■ 第33節J2の第33節。12勝12敗8分けで勝ち点「44」のアビスパ福岡(13位)と、9勝12敗11分けで勝ち点「38」の横浜FC(15位)がレベルファイブスタジアムで対戦した。ともにプレーオフ出場ならびにJ1復帰を目指しているが、32節を終えた時点で、プレーオフ圏内ギリギリとなる6位の京都が勝ち点「51」を稼いでいるので、これ以上、勝ち点を取りこぼすのは許されない切羽詰まった状況になっている。
ホームの福岡は「4-1-2-3」。GK神山。DF三島、古賀、堤、金森。MF船山、城後、金久保。FW坂田、プノセバッチ、石津。大卒ルーキーのMF中原と韓国人CBのDFパク・ゴンが出場停止で、35歳になったベテランのDF古賀が21節の長崎戦(A)以来のスタメンとなった。また、セルビア出身で新加入のFWプノセバッチは初スタメンとなった。189センチの長身ストライカーで、32節の千葉戦は途中から出てきて34分間で5本のシュートを放っている。
対するアウェーの横浜FCは「4-2-2-2」。GKシュナイダー潤之介。DF武岡、ペ・スンジン、野上、中島。MF渡辺匠、高地、寺田、野崎。FWパトリック、三浦知。46歳のFW三浦知は3試合連続スタメンで、スタメンで出場するのは今シーズン9回目となる。22節の栃木SC戦(H)でゴールを決めている。新加入のFWパトリックは3試合目の出場で、こちらも初スタメンとなった。FW田原、FW永井雄らがベンチスタートとなった。
■ 横浜FCが5対1で圧勝試合は前半21分にアウェーの横浜FCが先制する。スピードを生かして左サイドの裏を取ったFWパトリックのクロスをファーサイドのFW三浦知が絶妙のタッチでゴール前に落とすと、MF野崎がうまく右足で流し込んで先制に成功する。MF野崎は3試合連続ゴールとなった。さらに前半32分にも、MF野崎の飛び出しを起点にして、MF寺田のパスを受けたFWパトリックが右足で押し込んで2点目を挙げる。前半は2対0で横浜FCがリードして折り返す。
勢いに乗る横浜FCは、後半開始早々にも左SBのDF金森の横パスをカットしたMF野崎がドリブルで運んで左足でロングシュートを放つと、これが鮮やかに決まって3対0とする。MF野崎は今シーズン6ゴール目で、ここ3試合で4ゴールを奪っている。しかし、後半5分に福岡はMF金久保のパスを受けたDF金森が決めて1点を返す。高卒ルーキーのDF金森は9節の群馬戦(A)以来のゴールで、今シーズン2ゴール目となった。
その後は、福岡がホームの大声援をバックに押し込んでいくが、後半32分に横浜FCがMF寺田のスルーパスからキーパーと1対1のチャンスを得たベテランのFW永井雄が確実に決めて試合を決める4点目を挙げる。元日本代表のFW永井雄は9試合目の出場で今シーズン初ゴールとなった。そして、後半44分にもボランチのMF高地が決めて横浜FCが5対1とリードを広げる。MF高地は2試合連続ゴールで今シーズン2ゴール目となった。
結局、試合は5対1でアウェーの横浜FCが圧勝した。プレーオフ出場は極めて難しくなっているが、ここ5試合では3勝1敗1分けと勝ち点を積み上げている。一方の福岡は3連敗で、ここ8試合では1勝6敗1分けと調子を崩している。9月7日(土)に行われた天皇杯の2回戦でも、同じJ2の栃木SCに1対5で敗れており、公式戦はここ4試合で4失点(vs神戸)→4失点(vs千葉)→5失点(vs栃木SC)→5失点(vs横浜FC)で合計18失点と守備が崩壊している。
■ 急失速のアビスパ福岡2012年はJ2で18位と散々な成績に終わった福岡は、今シーズン、スロベニア出身のプシュニク監督を招へいして、立て直しを図った。オフには、中盤を支えていたMF成岡、MF末吉、MF鈴木惇が揃って移籍を決断して、厳しいシーズンになることが予想されていたが、DF金森、DF三島、MF中原といった新加入選手がチャンスを得て、前線から積極的にプレスをかける「攻撃的な守備」を見せて、プレーオフ争いに加わっていた。
「4-1-2-3」を採用することが多くなっているが、とにかく、攻撃的なポジションの選手は出し惜しみすることも、スタミナを温存することもなく、試合開始からフルパワーで走り回って相手にプレッシャーをかける潔いサッカーで「新しいアビスパ」を印象付ける戦いを続けていたが、8月に入ってから結果が出なくなって、プレーオフの出場権争いから脱落する寸前まで追い込まれている。
プシュニク監督のやり方というのは、面白いとは思う。ボールを奪うことに力を注いで、出来るだけ高い位置でボールを奪って、エネルギーを持った状態で相手ゴールに迫るスタイルは、他のクラブではあまり見られない「勢い」が感じられるので、いいサッカーをしていると思うが、「日本の夏の暑さ」は想定外だったようで、8月になってから、急ブレーキがかかった。「強豪チームとの対戦が続く」という不運もあったが、歯止めが利かなくなっている。
気になるのは、サイドバックである。右SBはDF三島で、左SBはDF金森が起用されているので、高卒ルーキーが左右のSBで起用されたが、本来はアタッカーの選手なので、守備は不安いっぱいである。アンカーで起用されているMF中原やMF船山もパス出しに特徴のある選手で、守備の得意な選手とは言えず、CBの2人に相当な負担がかかっている。前からの守備がハマっているときは問題ないが、今の感じでは、大量失点する試合が続くのも納得である。
今シーズン、千葉のDF米倉が右SBにコンバートされて成功をおさめたが、ここ最近、2列目のアタッカータイプをSBで起用するケースが増えており、対戦相手の横浜FCも右SBにDF武岡を起用している。J1でも、清水のDF石毛とDF河井がSBで起用されており、川崎FのDF登里などもコンバートされた例と言えるが、SBというポジションは専門職なので、若くて経験の少ない選手がこなすのは、非常に難しい。
■ 能力が高いFWパトリック一方の横浜FCも、プレーオフ出場はかなり厳しくなっている。残り9試合を8勝1敗や7勝1敗1分けというペースで乗り切ったとしても、6位に入ることができるかどうか、微妙なところなので、勝ち続けて、なおかつ、上のチームの勝ち点のペースが落ちてくるのを祈るしかない状況であるが、先のことや相手のことを考え過ぎても仕方がない。確実に白星を重ねて、チャンスが来るのを待つしかない。
状況は厳しいが、新戦力のFWパトリックの存在が「ノーチャンスではない。」と思わせる理由の1つになっている。初スタメンで初ゴールをマークしたが、飛び抜けたスピードを持っていて、左足でバーに直撃する惜しいシュートも放っている。福岡が前掛かりになっていたので、楽にプレー出来る環境だったが、後半の存在感は抜群で、スピード勝負になったり、アタッキングサードで1対1になったときは、期待感を抱かせる。
2012年は4位でプレーオフに進んだが、今シーズンの横浜FCは期待外れに終わっている。怪我人が多かったのも誤算だったが、相手に恐さを与えられる選手がいなくて、チームとしての武器が少なかったが、FWパトリックの個人能力は図抜けたものがある。すでにチームメイトの信頼を得ているようで、彼のスピードが生きるパスが何本も出ているので、FWパトリックが軸になって、攻撃陣がまとまってくると、浮上する可能性はある。
2ゴールを挙げたMF野崎の活躍も光った。2点目のFWパトリックのゴールにも絡んでいるが、豊富な運動量で攻撃にアクセントを加えた。圧巻だったのは、後半開始早々に決めたロングシュートである。ときおり、とんでもないゴールを決めるのが、MF野崎という選手の特徴ではあるが、キーパーの位置をよく見たインパクト大のゴールだった。左足のロングシュートだったが、右足でも、左足でもゴールを狙えるところが、ウリになっている。
■ 現役にこだわり続ける姿注目のFW三浦知は3試合連続スタメンで、前半21分のMF野崎の先制ゴールをアシストした。ダイレクトでパスを出しているので、加減は難しかったと思うが、うまくボールの勢いを殺して、最高のボールを供給した。自身のシュートシーンはなかったが、まずまずボールもおさまっていて、後半12分にベンチに退く時は、横浜FCのサポーターだけでなく、ホームの福岡のサポーターからも大声援が送られた。
FW三浦知は46歳になったが、まだまだ元気である。2・3年前と比べると、ゴール前に入っていく鋭さが無くなってきたかな?という気はするが、普通に守備をこなしていて、ボールを受けた時は、確実にボールをキープしている。横浜FCには、実績のあるFW大久保やFW田原、若手で期待されているMF小野瀬らがいるので、彼らがもっと頑張らないとダメだとは思うが、山口監督は、年齢に関係なく、チームに貢献できる選手をチョイスしている。
数年前から、試合に出場するだけで「最年長出場記録」が更新される状況になっているので、当たり前のことであるが、MF野崎の先制ゴールをアシストしたことで、「最年長アシスト記録」を更新した。サッカー選手は30歳くらいで下り坂に入る選手が多くて、10歳マイナスの36歳でも大ベテランと呼ばれる年齢であることを考えると、46歳になってもスタメンで起用されてゴールに絡んでいるFW三浦知は「脅威の46歳」と言うしかない。
もちろん、ヴェルディ川崎や日本代表で活躍していた頃の全盛期のFW三浦知ではない。抜群の知名度とカリスマ性を考えると、現役を引退して、評論家やタレントのような活動をした方がはるかにお金を稼ぐことはできると思うが、いつまでも現役でプレーすることにこだわって、走り続けている。プロスポーツ選手は「夢を与える職業」と言われるが、「カズが活躍しているニュースを聞くと勇気が湧いてくる。」という人は、日本全国にたくさんいると思う。
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