■ 第13節J1の第13節。2勝6敗4分けで勝ち点「10」のサガン鳥栖と、7勝2敗3分けで勝ち点「24」の横浜Fマリノスがベストアメニティスタジアムで対戦した。鳥栖は15位で、横浜FMは2位。12節を終えた時点で、16位の湘南は勝ち点「9」なので、15位の鳥栖と16位の湘南との差は「1」のみ。鳥栖は苦しい前半戦になっている。
ホームの鳥栖は「4-2-3-1」。GK赤星。DF丹羽、呂成海、小林久、金民友。MF末吉、藤田直、岡田、池田、野田。FW豊田。エースのFW豊田は12試合で8ゴールを挙げている。古巣対決となるMF水沼はベンチスタートで、大卒2年目のMF岡田がスタメンとなった。12節の浦和戦でJ1初ゴールを挙げている。
対するアウェーの横浜FMは「4-2-3-1」。GK六反。DF小林祐、栗原、中澤、ドゥトラ。MF中町、富澤、兵藤、中村俊、齋藤学。FWマルキーニョ。エースのFWマルキーニョスは11試合で7ゴールを挙げている。中盤の選手では、MF中村俊とMF兵藤の2人が4ゴールを挙げている。元鳥栖のストライカーのFW藤田祥はベンチスタートとなった。
■ 1対0で横浜FMが勝利!!!立ち上がりは鳥栖ペースとなる。積極的な守備と豊富な運動量で中盤を支配して、ゴール前のシーンを作っていく。しかし、横浜FMも前半25分あたりを過ぎると、セットプレーからチャンスを作るようになる。前半終了間際にはMF中村俊のFKからFWマルキーニョスが決定的なヘディングシュートを放つがクロスバー直撃でゴールならず。前半は0対0で終了する。
後半開始から鳥栖はMF岡田に代えてMF水沼を投入するが、暑さの影響があったのか、後半になると鳥栖の運動量が落ちてきて、アウェーの横浜FMがペースを握るようになる。後半15分に鳥栖はボランチのMF末吉に代えてMF高橋義を投入すると、少し流れが良くなるが、横浜FMに移った試合の流れを変えることは出来ない。
後半32分に横浜FMがゴール正面のやや遠い位置でFKを得ると、MF中村俊のボールをゴール前でフリーになったMF富澤が決めて先制に成功する。MF富澤は今シーズン3ゴール目となった。結局、試合は1対0でアウェーの横浜FMが勝利して、今シーズン8勝目。2位をキープした。一方の鳥栖はナビスコカップを含めると公式戦は5連敗となった。
■ 苦しい前半戦となった鳥栖両チームは2012年は3節と34節で対戦していて、ベアスタで行われた3節の試合は鳥栖が1対0で勝利して、記念すべきJ1初勝利を飾った。当時は横浜FMの保有選手でレンタルで鳥栖に移籍していたMF水沼が決勝ゴールを決めるという横浜FMにとっては悔しい敗戦となったが、同じスタジアムで借りを返すことができたと言える。
2012年は横浜FMが4位で、鳥栖が5位だったが、今シーズンは明暗が分かれており、敗れた鳥栖は2勝7敗4分けという成績で中断期間を迎えることになった。13試合で勝ち点「10」なので、降格ラインを意識しながら戦わざる得ない状況となったが、完全に歯車が狂っているので、1ヶ月以上の休みがあることをポジティブに考えたいところである。
当然、補強の話も出てくると思うが、軸になれるCBと攻撃力のあるSBの2点が補強ポイントで、MF末吉やMF高橋義以上の選手を獲得できるのであれば、ボランチにお金をつぎ込むことも考えられる。最前線にはFW豊田がいて、2列目のMF野田やMF池田に関しては問題ないので、補強ポイントというのは分かりやすい。
ただ、最優先すべきは、選手たちの自信を回復させる作業である。特に、失点数が激増していて、守備的なポジションの選手が自信を失っているように思えるので、メンタル的なケアも必要になってくる。際どいポジションで中断期間を迎えることになったが、7月6日の再開初戦の大宮戦までの期間というのは、非常に大事になってくる。
■ MF富澤が決勝ゴール一方の横浜FMは序盤こそ相手の激しい守備に苦労して、イラ立ちを見せる選手も多かったが、その後は冷静にプレーした。前半39分には2枚目のイエローカードが出てもおかしくないようなMF岡田のプレーがきっかけとなって守備の要のDF中澤を怪我で失うアクシデントが生じたが、代役で出場したDFファビオが落ち着いたプレーを見せた。殊勲者の1人と言える。
決勝ゴールは得意のセットプレーから生まれた。MF中村俊は前半から素晴らしいボールを蹴っていて、自由自在にボールをコントロール出来ていたので、セットプレーが相手の脅威になっていたが、後半32分という先制ゴールが欲しくてたまらない時間帯に決勝ゴールが生まれた。スピードも、コースも、最高のキックだった。
ヒーローとなったMF富澤はこれで早くも3ゴール目となった。東京V時代もいいところでゴールを決める選手だったが、横浜FMでも、勝負強さを発揮している。どうしても、DF中澤、DF栗原、FWマルキーニョスなどに相手の注意が向くので、やりやすいところはあると思うが、ゴール前のポジションニングが巧みで、フリーでシュートを放つシーンが目立っている。
■ 古さと新しさ鳥栖とは対照的に、横浜FMは8勝2敗3分けという好成績で中断期間を迎えることになった。開幕6連勝のあとは2勝2敗3分けなので、ややペースは落ちてしまったが、13試合で勝ち点「27」というのは、優勝を狙うことのできる数字で、2004年以来のリーグ制覇に向けて、非常にいいポジションで後半戦をスタートすることになった。
前半戦はMF中村俊の活躍が際立った。この日も決勝ゴールをアシストしたが、とにかく、今シーズンはキックの質が素晴らしくて、毎試合のようにゴールに絡む活躍を見せている。さすがに若い頃に見せていたキレは無くなっており、ドリブルで仕掛けてサイドを突破するようなプレーは見られなくなったが、左足のキックに関しては、全く変わっていない。
選手たちが語っているいるとおり、今シーズンの横浜FMはMF中村俊が中心のチームである。「彼が気持ち良くプレーできる環境を用意することがチーム力の向上につながる。」と樋口監督は判断してチーム作りを行ってきたが、ここまでは期待どおりか、それ以上の成果を挙げている。6月24日で35歳になるが、年齢的な衰えというのは、ほとんど感じられない。
中盤に関しては、メンバーにしても、配置にしても、MF中村俊がプレーしやすい形になっていて、さらに、MF兵藤とMF中町とMF富澤の3人については、常にMF中村俊を生かすプレーを心掛けている。したがって、彼への依存度は高くなっているが、これだけ結果が出ていて、選手たちもモチベーション高くプレーしているので、何ら問題はないだろう。
突出したゲームメーカーの力を最大限に生かそうとするサッカーは80年代や90年代に主流となったサッカーであるが、最近はほとんど見られなくなったので、今シーズンの横浜FMのサッカーは懐かしさを感じるところもあるが、一方で、MF中村俊もクラシックなゲームメーカーと言えず、さらに、周りにいる選手は「現代的な中盤の選手」なので古臭さは全く感じない。
むしろ、「新しさ」あるいは「進化」を感じるところも多いが、残念ながら、そういう様を表現するジャストな日本語というのは、思い浮かばない。「古風な懐かしさの中に近未来を思わせる洗練された意匠が感じられるさま」という意味を含んだ『レトロモダン』という言葉がもっとも当てはまると思ったが、これもちょっと違う感じはする。
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