サガン鳥栖のJ1元年となった2012年シーズンは、降格候補のレッテルを貼られながらも、キャプテンの藤田選手が言っていたように、『サッカーファンの期待を 裏切り、サガン鳥栖を応援するひとたちの期待に応える』結果となった。
その快進撃を支えたのはエースストライカーの豊田陽平選手と言っても過言ではないだろう。サガン鳥栖サポーターとしてはそれ以外の要素も挙げることはできるが、他のクラブのサポーターや一般のサッカーファンからはそう映るはずだ。
私は関東在住のサガン鳥栖サポーターのため、観戦はアウェー中心で、また、人付き合いの中から関東圏のチームのサポーターと話す機会もあった。豊田選手に対しては、『日本代表に選ばれるだけの力はある』と少々箔のついたものもあったが、概ねは『実力はある』というものだった。
その一方で、豊田選手に対して、一定数存在する評価としては、『プレーが荒い』、『あまり好きではない』というものだ。「相手チームのサポーターであればそう思うだろうな」と思うプレーや行動があったことは、私も認識しており、その度に、私自身、苦笑いしていたことを、まず、お伝えしておく。
* 鳥栖のエースとなった日サガン鳥栖に来る前までの豊田選手については一般のサッカーファンと同じ程度の知識しかなかった。『北京オリンピックでゴールを決めた選手』、『移籍先でうまくいかず、同世代に差をつけられた選手』といったものだ。
2010年に加入して、シーズン折り返し地点では6得点。この時点では豊田選手をエースと呼ぶ雰囲気はなかったように感じる。その2010シーズン、豊田選手がエースストライカーだとサポーター(少なくとも私が)が確信した試合がある。2010年10月17日、ホームゲームでの横浜FC戦だ。
2009年のオフに、サガン鳥栖と横浜FCの間で起こったことを多くのJリーグファンはご存知だと思うので、ここでは多くは触れない。対戦相手の横浜FCは、昨年まで、サガン鳥栖に所属していた監督や選手の名前が数多く並ぶ相手。「負けられない戦い」だ。5月の横浜FCのホームゲームでは0-4で敗戦していたため、何としてもホームゲームでは勝ちたかった。本当に、内容やスコアはどうでもよかった。
試合は前半を終わって3-0でサガン鳥栖がリード。テレビ観戦だったが、正直勝ったと思ったし、現地もそうだったのではないだろうか。そういうサポーターの慢心が選手にも伝わったのか、それとも選手にも気の緩みがあったのか。後半にサガン鳥栖は失点を重ね、後半41分に逆転を許す。残り時間は少なく、ゲームを立て直せるような予兆もなかった。私は完全に気持ちを折られていた。
そんな中、その瞬間は訪れる。
横浜FCのバックパスに全速力で詰めた豊田選手が相手DFからボールを奪い、振り切り、そしてそのまま同点ゴールを決める。綺麗なゴールではない。ただ、そのプレー、ゴールには豊田選手自身の気持ちがこもっており、サガン鳥栖サポーターの望むことをやってくれたというこの上ない結果があった。
試合はそのまま4-4のドローに終わったが、サポーターと豊田選手の間の信頼が築かれた、エースストライカーと呼ぶきっかけとなった忘れられない試合だ。
* サガン鳥栖サポーターから見た豊田選手その後、豊田選手は数々の起死回生のゴールを決めたりと正にエースストライカーと呼ぶに相応しい活躍をしたが、ここでは割愛する。それよりも、その人柄について触れたい。
豊田選手がサガン鳥栖サポーター側でゴールを決めた場合、豊田選手は真っ先にゴール裏のサポーターに向かって走っていく。ホームゲームで『芝かぶりシート』というフィールド横の席が発売された後は、ゴール裏を経由して『芝かぶりシート』の観客の目の前で他の選手たちと喜びを分かち合うシーンが多くなった。
『芝かぶりシート』はシーズンパスポート対象ではなく、また座席料金も最も高い。さらに言うと、見やすさが売りのベアスタの中でも見づらい座席になるのではないかと思う。それでも、あえてその席で観戦してくれたサポーターへの、豊田選手なりの『粋な計らい』だと、私は感じた。
試合後のヒーローインタビューではサポーターへの思いを真っ先に口にし、試合前のサインボールの投げ込みなどではほかの選手が投げ込んでいない客席に向かって投げてくれる。細かなところを挙げるときりがないが、彼自身のそういった細かな配慮をサポーターはいつも見ている。だからこそ、サポーターは豊田選手のことをエースストライカーと呼び、信じているのだと思っている。
* Jリーグの魅力ここまで豊田選手のことを私の主観を中心に綴ってきたが、豊田選手が特別だと言いたいわけではない。他のクラブにも同じように、それ以上にサポーターとの関わりを大事にする選手がいたり、サポーターにとって特別な選手がいるものだと思っている。
好き嫌いは個人の好みだが、サッカーファンの方には、今後、豊田選手を見ていく上で、「彼は、鳥栖サポーターにとって、そういう特別な選手なんだな」という視点も含めて見ていただけると嬉しい。
先に述べたとおり、私は関東在住のサガン鳥栖サポーターなので、サガン鳥栖のことを話せる相手は少ない。だが、関東という、いろいろな人が集まる場所だからこそ、様々なチームのサポーターの方と話すことができている。
そのサポーターの方が、「この選手は、今年すごく成長した。」、「あの選手が、あそこで決めてくれて、涙が出そうになった。」などと話すのを見ると共感してしまうし、そのチームの試合や選手を見ること、そのチームと対戦することが楽しみになってくる。そういったエピソードをサポーター同士で語りながら、共有しながら観ることができるのも、Jリーグの魅力だと私は感じている。(END)
[書き手]
【 ハンドル名 】:ジョン
【 年 代 】:20~29歳
【 性 別 】:男性
【 地 域 】:関東
[補足]
・ジョンさんの読者エントリーです。読んでみて、「面白かった。」、「いい文章だった。」と感じた方は、右下の拍手ボタンを押して、ジョンさんを称えてください。
[寄せられたコメント]
・豊田は本当に鳥栖で成長しましたよ。松本育夫さんからきつい言葉をかけられ、ユン監督のもとで厳しいトレーニングを課せられ、人間的にもでかくなったように感じます。ひょっとしたら子どもができたのも影響あるのかな。(コーンさん)
[おしらせ]・サッカーコラム J3 Plus+では、読者エントリーを受け付けています。「自分はこう思っている。」、「あのことについて、一言言いたい。」などなど、ご意見をお持ちの方のエントリー(投稿)をお待ちしています。
(トピックスの例) ・試合の感想やレポートなど。(国内外、プロアマ問わず。)
・天皇杯、ナビスコカップ、秋春制などの制度や仕組みについて考えること。持論など。
・自分の応援するチームの紹介(選手について、クラブについて、スタジアムについてなど)
・日本代表について(選手起用、戦い方、監督に対して思うことなど。)
・2012年のマイ・チームを振り返ってみて。(課題や収穫について。)
など。
また、シーズン開幕前ということで、
・今オフ、補強に成功したと思うクラブについて。
・今シーズン、期待したい選手(or クラブ)について。
・J1あるいはJ2のリーグ戦の展望。
というテーマでの投稿も期待しています。
(投稿方法)題材を選んで、タイトルを付けて、文章をまとめて、こちら(↓)に投稿してください。それから、数日の間に、管理人が編集してエントリー化します。
※ 誤字あるいは脱字は、できる限り、こちらで修正します。
※ 読みやすくするために、適当なところで改行することがあります。
※ タイトルは、アクセス数に大きな影響を及ぼすので、もっともふさわしいと思うものに、変更させていただく場合があります。
・投稿フォームを利用する。(
http://form1.fc2.com/form/?id=819691)
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詳細は、
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※ 1/31(木)の時点で、たくさんの投稿が寄せられています。できるだけ多くの方の目に留まるように、どのエントリーも、一定時間以上、トップページに表示したいと考えていますが、そういう事情から、1日にエントリー化できる数は限られてきます。
※ 送られてきたエントリーは、順次、すべてエントリー化していきます。投稿した後、すぐに、エントリー化されないときもありますが、上のような事情がありますので、その点はご了承ください。
※ 書き手の方を紹介する部分は、今のところは、下のようになっていますが、味気ないものです。150字程度で、自己紹介文を添えていただけると、助かります。
[書き手] ・・・ 現状の紹介の仕方
【 ハンドル名 】:ジョン
【 年 代 】:20~29歳
【 性 別 】:男性
【 地 域 】:関東
[自己紹介文の例・1]
札幌に住む30代のコンサドーレのサポーター。岡田監督時代から、ほとんどのホームゲームをスタジアムで観戦しており、しばしば、アウェーにも遠征する。好きな選手は、古田と奈良。いつの日か、コンサドーレ札幌がJ1を制覇することを夢見ている。
[自己紹介文の例・2]
ヨハン・クライフを観て、サッカーの虜になった50代のおじさんサポーター。日本が初めてW杯に出場した1998年のフランスW杯は、3試合とも現地で観戦して、涙を流した。Jリーグのクラブで応援しているのは、故郷にあるカターレ富山。今シーズンは、10位以内に入ることを期待している。
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