■ Jリーグの観客動員 Jリーグは2015年シーズンから2ステージ制とプレーオフを導入することを決めたが、その理由の1つに挙げられているのは、「Jリーグの観客動員数が減少傾向にあるので、このあたりで歯止めをかけないといけない。」ということである。Jリーグ人気あるいはサッカー人気の低迷もささやかれているが、本当にそうなのか。疑問に感じるところがあるので、今回は、Jリーグの観客動員について調べてみた。
まず、J1の年度別の平均の観客動員数は表1のようになる。創設2年目の1994年が歴代最高の19,598人で、創設5年目には歴代最低の10,131人とほぼ半減となったが、1998年にW杯初出場を果たすと、2002年の日韓W杯開催に向けた新スタジアムの誕生が起爆剤となって、2001年に16,548人とV字回復を果たした。その後、2008年には19,278人と歴代最多に近づいたが記録更新とはならず。そして、2011年に東日本大震災が起きると、ガクッと落ちてしまった。
表1. Jリーグ(J1)の平均観客動員数(年度別)
年度 | 平均 |
1993 | 17,976 |
1994 | 19,598 |
1995 | 16,921 |
1996 | 13,353 |
1997 | 10,131 |
1998 | 11,982 |
1999 | 11,658 |
2000 | 11,065 |
2001 | 16,548 |
2002 | 16,368 |
2003 | 17,351 |
2004 | 18,965 |
2005 | 18,765 |
2006 | 18,292 |
2007 | 19,081 |
2008 | 19,278 |
2009 | 19,126 |
2010 | 18,428 |
2011 | 15,797 |
2012 | 17,566 |
2013 (26節終了時点) | 16,510 |
■ 動員力のあるチームがJ2に降格 21年目となる2013年は9月21日・22日に行われた26節を終えた段階では、平均16,510人となっている。これは、歴代では14位となる。17,566人だった2012年と比べても1,000人程度減少しており、この数字を見て危機感を抱いている人も多いと思うが、いくつかの注意点があるので、この数字だけを見て、「Jリーグの人気が落ちた。」、「Jリーグは危機を迎えている。」と騒ぎ立てるのは、『浅はかである。』と言わざる得ない。
言うまでもなく、Jリーグには昇格&降格があるので、毎年、J1の顔ぶれが異なる。今シーズンは、神戸とG大阪と札幌の3チームがJ2に降格して、甲府と湘南と大分の3チームがJ1昇格を果たしたが、「J1の平均観客動員数」という点だけを考慮するならばダメージは大きかった。表2のとおり、ホームゲームの平均観客動員数は甲府が13位で、大分が14位で、湘南が18位となっており、いずれも、J1平均(=16,510人)を大きく下回っている。
ただ、甲府は健闘している。山梨中銀スタジアムのキャパは16,000人程度なので、平均で12,633人というのは、良い部類である。誤算は大分で、前にJ1に在籍していたときは、安定して2万人前後の動員数を記録していたが、12,302人と激減している。湘南も含めた昇格組の3チームの平均は11,519人となるが、2012年は神戸が14,638人で、G大阪が14,778人で、札幌が12,008人で、3チームの平均は13,808人だったので、かなり差がある。
降格組3チームの2012年の平均(=13,808人)と昇格組3チームの2013年の平均(=11,519人)の差は2,289人で、総数では116,739人の減少となって、リーグ全体に及ぼす影響は116,739人/(34*9)なので、リーグ平均を381.5人下げていることになる。先のとおり、2012年と2013年を比較するとリーグ全体の平均が17,566人から16,510人に落ち込んでいるが、動員力のあるチームが降格して、動員力の低いチームが昇格してきたことが、理由の1つであることは間違いない。
表2. 各クラブの平均の観客動員数(ホームとアウェー)
| | 平均(ホーム) | 平均(アウェー) |
1 | 浦和レッズ | 34,430 | 26,002 |
2 | アルビレックス新潟 | 25,424 | 14,525 |
3 | 横浜Fマリノス | 24,076 | 17,151 |
4 | FC東京 | 23,686 | 16,373 |
5 | セレッソ大阪 | 18,047 | 15,323 |
6 | 川崎フロンターレ | 16,608 | 16,497 |
7 | 名古屋グランパス | 15,724 | 16,845 |
8 | サンフレッチェ広島 | 15,391 | 17,347 |
9 | 清水エスパルス | 14,312 | 14,694 |
10 | 鹿島アントラーズ | 14,298 | 19,600 |
11 | ベガルタ仙台 | 14,240 | 13,826 |
12 | 柏レイソル | 12,929 | 16,604 |
13 | ヴァンフォーレ甲府 (昇格組) | 12,633 | 14,928 |
14 | 大分トリニータ (昇格組) | 12,302 | 15,614 |
15 | 大宮アルディージャ | 11,381 | 16,443 |
16 | サガン鳥栖 | 11,030 | 14,342 |
17 | ジュビロ磐田 | 10,938 | 16,414 |
18 | 湘南ベルマーレ (昇格組) | 9,623 | 14,542 |
■ 平日開催によるダメージ 以上のようなことも減少の理由と言えるが、もっと影響が大きいと考えられるのは、「平日開催」が増加したことである。今年はブラジルW杯のアジア最終予選とコンフェデと東アジアカップがあったので、夏場に平日開催を入れざる得なかった。結局、7月10日(水)、7月17日(水)、7月31日(水)、8月28日(水)と、夏の間に4度も平日開催を行っているが、これが平均の観客動員数を押し下げる主要因になったことは、表3を見ると一目瞭然である。
ACLの日程を考慮して平日開催に回された試合(先日の柏と磐田の試合など)もいくつかあるので、ここまで40試合が平日に開催されているが、土・日・祝日との差は明らかである。土・日・祝日の場合、194試合で平均が17,301人となるが、平日開催の場合、40試合で平均が12,673人となる。その差は4,628人で、平日開催になると、ほぼ半数の47.5%が1万人にすら届いていない。(土・日・祝日のときは、12.4%なので、大きな差がある。)
表3. 平日開催と土・日・祝日開催の観客動員数の比較
| 試合数 | 平均 | 1万人未満 | 1万人未満の割合 |
土日祝日 | 194 | 17,301人 | 24試合 | 12.4% |
平日開催 | 40 | 12,673人 | 19試合 | 47.5% |
合計 | 234 | 16,510人 | 43試合 | 18.4% |
なお、1ステージ制となった2005年以降、どれだけ平日開催があるか、カウントしてまとめると、表4のようになった。平均の観客動員数は昨年の数字と今年の数字で比較されることがほとんどなので、2012年と2013年を比べてみると、2012年は平日開催は1回だけだったが、前述のとおり、2013年は4度も平日に試合を行っている。(※ 2012年は11月7日に行われた31節のみ。ただ、その9試合の平均は11,617人で、節ごとの平均ではワースト2位だった。)
震災のあった2011年は、2節から7節までが延期されたので、ほとんど休みなしでリーグ戦をこなすことになったが、平日開催はもともと3試合予定されていて、追加で平日開催となったのは、4節の試合(7月13日(水))のみ。なので、平日開催はそこまで増えていない。(一部の人が主張していたように、コパ・アメリカに出場するために消化しきれなかった分を夏や秋の平日に回していたならば、財政危機を迎えたクラブが出てきた可能性は十分に考えられる。)
結局、平日開催は2012年は1回だったが、2013年は4回に増えている。コンフェデと東アジアカップがあったので、仕方がないと言えるが、土・日・祝日と平日開催のときの平均の差は4,628人なので、平日開催をすると、1回ごとに総数が約4万人ダウンして、全体に及ぼす影響は4,628人*9/(34*9)なので、リーグ平均で考えると136.1人のダウンとなる。したがって、昨年と比べて3回増えたならば、136.1*3となって、400人ほど平均の観客動員数が下がるのが、普通である。
平日開催のときは、ハーフタイムチケット(=仕事でキックオフ時間に間に合わない人のために、後半戦だけ観戦できる半額チケット)を発売したり、FC東京などがアクセスのいい国立競技場で試合を行ったり、各クラブは平日でも客を集めようと頑張っているが、限界はある。なので、できるだけ平日開催はなくす方向でJリーグは動くべきであり、どういうスケジュールを組むかというのが、観客動員を増やすポイントとなる。
表4. 2005年以降の平日開催の数
| 平日開催 | 夏休み期間 | それ以外 |
2005年 | 5 | 1 | 4 |
2006年 | 5 | 4 | 1 |
2007年 | 3 | 2 | 1 |
2008年 | 3 | 1 | 2 |
2009年 | 1 | 1 | 0 |
2010年 | 2 | 2 | 0 |
2011年 | 4 | 1 | 3 |
2012年 | 1 | 0 | 1 |
2013年 | 4 | 2 | 2 |
(下)に続く。
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