■ 第20節J2の第20節。7勝6敗6分けで勝ち点「27」のアビスパ福岡と、6勝10敗3分けで勝ち点「21」の愛媛FCがレベルファイブスタジアムで対戦した。福岡は3試合勝利なしで、愛媛FCもここ6試合は1勝4敗1分けと勝ち点を伸ばせずにいる。福岡のプシュニク監督と愛媛FCの石丸監督はともに就任1年目で、福岡や京都で活躍した石丸監督にとっては、古巣との対決となる。
ホームの福岡は「4-1-2-3」。GK神山。DF三島、堤、パク・ゴン、尾亦。MF中原、石津、岡田。FW城後、坂田、オズマール。ベテランのDF古賀はベンチスタートで、DF堤がCBに回って、ユース出身でルーキーのDF三島が右SBで起用された。福岡では大卒2年目のMF石津がチームトップとなる5ゴールを挙げている。高卒ルーキーのFW金森はベンチスタートとなった。
対するアウェーの愛媛FCは「3-4-2-1」。Gk秋元。DF代、小原、浦田。MF渡邊、村上、三原、黒木恭、赤井、加藤大。FW河原。愛媛FCではFW河原とMF石井が4ゴール、MF加藤大が3ゴールを挙げている。守備の中心のDF小原は2011年と2012年は福岡でプレーしたので、古巣との対決となる。鳥栖からレンタル移籍中のMF黒木恭は愛媛FCで初スタメンとなった。
■ 2対0で福岡が逃げ切る試合はホームの福岡ペースで進んでいく。先制ゴールが生まれたのは前半9分で、左サイドでボールを受けたDF尾亦のピンポイントクロスをFW坂田が頭で合わせて幸先よく先制に成功する。FW坂田は今シーズン5ゴール目となった。さらに前半17分にも左サイドからDF尾亦がクロスを入れると、相手のクリアボールをファーサイドで拾ったFW城後が左足で決めて2点目を奪う。FW城後は今シーズン3ゴール目となった。
0対2で後半を迎えた愛媛FCは、後半の頭からFW河原に代えてFW重松を投入。流れを変えようとするが、後半早々にCKから福岡がPKを獲得して、突き放す絶好のチャンスを得たが、FW坂田のキックをGk秋元がセーブして3点目はならず。すると、その後は、福岡の運動量が落ちてきて、アウェーの愛媛FCのペースとなる。後半16分にMF東、後半26分にMF伊藤を投入するとさらに勢いが加速する。
ラストの15分間は愛媛FCが一方的に攻め込んで、何度も決定機を迎えるが、FW重松やMF東が決定機に決められない。福岡は後半の戦い方に課題を残したが、試合は2対0でホームの福岡が勝利して、4試合ぶりに勝ち点「3」を獲得した。これで勝ち点「30」に到達して、3位の長崎との差は「5」なので、J1昇格争いに加わって来た。一方の愛媛FCは2連敗となって16位に転落した。
■ 精度の高い左足は健在前半は福岡ペースで、後半は愛媛FCペースとなったが、前半に2ゴールを奪った福岡が勝ち点「3」を手にした。今年のJ2は、前評判の高かったG大阪と神戸の2チームが抜け出しつつあるが、3位以下は大混戦になっていて、勝ち点「30」で7位の山形から、勝ち点「26」で14位の徳島まではほとんど差が無くて、勝ち点「30」で8位に浮上した福岡は「いい位置に付けている。」と言える。
2012年は18位と散々なシーズンだったが、プシュニク監督になってチームは大きく変わった。プシュニク監督は積極的に交代カードを切るタイプで、毎試合のように後半20分や後半25分あたりで3枚目のカードを切ってくるので、終盤にガス欠を起こしても、怪我人が発生しても、メンバー交代はできない。その積極性が裏目に出ることもあるが、変わらなければならないチームには打ってつけの指導者と言えるだろう。
この日は左SBのDF尾亦のクロスから2ゴールが生まれているが、今シーズンはDF尾亦の左足のキックが冴えに冴えている。シーズン開幕後の3月15日に右足首の手術を行って、戦列を離れた時期があるので、スタメンは8試合にとどまっているが、8試合で6勝1敗1分けと好成績を残している。彼が不在のときは、2勝5敗5分けなので、明らかな差があって、もっとも大事な選手の1人になっている。
DF尾亦は左足のキックに定評があって、180センチとサイズもあるので、FC東京の頃から大型のサイドプレーヤーとして期待を集めたが、FC東京では出場機会を得ることは出来ず、J2時代の湘南でチャンスを得るようになった。湘南では「J2で屈指の左SB」という評価を得て、2008年にC大阪に移籍したが、シーズン途中に大怪我をして、その後、力を出し切れていなかったが、今年は充実したシーズンになっている。
今シーズンのJ2は、サイドプレーヤーの活躍が目立っており、鳥取のMF尾崎、山形のDF中村太、千葉のDF米倉などが、WBあるいはSBのポジションでアシストを量産しているが、DF尾亦の活躍も目立っている。福岡はプシュニク監督が就任して組織的な守備ができるようになったが、攻撃のバリエーションが豊富というわけではないので、DF尾亦の左足のキックが、一番の武器になっている。
■ 積極的に若手を起用するプシュニク監督右SBで起用されたルーキーのDF三島も健闘したと言える。アタッカータイプの選手で、途中出場で流れを変える働きを見せた試合もあったが、19歳になったばかりである。経験は不足しており、不慣れなポジションでプレーすることになったので、相手の愛媛FCにとっては狙いどころだったと思うが、積極的に高いポジションを取って、前半はMF黒木恭とのマッチアップは優勢だった。
また、大卒ルーキーのMF中原は、開幕からアンカーの位置で起用されることが多くなっており、パフォーマンスが悪くて前半だけで交代させられる試合もあったが、この日は、ミスも少なくて、いいプレーを見せた。172cm/64kgの体格で、体を張った守備で貢献できる選手ではなくて、司令塔タイプのプレーメーカーであるが、技術が高くて、視野が広いので、彼がボールを持つとチームは落ち着く。
プシュニク監督は、FW三島とMF中原以外にも、高卒ルーキーのFW金森をレギュラー格で起用するなど、経験の少ない選手を試合で起用することに躊躇しない監督と言えるが、大卒2年目のMF石津も含めて、若い選手が経験を積んで、プシュニク監督の期待に応えることパフォーマンスを見せる試合が増えてきたので、今後、プレーオフ圏内まで浮上することは十二分に考えられる。
■ 決定力を欠いた愛媛FC一方の愛媛FCは、前半は守備がルーズだった。DF尾亦の左足のキックが福岡の武器であることは、分かっていたと思うが、簡単にフリーにするシーンが多かった。中央のマークも外されるケースが多かったので、中の対応にも、問題があって、前半は守備が機能しなかった。今シーズンから石丸監督がチームを率いているが、守備のときに、相手に強いプレッシャーを与えられていないのは、気になるところである。
攻撃に関しては、前半は単純なミスが多くて、全くパスがつながらなかったが、FW重松、MF東、MF伊藤の3人を投入すると、彼らのアグレッシブなプレーが試合の流れを変えるきっかけとなった。決定機は何度もあったので、どこかのタイミングで1点を返すことが出来ていたら、同点に追いつくことができた試合の流れだったが、GK神山の活躍やシュートミスもあって、ネットを揺らすことはできなかった。
これで愛媛FCは16位となって、20位の鳥取との差も「2」で、21位の群馬との差も「5」なので、降格ゾーンが気になるところに位置するが、攻撃的なポジションにボールを受けることが得意なタイプを起用して、テクニックやパスワークでチャンスを作ろうとする考え方は悪くない。ストライカーがいないので、チャンスを作っても決められない試合が目立つが、辛抱して我慢強く戦っていくしかない。
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