■ 負けられない戦いさてさて、等々力競技場。よく考えると、新幹線に乗っていて、いつのまにか通り過ぎたことはあったけれど、神奈川県に行くのは初めてかもしれない。かなり、苦しいスケジュールだけど、等々力競技場に直行。
前節、FC東京に対して、4対1とリードしながら大逆転負けを喫した川崎フロンターレ。しかも、ジュニーニョ・マギヌン・マルコン・箕輪の主力4人が出場停止という非常事態。首位浦和との勝ち点差は「7」。もう、負けられない闘いとなる。一方の福岡は、降格圏内の17位。セレッソ大阪との激しい残留争いが続いている。
■ 劣勢の川崎が勝利川崎は、FW黒津・MF今野・MF西山・DF佐原が代役としてスタメン出場。レギュラーと控えの差が激しい川崎にとっては、かなり厳しいメンバー構成となった。一方の福岡は、表記上は、布部の1トップだが、極端に言うと、<4-6-0>。
試合は、立ち上がりから、福岡が優勢。川崎は、いつもの縦に早いサッカーが出来ずに、福岡のDFを崩すことが出来ない。対する福岡は、左サイドのMF古賀とDFアレックスのコンビでチャンスメーク。前半の半ば過ぎには、古賀のミドルシュートがポストを叩くシーンもあった。前半は、0対0で終了。
後半も、福岡ペースなのは変わらず。しかしながら、後半14分に、縦パスから抜け出したFW黒津がキーパーに倒されてPKを獲得。これをFW我那覇が落ち着いて決めて先制した。後半27分、福岡は、攻撃力のある、MF城後とFW田中佑昌を投入すると、後半35分、城後のパスを受けた田中が同点のゴール。川勝監督の采配がズバリ当たって同点に追いついた。
追いつかれた川崎も、追いついた福岡も、ともに勝ち点1では満足できない状況ということもあって、両チームとも勝ち越しゴールを狙う。後半42分、川崎が右サイドでラッキーな形でFKを得ると、こぼれ球をMF谷口がミドルシュート。ポストに当たったボールが、ラッキーなバウンドでゴール方向に跳ね返って勝ち越しゴール。2対1で、川崎が勝利して、貴重な勝ち点「3」を獲得した。
■ 忠実なサッカーで川崎を上回る内容を見せた福岡敗れたものの、福岡のサッカーは非常に良かった。川崎のシュート数は、わずかに6本で、決定的なシュートは1本も許さなかった。基本に忠実なマーキング、スペースメーキングのうまさ、攻守の切り替えの早さのすべてが、川崎を上回っていた。
特に目を引くのは、左サイドの攻撃。攻撃力のある古賀とアレックスの崩しで、再三、チャンスを演出した。3バックの川崎は、古賀とアレックスに対して、右SMFの森が1人で対応する場面が多く、劣勢を強いられた。
このチームの問題点は、言うまでもなく、点の取れるストライカーがいないこと。前線に頼れるストライカーがいると、苦しい戦いになっても、耐えていれば、最後には、「彼」が何とかしてくれるだろうという、期待感がもてる。既存のメンバーで、出来うる最善のサッカーをして勝ち点を拾っている福岡の戦いぶりは賞賛すべきだが、それでも、本来は中盤の選手である、布部や久藤にゴールを期待せざる得ない状況は、見ていて切ない。
■ 川崎の苦戦の要因一方の川崎フロンターレは、よく勝ち点「3」を獲得できたなと思う。川崎らしい、縦に速いサッカーは影を潜めて、福岡の鋭い出足の前に、ボールが全くつながらなかった。
苦戦の原因が主力不在だったことは間違いないが、それ以外の要因もあった。挙げてみると、以下の4つ。
・トップ下の今野
・黒津と我那覇の役割分担の不徹底
・右サイドでの劣勢
・運動量不足
一番気になったのは、右サイドの森の位置で数的不利になるので、ここをカバーしなければならないという意識が、過剰にチーム全体に表れて、バランスが崩れてしまったこと。ほとんど攻撃に絡めず、逆に中央に位置することで、真ん中のスペースを消してしまっていたMF今野を下げて、試合途中に3バックから4バックに変更しても良かったのではないかと思う。
■ ジーコスピリット?川崎の内容は悪かった。もしかしたら、今シーズン、最低の内容だったかもしれない。ただ、それでも、勝ち点「3」を獲得したことに、大きな意味がある。谷口の決勝ゴールを含めて、確かに、ラッキーな要素もあった。だが、それをラッキーだけで片付けてはいけない。絶対に何か、要因があるはずである。
先日のレッズ戦のフロンターレの戦いぶりを、「ジーコスピリット」が表れた試合と評しているメディアがあった。関塚監督は、鹿島アントラーズの出身。結びつけることが出来なくもないか。
■ オーガナイザー・ホベルト福岡では、MFホベルトのプレーが秀逸。福岡の攻撃は、ほとんどがホベルトを経由する。正確なミドルパスと正確なボールコントロールが光っていた。川崎の中村憲剛とのマッチアップでも、ホベルトが優勢だった。
一方の川崎では、左SMFに入った、西山のドリブルが観衆の興味を誘った。スピードとテクニックを兼ね備えた鋭い突破は、浦和レッズの相馬を連想させる。つなぎのパスがやさしくなく、クロスの精度もいまひとつだったが、ほとんど攻め手がなかった前半は、唯一の突破口になっていた。オールラウンドなMFマルコンの壁は厚いが、今後は、途中出場で切り札的な扱いをしても面白いと思う。
■ 決勝ゴールを挙げた谷口西山と比べると、逆サイドの森は、非常に良くなかった。古賀とアレックスの対応に苦しみ、攻撃参加したときも、1対1で相手を抜けきれず、ブレーキになっていた。圧倒的なスピードは魅力なので、使い方をもう少し学んで欲しいところ。
決勝ゴールの谷口は、攻守で奮闘した。ゴールシーン以外でも、中村憲剛の失ったボールを厳しいタックルで取り返す場面もあり、相方のフォローも完璧だった。課題は、展開力。ボールをもったときに、右往左往するシーンがあって、落ち着きがなかった。
■ 欠けているホスピタリティの精神川崎としては、大きな前進となったが、まだ、勝ち点「4」の差がある。残り3試合は、勝ち続けるしかない。
それにしても、等々力周辺は、不親切。駅から遠いのは仕方ないが、スタジアムへの道案内くらいは、あってもいいものだ。何年間、Jリーグの試合をしているのか、という愚痴もいいたくなる。
この試合は、川崎フロンターレが劇的な勝利をおさめたこともあって我慢できたが、ホスピタリティが感じられない。せっかく、フロンターレがいい試合を見せ続けているのに、もったいないと思う。
いい印象と悪い印象の両方をもって、等々力を後にして、次に向かった。
(続く。)
- 関連記事
-