■ J1の第14節J1の第14節。10勝1敗2分けで勝ち点「32」で首位を走る大宮アルディージャと、2勝7敗4分けで勝ち点「10」のサガン鳥栖がNACK5スタジアムで対戦した。J1は13節を終えた時点で首位の大宮が勝ち点「32」で、2位の浦和と3位の横浜FMが勝ち点「27」で続いている。一方の鳥栖は残留圏ギリギリとなる15位に位置する。16位の湘南との差は「1」で、17位の磐田と18位の大分との差は「3」のみと厳しい戦いになっている。
ホームの大宮は「4-2-2-2」。GK北野。DF今井、菊地、高橋祥、下平。MF青木拓、金澤、渡邉大、チョ・ヨンチョル。FWノヴァコヴィッチ、長谷川。スロベニア代表のFWズラタンは怪我のため欠場で、187センチのFW長谷川がスタメンで起用された。同じくスロベニア代表のFWノヴァコヴィッチは11試合で7ゴールを挙げている。大卒ルーキーで3ゴールを挙げているFW富山はベンチスタートとなった。
対するアウェーの鳥栖は「4-2-3-1」。GK赤星。DF丹羽、呂成海、坂井、金民友。MF高橋義、末吉、水沼、池田、野田。FW豊田。キャプテンのMF藤田直は出場停止で、MF高橋義とMF末吉のダブルボランチとなった。また、鹿屋体育大出身のルーキーのDF坂井が左CBでスタメンとなった。今シーズン5試合目のスタメンとなる。日本代表入りが期待されているFW豊田は13試合で8ゴールを挙げている。
■ 1対1のドロー試合の前半はホームの大宮が圧倒する。13試合で31失点とリーグワーストの失点数の鳥栖の守備が安定せず、大宮がボールを支配して攻め込む時間帯が続く。すると、前半17分に右SBのDF今井が裏に飛び出して中央の動きをよく見てラストパスを送ると、飛び込んできたボランチのMF青木拓が合わせて先制に成功する。MF青木拓は今シーズン3ゴール目となった。前半は1対0で終了する。
後半になると、暑さの影響なのか、大宮の動きが悪くなって、鳥栖が主導権を握るようになる。右サイドのMF水沼のところからゴール前にクロスが入るようになって、大宮ゴールを脅かすシーンを作ると、後半38分にDF下平の中途半端なパスを奪ってカウンターを仕掛ける。ボールを受けたMF池田はいくつかの選択肢があったが、強引にドリブルで運んでシュートを放つと、これが決まって鳥栖が1対1の同点に追い付く。
その後、大宮がセットプレーを中心にチャンスを作って、FWノヴァコヴィッチに2度ほどビッグチャンスが訪れるが、鳥栖の守備陣が体を張ってゴールを許さない。結局、試合は1対1の引き分けに終わった。大宮は11節で仙台に敗れて連続無敗記録がストップした後は、3試合で2勝1分けとなった。一方の鳥栖は公式戦の連敗は「5」でストップしたが、10節の大分戦以来となるリーグ戦の白星を得ることはできなかった。
■ 後半に失速・・・前半はホームの大宮ペースで、後半はアウェーの鳥栖ペースとなった。J1は7月6日(土)に再開となったが、1ヶ月以上の中断期間があって、さらには、7月末には東アジア選手権も控えているので、7月・8月は過密日程となる。7月10日(水)と7月17日(水)にも試合が組まれているので、いきなり4連戦となるが、首位の大宮にとっては、前半の内容が良かったので、後半に失速したことが悔やまれる。
毎年のことなので、選手は慣れていると思うが、この時期はナイトマッチでも気温が高いことが多いので、消耗戦になることも少なくないが、大宮はどちらかというとエネルギーをたくさん消費するサッカーなので、先行きに不安を感じる試合となった。鳥栖の選手がハーフタイムにカツを入れられて、動きが良くなったという理由もあると思うが、後半はほとんど自分たちのサッカーができなかった。
■ 大宮から代表に選ばれるのは誰か?7月末に東アジア選手権が開催されるが、リーグ戦で首位を走っているので、当然、大宮の選手も日本代表候補に挙がっていると思われる。リーグ戦で結果を残しているチームから日本代表メンバーを選出することは、国内リーグの活性化にもつながるので、1人あるいは2人程度は東アジア選手権のメンバーに入ってくるのではないか?と考えることができるが、「選出は確実」と言えるような選手はいない。
当然のことながら、日本人でレギュラーポジションを獲得しているGK北野、DF今井、DF菊地、DF高橋祥、DF下平、MF青木拓、MF金澤、MF渡邉大の8人が候補と言えるが、比較的、選ばれる可能性が高いと思われるのは、DF菊地、DF高橋祥、MF青木拓の3人だろう。ボランチとCBは新戦力を必要としているポジションなので、ザッケローニ監督によってフル代表に引き上げられる可能性はある。
DF菊地は類稀な身体能力の高さを生かした空中戦の強さが魅力で、この試合でも、FW豊田にほとんど仕事をさせなかった。川崎F時代は荒さもあったが、大宮では最終ラインの要となっており、ヘディングの強さは国内のCBでは随一である。対して、パートナーを組むDF高橋祥は今シーズンがJ1初挑戦となるが、すでに何年も大宮でプレーしているのでは?と感じるほどチームにフィットしている。
DF高橋祥は180センチなので、高さのあるタイプではないが、攻撃的なセンスがあって、フィードも正確である。総合力の高いCBと言えるが、ザッケローニ監督はこういうタイプのCBを好むので、もしかしたら、DF菊地よりもDF高橋祥の方が、代表入りに近いポジションにいると言えるかもしれない。気性が荒いところもあるが、21歳という若さも魅力である。
ボランチのMF青木拓は、今シーズン大きく成長した選手で、ベストイレブン級の活躍を見せている。昨年の途中あたりから積極的に攻撃に参加するようになったが、今シーズンもいいところでゴールを決めている。守備も、つなぎも、バランスを取る仕事も、全て平均以上のものがあるが、ゴールに絡むプレーが多くなって、プレーヤーとしてワンランク上の存在に駆け上がることができた。
■ やや調子を落としているFW豊田一方の鳥栖はリーグ戦は3連敗でフィニッシュしており、早く3勝目が欲しいところであるが、アウェーで首位の大宮が相手ということを考えると、勝ち点「1」という結果は悪くない。前半の出来は非常に悪くて、2点目や3点目を取られてもおかしくない展開だったが、GK赤星を中心に最少失点でしのいだことが、後半38分の起死回生のMF池田の同点ゴールにつながった。
鳥栖は7月10日(水)にホームで甲府と対戦するが、この試合は非常に重要で、昇格組の甲府も調子を落としているので、何としても勝ち点「3」が欲しい試合である。その後は、名古屋(A)、C大阪(A)とアウェー戦が続くので、15節の甲府戦(H)で勝ち点「3」を得て、落ち着きたいところである。もし、ここで甲府に勝てないようだと、今後については、悲観的にならざる得ない。
鳥栖の中では、FW豊田が日本代表入りを期待されているが、この日はシュート1本だけで、あまり見せ場は無かった。今シーズンのFW豊田は開幕4試合で6ゴールと好スタートを切ったが、5節以降は10試合で2ゴールと苦しんでいる。チームの出来も良くないが、「FW豊田の出来がイマひとつなので、チームとして結果が出ていない。」とも言えるので、今後、パフォーマンスを上げていく必要がある。
FW豊田に関しては、東アジア選手権での代表入りが有力視されているが、あまりいい状態ではないので、このタイミングで代表に呼ばれてテストされることがマイナスに作用することも考えられる。大逆転でのブラジルW杯のメンバー入りを目指す選手にとって、与えられるチャンスは1回・2回程度であり、少ないチャンスを生かさないとノーチャンスとなるが、巡り合わせはあまり良くない。
FW豊田以外にも、CFのポジションで結果を残していて、しかも、いい状態をキープしている選手が何人かいるので、東アジア選手権での召集が見送られる可能性も無いとは言えないが、とにかく、クラブで結果を出すことが代表入りにつながっていくと思うので、チームとしても、個人としても、厳しい状態に陥っているが、次の甲府戦(A)では、エースの働きを見せてほしいところである。
関連エントリー 2013/04/07
【鳥栖×清水】 3度目の鳥栖スタジアム(生観戦記) (上) 2013/04/08
【鳥栖×清水】 3度目の鳥栖スタジアム(生観戦記) (下) 2013/04/09
ベアスタで気になったところ 2013/06/16
日本代表のWボランチは誰がいいのか? 2013/06/18
日本代表のベストイレブンを考える。 (CB編) 2013/06/19
日本代表のフォワードは誰がベストか? 2013/01/29
【読エ】 思い出のストライカー新居辰基 2013/01/31
【読エ】 鳥栖サポーターにとっての豊田陽平とは? 2013/05/01
【読エ】 「J1の壁」と戦うサガン鳥栖
- 関連記事
-