■ 第30節J2の第30節。13勝8敗8分けで勝ち点「47」の京都サンガと、9勝6敗14分けで勝ち点「41」のファジアーノ岡山が西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場で対戦した。熾烈を極めるJ2のプレーオフ争いは、29節を終えた時点で、3位の千葉が勝ち点「50」で、4位の徳島が勝ち点「48」で、5位の京都と6位の長崎が勝ち点「47」で、7位の水戸と8位の福岡が勝ち点「43」で、9位の東京Vが勝ち点「42」で、10位の岡山と11位の札幌が勝ち点「41」で、12位の松本山雅が勝ち点「40」となっている。
ホームの京都は「4-1-2-3」。GKオ・スンフン。DF安藤、酒井、バヤリッツァ、福村。MF秋本、横谷、工藤。FW駒井、宮吉、山瀬功。19試合で10ゴールを挙げているFW原がベンチスタートとなって、21歳のFW宮吉が7節のFC岐阜戦(A)以来のスタメンとなった。怪我もあって今シーズンは12試合に出場して2ゴールとチームに貢献できていない。元日本代表のFW山瀬功は21試合に出場して6ゴールを挙げているが、4試合ゴールから遠ざかっている。
対するアウェーの岡山は「3-4-2-1」。GK中林。DF近藤、竹田、植田。MF千明、島田譲、澤口、田所、石原、桑田。FW清水。23試合に出場して7ゴールを挙げているFW押谷は出場停止で、夏の移籍市場で大宮から獲得した20歳のFW清水が1トップで初スタメンとなった。同じく夏の移籍市場でチームに加入したMF金民均はベンチスタートとなった。2012年は攻撃の核となって38試合に出場して6ゴールを挙げている。退団後はポーランドのビャウィストクというチームでプレーしていた。
■ 4対2で岡山が勝利豪雨のため、試合開始時間が30分延期となった試合は、前半14分にホームの京都が先制する。ペナルティエリア内で仕掛けたMF工藤が岡山のDF近藤のハンドを誘ってPKを獲得。これをMF横谷がど真ん中に蹴り込んで先制に成功する。MF横谷は今シーズン4ゴール目となった。しかし、前半18分に岡山が右サイドのCKを獲得すると、大卒ルーキーのMF島田譲の蹴ったボールをDF近藤が合わせて1対1の同点に追い付く。東福岡高校出身でインテルのDF長友と同級生のDF近藤は今シーズン初ゴールとなった。
さらに前半26分には途中出場のMF田中奏がペナルティエリア内で京都のDF酒井のハンドを誘ってPKを獲得。これをFW清水が決めて2対1と岡山が逆転に成功すると、さらに前半45分にもMF田中奏のクロスからFW清水がゴール前に落としたボールに反応したMF石原が左足で決めて3対1とリードを広げる。20歳のFW清水も、20歳のMF石原も、ともに今シーズン初ゴールとなった。前半はアウェーの岡山が3対1とリードして折り返す。
負けられない京都は後半23分に途中出場のFW原のPKで1点差に迫るが、後半27分に守備の要のDFバヤリッツァが2枚目のイエローカードを受けて退場。ビハインドの京都が10人になると、後半38分に岡山がダメ押しの4点目を挙げる。MF田中奏の縦パスを受けたMF石原のクロスをボランチのMF島田譲が決めて4対2と突き放す。早稲田大学出身のMF島田譲はプロ初ゴールとなった。試合は4対2でアウェーの岡山が勝利して、貴重な勝ち点「3」を獲得した。一方の京都は3連敗となった。
■ 1ゴール1アシストのMF石原岡山は18日(日)に行われた29節の東京V戦で内容の伴った見事な戦いぶりで勝ち点「3」を獲得した。勢いのある状態で京都に乗り込んできたが、プレーオフ争いをするライバルチームの1つである京都に4対2で勝利した。これで岡山は勝ち点「44」となって、岡山と札幌と水戸と福岡の4チームが勝ち点「44」で並んだが、得失点差の関係で岡山が7位となって、試合開始前の段階の10位から一気に順位を上げた。6位の京都との差も「3」となったので、プレーオフ圏内が見えてきた。
前半14分にアンラッキーなハンドからPKで先制を許したが、慌てることは無かった。すぐ後の前半18分にCKからDF近藤のゴールで同点に追い付くことができたのは大きかったが、MF澤口の怪我によって、同点に追い付いた直後に投入されたMF田中奏の活躍が光った。右WBのポジションで積極的に仕掛けて、2点目につながるPKを奪取して、3点目と4点目の起点になった。非常に突破力のある選手であるが、この日は、特に体がキレていて、縦への突破が相手の脅威となった。
1ゴール1アシストのMF石原の活躍も光った。今シーズンのMF石原は、運動量は多くて、アシストもいくつか記録していて、動き自体は悪くなかったが、なかなかゴールが生まれなかった。チャンスには絡んでいるので、産みの苦しみを味わうことになったが、同学年となるFW清水がうまく頭で落としたボールに反応して、左足で蹴り込んだ。とっさのプレーで、いきなり目の前にボールがこぼれて来たので、余計なことを考える余裕が無かったことが、ファインゴールにつながったと言える。
MF石原は清水ユース出身でプロ3年目となる。ドリブルを武器にしているが、テクニックで相手をかわすこともできるし、スピードで相手をぶっちぎることもできる。どちらか一方が優れているドリブラーというのは少なくないが、テクニックも、スピードも、両方が武器になるドリブラーというのは、J2のみならず、Jリーグ全体を見渡しても、それほど多くない。しかも、ボールを受ける技術も高くて、ラストパスのセンスもあるので、J2の中では、屈指の有望株と言える。
将来的には、J1の舞台でも大きな存在感を発揮できる選手になれるだけのポテンシャルを秘めた選手と言えるが、今シーズンはやや停滞している。やや期待を裏切っているが、とは言っても、若手アタッカーはゴール数が増えてくると、自信が生まれて、一気に階段を駆け上がることも珍しくない。技術的な部分でも、精神的な部分でも、大ブレークに必要な下地は十二分に整っているので、いつ爆発してもおかしくない状態だと思う。シーズン初ゴールをきっかけにしてほしいところである。
■ 効果的な働きを見せたFW久木田岡山は4ゴールを奪ったが、DF近藤も、FW清水も、MF石原も、MF島田譲も、今シーズン初ゴールだった。この時期になって、ゴールを決めた選手全員が初ゴールというのは、珍しいと思うが、MF石原はもちろんのこと、レギュラーを狙うDF近藤、移籍組のFW清水、大卒ルーキーのMF島田譲にゴールは生まれたことは、チームの雰囲気を良くすることにつながるだろう。8ゴールを挙げているエースのFW荒田が長期離脱中なので、得点力不足に苦しんでいるが、流れは良くなってきた。
ボランチのMF島田譲は2試合連続スタメンとなったが、MF仙石とMF千明という盤石と思われたWボランチに割って入る実力があることを、東京V戦に続いて証明した。フィジカルの強い選手で、左足のミドルパスに特徴があるが、先日の東京V戦も、この日も京都戦も、後方で構えているだけでなく、積極的にゴール前に飛び出していった。ダメ押しの4点目は絵に描いたような鮮やかな飛び出しから生まれているが、こういう形でゴールに絡むことのできるボランチというのは、価値がある。
また、途中出場のFW久木田の活躍も光った。後半16分にFW清水に代わってピッチに送り出されたが、確実にボールをキープして、後半27分には積極的な仕掛けでDFバヤリッツァの退場を誘発した。大宮から加入のFW清水は1ゴール1アシストと結果を残したが、FW久木田の方が効果的なプレーが多かった。後半の京都の反撃を最低限にとどめることができた要因の1つと言える。FW押谷も、FW清水もサイズのある選手ではないので、身体能力の高いFW久木田は今後のキープレーヤーの1人と言える。
■ 京都は3連敗・・・一方の京都は3連敗となった。主審を務めた佐藤隆治さんは臆することなくPKを取ったので、京都に2回、岡山に1回のPKが与えられて、京都はPKから2ゴールを奪ったが、流れの中ではゴールを決めることはできなかった。惜しかったのはセットプレーで、後半はセットプレーから際どいシーンをたくさん作って、ゴールマウスに吸い込まれそうなシーンもあったが、岡山の守備陣の頑張りもあって、ゴールを割ることはできなかった。6位とプレーオフ圏内を維持しているが、ここに来ての3連敗というのは痛すぎる。
過密日程ということもあって、この日は、10ゴールを挙げているFW原をベンチスタートにして、FW宮吉をスタメンで起用してきたが、なかなか持ち味を発揮できなかった。FW宮吉のような選手は、2トップの一角でプレーしたとき、最大限に良さを発揮できるので、3トップの真ん中というのは、ベストポジションとは言えないが、持ち味である裏抜けに適したボールが味方選手から供給されることは少なかった。4月7日以来のスタメンということで、気合いは入っていたと思うが、効果的な働きはできなかった。
これで自動昇格圏内で2位の神戸との差は「12」となった。J2は残り12試合なので、「残り試合数=勝ち点差」となったので、自動昇格というのは絶望的となったので、プレーオフを制してJ1に昇格することが現実的な道と言える。3位の千葉と4位の徳島との差は「4」なので、追いつくことのできる勝ち点差であるが、7位以下のチームとの差も僅かである。次の31節はアウェーで4位の徳島と対戦するが、徳島にとっても大事な試合であり、京都にとっても大事な試合と言える。
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