■ ポジショニングで勝負する選手「点取り屋」と言ってもいろいろなタイプがあるが、『ゴール前のポジショニングで勝負する』というタイプもいる。もちろん、現代サッカーは、フォワードの選手に要求されることが多くなったので、そのプレーだけに専念することは難しくなっているが、嫌らしいところにポジションを取って、キーパーがはじいたボールを押し込んだり、バーに跳ね返ったところを押し込んだり、常に、泥臭いゴールを狙っている選手もいる。
このような形のゴールは「ごっつぁんゴール」と呼ばれることがあるが、Jリーグでプレーした経験のある外国人選手では、名古屋でプレーした元イングランド代表のFWリネカーや磐田でプレーした元イタリア代表のFWスキラッチが得意としていた。一方、日本人選手では、ヴェルディ川崎で活躍した元日本代表のFW武田がごっつぁんゴーラーの代名詞のような存在と言えるだろう。
「こぼれて来たボールを押し込むだけ」というゴールが多いので、過小評価されがちであるが、同じ1点であることに変わりは無い。そして、確かに見栄えはそんなに良くないことが多いが、独特の感性を駆使して、ゴール前で独特のポジションを取って、嗅覚で決めたゴールというのは、プロフェッショナルを感じることができる。そういうタイプの選手を90分間追い続けるというのは、一興である。
■ 佐藤寿人のポジショニング現役の日本人選手の中で、「ゴール前のポジショニングのセンスがあるな・・・。」と感じるのは、やはり、広島のFW佐藤寿である。こぼれ球を押し込むゴールも多くて、サイドからのアーリークロスを点で合わせるゴールも多い。もちろん、得意の左足で決める美しいゴールも少なくないが、彼のゴール前のポジショニングというのは、多くのサッカー少年の参考になるだろう。
動きを追っていると、「そんなところにポジションを取るのか。」と思う時がある。セオリーとは違った動きをすることも珍しくないが、そういう時に限って、彼のところにボールがこぼれてくる。著書の中で「明確なイメージを持って準備をしているので、ラッキーでしたねと言われても完全には同意はできない。」と語っており、『センス』という言葉で片付けられることを好まないとは思うが、どう考えてもセンスはある。
その他では、川崎FのFW小林悠のゴール前の動きも独特である。2011年に12ゴールを挙げて脚光を浴びるようになったが、彼も人とは違った感性を持っていて、抜け目のなさも備えている。風間監督が就任した後は、ポストワークなども向上して、幅の広い選手となったが、生粋の点取り屋であり、一瞬でも目を離すとやられてしまうので、相手のCBにとっては、厄介な存在である。
■ 「なぜ、そこにいるのか?」そして、こういった独特のポジショニングセンスを持った選手というのは、フォワードだけに限った話ではない。他のポジションの選手で、「面白い感性を持っているな・・・。」と思うのは、やはり、仙台の右SBのDF菅井である。2011年は7ゴール、2012年は5ゴールを記録しているが、チャンスが多いとは思えないSBとしては異例とも言えるゴール数で、「なぜ、そこにいるのか?」と驚かされることが多い。
大分時代の2012年に14ゴールを挙げてチームのJ1昇格の原動力となった京都のFW三平も不思議な選手である。今シーズン、京都ではフォワードでプレーする機会が多くなっているが、大分のときは右WBが基本ポジションで、守備の負担も大きかったが、どこからともなく現れて、試合を決めるゴールを決めて見せた。右WBで14ゴールというのは、普通では考えられない数字である。
また、近年は思うように出場機会を得ることが出来ていないが、柏のMF谷口、C大阪のMF枝村も、ゴール前で異質な動きをする選手である。MF谷口にしても、MF枝村にしても、試合から消えてしまうことが少なくないので、計算の立つタイプとはいえないが、ともに勝負強さを持っていて、試合の流れとは関係なしにゴールを決めてしまう不思議な力を持っている。
もちろん、代表戦やクラブの試合でたくさんのゴールを決めているマインツのMF岡崎やマンチェスターUのMF香川なども、ゴール前の絶妙なポジション取りからゴールを決めることがあるが、彼らの場合は、センスや感性でゴールを決めているというよりは、どちらかというと、動きの量の多さが「ごっつぁんゴール」を生み出していると思うので、ここまでに名前が挙がった選手とは、ちょっと系統は異なる。
このような能力を数字などで表現することは難しいので、一昔前のウイニングイレブンでは、「ポジショニング」という特殊能力を付けることで実際の選手の動きに近づけようと努力していたが、思うようにはいかなかった。Jリーグの若手選手では、湘南のFW大槻や浦和のFW矢島にも異質なところを感じるが、ポジショニングで魅せることのできる選手がもっともっと増えることを期待したい。
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