■ 4回戦天皇杯の4回戦。J1の名古屋グランパスと、J2のロアッソ熊本が瑞穂陸上競技場で対戦した。熊本は2回戦でFC岐阜に4対3で勝利して、3回戦はベガルタ仙台に2対1で勝利して4回戦に進んできた。高木監督は今シーズン限りでチームを離れることが決まっているので、負けるとラストゲームとなる。
ホームの名古屋は「4-1-2-3」。GK楢崎。DF田中隼、ダニエル、増川、阿部。MF田口、小川、藤本。FW永井、闘莉王、金崎。この試合もFWケネディは欠場で、FW闘莉王が3トップの中央に入る。MFダニルソンとFW玉田はベンチスタートとなった。
対するアウェーの熊本は「4-2-2-2」。GK南。DF藏川、矢野、廣井、片山。MF養父、吉井、齊藤和、大迫希。FW武富、北嶋。ベテランのFW北嶋は、先日、熊本への完全移籍が発表された。今シーズンは、8試合に出場して3ゴールを挙げている。
■ 名古屋が5対2で勝利試合は前半15分に名古屋がFW闘莉王のヘディングシュートで先制するが、前半23分に熊本はFW武富の折り返しをMF齊藤和が決めて1対1の同点に追いつく。追いつかれた名古屋は、前半43分にFW闘莉王の落としからFW金崎が決めて2対1と勝ち越すが、その直後に熊本のMF齊藤和がドリブル突破から右足で決めて、2対2のスコアでハーフタイムに突入する。
同点に追いついた熊本は、試合を落ち着かせたかったが、後半20分に名古屋はFW金崎のシュートのこぼれ球をMF小川が決めて3対2と勝ち越しに成功する。熊本は、MF原田やFW高橋を投入し、システムを変更して同点を狙うが、逆に、後半34分に名古屋のFW永井がシュートを決めて4対2となる。
結局、後半40分にも途中出場のFW玉田がヘディングシュートを決めて決定的な5点目を挙げた名古屋が5対2で勝利してベスト8入り。12月23日(日)に行われる準々決勝で横浜FMと対戦することになった。一方の熊本は、ハードな守備ができずに5失点で大敗。今シーズンの戦いが終了して、高木監督はラストゲームとなった。
■ FW闘莉王が活躍前半の名古屋は守備のときに集中を欠くことが多くて、2度、同点に追いつかれたが、後半は地力の差を見せつけて、ベスト8に進出した。リーグ戦の開幕前は、「優勝候補の筆頭」と言われており、前評判は高かったが、リーグ戦は7位に終わった。よって、ACLの出場権を獲得できなかったので、天皇杯にかける思いは強いはずである。
この日もフォワードで起用されたFW闘莉王が期待に応えた。運動量は多くはなかったが、大事なところには、きっちりと顔を出してきて、決定的な仕事をする。圧巻だったのは、前半15分の先制ゴールである。左サイドからいいボールが上がってきたが、完全に相手に競り勝って豪快にネットを揺らした。
今シーズン限りで退団することが確実となっているFW金崎も2点目のゴールを挙げるなど、好プレーを見せた。退団の理由や経緯については、オープンになっていないので、推測するしかないが、海外移籍を希望しており、戦力として計算しにくいため、構想から外れたのではないか?と言われている。
現時点では、海外の移籍先の候補の名前は挙がっていないが、FW金崎のプレースタイルを考えると、日本よりも、海外の方が向いているのではないかと思う。名古屋でのプレーを観る限り、FW金崎という選手は、不器用なタイプなので、自由を与えられると戸惑ってしまうところがある。
もっとも、イキイキとプレーしていたのでは、右サイドに張ることが多かった2010年シーズンであるが、プレーを制限して、「サイドでボールを受けてドリブルで突破してクロスを上げる」といった単純な役割を課した方が、パニックにならずに、生きるのではないかと思う。
マンチェスターUのMF香川、フランクフルトのMF乾、ニュルンベルクのMF清武などは、味方とのコンビネーションを駆使してチャンスを作るタイプなので、サイドでプレーすることに対して、戸惑っている様子も伺えるが、FW金崎の場合は、その反対で、サイドで張っている方が力を発揮すると思う。
ロンドン世代の中では、MF香川と同じく早くからフル代表に選出されており、期待されていたが、ここ数年は、伸び悩んでいる。怪我の影響も大きかったと思うが、まだ23歳なので、巻き返しは可能である。いい移籍先が見つかることを期待したいところである。
■ ベスト8はならず・・・一方の熊本は、3回戦で仙台に勝利して大きな注目を集めたが、快進撃はここでストップした。名古屋は12月1日が最終戦だったので「中13日」だったが、熊本の方は、11月11日が最終戦だったので、1ヶ月以上のブランクがあって、この点はハンディになったと思う。
ただ、名古屋を相手に2ゴールを奪ったことは、自信になるだろう。ともに、右サイドのMF齊藤和がゴールを決めているが、特に、2点目のドリブル突破からのゴールは、普段のリーグ戦では、観られなかったプレーであり、新たな一面を披露したと言える。
他には、ベテランのFW北嶋も質の高いプレーを見せた。リーグ戦の終盤は欠場が続いていたので、ブランクの影響が心配されたが、しっかりと前線で起点となって、熊本の攻撃の中心となった。先日、完全移籍で加入することも決定して、来シーズンは、2桁ゴールが期待される。
■ 高木琢也監督の最終戦熊本はこれで今シーズンの戦いが終了した。結局、高木監督は3年間チームを率いたが、2010年が7位で、2011年が11位で、2012年が14位という成績で、目標としていたJ1昇格を達成することはできなかった。「J2に昇格する長崎の監督に就任するのではないか?」という報道もあるので、来シーズンは、敵として戦う可能性もある。
サッカーの監督は、「3年間」というのが、短すぎることもなく、長すぎることもなく、「ちょうどいい期間」だと言われている。したがって、「別れ時」なのかもしれないが、秋以降になって、ようやく方向性が見えてきて、しかも、結果も出るようになってきたので、「もう1年、高木監督に任せても良かったのではないか?」という思いもある。
熊本は2008年にJ2に昇格してきたので5年が経過したが、池谷監督や北野監督が指揮していた2008年や2009年はどちらかというと攻撃的なスタイルで、ショートパスを多用するサッカーだったが、高木監督になってからは、守備を重視するようになって、失点数は激減して、2010年はクラブ史上最高の7位となった。
ただ、2011年や2012年の前半戦は攻撃力不足が響いて、勝ち点を積み上げることはできなかった。高木監督は、守備組織を構築することはできるが、攻撃のアイディアは十分ではないので、停滞してしまったが、今年の秋以降は、守備の安定はそのままで、中盤でパスも回るようになって、パスワークからチャンスを作るシーンが多くなった。
FW長沢、FWファビオなど、背の高い選手を前に並べて、高さを武器に戦うサッカーを志向したときもあったが、秋口の6連勝中の頃は、「こういうサッカーをしたかったんだな。」と感じさせる試合が続いたので、もう1年、高木監督がチームを率いたら、面白いことになるのでは?とも感じるが、決まったことなので、仕方がない。
後任は、U-19日本代表の吉田靖氏の就任が確実視されているが、悪くない選択だと思われる。来年がJ2に上がって6年目となる。「J1昇格を果たす」というのは、今の段階では難しいと思うが、そろそろ、昇格争いに加わって、クラブとしての経験値を積み上げたいところである。
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