■ 第20節J2の第20節。11勝3敗5分けで勝ち点「38」のヴィッセル神戸と、10勝4敗5分けで勝ち点「35」のV・ファーレン長崎が神戸市にあるノエビアスタジアムで対戦した。J2の上位争いは6連勝中の首位のG大阪が勝ち点「42」で、2位の神戸が勝ち点「38」で、3位の長崎が勝ち点「35」となっており、2位と3位の直接対決となった。両チームがJリーグの試合で対戦するのは初めてとなる。
ホームの神戸は「4-2-2-2」。GK徳重。DF奥井、岩波、河本、大屋。MF田中英、エステバン、小川、マジーニョ。FWポポ、都倉。ユース出身で3年目のMF小川がチームトップの7ゴールを挙げており、FWポポとFW田代は6ゴールで、新外国人のMFマジーニョは5ゴールを挙げている。ストライカーのFW都倉は開幕戦の徳島戦以来のスタメンで、FW田代は4節以来のスタメン落ちとなった。
対するアウェーの長崎は「3-4-2-1」。GK金山。DF趙民宇、山口、藤井。MF岩間、井上、金久保、古部、小笠原、幸野。FW佐藤洸。5ゴールを挙げているFW水永はベンチスタートで、FW佐藤洸とMF小笠原とMF幸野が攻撃的なポジションで起用された。FC岐阜から加入のFW佐藤洸はチームトップの7ゴールを挙げている。FW佐藤洸は17節から3試合連続ゴール中と結果を出している。
■ 2対0で神戸が勝利2位の神戸と3位の長崎の直接対決の序盤は静かな展開となる。ボールを保持したのはホームの神戸だったが、なかなか効果的なパスを前線の選手に送ることができない。しかし、前半38分に神戸はMFマジーニョとMF小川の連携からMFマジーニョがペナルティエリアに侵入すると、「相手のファールを受けたか?」という倒れ方をして、一瞬、周りの動きが止まった隙をFW都倉が見逃さずに左足でねじ込んで神戸が先制する。
後半開始から長崎は左ストッパーのDF藤井を下げて、ドリブラーのMF山田晃を投入。DF古部を最終ラインに下げるという思い切った選手交代を行うが、後半26分に神戸がFKを獲得。30メートルはあろうかという距離だったが、FWポポが右足で豪快に決めて2点目を挙げる。退団の噂も流れているFWポポは今シーズン7ゴール目となった。キーパーの前でバウンドしたので、GK金山は処理できなかった。
結局、試合は相手のシュートを3本だけに抑えた神戸が2対0で逃げ切って、大事な直接対決で勝ち点「3」を獲得した。首位のG大阪はホームで岡山と引き分けたため、首位のG大阪と2位の神戸の差は「2」となって、2位の神戸と3位の長崎の差は「6」に広がった。J2は6月29日(土)に行われる第21節がちょうど折り返し地点となるが、神戸は首位で前半戦を折り返す可能性も出てきた。
■ 直接対決を制した神戸神戸は、ここ最近、取りこぼしが目立っており、好調のG大阪に引き離されつつあったが、当面のライバルである長崎に勝利して、貴重な勝ち点「3」を獲得した。これで首位のG大阪が勝ち点「43」で、2位の神戸が勝ち点「41」で、3位の長崎が勝ち点「35」で、4位の京都が勝ち点「34」で、5位の栃木SCが勝ち点「33」で、6位の千葉が勝ち点「32」となったが、上位2チームと3位以下の差が広がって来た。
神戸は攻撃的なポジションの駒の豊富さでは、G大阪に引けを取らない豪華さであるが、正直なところ、攻撃陣が噛み合っているとは言い難い。メンバーを見るとカウンターの時に持ち味を発揮しそうな選手が揃っており、神戸というチーム自体も伝統的にカウンターを武器としているが、J2では相手に引かれることが多いので、自分たちがボールを保持して攻め込む時間帯が長くなる。
おそらく、J1に上がることが出来たら、もっと自分たちの良さを出しやすい展開が多くなると思うが、J1昇格のためには、相手に引かれたときにいかにして点を獲るかが、課題になってくる。この日も、苦戦を強いられたが、相手の隙をついたFW都倉のゴールとFWポポの長距離フリーキックで2点を奪った。長崎にとっては、FW都倉のゴールシーンのときに足が止まってしまったのが、悔やまれるところである。
■ 涙のFK弾2点目のゴールを決めたFWポポはチームトップタイの7ゴール目となったが、「6月末でチームを離れることが濃厚」と報じられている。したがって、ホームでの最後の試合になる可能性が高くて、FKでゴールを決めた後、涙を流していたのが、印象的である。正式な発表はなされていないが、FWポポに対しては、すでに、クラブ側から何かしらのアクションがあったと推測される。
代わりにG大阪を離れることになったFWレアンドロの獲得を目指していると報道されているが、今シーズンのFWポポの貢献度は高いのでリスキーな選択のように思える。もちろん、1.5列目的なポジションで力を発揮する選手がたくさんいるので、本格派のストライカーであるFWレアンドロを獲得できれば得点力がアップする可能性はあるが、FWポポを途中でリリースしてまで、必要な選手かというと疑問に感じるところもある。
もし、FWポポが神戸を離れることになったら、J1でも欲しいと思うチームはたくさんあると思うので、J2のみならず、J1の行方にも影響を与えそうな人事である。決定力は高くは無いが、シュートに対して積極的な選手で、前線からの守備でも貢献できる。「起爆剤」として打ってつけの選手なので、J1の降格圏で苦しんでいるチームや降格ラインの少し上にいるチームにとっては、魅力的な人材と言えるだろう。
■ 3位と好位置に付ける長崎一方の長崎は、この日は、神戸に「力負け」となったが、ここまで3位と大健闘している。JFLからJ2に上がって来たチームが初年度で上位争いに加わったケースというのは、近年、無かったので、大きな注目を集めており、前半戦のJ2の最大のサプライズと言える。10勝5敗5分けでG大阪と神戸に次ぐ3位というのは、立派としか言いようがない。
もちろん、まだ全日程の半分を迎えようとしている段階なので、最後までプレーオフ圏内を維持できるかというと、ちょっと厳しいかもしれないが、大崩れしそうな感じはない。元日本代表でアジアの大砲と呼ばれた高木琢也監督がチームを率いているが、20試合で20失点というのは、守備的なポジションにタレントがいるチームでは無いことを考えると、あり得ない数字である。
組織的な守備をベースにしたチームであることは、横浜FCあるいは熊本のときと同じであるが、両WBに攻撃的な選手を配置していることが、長崎の特徴である。右WBはMF小笠原あるいはMF金久保、左WBはMF山田晃あるいはMF古部が起用されているが、いずれの選手も攻撃的な選手で、MF小笠原やMF山田晃などは1.5列目がベストポジションで、サイドプレーヤーというイメージは全くないが、見事にフィットしている。
かつて、トルシエ監督が日本代表を率いていた時に、「中央付近はプレッシャーはキツイので、サイドにゲームメーカーを置く。」というやり方を貫いて、MF名波であったり、MF中村俊であったり、MF小野を左WBで起用して、結局、日韓W杯ではMF小野が左WBでプレーした。長崎のWBの人選を見ていると、このときのトルシエ監督を思い出すが、長崎の場合は、両方のWBに攻撃的な選手を置いており、より攻撃的である。
その一方で、中央のラインには、堅実な選手やパワフルな選手を積極的に起用しており、FW水永あるいはMF岩間といった選手がその象徴と言える。オフの補強がまずまずうまくいったことが成功の理由の1つと言えるが、他のチームには見られないユニークな選手起用をしていて、彼らが本来のポジション以外でも力を発揮しているところが「3位」という成績につながっている。高木監督の手腕は見事である。
関連エントリー 2013/01/09
【J1】 順位予想バトル 2013年版 受付終了 (参加者:279名) 2013/01/11
【J2】 順位予想バトル 2013年版 受付終了 (参加者:146名) 2013/04/25
【横浜FC×神戸】 日本サッカー史上最高級の逸材・岩波拓也 2013/05/07
【岡山×山形】 昇格を狙えるチームになったファジアーノ 2013/05/27
【愛媛FC×G大阪】 ガンバ人気の凄まじさに思うこと 2013/06/09
【富山×群馬】 はがやしきカターレ (生観戦記・上) 2013/06/10
【富山×群馬】 はがやしきカターレ (生観戦記・中) 2013/06/11
【富山×群馬】 はがやしきカターレ (生観戦記・下) 2013/06/25
西京極競技場の旅 (6月22日)
- 関連記事
-