。必要以上に危機感を感じることに意味は無い。
ただ、増えているわけではないので、何かしらの対策は必要である。瀕死の状態になっていて、にっちもさっちもいかない状態ではないので、一か八かの劇薬のようなものを必要としているわけではないが、日本代表や海外組が人気を集めている今だからこそ、できることはたくさんあると思う。
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