■ 第32節J2の第32節で松本山雅とガイナーレ鳥取がアルウィンで激突した。13勝11敗7分けで勝ち点「46」の松本山雅は、31節を終えた時点で8位とまずまずの位置に付けている。J2のプレーオフ出場争いは熾烈で、6位の京都が勝ち点「48」、7位の札幌が勝ち点「47」、8位の松本山雅が勝ち点「46」、9位の岡山と10位の水戸と11位の福岡が勝ち点「44」となっており、勝ち点「4」差の中に6チームが入り乱れる大混戦になっている。
一方、対戦相手の鳥取は、今年も残留争いに巻き込まれている。シーズン当初は小村新監督の新しいやり方と新戦力がフィットして、一桁順位を狙える位置に付けていたが、4月に入ると全く勝てなくなった。結局、8月12日に小村監督を解任して前田浩二監督が就任したが、3試合で0勝2敗1分け。30節はホームでG大阪に1対7で敗れて、31節もホームで長崎に0対3で敗れるなど、監督交代の成果は出ていない。
残留争いも熾烈で、16位の愛媛FCが勝ち点「32」、17位の北九州と18位の群馬が勝ち点「31」、19位の富山が勝ち点「30」、20位の熊本が勝ち点「29」、21位の鳥取が勝ち点「27」、最下位で22位のFC岐阜が勝ち点「25」となっているが、降格圏となる21位に転落した鳥取にとっては、何としてでも勝ち点を積み上げて、悪い流れを変えたい試合である。両チームの状態は好対照と言える。
#14 フィールド(フットボール専用)

#15 横断幕 (松田直樹)
■ 松本山雅は4連勝達成!!!試合は立ち上がりからホームの松本山雅が押し込んでいく。新加入のMF岩上を中心に何度もチャンスを作ると、前半33分に右WBのMF玉林のシュートがポストに当たって跳ね返ったところをFW塩沢が押し込んで、ホームの松本山雅が先制する。FW塩沢は25節の北九州戦以来のゴールとなった。前半は1対0でホームの松本山雅がリードして折り返す。
後半はアウェーの鳥取ペースとなる。松本山雅の攻撃の中心となるFW塩沢を徹底的につぶして、起点を作らせない。ボランチのMF鮫島、左CBのDF林堂がほぼ完ぺきにFW塩沢を封じて流れを呼び込むと、後半41分にゴール方向にこぼれたボールに反応したエースのFW久保がボレー気味の見事なシュートを決めて同点に追い付く。千葉からレンタル移籍中のFW久保は今シーズン7ゴール目となった。
しかし、同点ゴールが決まった直後の後半42分に松本山雅の右WBのMF玉林が右サイドを突破してゴール前に精度の高いピンポイントクロスを入れると、FW塩沢が豪快にヘディングで決めて2対1と勝ち越しに成功する。FW塩沢は今シーズン6ゴール目となった。結局、2ゴールを挙げたFW塩沢の活躍もあって、2対1でホームの松本山雅が勝利して4連勝となった。一方の鳥取は3連敗で、10試合勝利なしとなった。
#16 鳥取のスタメン

#17 ゴール裏 (松本山雅)
■ 一番人気の塩沢勝吾前半はホームの松本山雅ペースで、後半はアウェーの鳥取ペースとなったが、FW塩沢がヒーローとなった。正直なところ、90分を通してのプレーは、褒められたものではなった。空中戦を封じられて、ほとんど前線で起点になることはできなかったので、「ゴールシーン以外はイマイチだった。」と言えるが、2ゴールというのは立派である。特に、同点に追いつかれた直後に奪った2点目の決勝ゴールは価値がある。
試合前に売店で並んでいたとき、長い列が出来ていたので、15分ほど待つことになった。その間、たくさんの松本山雅のサポーターが横を通り過ぎて行ったが、FW塩沢の19番のユニフォームを着ている人が目立った。一番、多かったのは、「サポーターの番号」と言える12番のユニフォームで、他のチームでは、ここまで「12番」の割合は高くないと思うが、6割程度の人が「12番」を背負っていた。
この割合の高さというのは、ちょっと面白い気がしたが、それ以外では、FW塩沢の19番が最も多かった。言うまでもなく、FW塩沢という選手は、それほど上手い選手ではない。決定機に決められないことも珍しくないが、90分間、頑張ることのできる選手で、わずかな可能性しかないケースでも、体ごと突っ込んでいく「強さ」と「勇気」を兼ね備えたチームプレーヤーである。
トルシエジャパンでも活躍した現水戸のFW鈴木隆行に通じるところがあるが、スタジアムで、一番、歓声をもらうのは、実はこういうタイプの選手である。もちろん、テクニックがあって、ドリブルやパスでサポーターを魅了することができる選手は貴重であるが、チームのために戦えない選手は、サポーターの支持を集めることはできない。「華麗さ」というよりも、「一生懸命さ」や「泥臭さ」を求めているサポーターは多い。
個人的には、FW塩沢という選手が松本山雅の象徴だと思う。もちろん、攻撃の核となるのはFW船山で、守備陣では、DF飯田やDF多々良の頑張りも目立つが、彼のひたむきなプレーというのは、チームに活力を与えており、決してあきらめない姿勢はチームに根付いている。スター性があるとは思えないが、それでも、多くの人が「19番」を背負っているという事実に「松本山雅の強さの理由」を垣間見た気がした。
#17 最優秀選手の表彰
■ 10試合勝利なし・・・一方の鳥取は、同点に追いついて、勝ち点「1」を得るチャンスが膨らんでいたので、アシストを記録したMF玉林をフリーにしたことが悔やまれる。途中出場のDFドゥドゥが対応していたが、ボールを奪い返そうとする意識が高くなりすぎて、振り切られてしまった。後半16分に投入されたDFドゥドゥは、気迫を全面に押し出したプレーでチームに勢いをもたらしていたので、勿体無いプレーであり、軽率なプレーだった。
鳥取はこれで10試合勝利なしで、前田監督になってからの成績も0勝3敗1分けとなった。監督交代という劇薬は、5試合ほどで切れてくるのが普通であるが、これまでのところ、結果には結びついていない。J2の残留争いは、愛媛FC・北九州・群馬・富山・熊本・鳥取・FC岐阜の争いになっているが、サポーター席から『絶対残留』という横断幕が掲げられるなど、切羽詰まった厳しい状況になって来た。
ただ、内容的には、悪くは無かった。前半の立ち上がりの15分間は圧倒されたが、松本山雅の勢いがおさまった後は、互角の勝負になって、後半は鳥取の方が攻め込んだ。決定的なチャンスも作っており、相手のキーマンであるFW塩沢をきっちりと封じるなど、守備もある程度は機能していた。意図を感じる守備を行って、それなりのレベルで成功したという点は、次につながるのではないか。
鳥取のサポーターもたくさんアルウィンを訪れていたが、こういうチームが苦しくなったときでも、選手やクラブを見捨てることなく、アウェーの地まで、はるばる出向いてくれる人たちというのは、クラブの財産である。日本代表も同じであるが、調子のいいときだけでなく、調子が悪くなったときも、温かい声援を送って、チームを支えてくれる人たちが、本当の意味での「サポーター」と言える。
#18 「絶対残留」

(下)に続く。
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