■ 第32節J2の第32節。19勝2敗10分けで勝ち点「67」のガンバ大阪(首位)と、15勝8敗8分けで勝ち点「53」のV・ファーレン長崎(3位)が吹田市にある万博競技場で対戦した。J2の昇格争いは、首位のG大阪が勝ち点「67」、2位の神戸が勝ち点「62」、3位の長崎が勝ち点「53」、4位の千葉と5位の徳島が勝ち点「52」、6位の京都が勝ち点「48」となっており、首位のG大阪と3位の長崎という上位対決となった。
ホームのG大阪は「4-2-3-1」。GK藤ヶ谷。DF加地、西野、今野、藤春。MF内田達、遠藤、大森、宇佐美、岡崎。FWロチャ。今夏の移籍市場で獲得したブラジル人のFWロチャは6試合で7ゴール、ドイツから戻ってきたMF宇佐美も7試合で7ゴールを挙げている。DF今野とMF遠藤の2人はグアテマラ戦とガーナ戦の日本代表メンバーに選出されている。MF二川、FW平井、FWパウリーニョらがベンチスタートとなった。
対するアウェーの長崎は「3-4-2-1」。GK金山。DF岡本、山口、高杉。MF岩間、井上、金久保、古部、佐藤洸、奥埜。FW幸野。浦和から加入のDF岡本は4試合連続スタメンで、仙台から加入のMF奥埜は6試合連続スタメンとなった。リオ世代のFW幸野が1トップの位置に入って、得点源のMF佐藤洸と新加入のMF奥埜がシャドーの位置に入る。エースのMF佐藤洸は31試合に出場して10ゴールを記録している。
■ 2対1で長崎が勝利!!!試合の序盤はイーブンの展開となる。長崎は万博では初めての試合となるが、臆することなく後ろからパスをつないで、真っ向勝負でG大阪に挑んでいく。すると、前半41分にFW幸野がサイドチェンジで右に大きく展開すると、右サイドで待っていたMF金久保が右足でダイレクトで折り返して、最後は、飛び込んできたMF奥埜が左足で合わせてアウェーの長崎が先制する。MF奥埜は今シーズン2ゴール目となった。
1対0と長崎がリードして迎えた後半11分にG大阪はMF岡崎に代えてベテランのMF二川を投入。すると、後半14分に左サイドでMF二川からパスを受けた左SBのDF藤春が中に切れ込んで思い切りよくシュートを放つと、これが相手DFに当たってコースが変わってゴールイン。ホームのG大阪が1対1の同点に追いつく。DF藤春は3試合連続ゴールで、今シーズン4ゴール目となった。
追いつかれた長崎は、後半28分にWボランチの一角のMF岩間を下げてFW小松を投入。勝ち点「3」にこだわる姿勢を見せると、後半40分にMF奥埜が高い位置でボールを奪って右サイドに展開。フリーになっていたMF古部がクロスを入れると、FW小松が高さを生かした豪快なヘディングシュートを決めて2対1と勝ち越しに成功する。C大阪や川崎Fなどでプレーした経験のあるFW小松は3試合連続ゴールとなった。
その後は、ビハインドのG大阪がなりふり構わず攻め込んでくるが、同点ゴールを奪うことはできない。結局、試合は2対1でアウェーの長崎が勝利して3連勝となった。一方のG大阪は、開幕からホームでは無敗が続いていたが、ついに初黒星を喫して、今シーズン3敗目となった。依然として3位以下とは大きな差があるが、首位のG大阪と3位の長崎の差は「11」に縮まった。
■ FWロチャがブレーキ引き分けは多いが、今シーズン、G大阪が敗れたのは、13節の神戸戦(A)と23節の千葉戦(A)の2試合だけで、ともにアウェー戦だったので、ホーム初黒星となった。神戸や千葉はJ1経験の豊富なクラブであり、J2の中では、かなり裕福なクラブなので、G大阪が敗れたとしても、大きな驚きではなかったが、クラブの歴史でも、資金力でも、大きな違いのある長崎が万博競技場で勝利したというのは、ビッグニュースである。
G大阪も決定機は少なくなかった。前半には、MF宇佐美とFWロチャが決定機を迎えて、後半もゴール前を脅かすシーンは作った。しかしながら、DF山口を中心とする長崎の守備陣が踏ん張って、体を張ってシュートをブロックした。31節を終えた段階で30失点というのは、神戸と並んでリーグ最少であるが、湘南から移籍のDF山口の貢献度は非常に高くて、長崎にとって、最も大事な選手の1人と言える。
3敗目を喫したG大阪では、FWロチャがブレーキになった。動きが重くて、カウンターで大チャンスにつながりそうな場面でボールを失うことが多かった。ボックス内で力を発揮する選手で、MF宇佐美とともに、最近のG大阪の攻撃陣を引っ張ってきたが、前節の横浜FC戦に続いていいプレーは出来なかった。これだけ結果を残しているので、相手も研究をしてくるだろう。最初の壁にぶち当たっていると言える。
注目のMF宇佐美は、さすがのボールコントロールからチャンスを作るシーンが何度かあった。前半にあった決定機で決められなかったのは悔やまれるが、ボールの持ち方が良くて、振り幅も小さいので、いつ、どのタイミングで、シュートを狙ってくるのか、全く予想が出来ないので、相手は対処するのが難しくなる。シュートテクニックの高さというのは、彼の一番いいところであり、この日も、片鱗を見せたと言える。
■ 価値ある勝ち点「3」一方の長崎にとっては、歴史的な勝利となったが、真っ向勝負で勝ち点「3」を得たところに価値がある。シュート数は、G大阪も、長崎も7本ずつで、ボールポゼッション率も、大差は無かった。G大阪に攻め込まれた時間帯もあったが、長崎がテンポよくボールを回すシーンというのもたくさんあって、「守って、守って、カウンター」という形でつかんだ勝利でない。この点は、高く評価できる。
高木監督の采配も光った。驚かされたのは後半28分のメンバー交代で、ボランチのMF岩間を下げて、190センチのFW小松を投入してきた。「万博なので引き分けでもOK」と考えるのが普通であるが、Wボランチの1人を下げて、アタッカーの枚数を増やした。結局、後半40分に途中出場のFW小松が決勝ゴールをマークしたが、これ以上ないほど、会心の采配であり、「決断力」と「勇気」は見事だった。
長崎も調子を落とした時期があって、25節からの5試合は0勝3敗2分けと結果を出すことはできなかった。「良く頑張ってきたが、このまま、プレーオフ争いから脱落するのではないか?」とも思われたが、30節からの3連勝で盛り返してきた。プレーオフ圏内となる3位をキープしているが、初年度からプレーオフに進むとなると快挙であり、長崎よりも先にJ2に昇格して来たクラブにとっては、大いなる刺激になるだろう。
■ 快進撃の要因は?2012年は松本山雅と町田がJ2に昇格してきて、松本山雅は12位で、町田は22位だった。松本山雅の12位という順位も、昇格1年目ということを考えると、十分過ぎるほどの好成績であるが、長崎がここまで健闘するようだと、12位という順位でも霞んでしまう。「昇格1年目のチームは下位に低迷するのが当たり前。」という流れが出来つつあったが、常識を覆すような快進撃を見せている。
快進撃の要因はいくつかある。MF佐藤洸、DF山口、DF高杉、FW幸野など、シーズン前の補強が成功したこと、夏の移籍市場で獲得したMF奥埜、FW小松、DF岡本らが戦力になっていることなど、フロントの力も大きいが、何よりも見逃せないのは、高木監督の手腕である。故郷である長崎に戻ってきて、横浜FCと東京Vと熊本の監督時代に培った経験をフル活用して、「破りがたいチーム」を作った。
選手起用では、MF岩間とMF井上をWボランチで起用して、真ん中をしっかりと固めつつ、左右のWBには攻撃的な選手を置いて、WBからチャンスを作るシーンが目立っている。この日も、MF金久保とMF古部がアシストを記録しているが、それ以外にも、MF小笠原がいて、MF山田晃がいて、タイプの異なる攻撃的な選手をサイドに置くことで、プレッシャーの薄いところから攻め込むことに成功している。
MF佐藤洸の使い方も巧みである。長らく、FC岐阜でエースストライカーとして活躍してきたが、タフな選手ではない。184センチと高さはあるが、ハードワークできる選手ではないので、後方からロングボールを蹴りこんでも、マイボールにすることは難しい。その点は短所と言えるが、一方で、シュートセンスが高くて、ポジショニングにも優れており、点の獲れる選手である。
長崎でも、当初は最前線で起用していたが、なかなか機能しなくなったので、シーズンの中盤からポジションを2列目に下げて、FW水永を最前線で起用して、最近は、2列目タイプのFW幸野を1トップで起用するようになった。MF佐藤洸の得点力の高さがフルに発揮できる環境を作って、上手い具合に負担を減らすことに成功した点が、本人にのみならず、チームの好成績にもつながっている。
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